活況を呈している北海道・札幌市のホテル開発――その背景にあるものとは

北海道札幌市では近年、新規ホテル計画が続々と立ち上がっている。

本稿では、札幌市におけるホテル出店計画データを元に、札幌市でホテル開発が相次いでいる理由を探っていく。

札幌市中心エリアでホテル開発計画が続々と発表

近年、札幌市で新規ホテルの建築計画が続々と発表されている。とりわけ、日本有数の歓楽街のひとつである「すすきの」をはじめ、商業ビルが立ち並ぶ札幌市中心エリアの開発計画が相次いで発表されている。

下図は、札幌市で現在立ち上がっている、あるいはこれから立ち上がる新規ホテルの計画だが、これを見ると明らかなように17計画中14計画が札幌市中央区である。さらに住所を見ていくと、そのほとんどが札幌市中心エリアだということが分かる。つまり、札幌市のホテル開発は活況を呈しているものの、それは非常に狭いエリアでのもので、札幌市全体に波及しているものではないというわけだ。

札幌市中心エリアにおけるホテル開発が急増している背景には、近年の日本全体の傾向と同様に外国人観光客の増加がある。札幌市の発表によれば、2016年度に札幌市を訪れた外国人観光客は209万3,000人を記録しており、5年連続で過去最多を更新している。ちなみに2010年度は、62万人あまりに過ぎなかった。つまり、ここ5~6年の間に外国人観光客が3倍以上に増えたというわけだ。

札幌市は国内でも屈指の観光都市として知られ、日本人観光客ももともと多い土地柄である。これに加えて外国人観光客数の伸びもあり、札幌市では近年6~10月の観光ハイシーズンでは宿泊施設の確保が難しいという状況に陥っていた。これを解消するために、特に需要が高いエリアでホテル開発が相次いでいるというわけだ。

 

札幌市中心エリアに土地が余っているという側面も

先述したように、札幌市中心エリアのホテル開発が活況なのは、観光客の需要が高いという理由もあるが、土地が余っているという側面があることも無視できない事実である。1997年の北海道拓殖銀行の破綻をきっかけにした北海道経済の低迷により、手放された土地が札幌市中心エリアには数多く存在した。

そして、土地が余るということは当然、土地価格も下落していく。札幌市の地価平均はピーク時の1991年には58万4751円/m²だったものが、2017年は11万7584円/m²にまで下がっている。バブル経済崩壊直後と比較すると、全国的に土地の価格は下がっているものの、札幌市の値下がり率は全国でもトップクラスである。外国人観光客をはじめとした観光客数の増加と土地の価格の低下、それに目をつけたのがホテル開発業者だったというわけである。

札幌市のホテル開発業者はそのほとんどが東京に本社を置く企業だ。開発業者が発表されている17計画中、実に11計画が北海道外、9計画が東京の企業によるもの。近年、地方都市ではホテル開発に中央の大資本が参入してくるケースが目立つが、規模が大きい都市とは言え札幌市も地方都市のホテル開発の流れの中にあることが見て取れる。

 

札幌市の新規ホテルに目立つ異業種企業の参入

また、札幌市のホテル計画の特徴として、ホテル開発やホテル運営をメイン業務としていない、いわゆる異業種企業の参入が多い点が挙げられる。現在進行中のプロジェクトだけを見ても、学校法人高宮学園、株式会社北海道光健康社、中和石油株式会社、京王電鉄株式会社といった企業がそれにあたる。

学校法人高宮学園は日本でも屈指の規模を誇る大学予備校「代々木ゼミナール」を運営する企業である。株式会社北海道光健康社は、北海道内でデイサービスや整骨院を運営する企業だ。また、中和石油株式会社も道内企業で、北海道を代表する石油ディーラーであり、道内にガソリンスタンドを多数展開していることでも知られている。京王電鉄株式会社は、京王線で首都圏ではおなじみの電鉄会社である。

こうした異業種企業が参入する背景には、札幌市におけるホテル事業が他都市と比べるとリスクが低いという点が考えられる。先述したように、札幌市の土地の価格は平均値でもピーク時と比べると約5分の1程度の価格に下落している。また、札幌市は全国屈指の観光都市で外国人観光客も飛躍的に伸びている。

加えて、観光ハイシーズンには札幌市での宿泊が困難なほど、宿泊施設への需要が高い。これらを複合的に考慮すると、投資に対するリスクは比較的小さい土地と言える。メイン事業で転換期を迎えた企業や、さらなる収益事業を探している企業にとっては、札幌市でのホテル開発事業が魅力的に映ることは想像に難くない。

 

札幌市内のホテル事業の将来の展望は

札幌市のホテル開発はこれからも活況を維持するだろうというのが大方の見方だ。日本人観光客が安定的に多いことに加え、外国人観光客の増加傾向はこれからもしばらくのうちは続くと見られている。加えて、札幌市では2026年の冬季オリンピックの開催地として立候補している。もし冬季オリンピック招致が決定すればホテル開発はさらに大規模なものになるだろう。今後は、増えた観光客を札幌経済、北海道経済活性化にどのように紐付けていくかが、官民問わずより重要性を増していくのではないだろうか。