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JNTO発表:2025年8月の訪日外国人数は342万8,000人、中国・台湾市場が牽引し前年同月比16.9%増

投稿日 : 2025.09.30

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観光庁/JNTO

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(出典:JNTO

日本政府観光局(JNTO)が発表した2025年8月の訪日外国人数は3,428,000人であり、前年同月比で16.9%増加した。8月として過去最高を更新し、初めて300万人の大台を突破したことになる。これは2024年8月の293万3,381人を49万人以上上回る水準であり、訪日需要が広範な地域で高まったことを示している。東アジア市場に加えて欧米豪や中東でもスクールホリデーに伴う季節需要が拡大し、複数市場で過去最高を記録したことが押し上げ要因とされる。

JNTOの資料を基に作成)

国別では、中国からの訪日客数が101万8,600人に達し、前年同月比36.5%増と大幅な伸びを示した。8月として過去最高を更新し、全市場の中で最も多い数値となった。新規就航や地方路線の復便、西安~福岡などの航空路線拡充に加え、クルーズ船の寄港やスクールホリデーによる長期休暇需要が回復を後押ししたとされる。韓国は66万900人で前年同月比8.0%増と堅調に推移したが、過去最高には届かなかった。金浦~中部、清州~神戸のチャーター便運航や既存路線の増便などが需要を下支えしたとみられる。台湾からは62万700人が訪日し、前年同月比10.0%増で単月として過去最高を更新した。台中~那覇や台北桃園~那覇などの路線拡充、チャーター便の運航が需要を支えたことが背景にある。

一方、香港は22万6,100人にとどまり、前年同月比8.3%減少した。地震報道の拡散や台風接近時の混乱による航空便への影響が要因とされ、短期的な調整局面に入った可能性がある。米国市場は19万4,500人で前年同月比11.7%増と増加し、中長距離市場として安定した伸びを示した。欧米豪や中東市場でも英国、フランス、ドイツ、オーストラリア、北欧地域、中東地域など計18市場で8月として過去最高を記録し、訪日市場の多極化が進んでいる。

こうした状況を2021年8月のデータと比較すると、その変化は一層鮮明である。当時の訪日外国人数はわずか2万5,900人に過ぎず、2019年同月比で99.0%減という壊滅的な状況であった。コロナ禍の入国制限や隔離義務、査証発給停止といった厳しい制約が背景にあり、市場はほぼ閉ざされていた。それから4年を経て、2025年8月には340万人を超える水準まで回復し、むしろ過去最高を更新するに至ったことは、観光需要が規制依存から供給拡充と季節要因主導へと完全に転換したことを物語っている。

この比較から見えるのは、市場構造の大きな変化である。2021年当時は制約下で市場自体が存在感を失っていたが、2025年はアジアのみならず欧米豪や中東でも確実に回復し、観光需要の多極化が進んでいる。特に中国市場は回復の加速が顕著であり、台湾や韓国も安定した需要を維持している。米国や欧州市場は距離の制約を克服して過去最高に迫る勢いを見せており、円安による価格優位性や航空路線の拡充が寄与していると考えられる。一方、香港市場には短期的な減速がみられ、市場ごとの差異も明確になってきた。

今後に向けては、中国と台湾の成長を確実に取り込むための受け入れ体制の強化、韓国・香港市場における需要喚起策の再検討、中長距離市場への一層のプロモーションが不可欠である。観光地の混雑緩和や地域分散型観光の推進、宿泊・交通インフラ整備を通じて、急速に増加する訪日客数に対応しながら質の高い観光体験を提供することが求められるであろう。

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