(出典:JNTO)
日本政府観光局(JNTO)が発表した2025年10月の訪日外国人数は3,896,300人であり、前年同月比17.6%増となった。10月として過去最高を大幅に更新し、初めて380万人を突破した。これは2024年10月の3,312,193人を約58万人上回り、9月の3,266,800人からも増加している。紅葉シーズンの始まりと重なり、東アジアからの堅調な需要に加えて欧米豪や中東地域での回復が進み、訪日需要が広範な地域で拡大したことが背景にある。航空路線の増便や円安傾向が追い風となり、20の市場で10月として過去最高を記録したことが押し上げ要因となった。
(JNTOの資料を基に作成)
国別では、中国からの訪日客数が715,700人で前年同月比22.8%増と大幅に伸びた。国慶節や中秋節の連休効果に加え、上海や福州など地方都市からの増便が寄与したとみられる。韓国は867,200人で同18.4%増となり、清州~那覇の新規就航や釜山~新千歳間などの増便が需要を支えた。台湾は595,900人で同24.4%増と、地方路線の拡充や連休による旅行需要の高まりで過去最高を更新した。一方、香港は196,000人で同1.4%減となり、前年にあった重陽節の連休が今年は重ならなかった影響を受けた。
米国市場は335,700人で前年同月比20.6%増と好調を維持した。秋の旅行需要の分散傾向や円安の影響で、9月に続き過去最高を更新した。欧州ではドイツが56,000人(同29.2%増)、イタリアが29,400人(同17.3%増)、スペインが28,700人(同22.7%増)と高い伸びを示した。中東地域も27,900人(同33.8%増)と増加し、長距離市場全体で安定した回復傾向が見られる。
今回の結果からは、訪日市場の多極化が進んでいることが明確である。これまで中心であったアジア市場に加え、欧米豪や中東など中長距離市場の寄与度が上昇している。特に北米・欧州では直行便の拡充と観光需要の持続的回復が見られ、為替要因による価格優位性も奏功している。一方で、香港など一部地域では季節要因による一時的な減少が確認され、地域ごとの動向差が浮き彫りとなった。
今後は、堅調な回復が続く中国や台湾の需要を確実に取り込むとともに、需要が鈍化する市場への再アプローチが求められる。さらに、欧米豪や中東地域に向けた季節分散型プロモーションを強化し、年間を通じた安定的な需要の創出を図ることが重要である。観光客数の増加とともに、地方分散や受け入れ環境の質的向上を進め、持続可能な観光成長モデルの確立が今後の焦点となるであろう。