京都府の客室数ランキング――京都市に宿泊施設が集中する理由と今後の展望

京都府の宿泊施設の大多数が京都市内に集中している事実がある。

本稿では、京都府内でも特に京都市内に宿泊施設が集まる理由を明らかにしていく。加えて、ここ数年変わりつつある京都の宿泊事情についても解説する。

 

京都市に集中する京都府の宿泊事情

米旅行雑誌の「Travel+Leisure」(トラベル・アンド・レジャー)が発表した「ワールドベストアワード2017」で9位の東京を抜いて世界4位に京都がランクインするなど、インバウンド客から京都の人気は高い。

京都人気に呼応するように集中するのが京都市内のホテル施設数だ。表1は、京都府内の客室数、宿泊施設数をまとめたものだが、トップ10のうち実に8自治体が京都市の自治体で占められている。トップ20まで範囲を広げてみても20自治体中12自治体が京都市内であることがわかる。

 

 

京都市下京区の宿泊施設数は全国第2位

客室、宿泊施設ともに京都市内に集中する傾向にある京都府の宿泊事情だが、中でも京都市下京区は客室数、宿泊施設数ともに他を引き離している。京都市下京区の宿泊施設数は442施設だが、これは日本全国の自治体の中でもトップクラスに大きい数字だ。

表2は、全国の自治体の宿泊施設数をまとめたものだが、これによると京都市下京区の宿泊施設数は、長野県白馬村の584施設に次ぐ2位となっている。下京区以外にも、京都市内ではほかに4に東山区、6位に中京区がそれぞれランクイン。つまり、京都市全体で考えると京都市は日本で一番宿泊施設を抱えている自治体であるということが言える。

 

京都市は小規模宿泊施設がメインの観光都市

また、表2で上位にランクインしている他の自治体に目を向けてみると、温泉やスキーを売りにした古くからの観光地が多いことが分かる。長野県白馬村、静岡県伊東市、神奈川県箱根町、栃木県那須町、岐阜県高山市といった自治体が特にそうだ。

こうした自治体は、小規模経営のホテルや旅館、民宿がといった宿泊施設が多い地域である。それを裏付けるようにこれらの自治体は宿泊施設数の割に、客室数が少ない。

表3は、全国の自治体の客室数をまとめたものであるが、先述した自治体はほとんど上位にランクインしていない。かろうじて京都市下京区が12位につけているくらいで、古くからの観光地、さらに東山区、中京区はトップ20の中には入っていない。

下京区にしても、宿泊施設数の割には客室数が多くないことから、京都市は温泉地などと同様に、小規模宿泊施設が軒を連ねる街と言えるだろう。

 

京都市の宿泊施設が小規模メインになる理由

年間の観光客数が5,000万人を超えるほどの観光都市である京都市内に大規模なホテルが少ないという事実が意外に映る人もいるのではないだろうか。確かに大規模なホテルを建設して、客室数を増やせばより多くの観光客に対応できるだろう。

しかし、京都市ならではの特殊な事情があり、大規模ホテルが建設しづらい状況がある。まず第一に、京都市は歴史的な建造物や古くからの町並みがあり、規模の大きいホテルを開発できる土地が少ないことが挙げられる。

さらに、京都市には世界一厳しいとも言われる景観条例があることも大きい。これは、建造物に対して高さ、容積率などを厳しく規制する条例で景観を守る上では画期的な条例だが、この規制通りに建設すると大規模な宿泊施設は立てづらいという難点が生じてしまう。

これまで京都市内には、外資系ホテルチェーンや大資本のホテルがあまり進出してこなかったが、その背景にはこういった京都ならではの事情があるわけである。

 

京都市の景観条例の一部が緩和

しかし、2015年11月に景観条例の一部が規制緩和された。例えば、これまで京都駅前エリアは20メートルを超えた建造物を建ててはならないという規制がかけられていたが、この規制が31メートルまで緩和された。また、容積率も従来の最大3倍まで認められるようになった。この京都市の方針の変更の大きな理由は京都市内の宿泊施設不足にある。

京都市の観光客は年間で5,000万人を超えているが、日本人客はほぼ横ばいなのに対して、外国人観光客数は右肩上がりに伸びている。京都市の調査によると、2016年に京都市を訪れた外国人観光客は約661万人、宿泊した外国人観光客数は約318万人を数える。

4年前の2012年の同調査では、京都市に宿泊した外国人観光客数は84万5,000人だった。わずか4年間で京都市に宿泊した外国人観光客数は約4倍に増えているというわけである。

外国人観光客の宿泊増に伴って今、京都で起きているのは深刻な宿泊施設不足である。この宿泊施設不足に対応するために、大規模ホテルが参入しやすいように景観条例の一部が緩和されたというわけである。

 

景観条例の緩和を受けて大資本が続々参入

この景観条例の一部緩和を受けて、京都市の宿泊事情も少しづつ変わっていくというのが大方の見方である。実際、規制緩和を受けて、三菱地所や三井不動産といった大手デベロッパーが京都市でのホテル開発に乗り出している。また、海外ホテルブランドも虎視眈々と京都の市場を狙っている。フォーシーズンズホテル、ハイアットリージェンシー、ザ・リッツ・カールトンといった世界的なホテルチェーンがこの数年で相次いで開業したほか、パークハイアットもホテル建設計画を発表している。

宿泊施設が増えれば、当然各ホテル間での生存競争が生まれる。京都市内に既存のホテルもこれからはサービスの差別化や、そのホテルに泊まるメリットをより強く打ち出していくことが必要になっていくだろう。