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訪日旅行は新たなステージへ:中国市場で広がる地方観光とコト消費

投稿日 : 2025.04.23

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インバウンド

訪日観光市場は、コロナ禍を経て新たな局面を迎えている。とりわけ中国からの訪日観光客については、「量的な」回復にとどまらず、旅行スタイルや消費行動といった「質的な」変化が顕著となっており、観光業界にとって重要な転換点となりつつある。中華圏に特化したデジタルマーケティング事業を展開する株式会社unbotは、この動向をもとに訪日インバウンド市場の最新の調査レポートを発表した。

(出典:株式会社unbot

中国人訪日客数は、2014年からの経済成長を背景に増加を続け、2019年には約959万人に達した。その後、新型コロナウイルスの影響により急減したものの、海外団体旅行の解禁や日中間航空便の再開により、2023年以降回復基調に転じている。2024年には年間約698万人を記録し、2025年1月には前年同月比135.6%増の約98万人と、コロナ禍前の水準に近づきつつある。

(出典:株式会社unbot

このような量的回復と並行して、中国人観光客の訪日行動には質的な変化も現れている。かつては東京や大阪といった三大都市圏での買い物を目的とした旅行が主流だったが、現在では地方観光地への関心が高まっている。2024年の外国人延べ宿泊者数の伸び率では、石川県が2019年比131.5%、愛媛県が107.4%、福島県が60.8%と大きく増加しており、いわゆるゴールデンルート以外の地域にも注目が集まっている。また、訪日回数を重ねた中国人旅行者ほど、都市部の訪問率は下がり、福岡、沖縄、滋賀などの地方エリアを訪れる傾向が強まっている。

(出典:株式会社unbot

消費行動の面でも大きな変化が見られる。観光庁のデータによると、訪日中国人旅行者の一人あたりの総消費額はやや減少しているものの、その内訳は大きく変わっている。2019年と比較して「買い物代」が18.4%減少した一方で、「宿泊費」「飲食費」「娯楽・サービス費」はいずれも増加しており、とくに娯楽・サービス費は+37.0%と大幅な伸びを示している。このことは、従来の“モノ消費”から“コト消費”への移行、すなわち爆買いから体験・満足度重視の旅行スタイルへの転換を裏付けるものである。

このように、訪日中国人旅行者の旅行スタイルは、都市から地方へ、モノからコトへと大きく変化している。2024年時点では中国市場の完全な回復には至っていないものの、訪日外客数全体が過去最高を記録する中で、その存在感は確実に再び高まりつつある。2025年には月間100万人の突破も目前とされており、観光業界にとって中国市場への再注目は避けられない状況にある。今後は地方観光地の魅力発信や、体験型コンテンツの充実など、質の高い受け入れ体制の整備が問われるフェーズに入っているといえるだろう。

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