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【取材】越前和紙を体感する宿「SUKU」誕生!産地に泊まる新たな旅の形

投稿日 : 2025.11.06

福井県

新規ホテル情報

越前和紙の里・福井県越前市今立に、伝統工芸を肌で感じる宿「SUKU(スク)」が誕生する。一般社団法人SOEが運営するこの宿は、「紙を漉く」と「宿る」という意味を重ねた名の通り、越前和紙の文化と美意識を暮らしの延長で体感できる場所だ。

3室のみの静かな空間には、和紙職人16名による壁紙や障子があしらわれ、客室ごとに原材料の名を冠したアートが彩る。地元食材を生かした創作フレンチの食事や、紙漉き体験、和綴じワークショップなどを通して、1500年続く産地の技と精神に触れられるのが魅力だ。

開業は2025年11月9日(日)、宿泊予約は10月10日(金)より受付開始。クラウドファンディングも同日スタートしている。

本記事では、「SUKU」の魅力やこだわりなどについて、一般社団法人SOEに取材した。

▷WEBサイト | https://craftinvitation.jp/suku/
▷クラウドファンディングURL:https://camp-fire.jp/projects/884162/view

―――「SUKU」という名前には「紙を漉く」と「宿」という意味が込められているとのことですが、この宿名に込めた想いや、宿のコンセプトをどのように定義されていますか。

「SUKU」という名前には、越前和紙の原点である「紙を漉く(すく)」という営みと、「宿(スク)」という場の意味を重ねています。

和紙作りの最も根源的な行為である「すく」ことを見て、体験していただく滞在を通して、和紙づくりの精神や手仕事の美しさにふれる時間をお過ごしいただきたいと考えています。

―――越前和紙の職人16名と協働して空間をつくられたとのことですが、職人との関わりや素材選びの過程で印象に残っているエピソードをお聞かせください。

レセプションの空間には16社の多様な白い和紙を張り込んでいます。

印象に残っているのは、職人の皆さんが本当に協力的だということ、そして「白い和紙」一つをとっても数えきれない多様な種類があるということです。

量や質だけでなく、「漉けない和紙はない」と言われるほど、越前は日本で最も種類の多く漉ける産地ということを実感しました。

―――宿全体で越前和紙の伝統と進化を体感できるとのことですが、特に「ここを感じてほしい」という見どころやデザイン上の工夫があれば教えてください。

▲客室:楮 リビングスペース

越前和紙の伝統的な使い方としての障子や壁紙だけでなく、和紙の繊維の強さや表情を活かした家具や建材として取り入れています。

たとえば、洗面カウンターは「落水」という水玉模様になる技法の和紙の上に、漆を塗ることで手触り感の表情のあるカウンターに仕上がりました。

また、残置されていた箪笥に和紙と柿渋を用いて新たな家具として生まれ変わらせたもの、アルミやアクリルに和紙を張り込むことで和紙の繊維を通した柔らかな光が広がる空間になっています。

その他にも、茶缶やファイル、コースター、トレーなど、和紙の多彩な表情を楽しめるアイテムを各所に取り入れています。

―――滞在中の体験プログラム(和紙漉き・和綴じワークショップなど)は、どのような狙いで企画されたのでしょうか。また、体験を通して宿泊者にどのような気づきや変化を感じてもらいたいとお考えですか。

宿泊者には、本物の職人のリアルな現場での工房見学や産地ツアー、職人体験など、宿泊施設の近隣の工房への周遊をお勧めしています。

1500年以上前から始まったこの地の和紙漉きという生業が、今も生活と共に営まれている生きた産地である神秘さや、そこにいる職人の想いに触れることで、普段何気なく見ていたモノの見え方や選び方が変わるような体験になると嬉しいです。

また、その感動や経験を私生活にも持って帰っていただけるよう、宿泊施設内のワークショップをご用意しております。たとえば、「和綴じワークショップ」では、多様な工房の和紙の中から選んだ和紙を表紙に、和紙のノートを綴っていただけます。

日常に帰ってからも思い出していただき、そして日々使えることの身近さや心地よさを感じていただきたいです。

―――「産地に泊まる」という新しい旅のかたちを通じて、地域や工芸産地にどのような変化や循環を生み出していきたいと考えていますか。

▲客室:三椏 ベッドルーム

来訪いただく方には、見て楽しむ観光だけではなく、この地域の人や手仕事、その背景を体感いただくことによって新たなものの見方や気づきを得て、地域との関わりを深めていく滞在をしていただきたいと思っています。

SUKUが地域の玄関口となり、周辺の工房を訪れ作り手やものづくりの背景に直接触れることで、産地に再び訪れるファンや、移住者や、仕事やプライベートでのつながりが増え、国内外に工芸の需要や認知度が高まり、未来の職人や地域の担い手が増えるような循環が、地域の持続性につながればと考えています。

■施設概要

名称:越前和紙を体感する工芸宿「SUKU」
所在地:福井県越前市岩本町13-4-1
アクセス:北陸新幹線越前たけふ駅より車で約10分
客室数:3部屋
開業日:2025年11月9日(日)
予約開始| 2025年10月10日(金)
お問い合わせ| suku@craftinvitaion.jp
WEBサイト | https://craftinvitation.jp/suku/
運営| 一般社団法人SOE
意匠設計| zelt 柴山 修平
ディレクション| TSUGI llc.
構造設計|クレヨン 建築設計事務所 柴田 叔之
建築施工|水上建設
和紙制作|越前和紙産地事業者16社
家具製作|閃/三国提灯いとや/マルイチセーリング/井上徳木工
施工協力|丸山表具店/丸廣意匠/堀田カーペット
写真|Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)

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