株式会社JTB総合研究所とCint Japan株式会社は共同で「旅マエ~旅ナカにおける訪日旅行者の行動変化と持続可能な観光への意識調査」を行い、その結果を公表した。この調査は、訪日旅行者の時間の流れに伴う情報収集や行動パターンの変化、及び持続可能性への意識を分析し、観光地への誘致のための方向性を明らかにするものである。
調査対象として13か国が選ばれた。これらの国々はアジアと欧米の地域から、訪日旅行者数が多い国として選定された。回答者はCintの「Insight Exchangeサンプル・マーケットプレイス」を通じて5991名(18~79歳の男女)が参加している。
その結果、13か国の旅行者全体において、出発前に旅程を「ほぼすべて決めていた」と回答したのは40.1%、さらに「大体決めていた」と回答したのが41.2%と、合わせて81.3%の旅行者が旅程を旅マエに概ね決定していることが明らかとなった。この傾向は旅行日数が増えるとやや低下するものの、31日以上の長期滞在者でも7割弱が旅程を決定している。
また、旅行形態に関しても、ツアーを利用しない個人旅行者は82.9%となり、ホテルと交通手段のみのパッケージツアー利用者よりも旅程を詳細に計画していることが示唆された。これは、訪問先の情報提供が旅の計画段階で非常に重要であることを示している。
「旅行先でしたいこと」に関する質問に対して、欧米の旅行者は「海外で話題のモノ」に、アジアの旅行者は「身近で話題のコト」に魅かれる傾向があることが示された。この結果を受け、各国や地域の特性に応じた情報発信が効果的であることが推察される。
日本国内の移動・滞在パターンに関して、最も多いのは「首都圏滞在型」の13.7%、続いて「近畿滞在型」の8.1%であった。特定の国や地域においては、特定の地域を好む傾向があり、例としてタイや台湾の旅行者は「北海道滞在型」を、韓国の旅行者は「九州滞在型」を好むことがわかった。
旅中に必要とする情報の変化についての調査結果からは、旅の進行に伴い情報ニーズが変わることが明らかとなった。旅の序盤では基本的な生活関連の情報が求められ、中盤では体験型の情報が、終盤では帰国に関連する情報が求められる傾向がある。
持続可能な観光に対する意識について、最も実践されている行動は「食品ロスの削減」であり、次いで「こまめな消灯」や「節水」が挙げられた。一方で「カトラリーの持参」はあまり行われていない。この結果から、観光施設や旅館におけるサービスの改善や提供方法の見直しが求められるだろう。
また、環境保護への意識が高まる中で、持続可能な観光のための取り組みや意識が、今後ますます重要となることが予測される。
この調査結果は、今後の観光地のプロモーションやサービス提供における方向性を示すものとして注目するべきといえる。特に出発前に旅行先や旅程をほとんど決めているという結果からは、いかに旅行前の情報提供で誘致ができるかが重要であることを示している。