2017年の客室稼働率は全国平均で75%超―活況を呈するビジネスホテルの推移とは

ここ数年の外国人観光客の増加は、高級ホテルやシティホテルだけでなく、従来あまり観光客が泊まらなかったビジネスホテルにも大きく影響を与えている。2017年のビジネスホテルの客室稼働率は、全国平均でも75.41%という高い数字を記録するほど市場は活況を呈している。過去5年の客室稼働率の推移、さらに都道府県別の客室稼働率から見える、ビジネスホテル業界とは。

 

ビジネスホテルの客室稼働率は年々上昇している

ビジネスホテルと言えば、出張のサラリーマンが宿泊する宿泊に特化した低価格のホテルというイメージを持つ人も多いだろう。しかし、昨今では、従来のイメージを覆すような高級路線のビジネスホテル、レストランやバーなどが充実したビジネスホテルも続々と誕生しており、一般旅行客にも高い人気を得ている。

ここ数年の日本のホテルや宿泊施設の事情は、急増する外国人観光客を背景に客室稼働率が高止まりしている印象だが、ビジネスホテルの客室稼働率も大きく上昇している。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 

図は、観光庁の宿泊旅行統計調査のデータから全国のビジネスホテルの平均客室稼働率をグラフ化したものだが、これを見るとシーズンによって上昇したり下降したりを繰り返しながらも、全体として徐々に客室稼働率が上昇していることが分かる。具体的な数字で比較してみると、2012年の年間客室稼働率は67.31%だったのに対して、2017年は75.41%に上昇している。

また、この上昇傾向はシーズンを問わないことも分かっている。閑散期の1月で比較すると2012年は56.4%の客室稼働率だったが、2017年は65.6%に上昇している。さらに、繁忙期の8月では、2012年の稼働率は74.3%で2017年は80.2%だった。

 

2012年の客室稼働率の上位には東北勢がランクイン

表1は、2012年の都道府県別客室稼働率のトップ10をまとめたものだ。この表を見て意外に思う方も多いのではないだろうか。それは、トップの宮城県をはじめ、福島県、岩手県の東北地方の3県が上位にランクインしていることだ。

 

(表1)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 

この背景には、2011年3月に発生した東日本大震災がある。2012年は震災からの復興事業が本格的になってきた年だが、それに伴って、全国から震災復興作業員やボランティアが数多く東北を訪れた。こういった人たちの宿泊先としてビジネスホテルが選ばれたのだろう。

その証拠に2017年の3県の客室稼働率は宮城県71.87%、福島県69.56%、岩手県70.94%と2012年と比べると落ち着いており、この3県は都道府県別の客室稼働率ランキングでは上位20位にもランクインしていない。

 

2017年の客室稼働率は大阪府が東京都を抑えてトップ

次に、2017年の客室稼働率に目を移していきたい。表2は、2017年の客室稼働率のトップ10を示したものだ。2017年の客室稼働率はトップが大阪府、以下、東京都、京都府と続いている。この上位3位が高いレベルで競っており、1位の大阪府から3位の京都府まで1ポイント以下の差だった。

 

(表2)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」

 

また、この上位3都府は、ホテル業界の閑散期である1月を除けば、統計が発表されている10月まですべての月で客室稼働室80%以上を記録している。11月、12月の数字はまだ発表されていないが、例年の数字を考慮すると80%を超えてくると推測される。

さらに、この上位3都府の年間の客室稼働率の推移も非常に似通っている。3都府とも1月は70%台後半の客室稼働率で、春節(旧正月)がある2月に85%前後を記録。以降80%台後半を推移しながら5~6月に一度80%台前半まで客室稼働率は下降する。その後、ふたたび上昇し、秋の行楽シーズンまで85%前後を推移するというものだ。

 

大きく異なるのは、客室稼働率のピーク期である。大阪府の客室稼働率がピークを迎えるのは例年8月で、2017年は89.2%だった。対して東京都のピークは4月で89.6%、京都府も4月がピークで89.1%だった。このピーク期の違いから若干の客層や利用用途の違いを見出すことができるのではないだろうか。

大阪府は子どもの夏休みや企業の夏季休暇が集中する8月にピークを迎えることから、家族連れや団体客が多いということが推測できる。また、東京都は恒常的な観光客の多さもさることながら、企業の本社が多い東京都だけに、研修を受けるビジネスマンの単身での利用が多いことは想像に難くない。京都府は「4月が最も美しいシーズン」と言われるだけあり、数多くの観桜会や観桜祭が催されることで有名で、それを目当てにした観光客の利用が多いことが考えられる。

 

2017年は、東京都、大阪府、京都府以外にも季節によっては客室稼働率が80%を超える都道府県が続出している。さらに、2017年の8月は全国平均でも客室稼働率が80%を超えている。客室稼働率80%と言えば、宿泊予約が取りづらくなると言われる境目の数値である。従来、観光地であってもビジネスホテルは比較的予約が取りやすいと言われていたが、そうした構図はここ数年で完全に変わったと言っても良いだろう。