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【取材】老舗の記憶を引き継ぐ無人ホテル「KANSEI null 佐賀」開業

投稿日 : 2026.01.28

新規ホテル情報

40年以上にわたり佐賀の街で親しまれてきた「ビジネスホテル一条」が、無人ホテル「KANSEI null 佐賀」として2025年12月20日に開業した。運営・事業再生を担うのは宿泊施設開発の株式会社オルカ。「壊す」よりも既存の価値を掘り起こす手法を掲げる。

レンガ造りの外観やステンドグラス、アンティーク家具などの意匠を残しつつ、“視覚”を軸に空間を再編集したという。地域の記憶を継ぎながら、干渉の少ない滞在体験をどう提示するのか。ホテルの象徴となる「時計台」、2月27日(金)に開催されるセレモニーも含め、街とともに育つホテル像が注目される。

本記事では、「KANSEI null 佐賀」開業の経緯や施設のこだわりなどについて、株式会社オルカに取材した。

公式サイト:https://null.saga.hotel-kansei.com/

―――「ビジネスホテル一条」を引き継ぐことになった背景と、引き継ぎ時点で“残すべき価値”だと判断した要素を教えてください。

▲外観

ビジネスホテル一条を引き継ぐことを決めた大きな理由は、この建物が持つ独特の佇まいと、長年にわたり積み重ねられてきた時間の厚みにありました。レンガ造りの外観や、西洋建築を思わせる意匠には、現在のホテルではあまり見られない静かな品格があり、「新しくすること」よりも「すでにある価値を丁寧に読み解くこと」に可能性を感じました。

引き継ぎの時点で残すべきだと判断したのは、建物の骨格や素材感だけでなく、アンティーク家具やオーナーのご家族が描かれた美しい絵画、そして街に自然と溶け込んできた距離感そのものです。ここには、過度に主張しないからこそ生まれる落ち着きがあり、それこそが最大の価値だと考えました。ホテルに時計台をつけた背景もそこにあります。

―――今回の再構築で、「壊すのではなく“価値をひらく”」を実現するために、具体的にどんな工夫や取り組みをしましたか?

▲ラウンジ

今回の再構築では、大きく壊したり作り替えたりすることは極力行わず、「素材の良さに光を当てる」ことを意識しました。既存の間取りやレンガの質感、西洋風の空間構成はそのまま活かし、照明の当て方や色温度、視線の抜けを調整することで、空間の印象を活かしています。

また、館内には以前から使われていたアンティーク家具や絵画も残しており、新しい要素と混ぜるのではなく、時間の積層として自然に存在させることを大切にしました。足し算ではなく引き算によって、空間そのものが持つ魅力を“ひらく”ことを目指しています。

▲ビジネスホテル一条のアート

―――KANSEIと連携し“視覚”を軸にした体験設計で、特に重視したポイントを教えてください。

WellbeingなホテルブランドKANSEIと連携する中で重視したのは、「視覚を刺激する」のではなく「視覚を通して、心の余白をつくる」体験です。色数や情報量を抑え、レンガやアンティーク家具が持つ素材感、西洋的な空間の奥行きが自然に目に入るよう設計しました。

▲廊下のアート

サインや案内も最小限にし、何かを強く見せるのではなく、見すぎないことで感覚が内側に向いていく状態をつくることを意識しています。客室に塗り絵を置いているのも、自分の思うままに色を決めるという心と視覚へ意識を向けることで、思考や呼吸もゆっくりと落ち着いていく、その入口となる体験設計を大切にしました。

▲廊下のアート

―――無人ホテルとして運営するにあたり、宿泊者が自分のペースで快適に過ごせるよう、どのような工夫をされていますか?

▲スイートルーム洋室・リビング

無人ホテルであることは、サービスを減らすことではなく、宿泊者の時間や感覚に介入しすぎないための選択だと考えています。チェックインからチェックアウトまでの導線は直感的に分かるよう設計し、説明を読まなくても使える仕組みを整えました。

▲客室Vienna blue

一方で、必要なときにはすぐにアクセスできるサポート体制も用意しています。人の気配が少ないからこそ、空間やアンティークの存在、光や影に意識を向けながら、自分のペースで過ごしていただける環境を目指しました。

▲客室和室Siena Zen

―――「KANSEI null 佐賀」を、今後どんなホテルに育てていきたいですか?そのために地域の方々と、どのような関わり方をしていきたいとお考えでしょうか。

KANSEI null 佐賀は、この建物が持つ西洋的な佇まいと、佐賀という土地の空気が重なり合うことで生まれる独自の時間を大切にしながら、訪れるたびに新しい発見があるホテルへと育てていきたいと考えています。滞在そのものだけで完結するのではなく、佐賀の街や文化、人の魅力へと自然につながっていく拠点でありたいという思いがあります。

今後は、地元のクリエイターや学生、作り手の方々と連携し、アートや表現、ものづくりなどを通して、この場所ならではの体験を共につくっていきたいと考えています。ホテルが一方的に何かを発信するのではなく、地域と呼吸を合わせながら、佐賀の魅力を丁寧に伝えていく存在として、時間をかけて育てていけたらと思っています。

■ホテル概要

名称:KANSEI null 佐賀(カンセイ ヌル サガ)
所在地:〒840-0813 佐賀県佐賀市唐人2丁目6-23(JR佐賀駅から徒歩9分)
開業日:2025年12月20日(土)
客室数:18室
公式サイト:https://null.saga.hotel-kansei.com/

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