(出典:観光庁)
観光庁が令和7年3月10日に公表した「令和7年度宿泊施設サステナビリティ強化支援事業」は、環境への配慮や省エネルギー対策が必須となりつつある宿泊業界において、新たなチャンスをもたらす制度である。省エネ設備や環境負荷の低減に関する機器の導入を支援することで、宿泊施設の持続可能な運営形態を推進し、訪日外国人旅行者を含む多様な顧客ニーズに応える魅力ある受入環境を整備することを目指している。補助率は1/2、1施設あたりの補助上限額は1000万円とされており、設備投資の負担を抑えながら施設のバージョンアップを図れる点が大きな魅力である。
(観光庁の資料を基に作成)
公募要領によれば、旅館業法に基づき許可を受けた宿泊事業者が原則として補助対象となる。ただし、同一内容で国や地方公共団体から補助金を受給している、または受けることが確定している施設については重複での申請ができず、設備工事を請け負う業者と申請者が同一グループに属している場合も対象外となる。事業の期間は補助金交付決定日から令和8年2月27日までとなっている。
補助対象経費としては、省エネ型空調や省エネ型ボイラー・配管、二重サッシ、節水トイレ、照明機器などが挙げられ、既存の設備を置き換えることで建物全体のエネルギー消費を削減できる取り組みが想定されている。また、新たな導入によって環境負荷低減やCO2削減に寄与する設備も対象であり、太陽光発電や蓄電設備、温室効果ガス排出量を計測するシステムなどが例示されている。
(出典:観光庁)
申請の受付期間は令和7年3月24日10時から5月30日17時までである。応募は特設Webサイト上の申請フォームを利用して行う方式で、事業計画書の記入や見積書、導入予定設備のカタログなどを準備した上で提出する。審査は申請の早い者から順次進められ、採択の可否が通知された後、交付申請・交付決定を経てはじめて工事に着手できるしくみである。
宿泊施設の改修や設備刷新は投資負担が大きいが、省エネルギー性能の高い機器を導入すればランニングコストを削減できるだけでなく、持続可能性に配慮する宿泊施設としてのブランドイメージ向上も期待できる。訪日外国人旅行者や環境意識の高い国内客のニーズに応えるためには、施設そのものの質を高めることが求められており、そうした施策を補助によってサポートしてくれる点は大きいといえる。宿泊業界が大きな変革を求められるいまこそ、本事業を活用してサステナビリティ向上や省エネ効果を高め、地域や社会にも貢献する施設運営を目指す好機となるだろう。
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