帝国データバンクの調査によると、2025年度の国内旅館・ホテル市場は、事業者売上高ベースで6.5兆円に達する見込みであり、前年度を上回り過去最高を更新する可能性がある。市場は4年連続で拡大しており、円安を背景とした訪日客の増加や国内の観光・出張需要の回復が主な要因とされる。
(出典:株式会社帝国データバンク)
業績が判明した約3800社のうち、32.4%が前年度比で増収となった。都市部や主要観光地では宿泊需要の増加により客室単価が上昇する傾向がみられたほか、地方においても訪日客による観光需要が一定の水準で推移した。運営面では、素泊まりプランの導入や宿泊料金に各種サービスを含めたプランの提供など、商品構成の変化も確認されている。
(出典:株式会社帝国データバンク)
都道府県別では、増収企業の割合が最も高かったのは東京都で54.1%となり、滋賀県47.6%、大阪府47.2%、沖縄県45.6%、京都府44.3%が続いた。近畿地方で増収企業の割合が高い傾向がみられ、2025年4月に開催された大阪・関西万博の影響により、同地域への観光客集中が需要を押し上げたとされる。また、宿泊料金の上昇を背景に周辺地域への需要波及もみられた。沖縄県においては、新規施設の開業やリゾート需要の回復を背景に観光需要が拡大し、一部施設では単価および稼働率の改善が確認されている。
一方で、減収となった企業の割合は2年連続で1割を超えた。主に地方や交通アクセスに課題を抱える施設では、訪日客需要の取り込みが限定的であったほか、価格引き上げによる需要減少への懸念からコスト増加分の価格転嫁が難しい状況がみられた。また、人手不足や新規開業施設の増加に伴う競争環境の変化も影響したとされる。
財務面では、2025年度における債務超過企業の割合は28.6%であった。2019年度の24.8%と比較して上昇しており、コロナ禍における需要減少期の借入増加が影響しているとみられる。2021年度には一時的に40%台まで上昇した後、改善傾向にあるものの、中小規模事業者を中心に借入依存の状態が継続している。
設備投資の面では、大手事業者を中心に新規開業や既存施設の改修、不採算施設の整理が進められている。一方で、資金余力に乏しい事業者や立地条件に制約のある施設では、老朽化した設備の更新が進んでいないケースもみられる。こうした状況から、事業規模や立地条件による差異が継続している。
今後については、訪日客数および旅行消費額が高水準で推移していることから、需要は引き続き堅調に推移する可能性があるとされる。一方で、原油価格の動向や航空運賃の変動など外部環境の影響も指摘されている。国内旅行においては物価上昇の影響により消費行動の変化が想定されており、事業者ごとの対応が求められる状況にある。