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ドンキ/ホテル開発でインバウンド需要の囲い込みへ【後編】

投稿日 : 2018.10.16

東京都

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ホテル開発に乗り出したドン・キホーテ。前編に続き、後編ではドン・キホーテのさらなるインバンド需要への戦略であるホテル事業への参入とその見通し、小売業のインバウンド需要囲い込み戦略についてお届けする。

渋谷・道玄坂複合施設に300室規模の宿泊施設

この度、ドン・キホーテはインバウンド需要の囲い込みを狙おうと新たな戦略に乗り出した。それが、ホテル一体型ドン・キホーテの開発だ。

ドン・キホーテは旧「ドン・キホーテ渋谷店」(東京都渋谷区)跡地とその周辺を再開発し、店舗や事務所、ホテルが一体となった複合施設「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」を建設すると発表した。

■「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」

出典:ドンキホーテHD

その複合施設は地上28階、地下1階、高さ120m、敷地面積5,737㎡、延べ床面積40,950㎡で、店舗部分は1階〜3階(3フロア)、ホテル部分は11階〜28階(18フロア)で客室は300室規模になるのだという。竣工予定は2020年4月だ。

渋谷道玄坂の宿泊概況

前編の「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」と同様に、「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」の半径2km圏内には、宿泊施設がどのくらいあり、訪日外国人の宿泊客国籍構成比がどのくらいなのかについて調査してみよう。

また、ここでは宿泊市場調査としてADR(平均客室単価)やエリア平均レビュースコアについても調査してみる。

「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」の半径2km圏内には、既存の宿泊施設が55施設(7,757室)、新規開業予定の宿泊施設が4施設(推定688室)ある(民泊を除く、2018年8月末現在)。

また、半径2km圏内にあるいくつかのホテル(調査対象は150室以上)の訪日外国人の宿泊客国籍構成比(レビュー投稿をもとに調査)TOP3を調査(対象期間2017年7月1日〜2018年6月30日)したところ、1位はアメリカ、2位は韓国、3位はオーストラリアだった。

■「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」の新規開業予定施設MAP

出典:メトロエンジンリサーチ

■「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」半径2km圏内の宿泊市場データ

出典:メトロエンジンリサーチ

■「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」周辺の宿泊客国籍構成比(一例)

出典:メトロエンジンリサーチ

小売でのノウハウをホテルで活用か

ドン・キホーテはこういった宿泊市場に「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」を建設し、ドン・キホーテ一体型としてホテル事業に参入することを発表したが、ホテル運営に関してノウハウが全くないわけでもない。

ホテル業界は決められた客室数(部屋タイプ)の中で部屋売りの最適化を常に考えており、地域特性やイベント、曜日、季節性などによって宿泊客の構成や価格を目まぐるしく変えている業界である。

前編の「ドン・キホーテ道頓堀御堂筋店」周辺ホテルと、「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」周辺ホテルの訪日外国人の宿泊客国籍構成比を見比べてみると、同じ期間で比較しても、地域やホテルによって訪日外国人の宿泊客の国籍は大きく異なっていることがわかる。

実はここに、小売業と似ている部分がある。

小売業は毎週のように販計というものが存在するが(日毎もある)、特にエンドやアイランドと呼ばれる売り場の最適化を常に考え、地域特性や催事、曜日、季節性などによって商品構成(在庫や発注量も含む)や価格を目まぐるしく変えていく慣習がある。

その中で、ドン・キホーテは圧縮陳列方式では全店共通だが、一方で、同一商品でも店舗ごとに価格が異なる権限移譲型方式を採用している小売チェーンで、ドン・キホーテのノウハウはここの応用が効きそうだ。

また、ドン・キホーテはホテル運営こそまだしていないが、ホテルと一体型になっているドン・キホーテはすでにあり、1つは「ドン・キホーテ水道橋」(東京都文京区)で「リッチモンドホテル水道橋」と一体型になっており、もう1つは「ドン・キホーテあべの天王寺駅前店」(大阪市阿倍野区)で「ヴィアインあべの天王寺」と一体型になっており、ホテルの宿泊客を直接取り込んできた実績もある。

ドン・キホーテがこれまでに実施してきた販計の結果である好調なインバウンド需要獲得のノウハウをみると、ホテル事業に新規参入とはいえ、これらのノウハウをホテル運営にうまく連動させ取り組むことができれば、競合との差別化がはかれ訪日外国人にとってもメリットは大きく「(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画」の稼働率やADR、レビュースコアを高い水準で維持できそうで、あとは宿泊市場の競合調査や価格設定の自動化が課題となるだろう。

ドン・キホーテはホテル一体型ドン・キホーテの開発に乗り出したことで、小売業から宿泊業へと新たなカタチに舵をきり、訪日外国人の買い物行動だけでなくインバウンド需要の入口ともいえる宿泊業からも訪日外国人の取り込みを狙っており、これはもはや、インバウンド需要の取り込みではなく囲い込みだ。

小売業によるインバウンド需要への戦略を考えると、地域やホテルによって宿泊客の構成が異なることから小売店ごとに周辺の宿泊市場に関するデータを活用しそれによって的確な訪日外国人向けの販計を実施することができればよりインバウンド需要への囲い込みにつながっていくであろう。

さらに免税制度との相乗効果も生まれる。

訪日外国人がホテル周辺の身近な場所で買い物をすることを鑑みると、訪日外国人を的確に捉えかつそのニーズに応えた商品でコンパクト買い物を実現してあげることが今後の宿泊業界と小売業界の活性化につながるかもしれない。

 

【合わせて読みたい】

ドン・キホーテが渋谷区道元坂で大規模開発計画

ドンキ/ホテル開発でインバウンド需要の囲い込みへ【前編】

 

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