長野県・野沢温泉村のメインストリートで、空き家となっていた築約100年の木造旅館が、ブティックホテル「mont(モン)」として再生された。手掛けたのは、地方創生スタートアップ株式会社NEWLOCALのグループ会社である「株式会社野沢温泉企画(以下、野沢温泉企画)」。
コンセプトに据えたのは、雪解け水が温泉となって還り、ブナが祭りの火を灯す――村に息づく「循環」だ。館内には薪火グリラーのレストランや、土壁や梁を生かした全10室を備え、観光拠点であると同時に文化の“入口”となることを目指す。地域再生の第3弾として、宿は2026年1月19日にグランドオープンした。
本記事では、「mont」開業の経緯やこだわりなどについて、野沢温泉企画に取材した。
公式サイト:https://mont-nozawaonsen.com/
―――今回、野沢温泉村の中心地にある築約100年の元旅館をフルリノベーションしてブティックホテル「mont」を開業されています。数ある取り組みの中で、この建物に取り組むことにした理由を教えてください。

野沢温泉企画:
一番大きいのは、地域のシンボルでもある「遊休資産」を再生しながら、村の景観や歴史を次の世代へ継承していきたい、という思いです。
野沢温泉村の中心地に位置し、築約100年にわたって村の歩みを見守ってきたこの建物は、まさに象徴的な存在でした。
私たちは、こうした「遊休施設」を負の遺産にせず、地域の誇りとして再生させることが、村の持続可能性に直結すると考えています。壊して新しく作るのではなく、刻まれた時間を活かしながら「ブティックホテル」という新たな価値を吹き込むことで、観光地の強化と、歴史ある村並みの保存を両立させる。
これが、野沢温泉企画が掲げる「次の世代へ引き継ぐ仕組み」の体現であると考えています。
―――テーマの「火と水」についてですが、薪火レストランと、客室で楽しめる野沢の湧水などを含めて、なぜこの2つをテーマに選んだのか、そして滞在の中でどんな形で現れているかを教えてください。

野沢温泉企画:
「火」と「水」は、野沢温泉のアイデンティティを象徴する要素だと思っています。たとえば、日本三大火祭りの一つとも言われる「野沢温泉の道祖神祭り」は“火”の象徴ですし、村の至るところから湧き出る水や温泉は、まさに“水”の象徴です。この2つは、村の生命線です。
滞在の中での表れ方としては、まず「火」。1階の薪火レストランでは、原始的な「火」を囲むことで、単なる食事を超えた温もりや交流が生まれる場にしたいと考えています。
そして「水」。全客室で楽しめる野沢の湧水は、この土地の恵みを五感で味わう体験そのものです。
薪がはぜる音や、湧水の清らかさに触れることで、野沢温泉という土地が持つ根源的なエネルギーを体感していただけるような設計にしています。

―――コンセプトの「山からの恵みが循環し、巡る場所」について、montとしてこの言葉に込めた意味を、差し支えない範囲でご説明いただけますか。
野沢温泉企画:
ここで言う「循環」は、エコロジー(資源)の循環と、経済(事業)の循環、その両方を指しています。豊かな山から届く雪解け水が温泉になり、田畑を潤し、また山へ還っていく。
そうした自然のサイクルに、私たちの経済活動や文化も調和させたい、という願いを込めました。
「mont」は、単なる宿泊施設ではなく、村外から訪れる人のアイディアや活力が、村の伝統や資源と混ざり合い、新しい価値となって再び村へ、そして世界へと広がっていく「循環の拠点」を目指しています。
たとえば、古い建物を再利用し、地元の食材を薪火で調理し、その利益を村の課題解決に還元する。
この一連のプロセスそのものが「巡り」であると考えています。
―――1階のレストランは全22席で、宿泊者以外も利用できる形にされています。宿の中に“外から入れる場所”を設けた理由と、どんな使われ方を想定しているかを教えてください。

野沢温泉企画:
境界線をなくして、村人と旅人が交わる「コミュニティのハブ」になってほしい、という思いがあります。
私たちはホテルを、宿泊者だけの閉ざされた空間にしたくありませんでした。
野沢温泉の最大の魅力は、外湯(共同浴場)に代表される、村人と旅人が自然に混ざり合うオープンな文化にあります。レストランを街に開くことで、地元の人が日常的に訪れ、そこに旅人が加わり、会話が生まれる。そんな「村の新しいリビングルーム」のような使われ方を想定しています。
外から入れる場所があることで、ホテルが村のコミュニティの一部として溶け込み、真の意味で地域に根ざした施設になると信じています。
―――最後に、「mont」を野沢温泉村の魅力への「入口」にしたいというお考えについて伺います。滞在を通じて、お客様にどんな体験につながってほしいか、期待することを教えてください。

野沢温泉企画:
「mont」での体験が、点としての宿泊にとどまらず、外湯巡りや街歩きという“線”になって広がり、最後にはこの村への愛着という“面”に育ってほしいと思っています。
「mont」での滞在が、野沢温泉という深い物語の「最初の1ページ」であってほしいと願っています。
ここで薪火の料理を楽しみ、湧水で喉を潤したお客様が、その心地よさを携えて、外湯巡りへ出かけ、村の細い路地を歩き、商店のおばちゃんと話し、山の空気を吸い込む。
私たちが期待するのは、チェックアウト時に「素敵なホテルだった」だけでなく、「この村が大好きになった」「またこの村に帰ってきたい」と感じていただくことです。
「mont」を入口に、野沢温泉の多層的な魅力に深く没入し、この村の持続可能な未来を共に想ってくれる「関係人口」の一員になっていただければ、これ以上の喜びはありません。
■ 施設概要
施設名:mont(モン)
公式サイト:https://mont-nozawaonsen.com/
所在地:〒389-2502 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷9521-1
アクセス:電車・バスの場合北陸新幹線:東京駅~飯山駅(約1時間50分)
バス(飯山駅~野沢温泉中央ターミナル/約30分)
車の場合:野沢温泉村内の駐車場をご利用ください。
客室数:全10室(クイーン 2室/ツイン 4室/ダブル 4室)
付帯施設:1Fレストラン(全22席:宿泊者以外も利用可)
運営:株式会社野沢温泉企画
■ ご予約について
宿泊予約:https://www.chillnn.com/198658d72122d1
レストラン予約:https://www.tablecheck.com/ja/mont/reserve