「お手伝い」と「旅」を掛け合わせた人材マッチングサイト「おてつたび」を運営する株式会社おてつたびは、同サービスを通じてホテルや旅館で働いた2,379名に対するアンケート調査結果を公開した。この調査は、宿泊業界における人手不足の現状や、観光業への興味喚起にどれほど貢献しているかを明らかにしたものである。
帝国データバンクが2024年10月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、旅館・ホテル業界では62.9%の正社員と60.9%の非正社員が人手不足を実感していることがわかっている。2024年以降、業務効率化ツールの導入や多様な働き方の普及によって状況は緩やかに改善しているが、それでも人手不足は依然として深刻な課題である。こうした背景の中で、「おてつたび」は宿泊事業者の人手不足解消に貢献し、観光業の担い手を増やす取り組みを進めている。
(株式会社おてつたびの資料を基に作成)
同社が行ったアンケート調査によると、おてつたび参加者の63.6%がおてつたび参加前に「宿泊業に関わりがない」と回答し、34.9%が「宿泊業に従事したことがある」と答えた。これにより、宿泊業未経験者が多いことが確認され、「おてつたび」が新たな観光人材の発掘に寄与していることが示された。また、参加者の67.6%が「宿泊業に対する興味・関心が高まった」と回答し、「おてつたび」を通じて宿泊業の仕事に対する関心が広がっていることがわかった。
(株式会社おてつたびの資料を基に作成)
さらに、参加者に対して一度関わった宿泊施設についての感想を尋ねたところ、79.6%が「また働きたい」と答え、72.2%が「お客さんとして利用したい」、68.6%が「施設の魅力を発信したい」と回答した。これにより、「おてつたび」が単に働く場を提供するだけでなく、リピーターやファンを生む効果を持っていることが確認された。
「おてつたび」は、未経験者が観光業界に関心を持ち、実際に宿泊業で働くことで、業界に足を踏み入れるきっかけを提供している。この取り組みは、観光業に携わったことがなかった人々にも、業界への興味を持たせる役割を果たしている。こうした活動を通じて、観光業界全体の人材育成や裾野の拡大を目指している。
(出典:株式会社おてつたび)
「おてつたび」は、人手不足に悩む宿泊業や農業を中心とした地域事業者と、働きながら旅を楽しみたい旅行者を結びつけるサービスである。旅行者は現地までの交通費を自己負担するが、働くことで報酬を得られ、旅行の経済的な負担を軽減できる。また、地域の人々と交流することで、地元の文化や暮らしを深く体験することができる。一方、事業者は、全国から働き手を集めることができ、働き手が空き時間に地域を観光することで地域経済の活性化にも寄与することが期待される。
「おてつたび」の参加期間は1泊2日から最長2ヶ月まで多様であり、参加者の平均滞在期間は14日間となっている。2025年2月現在、登録ユーザー数は6.8万人を超え、実際の参加者の約半数がZ世代である。
実際に宿泊施設で「おてつたび」を導入した事例では、参加者が施設のファンとなり、リピーターとして再訪するケースが多く見られる。北海道の紋別プリンスホテルでは、参加者が何度も訪れるようになり、施設の魅力を広める重要な役割を果たしていると報告されている。また、和歌山県の「碧き島の宿 熊野別邸 中の島」では、人手不足が劇的に解消され、地域に確実に働き手を集めることができたという。