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訪日外国人観光客(インバウンド)が急増している3つのワケ

投稿日 : 2018.01.29

インバウンド

ここ数年、史上最高を更新し続けているのは訪日外国人の数だ。2017年は11月までで約2,800万人もの人が日本を訪れており、5年前と比較すると実に3倍以上の伸びを示している。この訪日外国人数の急増には、大きく分けて3つの要素が考えられる。それぞれ見ていくことにしよう。

2015年にアウトバウンドがインバウンドを逆転
日本が観光目的でパスポートを持つことができるようになったのは、前回の東京オリンピックが行われた1964年のことだ。以来、日本人は観光目的でさまざまな国に渡航できるようになった。
日本では長らく、日本を訪れる外国人の数(インバウンド)より日本から外国を訪ねる人の数(アウトバウンド)の方が多いのが自然なことであった。例えば、日本がバブル経済に沸いた1988年は出国日本人数が約840万人だったのに対して、訪日外国人数は約230万人だった。
この傾向は1970年代からずっと続いてきた。この構図が変化したのは2015年のことだ。1970年以来45年ぶりに、訪日外国人数が出国日本人数を上回ったのだ。
 
2016年に史上初めて訪日外国人数が2,000万人を突破
長く続く景気の低迷により、出国日本人数はここ20年あまり1,500万人~1,700万人程度で推移している。それに対して訪日外国人数はこのところ右肩上がりで増えている。

出典:JNTO「訪日外客統計の集計・発表」

 
(表1)は過去5年間の訪日外国人数をまとめたものだ。これによると2012年に約830万人だった訪日外国人数は、5年後の2016年には約2,400万人にまで増えている。さらに、2017年は2,800万人を超えている。このように、わずかの間に訪日外国人数は約3倍以上に増えている。この急増には、3つの理由がある。
 
①ビザ要件の緩和やビザ不要国の拡大
まず第一にビザ要件の緩和や短期滞在にビザを必要としない国が増えていることが挙げられる。
日本を訪れる際には、パスポートのほかに査証(ビザ)が必要な国があり、それぞれの国によってビザの発給要件が異なる。国によっては、相応の経済力が必要だったり、身元保証人が必要だったり、手続きが煩雑だったりと日本に入国するまでに高いハードルが課されている。
日本政府は、ビザの発給に必要な条件をここ数年、次々に緩和している。2014年には、インドネシアのビザを免除し、フィリピン、ベトナムといった国々のビザ発給要件を大幅に緩和している。この結果、ビザ要件の緩和前と2016年とでは(表2)のように、どの国も訪日観光客数が大幅に増えている。

出典:JNTO「訪日外客統計の集計・発表」

 
また、世界一の人口を誇り、経済の目覚ましい発展が世界中から注目されている中国人へのビザ発給要件の緩和も見逃せない。日本政府は元々中国人のビザ発給に対しては、他の国と比べると非常に厳しい要件を要求していた。
例えば、2010年までは中国人の個人旅行に対してはビザの発給が認められず、ビザが発給されるのは添乗員付きの団体観光客に限られていた。また、厳しい収入条件、ガイドの付き添いなどの条件も求めていた。
中国に対するこうした厳しいビザ発給要件は、2010年と2015年にそれぞれ大幅に緩和された。その結果、2010年に約140万人だった中国人観光客は、2016年には約640万人にまで増えている。
なお、2017年7月現在、ビザなしで日本に短期滞在できるのは、アメリカや韓国、オーストラリア、フランス、ドイツなど68の国と地域に上る。
 
②円安により日本観光がしやすい環境に
ここ数年続く円安傾向も訪日外国人数が増えることに一役買っている。自国の通貨に対して円が安くなるということは、日本滞在に必要な費用が相対的に安く済むことになる。このことによって、これまでは滞在費用に不安があって日本旅行を諦めていた層も、訪日しやすくなっているわけだ。
 
円高・株安が顕著だった2010年は1ドル=90円前後、1人民元=13円程度が平均相場だった。ところが訪日外国人数が過去最高を記録している2017年になると、1ドル=110円前後、1人民元=17円前後まで円安が進んでいる。中国人観光客によるいわゆる「爆買い」が流行語にもなったが、その背景には円安という要素も大きく絡んでいるのだ。
 
③オリンピック開催や世界遺産登録による認知度の高まり
また、東京オリンピックが開催されることや富士山の世界遺産登録などで、日本への関心が高まったことも重要なポイントだ。日本各地にある世界遺産は、外国人観光客からの人気が高く、富士山のほかにも姫路城、法隆寺、厳島神社などは訪日外国人の人気が非常に高いスポットだ。
 
さらに、ユネスコの無形文化遺産に和食が登録され、日本の食に関する関心や認知度も近年特に高まっていることも大きい。和食を目当てに日本を訪れる外国人も増えており、観光庁が行った調査によると訪日外国人に対して「訪日前に期待していたこと(複数回答)」のトップが「日本食を食べること(67.9%)」だった。
 
官民挙げての訪日促進キャンペーンが実を結ぶ
訪日外国人客の増加傾向は、日本政府の努力が実を結んだ結果とも言える。政府は、2003年から訪日外国人数の拡大を目的に「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を官民挙げて推し進めてきた。この事業は主に日本の魅力を海外に発信することを目的としたものだが、事業のスタートから十数年を経て、着実に日本の認知度は高まっていると言えるだろう。
 
政府は、2020年までに訪日外国人4,000万人の新たな目標を設定した。今後はただ増やすだけではなく、日本を訪れる外国人により満足してもらえるような施策がより重要になってくるだろう。
 

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