インバウンド需要を取り込むために、魅力的なプランや商品を開発しても、その存在を知らせることができなければ集客にはつながらない。効率的かつ効果的な広報戦略を考える上では、訪日外国人が日本滞在中にどのような媒体を通して日本の情報を集めているのかを知ることは非常に重要だ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」から、訪日外国人の情報源に迫った。
日本滞在中に役に立った情報源を知ることの重要性
訪日外国人が年々増加している昨今、インバウンド需要を効率的かつ効果的に取り込むことができるか否かはホテル業界にとって、もはや死活問題と言っても良いほどの重要性を帯びている。訪日外国人が何を頼りに日本の情報を手に入れているかを知ることによって、訪日外国人の最新の動向を掴むことができることはもちろん、より効果的な広報戦略を打ち出すことができる。
スマートフォンが断トツでトップ、次いでパソコン
(表1)は、韓国、台湾、香港、中国からの訪日客に「日本滞在中に役に立った情報源」を尋ねた結果を示したものである。4カ国(地域)共通でトップだったのは「スマートフォン」だった。韓国70.2%、台湾71.8%、香港72.9%、中国66.5%と複数回答ながら圧倒的な回答率を記録した。
スマートフォンは各国の2位以下の回答率を大きく引き離しており、訪日外国人向けの広告戦略はスマートフォン抜きにして語ることができない状況になっている。ホテルの中には、「Webサイトは持っているがスマートフォン対応していない」というホテルも少なくはないだろうが、訪日外国人を効率よく集客するためには、スマートフォンに対応したWebサイトの構築は必要不可欠と言える。また、スマートフォン対応されているか、スマートフォンからのアクセスが多いかどうかは、広告出稿を考える際には、非常に重要な指針となるだろう。
ただし、スマートフォンだけに特化したWeb ページを作れば良いかというと、それも少し違うようだ。(表1)を見ると分かるように、「日本滞在中に役に立った情報源」に「パソコン」と応えた人が韓国(12.8%)台湾(17.8%)中国(13.4%)と「スマートフォン」に次いで2番目に多かったのだ。スマートフォンと比べると数字自体は低くなるものの、無視できる数字ではないことは明らかだ。集客を考える上では「Webサイト+スマートフォン対応」が最も有効と言えるだろう。
有料の旅行ガイドブックより無料のフリーペーパーが人気
紙媒体で旅行情報を集めるというと、従来は有料の旅行ガイドブックが一般的だっただろうが、これにも変化が訪れている。「有料の旅行ガイドブック」を日本滞在中に役に立ったと応えた人は、韓国3.7%、台湾4.1%、香港5.9%、中国4.6%だった。
対して、「無料のフリーペーパー」が参考になったと応えたのは、韓国6.4%、台湾12.8%、香港19.9%、中国12.1%、いずれの国でも有料の旅行ガイドブックの回答率を大きく上回っている。特に、中華圏(中国、台湾、香港)では10数%~20%弱と「パソコン」と匹敵する高い数字だった。有料の旅行ガイドブックと無料のフリーペーパーは、客層や用途が異なることも考えられるため一概に比較することは出来ないが、こと影響力に限って言えば、フリーペーパーに分があることが分かった。
調査結果から見える訪日外国人の情報源とは
この調査結果から、最新の訪日外国人向けのマーケティングを考える上では、スマートフォンが圧倒的な影響力を示していることが分かった。また、紙媒体では主流と考えられてきた有料の旅行ガイドブックの影響力が大きく低下し、その代わりに無料のフリーペーパーが影響力を高めている事実が浮かび上がってきた。
インバウンド需要を効果的に取り込むためには、こうした訪日外国人の情報源を詳細に分析し、効率的にPRしていくことが今後さらに重要になってくるだろう。