観光庁が2026年4月30日に公表した「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)によれば、日本人の国内旅行のうち45.8%が日帰りである。そして日帰り旅行の1人1回あたり単価は約2万円、宿泊旅行は72,412円。同じ1人が訪れても、泊まるか帰るかで地域に落ちる金額は約5万2,400円違う。本稿では、この「泊まらずに帰っている需要」が都道府県ごとにどれだけ厚いのかを2025年の確報値で定量化し、内部データの客室ストック・推定稼働率・推定成約ADRと突き合わせて、供給に余力がありながら日帰りが厚い20県を特定する。そのうえで、夜の滞在価値をどう作るかを、夕食プレミアムと曜日別の需給データから具体的に検討する。
本記事における指標の定義
- 宿泊転換度(泊/訪問):本稿独自の代理指標。分子=観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の日本人延べ宿泊者数(延べ宿泊者数-外国人延べ宿泊者数、施設所在地ベース、単位:人泊)。分母=観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)の【参考】都道府県別集計表による日本人訪問者数(訪問地ベース、単位:人回)。分子と分母は調査・単位・集計基準が異なるため、絶対水準ではなく県間の相対比較にのみ用いる。
- 訪問者数・消費単価:「旅行・観光消費動向調査」【参考】都道府県別集計表(全目的)。訪問者数には宿泊客と日帰り客の双方が含まれ、宿泊/日帰りの内訳は同表では公表されていない。消費単価には都道府県間交通費は含まれない。標本調査であり、県別標本サイズはN=152〜1,393。
- 客室稼働率(公式):観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値の客室稼働率(全国61.6%)。
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。本稿では2025年7月〜2026年6月の月次を平均した値を用いる。
- 推定稼働率(OTA掲載在庫ベース):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。本稿では2026年6月・7月の実績日を用いる。
- 掲載価格:OTA上で公開されている全プラン平均の価格(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。ADRとは異なる指標です。
- データ出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」/観光庁「宿泊旅行統計調査」/メトロエンジンリサーチ
Key Takeaways
- 2025年の日本人国内旅行は延べ5億5,313万人回。うち日帰りが2億5,316万人回=45.8%。1人1回あたり単価は宿泊72,412円に対し日帰り20,000円で、差は52,412円(3.62倍)。
- 都道府県別には宿泊/日帰りの内訳が公表されていないため、代理指標「宿泊転換度(泊/訪問)」を構成した。全47県で埼玉県0.328から沖縄県2.256まで6.9倍の開き、中央値は0.711。
- 宿泊転換度と訪問者1人あたり消費単価の相関はr=0.841(N=47)、突出値の沖縄県を除いた46県でもr=0.523。泊まる県ほど1訪問あたりの経済効果が大きいという関係は概ね保たれる。
- 宿泊転換度が中央値未満、かつ客室稼働率が全国平均61.6%未満の20県(7,114施設・317,787室)を「泊まりに変わる余地が大きい県」として抽出。
- 20県が中央値並みの宿泊転換度に達した場合の上限試算は年1,385万室泊。これは同20県の年間空室室泊7,248万室泊の19%にとどまり、既存の供給余力で吸収できる規模である。客室売上換算では約1,482億円(推定成約ADRベースの上限値)。
- 20県平均の推定稼働率は土曜90.3%に対し日曜79.5%(-10.8pt)。掲載価格も日曜は土曜の74%。泊まる夜が土曜1点に集中しており、転換余地は金曜・日曜・平日の夜にある。
- 同一施設内の比較では、朝食付から2食付にすることで1室あたり+6,585円〜+13,770円の価格差が観測される。夜の滞在価値は単価に直接載る。
全国では旅行の45.8%が日帰り — 泊まるか帰るかで1人5万2,400円の差
まず全国の姿を確認する。観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報、2026年4月30日公表)によると、2025年の日本人国内旅行の延べ旅行者数は宿泊旅行が2億9,997万人回、日帰り旅行が2億5,316万人回だった。合計5億5,313万人回のうち、45.8%が宿泊を伴わない。
金額で見ると差はさらに際立つ。旅行単価(1人1回あたり旅行消費額)は宿泊旅行が72,412円、日帰り旅行が20,000円で、その差は52,412円、倍率にして3.62倍である。観光・レクリエーション目的に限れば宿泊82,270円対日帰り20,416円で4.03倍まで開く。日本人国内旅行消費額は26兆7,845億円(前年比+6.5%、2019年比+22.1%)と過去最高圏にあるが、その内訳は宿泊旅行21兆7,211億円に対して日帰り旅行5兆634億円であり、人数では45.8%を占める日帰りが金額では18.9%にとどまるという非対称が生じている。
| 2025年(確報) | 宿泊旅行 | 日帰り旅行 | 差/倍率 |
|---|---|---|---|
| 延べ旅行者数 | 2億9,997万人回 | 2億5,316万人回 | 日帰り比率45.8% |
| 旅行単価(全目的) | 72,412円 | 20,000円 | +52,412円/3.62倍 |
| 旅行単価(観光・レク目的) | 82,270円 | 20,416円 | +61,854円/4.03倍 |
| 旅行消費額 | 21兆7,211億円 | 5兆634億円 | 構成比81.1%対18.9% |
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)よりホテルバンク編集部作成
宿泊旅行の単価72,412円のうち、宿泊費は18,205円(25.1%)にすぎない。残りは交通費18,447円、飲食費9,721円、買物代8,366円、娯楽等サービス費4,624円などである。つまり1泊の追加は宿にとって客室単価の獲得であると同時に、地域にとっては夜の飲食と翌朝の消費を生む。宿泊事業者とDMOが同じ数字を見る意味はここにある。
県別の日帰り比率は公表されていない — 発地ベースと着地ベースの粒度差
ここから県別に降ろすにあたって、まず統計の粒度を確認しておく必要がある。「旅行・観光消費動向調査」の全国値は、居住者を対象とした標本調査から得られる発地(居住地)ベースの旅行者統計であり、宿泊/日帰りの区分を持つ。一方、同調査が別途公表する【参考】都道府県別集計表は訪問地ベース(着地)で、47都道府県ごとの訪問者数と消費単価を示す。ただしこの参考表には宿泊/日帰りの内訳がない。同表の注記にも「本表の『訪問者数』には、宿泊客および日帰り客が含まれる」と明記されている。
したがって「県別の日帰り比率」は、この調査からは直接得られない。そこで本稿では、粒度の異なる2つの公的統計を組み合わせた代理指標を構成する。
宿泊転換度(泊/訪問)= 日本人延べ宿泊者数 ÷ 日本人訪問者数
分子は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年確定値の日本人延べ宿泊者数(延べ宿泊者数661,105,480人泊 − 外国人延べ宿泊者数179,922,130人泊 = 481,183,350人泊、施設所在地ベース)。分母は「旅行・観光消費動向調査」【参考】都道府県別集計表の日本人訪問者数(訪問地ベース)。
値が小さいほど「来訪はあるが泊まらずに帰っている」構造が厚い。
この指標は代理指標であり、いくつかの制約を明示しておく。第一に、分子は人泊(延べ泊数)、分母は人回(延べ訪問回数)であり単位が異なる。したがって「0.35泊」という値は「1回の訪問あたり平均0.35泊」という機械的な商であって、宿泊客比率そのものではない。第二に、2つの調査は標本設計も母集団も異なる。第三に、消費動向調査は標本調査であり、県別標本サイズは最小152(福井県)から最大1,393(北海道)とばらつく。単年の県別変動は標本誤差を含むため、本稿は2025年の断面を主とし、2024年・2025年の2ヶ年プール値を頑健性の確認に用いる。第四に、分子の宿泊統計はOTA掲載の有無を問わない全事業者ベースだが、後段で用いる客室ストック・ADR・推定稼働率はOTA掲載が確認できる施設に限られる。
それでもこの指標を使う価値はある。全47都道府県を、2025年という同じ最新確報年で、同じ定義で横並びにできる公表統計の組み合わせが他に存在しないからだ。共通基準による観光入込客統計を用いた分析は宿泊客比率を直接得られる一方、全国取りまとめが2022年年間値・20県分で終了しているという制約がある。その入込客統計ベースで宿泊比率を県別に並べた結果は泊まらず帰る観光客が9割超の県も — 宿泊比率20県ランキングと客室ストックにまとめており、両者は補完関係にある。
宿泊転換度は6.9倍の開き — 埼玉0.33、奈良0.35から沖縄2.26まで
47都道府県について宿泊転換度を算出すると、全国合計は0.746泊/訪問、47県の中央値は0.711となった。最小は埼玉県の0.328、次いで奈良県0.353、佐賀県0.432と続き、最大は沖縄県の2.256で、上下の開きは6.9倍である。石川県1.150、北海道1.083も1を超える。
次のチャートは、横軸に宿泊転換度、縦軸に「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率(2025年確定値)をとり、円の大きさを客室ストックとしたものだ。破線は中央値0.711と全国稼働率61.6%を示す。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値/メトロエンジンリサーチより、ホテルバンク編集部作成
左下の象限、すなわち宿泊転換度が中央値を下回り、かつ客室稼働率が全国平均を下回る領域が、本稿の言う「泊まりに変わる余地が大きい県」である。ここには20県が入る。右端には沖縄県(2.256・60.3%)・北海道(1.084・61.2%)が位置し、1回の訪問あたりの宿泊が全国で最も厚い一方、客室稼働率は全国平均をわずかに下回る。宿泊転換度・客室稼働率がともに高い右上の領域に入るのは東京都(0.841・76.3%)・大阪府(0.737・78.6%)・福岡県(0.833・72.1%)など大都市圏である。左上には埼玉県・愛知県・千葉県が入り、日帰りは厚いが客室稼働率はすでに全国平均を上回る。この3県は処方箋が異なるため、後段で分けて扱う。
この代理指標が実際に経済的な意味を持つかを確認しておきたい。宿泊転換度と、訪問者1人あたり消費単価(同じく都道府県別集計表)の関係をプロットすると、相関係数はr=0.841(N=47)である。ただしこの値は突出値である沖縄県(2.256泊/89,880円)に強く引かれている。沖縄県を除いた46県で再計算するとr=0.523、さらに北海道・鹿児島県・石川県を除いた43県ではr=0.346まで低下する。関係の向きは一貫して正だが、強さは対象の取り方に依存する点は割り引いて読む必要がある。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)【参考】都道府県別集計表/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値より、ホテルバンク編集部作成(N=47都道府県)
泊まりに変わる余地が大きい20県 — 7,114施設・317,787室の受け皿
宿泊転換度が47県中央値0.711未満、かつ客室稼働率が全国平均61.6%未満という2条件を満たすのは20県だった。メトロエンジンリサーチが稼働を確認できる施設ベースで、この20県には合計7,114施設・317,787室が存在する。
| 都道府県 | 宿泊転換度 (泊/訪問) | 訪問者数 (万人回) | 日本人延べ宿泊 (万人泊) | 消費単価 | 客室 稼働率 | 施設数 | 客室数 | 推定 成約ADR | 標本 サイズ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 奈良県 | 0.353 | 753 | 266 | ¥21,840 | 50.9% | 154 | 6,728 | ¥13,178 | 263 |
| 佐賀県 | 0.432 | 487 | 211 | ¥23,090 | 52.4% | 156 | 6,476 | ¥12,164 | 210 |
| 和歌山県 | 0.544 | 750 | 408 | ¥37,340 | 48.4% | 318 | 10,784 | ¥9,703 | 268 |
| 茨城県 | 0.546 | 1,275 | 696 | ¥17,790 | 54.1% | 305 | 18,215 | ¥6,951 | 371 |
| 愛媛県 | 0.571 | 663 | 378 | ¥32,360 | 57.2% | 253 | 14,307 | ¥6,931 | 317 |
| 兵庫県 | 0.578 | 2,494 | 1,440 | ¥28,080 | 61.1% | 710 | 32,678 | ¥13,255 | 909 |
| 栃木県 | 0.583 | 1,820 | 1,062 | ¥26,830 | 55.2% | 505 | 21,729 | ¥10,572 | 585 |
| 山梨県 | 0.584 | 1,230 | 719 | ¥27,290 | 43.8% | 541 | 14,720 | ¥11,749 | 414 |
| 島根県 | 0.588 | 564 | 331 | ¥33,530 | 54.2% | 239 | 8,708 | ¥10,396 | 292 |
| 群馬県 | 0.588 | 1,430 | 841 | ¥25,470 | 46.8% | 475 | 18,348 | ¥12,001 | 483 |
| 滋賀県 | 0.608 | 744 | 453 | ¥23,740 | 53.2% | 208 | 10,434 | ¥8,248 | 228 |
| 鳥取県 | 0.615 | 385 | 237 | ¥29,620 | 52.2% | 171 | 8,129 | ¥8,566 | 189 |
| 三重県 | 0.621 | 1,447 | 899 | ¥36,030 | 57.6% | 398 | 18,660 | ¥11,644 | 438 |
| 富山県 | 0.622 | 569 | 354 | ¥26,320 | 55.5% | 169 | 12,165 | ¥7,556 | 184 |
| 山口県 | 0.623 | 570 | 355 | ¥25,740 | 57.0% | 203 | 12,731 | ¥7,593 | 314 |
| 岐阜県 | 0.644 | 953 | 613 | ¥28,170 | 56.0% | 410 | 15,821 | ¥11,256 | 277 |
| 香川県 | 0.670 | 568 | 380 | ¥29,100 | 58.4% | 274 | 11,834 | ¥8,143 | 257 |
| 岩手県 | 0.675 | 756 | 510 | ¥24,590 | 54.9% | 266 | 16,166 | ¥7,192 | 269 |
| 静岡県 | 0.698 | 2,893 | 2,018 | ¥30,800 | 56.0% | 1,127 | 45,208 | ¥13,520 | 859 |
| 岡山県 | 0.707 | 731 | 517 | ¥21,510 | 59.2% | 232 | 13,946 | ¥8,315 | 344 |
表2|宿泊転換度の昇順。標本サイズは「旅行・観光消費動向調査」都道府県別集計表の県別標本数。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値/メトロエンジンリサーチより、ホテルバンク編集部作成
最も転換度が低いのは奈良県の0.353である。年間753万人回の日本人訪問者を集めながら、日本人延べ宿泊者数は266万人泊にとどまる。客室稼働率は50.9%(2025年確定値、以下同じ)と全国より10.7pt低く、施設数154・6,728室という客室ストックの規模自体も小さい。佐賀県0.432(487万人回・211万人泊・稼働率52.4%)、和歌山県0.544(750万人回・408万人泊・稼働率48.4%)、茨城県0.546(1,275万人回・696万人泊・稼働率54.1%/同上)が続く。
2024年と2025年をプールした2ヶ年値でも、上位の顔ぶれは概ね安定している。2ヶ年プールでの下位は奈良県0.333、埼玉県0.348、佐賀県0.494、山口県0.545、茨城県0.550、山梨県0.557の順で、単年の順位変動が大きい県(山口県は2025年単年で17位、2ヶ年で4位)があることも確認できる。標本の小さい県ほど単年値のぶれが大きい点は、表2の標本サイズ列とあわせて読んでいただきたい。
上限試算は年1,385万室泊・客室売上1,482億円 — 空室の19%で吸収できる規模
では、この20県が中央値並みの宿泊転換度(0.711泊/訪問)に達したとき、どれだけの需要が発生するのか。訪問者数を一定と置き、宿泊転換度の差分から追加の延べ宿泊者数を求め、それを各県の「1客室あたり宿泊者数」(宿泊旅行統計調査の延べ宿泊者数÷利用客室数)で除して室泊に換算した。全国平均では1客室あたり1.644人が宿泊している。この「客室1室あたり宿泊者数」を47都道府県で比較すると需給の余地が県ごとに大きく異なることは、「客室1室あたり宿泊者数」で読む47都道府県の需給余地で詳しく分析している。
| 都道府県 | 追加室泊 (万室泊/年) | 年間空室室泊 (万室泊) | 空室に対する 吸収率 | 客室稼働率 押し上げ幅 | 推定成約ADR | 客室売上換算 (億円/年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 兵庫県 | 201.8 | 634 | 32% | +12.4pt | ¥13,255 | 267 |
| 茨城県 | 150.0 | 440 | 34% | +15.7pt | ¥6,951 | 104 |
| 奈良県 | 147.4 | 168 | 88% | +43.2pt | ¥13,178 | 194 |
| 栃木県 | 130.6 | 507 | 26% | +11.5pt | ¥10,572 | 138 |
| 群馬県 | 100.1 | 568 | 18% | +9.4pt | ¥12,001 | 120 |
| 佐賀県 | 89.8 | 142 | 63% | +30.1pt | ¥12,164 | 109 |
| 三重県 | 82.9 | 441 | 19% | +8.0pt | ¥11,644 | 96 |
| 山梨県 | 72.0 | 589 | 12% | +6.9pt | ¥11,749 | 85 |
| 和歌山県 | 71.8 | 304 | 24% | +12.2pt | ¥9,703 | 70 |
| 愛媛県 | 61.6 | 217 | 28% | +12.2pt | ¥6,931 | 43 |
| 島根県 | 45.0 | 188 | 24% | +11.0pt | ¥10,396 | 47 |
| 滋賀県 | 45.0 | 250 | 18% | +8.4pt | ¥8,248 | 37 |
| 岐阜県 | 37.3 | 374 | 10% | +4.4pt | ¥11,256 | 42 |
| 山口県 | 35.7 | 201 | 18% | +7.7pt | ¥7,593 | 27 |
| 富山県 | 33.3 | 209 | 16% | +7.1pt | ¥7,556 | 25 |
| 鳥取県 | 22.9 | 146 | 16% | +7.5pt | ¥8,566 | 20 |
| 静岡県 | 22.5 | 1,047 | 2% | +0.9pt | ¥13,520 | 30 |
| 岩手県 | 19.2 | 325 | 6% | +2.7pt | ¥7,192 | 14 |
| 香川県 | 13.8 | 208 | 7% | +2.8pt | ¥8,143 | 11 |
| 岡山県 | 2.1 | 291 | 1% | +0.3pt | ¥8,315 | 2 |
| 20県合計 | 1,385.0 | 7,248 | 19% | — | — | 1,482 |
表3|年間空室室泊=推定客室ストック×365×(1−客室稼働率)。推定客室ストックは「宿泊旅行統計調査」の利用客室数÷客室稼働率÷365で算出。客室売上換算は追加室泊×推定成約ADRで、あくまで上限値の目安。
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値/メトロエンジンリサーチより、ホテルバンク編集部作成
出典:観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報)/観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値/メトロエンジンリサーチより、ホテルバンク編集部作成
20県合計の追加室泊は年1,385万室泊。これに対し同20県の年間空室室泊は7,248万室泊であり、追加需要は既存の空室の19%を埋めるにとどまる。つまり大半の県では、新規供給を待たずに現在の客室ストックで受け止められる計算になる。客室売上換算では約1,482億円だが、これは「訪問者数が変わらないまま宿泊転換度だけが中央値まで上がる」という理論上の上限であって、予測値ではない。仮にその1割が実現した場合でも年約148億円の客室売上が上積みされる。
ただし県ごとに事情は異なる。奈良県は吸収率88%、客室稼働率の押し上げ幅は+43.2ptに達し、理論上の転換を全て受けると稼働率は94%近辺まで上がる計算になる。これは実務的には成立せず、奈良県では需要転換と並行して客室ストックそのものの拡充が論点になる。佐賀県(吸収率63%・+30.1pt)も同様の性格を持つ。一方、山梨県(吸収率12%)、群馬県(18%)、静岡県(2%)、岐阜県(10%)は空室に対して余裕があり、需要側の設計に集中できる。
上限試算は単一の点推定ではなく、「どこまで到達するか」の幅で読むべき数字である。訪問者数を一定と置いたまま、20県の宿泊転換度が中央値との差をどれだけ埋められるかを到達率として置き、追加室泊と客室売上換算を比例で振り直したのが次の表である。到達率100%が前掲の理論上限にあたる。
| シナリオ | 追加室泊 (万室泊/年) | 年間空室に対する 吸収率 | 客室売上換算 (億円/年) |
|---|---|---|---|
| 保守(到達率25%) | 346.3 | 4.8% | 371 |
| 中位(到達率50%) | 692.5 | 9.6% | 741 |
| 積極(到達率75%) | 1,038.8 | 14.3% | 1,112 |
| 理論上限(到達率100%) | 1,385.0 | 19.1% | 1,482 |
表3-1|追加室泊・客室売上換算は表3の20県合計(1,385.0万室泊・1,482億円)に到達率を乗じた線形換算。吸収率の分母は同20県の年間空室室泊7,248万室泊。到達率は分析上の設定値であり、実現確率を示すものではない。
出典:表3をもとにホテルバンク編集部試算
客室売上換算はもう一つ、推定成約ADRの水準にも左右される。到達率と推定成約ADRの2軸で振ると、幅は年333億円〜1,630億円となる。ADRが±10%動いたときの影響(±148億円)よりも、到達率が25ポイント動いたときの影響(約371億円)の方が2.5倍大きい。客室売上を動かす主因は単価ではなく、泊まる人をどれだけ増やせるかにある。
| 到達率25% | 到達率50% | 到達率75% | 到達率100% | |
|---|---|---|---|---|
| 推定成約ADR −10% | 333 | 667 | 1,000 | 1,334 |
| 推定成約ADR 基準 | 371 | 741 | 1,112 | 1,482 |
| 推定成約ADR +10% | 408 | 815 | 1,223 | 1,630 |
表3-2|表3の客室売上換算1,482億円を基準に、到達率と推定成約ADRの2軸で振ったもの。推定成約ADRの±10%は県別の推定値が一律に振れた場合を仮定した感度であり、実際の価格改定計画を示すものではない。
出典:表3をもとにホテルバンク編集部試算
泊まる夜が土曜1点に集中 — 日曜の推定稼働率は土曜比-10.8pt
では、その転換余地は具体的にどの夜にあるのか。20県の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース、2026年6月・7月の実績日)を曜日別に平均すると、土曜90.3%に対して日曜79.5%、月曜80.0%となり、土曜だけが突出している。全国47都道府県平均(土曜91.2%・日曜81.0%)と比べても、20県は水準が全体に1〜2pt低い。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
掲載価格でも同じ形が出る。20県平均の曜日別掲載価格(全プラン平均・税込)は土曜25,705円に対し、日曜18,962円(土曜比74%)、月曜17,731円(69%)、金曜19,578円(76%)である。個別に見ると鳥取県は土曜24,745円・日曜16,916円で1.46倍、佐賀県は33,079円・23,889円で1.38倍、奈良県は25,620円・18,740円で1.37倍と、いずれも土曜だけが跳ね上がる構造だ。
| 曜日 | 推定稼働率 (20県平均) | 掲載価格 (20県平均) | 土曜=100 とした指数 |
|---|---|---|---|
| 月 | 80.0% | ¥17,731 | 69 |
| 火 | 82.8% | ¥18,026 | 70 |
| 水 | 83.8% | ¥18,052 | 70 |
| 木 | 84.8% | ¥18,844 | 73 |
| 金 | 84.4% | ¥19,578 | 76 |
| 土 | 90.3% | ¥25,705 | 100 |
| 日 | 79.5% | ¥18,962 | 74 |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
この形は、日帰りが厚い県の需要が「土曜に1泊して日曜に帰る」型に固まっていることを示している。裏を返せば、金曜の夜・日曜の夜・平日の夜には、埋めるべき客室と受け入れる余力が明確に残っている。転換余地の在り処は、年間平均の稼働率だけを見ていても見えてこない。
夜の滞在価値①:夕食は1室あたり+6,585円〜13,770円で単価に載る
「泊まる理由」を作るうえで、最も直接的に単価へ反映されるのが夕食である。同一施設が素泊まり・朝食付・2食付を同時に販売しているケースだけを取り出したペアード比較(2026年6〜8月、2名1室、全体セグメント)では、朝食付から2食付にすることによる1室あたりの価格差は次のとおりだった。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
| 都道府県 | 素泊まり→朝食付 | 朝食付→2食付 | ペア成立施設数 (朝食/2食) | 食事評価 中央値 |
|---|---|---|---|---|
| 兵庫県 | +¥1,698 | +¥13,770 | 134/72 | 4.49(328施設・40,696件) |
| 奈良県 | +¥2,255 | +¥10,632 | 26/18 | 4.50(77施設・5,820件) |
| 滋賀県 | +¥513 | +¥9,790 | 63/37 | 4.36(93施設・7,717件) |
| 山梨県 | +¥2,448 | +¥9,325 | 64/44 | 4.42(202施設・21,460件) |
| 茨城県 | +¥991 | +¥8,435 | 104/40 | 4.27(154施設・14,232件) |
| 佐賀県 | +¥2,266 | +¥8,276 | 25/11 | 4.51(92施設・9,907件) |
| 群馬県 | +¥1,387 | +¥8,175 | 75/41 | 4.40(295施設・42,539件) |
| 愛媛県 | +¥744 | +¥8,129 | 72/36 | 4.31(128施設・11,901件) |
| 埼玉県 | +¥1,173 | +¥7,793 | 73/24 | — |
| 島根県 | +¥1,583 | +¥7,664 | 38/17 | 4.44(114施設・14,101件) |
| 和歌山県 | +¥3,004 | +¥7,606 | 44/23 | 4.40(139施設・20,902件) |
| 栃木県 | +¥1,326 | +¥6,739 | 76/44 | 4.43(281施設・36,801件) |
| 鳥取県 | +¥1,904 | +¥6,585 | 32/19 | 4.38(79施設・13,073件) |
表5|食事評価は宿泊者口コミの13カテゴリ集計(直近24ヶ月)。
出典:メトロエンジンリサーチ/宿泊者の口コミ集計はホテルバンク編集部調べ
最も大きいのは兵庫県の+13,770円(ペア成立72施設)、次いで奈良県+10,632円(18施設)、滋賀県+9,790円(37施設)、山梨県+9,325円(44施設)である。朝食プレミアム(素泊まり→朝食付)が+513円〜+3,004円のレンジであるのに対し、夕食は一桁違う。同じ同一施設ペアの手法で1県を掘り下げた例は茨城県の朝食プレミアムは+5.8%、2食付きは+52.3%も参考になる。夜の時間をどう設計するかが、1室あたり単価にそのまま効くという構造がここに表れている。
そして素地はある。宿泊者口コミの「食事」カテゴリ評価(直近24ヶ月)の県内中央値を見ると、佐賀県4.51(92施設・9,907件)、奈良県4.50(77施設・5,820件)、兵庫県4.49(328施設・40,696件)は、47都道府県の中央値4.39を上回る。三重県4.45(234施設・30,626件)、岐阜県4.45(221施設・22,672件)、島根県4.44(114施設・14,101件)も同様だ。夜の食を評価する声はすでに集まっており、そこを起点に組み立てられる県が多い。
宿向け:このテーマに効くプラン名のヒント
奈良県 × 夕食 で公開されているプラン名(N=472)に多い訴求要素 ——
2食付 46%会席コース 24%温泉露天 19%朝食付 19%素泊まり 11%和牛・ブランド牛 9%
実際の名前の例(匿名化):
- <基本の2食付きプラン>近鉄奈良駅からすぐの好立地☆奈良観光の拠点に☆夕食はお部屋食
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- 30日前予約で特別料金!返金不可|イタリアンディナーと大浴場で満喫ステイ<夕朝食ビュッフェ付>
※公開プラン名の集計にもとづく傾向で、命名が販売を生む因果を示すものではありません。
夜の滞在価値②:プラン設計は「金曜・日曜・平日の夜」に置く
表4が示したとおり、20県の需要は土曜1泊に集中している。土曜はすでに推定稼働率90.3%(2026年6月・7月の実績日平均、以下同じ)で、ここに新しいプランを足しても既存需要の置き換えになりやすい。設計の対象は推定稼働率79.5%の日曜、80.0%の月曜、84.4%の金曜である。
具体的には次の3方向が考えられる。第一に日曜1泊の設計。日帰り客の多くは土日のどちらかに日帰りしている。日曜に泊まって月曜朝に発つ形は、翌日が平日である以上、対象は限られるが、シニア層・リタイア層・リモートワーク層には成立する。日曜の掲載価格が土曜の74%であることを踏まえると、価格を下げて訴求するのではなく、土曜には提供しにくい体験(貸切、少人数の食事会、朝の活動)を組み込んで同水準の価格で並べる方が単価を守れる。
第二に金曜夜の前倒し。金曜の推定稼働率84.4%(2026年6月・7月の実績日平均)は土曜より5.9pt低く、掲載価格も土曜比76%である。土曜1泊を金曜からの2連泊に伸ばす訴求は、追加の集客ではなく既存客の滞在延長であり、獲得コストが最も低い。連泊時の夕食メニューを2泊目で変えるといった設計が効く。
第三に平日の目的地化。日帰りが厚い県は、大都市圏から2時間前後という立地であることが多い。平日の夜に「その土地でしかできないこと」を置ければ、出張需要とレジャー需要の間にある層を取れる。奈良県で公開されている夕食関連プラン名を集計すると、2食付が46%、会席コースが24%、温泉露天が19%と、食と湯が中心的な訴求軸になっている(N=472プラン名)。ここに夜の時間帯を明示する要素を足す余地は残っている。
夜の滞在価値③:価格設計は「土曜比の値引き」ではなく「夜込みの定価」で
価格設計で避けたいのは、閑散曜日を土曜比の割引で埋めにいく形である。20県平均で日曜の掲載価格は土曜の74%、月曜は69%だが、この差は多くの場合すでに需要差を反映した結果であり、さらに下げても転換は起きにくい。日帰り客が泊まらない理由は価格そのものより「泊まる理由がない」ことにあるからだ。
表5が示すとおり、2食付にすることで1室あたり+6,585円〜+13,770円の価格差が実際に成立している。仮に日曜の素泊まり相当の水準(20県平均18,962円)に、夕食を組み込んだプランを設計すれば、土曜の掲載価格水準(25,705円)に近い価格帯で並べることが可能になる計算だ。曜日で価格を下げるのではなく、曜日で商品構成を変えるという発想である。
推定成約ADRの水準も参考になる。表2の20県では、兵庫県¥13,255、奈良県¥13,178、山梨県¥11,749、群馬県¥12,001と1万円台の県がある一方、茨城県¥6,951、愛媛県¥6,931、岩手県¥7,192と7千円前後の県もある。後者は宿泊特化型の構成比が高い県であり、夕食を持たない施設が多い。こうした県では、施設単独で夕食を用意するより周辺飲食店との連携で夜の体験を組む方が現実的だろう。DMOが担える役割はここにある。
なお本稿のADRは推定値であり、上場REITが開示する物件別実績との照合で誤差中央値は約7%である。個別施設の価格設定は自館の実績値に基づいて判断されたい。
埼玉・愛知・千葉は別の処方箋 — 日帰りは厚いが客室はすでに埋まっている
宿泊転換度が中央値未満でありながら、客室稼働率が全国平均61.6%を上回る県が3つある。埼玉県(0.328・66.7%)、愛知県(0.593・69.2%)、千葉県(0.696・64.0%)である。
埼玉県は宿泊転換度が全国最小だが、仮に中央値並みに転換した場合の追加室泊は年457万室泊で、年間空室室泊206万室泊の222%に達する。理論上の転換需要が既存の空室を大きく超えており、稼働率の押し上げ幅は+73.9ptと計算上100%を超えてしまう。これは「需要転換の余地が大きい」というより「そもそも客室ストックが訪問量に対して薄い」ことを意味する。愛知県も吸収率35%・+10.8ptと、20県より制約が強い。
この3県に共通するのは、大都市圏の内側または至近にあり、日帰り圏の構造そのものが強いことだ。ここでの論点は夜のコンテンツ設計というより、客室供給の量と立地である。同じ「日帰りが厚い」という数字でも、供給側の余力を重ねて初めて打ち手が分かれる。
夜の食がすでに高く評価されている宿 — 転換余地県の実例
最後に、転換余地20県のなかで、宿泊者口コミの「食事」カテゴリ評価が特に高い施設を挙げる。いずれも直近24ヶ月で30件以上の口コミが集計されている施設に限った。夜の滞在価値が実際に評価として現れている例である。
| 都道府県 | 施設名 | 食事評価 | 口コミ件数 |
|---|---|---|---|
| 佐賀県 | 海辺の宿 清力 | 4.89 | 109件 |
| 佐賀県 | 旅館 大和屋 | 4.88 | 66件 |
| 奈良県 | ニッポニア田原本マルト醤油 | 4.96 | 102件 |
| 奈良県 | 飛鳥荘 | 4.91 | 208件 |
| 島根県 | Hotel Kararako | 4.95 | 211件 |
| 島根県 | 皆美館 | 4.80 | 310件 |
| 鳥取県 | 三朝温泉 みささガーデンホテル | 4.89 | 115件 |
| 鳥取県 | 岩井屋 | 4.87 | 101件 |
| 和歌山県 | 山荘 天の里 | 4.94 | 70件 |
| 和歌山県 | ブランシェット南紀白浜 | 4.88 | 646件 |
| 群馬県 | ふるさとの宿 花いち | 4.95 | 114件 |
| 栃木県 | 御宿 一富士 | 4.97 | 128件 |
| 栃木県 | 小滝鉱泉 | 4.97 | 61件 |
| 三重県 | 潮騒の宿 うえ久 | 4.95 | 114件 |
| 三重県 | NIPPONIA HOTEL伊勢河崎商人町 | 4.92 | 67件 |
| 山梨県 | abrAsus hotel Fuji | 4.88 | 61件 |
| 滋賀県 | YANMAR SUNSET MARINA CLUBHOUSE&HOTEL | 4.93 | 108件 |
| 滋賀県 | 料亭旅館 やす井 | 4.93 | 108件 |
| 岐阜県 | 神明山荘 | 4.94 | 72件 |
| 岐阜県 | お宿 栄太郎 | 4.90 | 108件 |
| 茨城県 | 民宿 黒勢 | 4.86 | 69件 |
| 茨城県 | 悠久の宿 滝美館 | 4.84 | 71件 |
出典:宿泊者の口コミ集計、ホテルバンク編集部調べ
並ぶのは客室数10室前後の小規模旅館・オーベルジュ・ペンションが中心である。表2で見たとおり転換余地県の客室ストックは決して大きくないが、そのなかで夜の食を軸に高い評価を得ている施設がすでに存在する。県全体としての宿泊転換は、こうした施設の型を面として広げられるかにかかっているといえる。
まとめ
2025年の確報値で見ると、日本人国内旅行の45.8%は日帰りであり、泊まるか帰るかで1人1回あたり52,412円の差が生じている。この「泊まらずに帰っている需要」の厚みは県によって6.9倍の開きがあり、宿泊転換度が中央値未満かつ客室稼働率が全国平均未満という2条件を満たす20県には、7,114施設・317,787室の受け皿がある。
これらの県が中央値並みの宿泊転換度に達した場合の追加需要は年1,385万室泊で、既存の空室7,248万室泊の19%にとどまる。供給を増やさずに受け止められる規模であり、論点は需要側の設計に移る。曜日別に見れば泊まる夜は土曜1点に集中しており、金曜・日曜・平日の夜には稼働率にして10pt前後の余白がある。そして夕食は1室あたり+6,585円〜+13,770円という形で単価に直接載る。
ただし奈良県・佐賀県のように、理論上の転換需要が空室の6〜9割に達し、客室ストックそのものが制約になる県もある。同じ「日帰りが厚い」でも、供給余力を重ねて初めて打ち手は分かれる。本稿の数値はいずれも上限としての机上試算であり、予測ではない点をあらためて申し添える。
データの制約について:本稿の「宿泊転換度(泊/訪問)」は、集計基準・単位・標本設計の異なる2つの公的統計を組み合わせた代理指標であり、公表された宿泊客比率ではありません。分子は人泊、分母は人回です。分母となる「旅行・観光消費動向調査」都道府県別集計表は標本調査(県別標本N=152〜1,393)であり、県別の単年値には標本誤差が含まれます。客室ストック・推定成約ADR・推定稼働率はメトロエンジンリサーチが追跡する施設のうち、OTA上で稼働が確認できる施設に限られ、全数調査ではありません。追加室泊・客室売上の試算は「訪問者数が変わらないまま宿泊転換度のみが中央値に達する」という仮定に基づく上限値であり、予測値ではありません。
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参考資料・出典一覧
■ 政府統計
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間値(確報)」(2026年4月30日)
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査【参考】2025年年間 都道府県別集計表」(Excel)
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査 2025年年間 集計表(確報)」(Excel)
- 観光庁「旅行・観光消費動向調査」統計トップページ
- 観光庁「宿泊旅行統計調査 2025年(令和7年)1月〜12月分(年の確定値)集計結果」(Excel)
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」統計トップページ
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ — 客室ストック(施設数・客室数、稼働確認ベース)、推定成約ADR(2025年7月〜2026年6月)、推定稼働率および掲載価格(2026年6月・7月)、食事タイプ別ペアード価格比較(2026年6〜8月)、公開プラン名の集計
- ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミの「食事」カテゴリ評価集計(直近24ヶ月)
■ データソース
観光庁「旅行・観光消費動向調査」2025年年間値(確報・2026年4月30日公表)および同【参考】都道府県別集計表(訪問地ベース)、観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年の確定値(延べ宿泊者数・利用客室数・客室稼働率)、ならびにメトロエンジンリサーチの客室ストック(施設数・客室数、稼働確認ベース)、推定成約ADR(2025年7月〜2026年6月の月次平均)、推定稼働率および掲載価格(2026年6月・7月の実績日)、食事タイプ別ペアード価格比較(2026年6〜8月)、公開プラン名の集計、宿泊者口コミの「食事」カテゴリ評価(直近24ヶ月)。
■ 試算前提
上限試算は次の4点を前提とする。(1) 各県の訪問者数は2025年実績のまま一定とする。(2) 対象20県の宿泊転換度が47県中央値0.711泊/訪問に到達する。(3) 追加の延べ宿泊者数は各県の「1客室あたり宿泊者数」(延べ宿泊者数÷利用客室数、全国平均1.644人)で除して室泊に換算する。(4) 客室売上換算は追加室泊×県別の推定成約ADR。また年間空室室泊=推定客室ストック×365×(1−客室稼働率)、推定客室ストック=利用客室数÷客室稼働率÷365とする。表3-1・表3-2の到達率および推定成約ADR±10%は分析上の設定値であり、実現確率や価格改定計画を示すものではない。
■ 限界・留意点
宿泊転換度は分子(施設所在地ベースの人泊)と分母(訪問地ベースの人回)で調査・単位・集計基準が異なる代理指標であり、絶対水準ではなく県間の相対比較にのみ用いる。都道府県別の宿泊/日帰りの内訳は公表されていない。訪問者数・消費単価は標本調査(県別標本サイズN=152〜1,393)に基づき、標本の小さい県ほど単年値の振れが大きい。推定成約ADR・推定稼働率はOTA掲載在庫に基づく推定値であり、各施設の実際の成約価格・実稼働率とは異なる。上限試算は予測値ではなく、訪問者数一定・転換度のみ中央値到達という仮定下の理論上の上限であり、奈良県のように押し上げ幅が実務上成立しない県を含む。
