2020年の東京オリンピックに合わせて、現在東京では大規模なホテル建設ラッシュが繰り広げられている。新規ホテル計画の延床面積は280万m²を超え、実に東京ドーム61個分の面積がホテルに生まれ変わる計算だ。
延床面積1万m²超の計画は江東区、港区がトップ
2020年に東京オリンピックを控える東京都では、現在、空前のホテル建設ラッシュが起っている。また、新規ホテル建設の計画数の多さもさることながら、大規模ホテルの建設が多いことも東京都における新規ホテル計画の特徴だ。
というのも、2015年から2017年10月までに東京都で計画が発表された新規ホテル計画は、実に222計画に上る。そして、222計画のすべての延床面積※を合計すると、286万2,852m²になり、この面積は東京ドーム61個分になる計算だ。また、メトロエンジンリサーチによると、このうち36計画が延床面積が1万m²を超える大規模ホテル計画である。
※ここでの延床面積はホテルを含む複合施設全体の延床面積を含む数値。
出典:メトロエンジンリサーチ
それぞれの施設を行政区ごとに見てみると、1位は江東区、港区でともに8計画である。以下、3位が中央区で7計画、4位が新宿区と続いている。
注目したいのは、東京都内屈指の繁華街やビジネス街を抱え、古くからのホテル激戦エリアとして知られた港区、中央区、新宿区に比べ、、江東区はその例に当てはまらないことである。しかし、江東区で大規模ホテル計画が活発なのには、それなりの理由がある。
まず第一に2020年の東京オリンピックの開催予定地に近いことが挙げられる。江東区内で予定されているオリンピック競技は以下の通りとなっている。
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オリンピック競技 | 開催場所 |
水泳 | オリンピックアクアティスセンター |
水球 | 辰巳国際水球上 |
アーチェリー | 夢の島公園 |
カヌー | 海の森水上競技上 |
自転車競技(BMX) | 有明BMXコース |
総合馬術 | 海の森クロスカントリーコース |
ボート | 海の森水上競技上 |
スケートボード スポーツクライミング |
青海アーバンスポーツ会場 |
テニス | 有明テニスの森 |
バレーボール(インドア) | 有明アリーナ |
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現在までのところ、これだけの競技が江東区内で予定されている。ホテル建設を手がける各企業ともにオリンピックの観客を取り込むために、江東区内に大規模ホテルを建設しようとしていることが分かる。
また、現在は当面の延期が発表されたが、築地市場の江東区豊洲への移転も大きな要因になっていることは想像に難くない。築地市場は外国人観光客にも人気のある観光スポットとして知られているが、移転されれば相当数の観光客が豊洲へ流れることが予想される。
早朝に取引が行われる水産卸売市場を見学しようとすれば、電車やバスなどの公共交通機関は使えない。必然的に徒歩圏内にホテルが必要になるというわけだ。
加えて「ワイルド7」や「ラストクリスマス」など数々のドラマや映画のロケ地であることからも国内観光客の集客も予想される。
大規模ホテル建設ピークは東京オリンピック直前
出典:メトロエンジンリサーチ
メトロエンジンリサーチによると、ほとんどのホテルは2020年7月に予定されている東京オリンピックの開会式前に工事の完了を予定している。1万m²以上の大規模ホテル計画全36計画のうち、33計画が2020年7月までに工事の完了を予定している。
この傾向は何も大規模ホテルに限ったものではない。現在東京都で計画が発表されている新規ホテル計画(約220計画)そのうち、2020年7月以降を工事完了予定日にしているのは、2020年10月に1件、2021、2025年、2027年にそれぞれ1件ずつのわずか4件しか発表されていない。
もちろん、これから2020年以降の新規ホテル計画が発表される可能性は十分あるが、現在のようなホテル建設ラッシュはひとまず小康状態になると見られている。2027年には東京-名古屋間のリニア新幹線開通など、ビッグプロジェクトも控えているが、各ホテル開発業者ともに様子見というのが正直なところだろう。
そういった意味で2020年は、日本が観光立国としてこの先発展していけるかどうかが試される重要な契機となる年と言えるのではないだろうか。
観光庁が11月29日付で発表した、「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると外国人旅行による取扱総額は前年比114%と大きく伸びている。インバウンドはまだまだ増える傾向にあるということだ、オリンピックだけでなく観光資源をいかに使ってこの国を盛り上げて行くのか、今後の動向に注目が集まる。