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宿泊旅行統計調査とは|観光庁の宿泊統計の読み方 — 稼働率61.6%・簡易宿所29.6%、速報と確定の差【2025年】

投稿日 : 2026.10.13

指定なし

宿泊旅行統計調査とは|観光庁の宿泊統計の読み方 — 稼働率61.6%・簡易宿所29.6%、速報と確定の差【2025年】

観光庁が毎月公表する「宿泊旅行統計調査」は、延べ宿泊者数と客室稼働率を全国・都道府県別・業態別に示す唯一の公的統計であり、宿泊施設には調査票が届き、投資家やアナリストには市場の基準値として使われている。2025年の年間値(確定値)は2026年7月6日に公表され、延べ宿泊者数は6億6,111万人泊(前年比+0.3%)、客室稼働率は全体61.6%、ビジネスホテル75.3%・旅館38.2%・簡易宿所29.6%という水準になった。本稿では、この調査が統計法上どう位置づけられ、誰が対象で、何をいつ公表し、速報値が確定値でどれだけ動くのか、そして都道府県別・市町村別の数値をどこから取るのかを、観光庁の原本資料に沿って整理する。

本記事における指標の定義

  • 延べ宿泊者数(人泊):各日の宿泊者数を月間で足し合わせた数。1人が2泊すれば2人泊と数える。
  • 実宿泊者数(人):宿泊した人の数。1人が2泊しても1人と数える。
  • 客室稼働率:月間の利用客室数(各日に宿泊で利用した客室数の合計)を、客室数に当月の日数を乗じた総客室数で割った比率。観光庁「宿泊旅行統計調査」の集計値を指す。
  • 定員稼働率:延べ宿泊者数を、収容人数に当月の日数を乗じた数で割った比率。
  • 速報値/確定値:月次は第1次速報(翌月末)→第2次速報(翌々月末)、年間値は速報値(翌年2月末)→確定値(翌年6月末〜7月)の順に公表される。確定値は、速報値の公表後に回収した調査票を反映して再集計した値。
  • OCC(稼働率):本稿の末尾で当社推定値に言及する箇所のみ、エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)を指す。観光庁の客室稼働率とは母集団と定義が異なる。
  • データ出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(本文に明記のない数値はすべて観光庁の報道発表資料・調査概要の原本による)。
Key Takeaways
  • — 宿泊旅行統計調査は統計法に基づく一般統計調査で、基幹統計調査に限られる第13条の報告義務・第61条の罰則は適用されない。回答数が都道府県×業態の公的ベンチマークの精度を決める。
  • — 2026年1月調査から層化基準が従業者数→客室数に変わり、20室以上は悉皆、1〜19室は都道府県別の抽出率による標本調査になった。2026年の前年比には断層が含まれうる。
  • — 2025年の年間確定値(2026年7月6日公表)は延べ宿泊者数6億6,111万人泊、客室稼働率は全体61.6%・ビジネスホテル75.3%・旅館38.2%・簡易宿所29.6%。
  • — 速報値→確定値で延べ宿泊者数は+763万人泊(+1.2%)上方改定され、前年比は−0.8%から+0.3%へ符号が反転した。年間の結論は確定値で出す。
  • — 市区町村別は2026年1月分から主な市区町村(2026年7月分で185市区町村)の実数集計が月次で載る。都道府県別の直近値は観光庁の集計結果(Excel)から取り、e-StatのAPIで取れるのは2016年分まで。

宿泊旅行統計調査とは — 統計法に基づく一般統計調査

宿泊旅行統計調査は、国土交通省観光庁(観光戦略課観光統計調査室)が実施する統計調査であり、観光庁の調査概要は目的を「わが国の宿泊旅行の実態を全国規模で把握すること」と定めている。2007年に始まり、2015年4月調査からは毎月の調査・公表に移行した。政府統計コードは00601020で、e-Statでは統計の種類が「一般統計」と表示される。調査票に同封される記入要領にも「この調査は統計法に基づく一般統計調査であり、ご回答いただいた内容は統計以外の目的で使用することや外部に漏らすようなことは一切ありません」と明記されており、国勢調査や経済センサスのような基幹統計調査ではなく、統計法第19条に基づき総務大臣の承認を受けて行う一般統計調査という区分になる。直近の調査計画は2025年12月24日に承認され、2026年1月調査から適用されている。

ここで運営者が最も気にするのは「回答しなければならないのか」という点だろう。統計法の条文に当たると、第13条の報告義務と第61条の罰則(50万円以下の罰金)は、いずれも「基幹統計調査」の報告を拒んだ場合に限って規定されている。一般統計調査である宿泊旅行統計調査には、この罰則付きの報告義務は適用されない。観光庁も調査票の送付文を「ご協力のお願い」として出しており、法的な強制ではなく協力依頼として設計されている。

ただし、回答するかどうかを「罰則の有無」だけで判断するのは、運営者自身にとって得策とはいえない。理由は二つある。第一に、この調査は都道府県×業態という細かいセルで客室稼働率を公表しており、自社の稼働率を同じ県の同じ業態の平均と並べられる唯一の公的ベンチマークになっている。回答した施設が多い県ほどその基準値の精度は上がり、自社の立ち位置の読みも確かになる。第二に、観光庁が公表する有効回収率は、2026年7月分でいえば第1次速報の時点で32.9%、第2次速報の時点で45.1%にとどまる。回答の1枚が持つ重みは、特に施設数の少ない県や旅館・簡易宿所の区分で大きい。第1次速報の有効回収率を規模別に見ると客室数20室以上が40.1%、20室未満が20.4%(2026年7月分、観光庁の2026年8月31日報道発表資料)と2倍近い開きがあり、この差が速報値の改定にどう表れるかは宿泊旅行統計調査とは — 第1次速報は稼働率で平均0.6pt動く|3指標の定義と読み方で検証している。回答内容は統計法に基づいて統計以外の目的には使われず、外部に漏れることもないと記入要領が保証している以上、回答は自社の市場データを整える投資として捉えるのが合理的といえる。

調査対象と抽出方法 — 2026年1月から「従業者数」から「客室数」へ

対象は全国のホテル・旅館・簡易宿所・会社や団体の宿泊所で、観光庁の協力依頼文書(2026年4月)によれば母集団は約7万6千施設、そこから標本理論に基づいて約2万3千施設が調査対象として抽出されている。抽出の層化基準は2026年1月調査で大きく変わった。2010年第2四半期から2025年までは従業者数を基準に、従業者数10人以上の事業所を悉皆調査、5〜9人を3分の1、0〜4人を9分の1の無作為抽出としていた。2026年1月調査からは客室数を基準とし、客室数20室以上の事業所を悉皆調査、1〜19室を都道府県ごとに抽出率を設定する標本調査に改めている。

表1 宿泊旅行統計調査の抽出設計(2026年1月調査〜)
区分(2026年1月調査〜)母集団(概数)抽出方法調査票の様式
客室数1〜9室約5万1千施設都道府県ごとに設定した抽出率で無作為抽出第1号様式(1〜19室)
客室数10〜19室約1万施設同上(20室未満の計約6万1千施設から約9千施設を抽出)第1号様式(1〜19室)
客室数20〜199室約1万5千施設(20室以上の合計)全施設が調査対象(悉皆)第2号様式(20〜199室)
客室数200室以上第3号様式(200室以上)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年4月・5月・6月分)実施について(ご協力のお願い)」「宿泊旅行統計調査の概要」よりホテルバンク編集部作成

実務面では、調査票は3か月分をまとめて四半期に一度送付され、提出期限は対象月の翌月10日前後に設定されている(2026年4月分は5月11日、5月分は6月10日、6月分は7月10日)。回答は郵送のほか、観光庁サイトから入手したExcel様式の電子メール提出と、政府統計オンライン調査総合窓口でのオンライン回答が可能で、2026年4月からは調査事務局の委託先が株式会社サーベイリサーチセンターに変わっている。調査対象施設は統計精度や安定性の観点から最大3年間を想定して定期的に入れ替えられるため、調査票が届いた施設は、その期間は継続して回答することを前提に社内の集計フローを組んでおくとよい。

読み手の側で注意したいのは、層化基準の変更が2026年の前年同月比に影響しうる点である。観光庁は2026年の月次報道発表で「層化基準を『従業者数』から『客室数』へ変更したため、対前年(同月)比、対前年(同月)差については、見直しの影響が含まれている可能性がある」と注記している。2026年分の都道府県別・業態別の前年比を長期系列と接続するときは、この断層を前提に読む必要がある。客室数という層化軸が実際の施設分布をどう切り分けるかは、観光庁の宿泊統計の層化基準変更(従業者数→客室数)をデータで読み解くが当社の施設母集団データで可視化している。

調査事項 — 調査票で何を聞かれ、何が集計されるか

調査票(第2号様式)の設問は9問で構成される。問1〜問3が施設名・所在地・施設タイプ、問4が1月1日時点の客室数と収容人数、問5が従業者数、問6が直近1年間の宿泊目的の割合(観光レクリエーション目的と出張・業務目的)、問7が当月の延べ宿泊者数・実宿泊者数、うち外国人の延べ・実宿泊者数、利用客室数、問8が延べ宿泊者数の居住地別内訳(県内・県外)、問9が外国人延べ宿泊者数の国籍(出身地)別内訳である。利用客室数は客室稼働率(%)で回答することも認められている。観光庁の調査概要が「主な調査事項」として挙げるのも、各月の延べ・実宿泊者数と外国人延べ・実宿泊者数、延べ宿泊者数の居住地別内訳(県内・県外)、外国人延べ宿泊者数の国籍別内訳の三つで、公表される集計表はこの設問構成をそのまま反映している。

施設タイプは6区分で、定義は観光庁の調査概要に次のとおり定められている。集計表の「業態別」はすべてこの区分に基づくため、自社がどの区分で回答しているかを把握しておくと、公表値との比較が正確になる。

表2 施設タイプ6区分と観光庁の定義
施設タイプ観光庁の定義(要旨)
旅館和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業で、簡易宿所以外のもの
リゾートホテルホテル(洋式の構造及び設備を主とする施設)のうち、行楽地や保養地に建てられた、主に観光客を対象とするもの
ビジネスホテルホテルのうち、主に出張ビジネスマンを対象とするもの
シティホテルホテルのうち、リゾートホテル・ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの
簡易宿所宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設(ベッドハウス、山小屋、カプセルホテルなど)
会社・団体の宿泊所会社・団体の所属員など特定の人を宿泊させる営業のもの(会員宿泊所、共済組合宿泊所、保養所、ユースホステルなど)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査の概要」よりホテルバンク編集部作成

なお、民泊やペンション、青年の家、少年自然の家などは、旅館業法の許可を受けていればホテル・旅館または簡易宿所のいずれかに分類して回答するよう記入要領が案内している。2026年1月からの客室数ベースの層化で、客室数が少ない施設も標本に含まれる設計になった以上、この分類の正確さが業態別の公表値の質を左右するといえる。

公表スケジュール — 月次は2段階、年間値も速報→確定の2段階

公表は月次と年間値の二系統で、いずれも二段階である。月次は、対象月の翌月末に「第1次速報」、翌々月末に「第2次速報」が出る。年間値は、翌年2月末に「速報値」、翌年6月末前後に「確定値」が出て、観光庁の公表予定日ページには「暦年確報をもって確定」と注記されている。つまり毎月の第2次速報は最終値ではなく、翌年の年間確定値の公表時点で各月の値も確定する仕組みになっている。2025年分は、年間速報値が2026年2月27日、年間確定値が2026年7月6日(予定日ページ上は6月30日)に公表された。

公表スケジュール図(2025年7月分の宿泊を例に)

調査月
2025年7月
翌月10日前後が提出期限
→
第1次速報
翌月末(8月末)
有効回収率は3割台
→
第2次速報
翌々月末(9月末)
有効回収率は4割台
→
年間値(速報値)
翌年2月末(2026年2月27日)
1〜12月を通年集計
→
年間値(確定値)
翌年6月末〜7月(2026年7月6日)
各月の値もここで確定

出典:観光庁「観光統計公表予定日」「宿泊旅行統計調査」報道発表資料よりホテルバンク編集部作成

2026年分の公表予定(観光庁公表予定日ページ、2026年3月31日更新)を抜粋すると次のとおりで、月末公表のリズムが固定されていることが分かる。市場分析でこの統計を使うなら、毎月末に前々月の第2次速報と前月の第1次速報が同時に出る、と覚えておけば十分だろう。

表3 2026年の公表予定(抜粋)
対象期間第1次速報第2次速報確定
2025年暦年速報値 2026年2月27日—確定値 2026年6月30日予定(実際は7月6日公表)
2026年1月分2026年2月27日2026年3月31日2027年6月30日(暦年確報をもって確定)
2026年7月分2026年8月31日2026年9月30日
2026年8月分2026年9月30日2026年10月30日
2026年9月分2026年10月30日2026年11月30日
2026年12月分2027年1月29日2027年2月26日
2026年暦年速報値 2027年2月26日—確定値 2027年6月30日

出典:観光庁「観光統計公表予定日」(2026年3月31日更新)よりホテルバンク編集部作成。公表予定は変更される可能性がある

主要指標の2025年確定値 — 稼働率61.6%は2019年にまだ1.1pt届かない

2026年7月6日公表の確定値によれば、2025年の延べ宿泊者数は全体6億6,111万人泊で前年比+0.3%(2019年比+10.9%)、うち日本人は4億8,118万人泊で前年比−2.7%(2019年比+0.2%)、外国人は1億7,992万人泊で前年比+9.4%(2019年比+55.6%)だった。日本人が2年連続で減る一方、外国人が初めて1億8千万人泊近くまで伸びて全体を押し上げた構図になる。客室稼働率は全体61.6%で前年差+2.0pt、2019年との差は−1.1ptと、全体ではコロナ前の水準にあと一歩まで戻した。業態別では旅館38.2%(前年差+2.1pt)、リゾートホテル56.9%(同+2.8pt)、ビジネスホテル75.3%(同+1.6pt)、シティホテル74.1%(同+1.8pt)、簡易宿所29.6%(同+0.6pt)で、客室稼働率が80%を超えた都道府県はビジネスホテルで3か所(2024年は2か所)、全体の稼働率が最も高い都道府県は大阪府の78.6%だった。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(確定値))」(2026年7月6日)よりホテルバンク編集部作成

読み方で押さえたいのは、業態ごとに2019年との距離が違うことである。ビジネスホテルは2019年比−0.5ptでほぼ回復しきったのに対し、シティホテルは−5.4pt、簡易宿所は−3.8pt、リゾートホテルは−1.6pt、旅館は−1.4ptと、稼働率の面ではまだ差が残る。シティホテルの場合、宿泊単価が大きく上がった局面で稼働を同時に積み増すより単価を優先した構図と読め、稼働率だけで需要の強弱を判断すると見誤る。もう一点、旅館38.2%や簡易宿所29.6%という水準は業態の構造を映した値であり、1室の定員が多い旅館や相部屋型の簡易宿所は「客室稼働率」よりも「定員稼働率」で見たほうが実態に近い。観光庁の集計結果(Excel)には定員稼働率の表(第6表)も収録されているので、旅館や簡易宿所を分析する場合は両方を並べることをすすめたい。

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(確定値))」(2026年7月6日)よりホテルバンク編集部作成。単位は百万人泊

2025年の国籍別内訳、都道府県別の延べ宿泊者数、外国人比率の地域分散といった結果の詳細は、本サイトの観光庁 宿泊旅行統計2025まとめ|外国人延べ宿泊者数は過去最高で整理しているため、本稿では繰り返さない。本稿の役割は、その数値がどう作られ、どう改定され、どこから取れるかを押さえることにある。

速報値と確定値でどれだけ変わるか — 2025年は前年比の符号が反転した

この統計を使ううえで最も実務的な論点が、速報値が確定値でどれだけ動くかである。2025年分を観光庁の原本で突き合わせると、2026年2月27日公表の年間速報値では延べ宿泊者数が全体6億5,348万人泊(前年比−0.8%)、日本人4億7,561万人泊(−3.8%)、外国人1億7,787万人泊(+8.2%)だった。7月6日の確定値ではそれぞれ6億6,111万人泊(+0.3%)、4億8,118万人泊(−2.7%)、1億7,992万人泊(+9.4%)に改定され、全体で+763万人泊、日本人で+557万人泊、外国人で+205万人泊、いずれも+1.2%の上方改定になった。速報段階では「2025年の延べ宿泊者数は前年割れ」だったものが、確定では「前年超え」に変わったわけで、速報値の前年比の符号をそのまま結論に使うことには注意が要る。

表4 2025年年間値 速報値と確定値の比較
指標(2025年1〜12月)速報値(2026年2月27日)確定値(2026年7月6日)改定幅
延べ宿泊者数 全体(万人泊)65,348(前年比−0.8%)66,111(前年比+0.3%)+763(+1.2%)
延べ宿泊者数 日本人(万人泊)47,561(−3.8%)48,118(−2.7%)+557(+1.2%)
延べ宿泊者数 外国人(万人泊)17,787(+8.2%)17,992(+9.4%)+205(+1.2%)
客室稼働率 全体61.8%61.6%−0.2pt
客室稼働率 旅館38.4%38.2%−0.2pt
客室稼働率 リゾートホテル56.9%56.9%0.0pt
客室稼働率 ビジネスホテル75.3%75.3%0.0pt
客室稼働率 シティホテル74.2%74.1%−0.1pt
客室稼働率 簡易宿所29.6%29.6%0.0pt

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2025年・年間値(速報値))」(2026年2月27日)、同「(2025年・年間値(確定値))〜2月27日公表の速報値からの変更点〜」(2026年7月6日)よりホテルバンク編集部作成。改定率はホテルバンク編集部が算出

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間値の速報値(2026年2月27日)と確定値(2026年7月6日)の差をホテルバンク編集部が算出

改定の方向には型がある。延べ宿泊者数は、速報値の公表後に届いた調査票が追加されるため、水準としては上方に積み上がりやすい。一方で客室稼働率は比率なので、追加された調査票の構成しだいで上下どちらにも動き、2025年は全体で−0.2ptとわずかに下方修正された。月次でも同じ現象が起きている。2026年7月分の客室稼働率は、8月31日公表の第1次速報(有効回収率32.9%)で全体60.8%、旅館40.6%、リゾートホテル59.6%、ビジネスホテル74.2%、シティホテル71.9%、簡易宿所30.9%だったものが、9月30日公表の第2次速報(有効回収率45.1%)では全体61.0%、旅館40.2%、リゾートホテル59.0%、ビジネスホテル74.6%、シティホテル71.9%、簡易宿所30.0%に改定された。全体では+0.2ptだが、簡易宿所は−0.9pt、リゾートホテルは−0.6pt、ビジネスホテルは+0.4ptと、業態単位では1pt近く動く月もある。

表5 有効回収率(全体・客室数規模別)— 第1次速報と第2次速報
対象月・段階(公表日)全体客室数20室以上客室数20室未満
2026年6月・第2次速報(8月31日)44.6%52.1%31.6%
2026年7月・第1次速報(8月31日)32.9%40.1%20.4%
2026年7月・第2次速報(9月30日)45.1%53.8%30.1%
2026年8月・第1次速報(9月30日)36.5%43.8%23.6%
表6 2026年7月分 施設タイプ別客室稼働率の改定 — 第1次速報→第2次速報(%)
施設タイプ第1次速報(8月31日)第2次速報(9月30日)改定幅
全体60.861.0+0.2pt
旅館40.640.2−0.4pt
リゾートホテル59.659.0−0.6pt
ビジネスホテル74.274.6+0.4pt
シティホテル71.971.90.0pt
簡易宿所30.930.0−0.9pt

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査(2026年7月・第1次速報、2026年6月・第2次速報)」(2026年8月31日)、同「(2026年8月・第1次速報、2026年7月・第2次速報)」(2026年9月30日)よりホテルバンク編集部作成。改定幅はホテルバンク編集部が算出

2026年7月分で見ると、第1次速報から第2次速報までの約1か月で有効回収率は全体で+12.2pt、客室数20室以上で+13.7pt、20室未満で+9.7pt上がる(表5)。それでも20室未満は第2次速報の時点で3割前後(6月分31.6%、7月分30.1%)にとどまり、小規模施設の回答は最後まで薄い。7月分の改定幅が最も大きかったのは簡易宿所の−0.9ptで(表6)、1か月分の比較なので傾向とまでは言えないものの、小規模施設の比重が高い業態ほど追加回収分で値が動きやすいという見立てと整合する。

ここから導ける実務上のルールは三つにまとめられる。第一に、年間の結論は確定値(翌年6月末〜7月)で確定させ、速報値の前年比はあくまで方向感として扱う。第二に、月次の第1次速報は有効回収率が3割台であり、業態×都道府県の細かいセルほど第2次速報での改定幅が大きくなりうるため、個別セルの比較は第2次速報を待つ。第三に、過去系列と並べるときは、どの時点の値(第1次・第2次・確定)を使ったかを図表の脚注に必ず残す。観光庁自身も報道発表で「2007年〜2025年の数値は確定値、2026年1月〜7月は第2次速報値、2026年8月は第1次速報値」と使い分けを明記しており、同じ作法を踏むのが安全である。改定幅の実測としては、報道発表15か月分(2025年4月分〜2026年6月分)を照合した宿泊旅行統計調査の速報値はどれだけ改定されるか|宿泊者数は最大3.4%、客室稼働率は1.0pt以内が、延べ宿泊者数は中央値1.77%・最大3.44%、客室稼働率は全体で1.0pt以内という水準を示しており、この三つのルールの裏付けとして参照できる。

都道府県別・市町村別データの取り方 — 主な市区町村は2026年1月分から月次で公表

公表データの入口は二つある。一つは観光庁の宿泊旅行統計調査ページで、月次の集計結果(Excel)、年の確定値の集計結果(Excel)と報告書(PDF)、2007年以降をつないだ推移表(Excel)が置かれている。もう一つがe-Statで、政府統計コード00601020の配下に、第1表(施設数)から第10表(居住地別延べ宿泊者数)までの集計表がデータベース形式で収録され、API経由でも取得できる。ただし、データベース形式で収録されているのは2014〜2016年の年確定値の表まで(2019年3月更新)で、2017年以降の値は集計結果のExcelファイルとして掲載されている。いずれも地域の粒度は「施設所在地(47区分及び運輸局等)」、つまり都道府県と地方運輸局ブロックまでが基本である。

表7 公表データの入口 — 何をどこから取るか
知りたいもの地域の粒度どこから取るか更新
都道府県別・施設タイプ別の客室稼働率47都道府県+運輸局ブロック観光庁 月次集計結果(Excel)第8表(e-Statのデータベースの統計表ID 0003313904は2014〜2016年分のみ)月次(第1次・第2次速報)、年確定値
都道府県別の延べ宿泊者数(日本人/外国人)同上観光庁 月次集計結果(Excel)第2表・第4表(e-Statのデータベースの統計表ID 0003313520は2014〜2016年分のみ)同上
都道府県別の国籍(出身地)別外国人延べ宿泊者数同上(2025年分までは従業者数10人以上、2026年1月分からは客室数20室以上の施設が対象)観光庁 月次集計結果(Excel)参考第1表(e-Statのデータベースの統計表ID 0003317699は2014〜2016年分のみ)同上
2007年以降の長期系列全国・都道府県観光庁 推移表(Excel)月次更新
市町村より細かい地域の延べ宿泊者数広域市町村130区分(例:東京都23区内/多摩地域/島しょ、北海道石狩/後志/上川…)観光庁 年確定値「広域市町村(130区分)別集計」(Excel、2021年分以降)。年計と月別、延べ宿泊者数と外国人延べ宿泊者数年1回(確定値公表時)
主な市区町村の値(客室稼働率を含む)主な市区町村(2026年7月分で185市区町村)観光庁 月次集計結果(Excel)参考第5〜12表(2026年1月分から)。回収した調査票の実数集計で、10施設以上の回収があった区分のみ掲載。掲載のない市区町村は各自治体の観光入込客統計(「共通基準による観光入込客統計」を含む)を併用する月次(第1次・第2次速報)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」ページ、e-Stat(政府統計コード00601020)の公開構成よりホテルバンク編集部作成

「市町村別」で検索する読者が多いが、宿泊旅行統計調査は2026年1月分から、月次の集計結果に「施設所在地(主な市区町村)」の参考表(参考第5〜12表)を加えている。2026年7月分では185市区町村について、母集団・回収施設数、延べ・実宿泊者数、外国人延べ・実宿泊者数、定員稼働率、利用客室数、客室稼働率が客室規模別(1〜9室/10〜19室/20室以上)に載る。ただし、回収した調査票の実数をそのまま集計したもので未回収分を推計しておらず、10施設以上の回収があった区分しか表章されないため、都道府県別の推計値とは性格が異なる。推計値として都道府県より細かい地域を年単位で見る場合の区分は、2021年分から年の確定値に添付される「広域市町村(130区分)別集計」である。北海道を石狩・後志・上川など9区分、東京都を23区内・多摩地域・島しょの3区分、神奈川県を横浜・川崎/三浦・湘南/県央/県西の4区分に分けるといった粒度で、延べ宿泊者数と外国人延べ宿泊者数の年計・月別が載る。広域市町村集計には客室稼働率が含まれず、2025年分以前は個別の市区町村の値も公表されていない。主な市区町村の参考表に載らない市区町村や2025年以前の宿泊の実態を把握したい場合は、自治体が公表する観光入込客統計や、観光庁が共通基準として整備する観光入込客統計と組み合わせるのが現実的な方法になる。

e-StatのAPIを使う場合は、客室稼働率(都道府県×施設タイプ×月)が統計表ID 0003313904、延べ宿泊者数(都道府県×月、日本人/外国人)が0003313520、実宿泊者数が0003313620、施設数が0003313482である。ただし、これらのデータベース表に収録されているのは2014〜2016年の年確定値(各年の月別値を含む)までで、2017年以降の月次・年次の値はAPIでは取得できない。直近の値を自社の月次稼働率と並べる作業は、観光庁が毎月掲載する集計結果(Excel)の第8表を取り込む形で組むのが現実的である。

観光庁の客室稼働率と当社のOTA在庫ベース稼働率は何が違うか

観光庁の客室稼働率と、メトロエンジンリサーチがOTA掲載在庫から推定する稼働率(OCC)は、同じ「稼働率」でも母集団と定義が違う。観光庁の値は、簡易宿所や会社・団体の宿泊所を含む約7万6千施設の母集団から抽出した標本の回答を、各施設の客室数×日数で割ったものである。当社の推定値は、国内で追跡する約168,000施設のうちOTA上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を対象に、OTAに公開された販売在庫の消化状況から「エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合」を推定したもので、OTA未掲載の旅館・民宿・簡易宿所は含まれない。2026年7月の全国値は、観光庁の第1次速報が60.8%(第2次速報では61.0%)、当社のOTA在庫ベースが83.5%で、差は22.7ptに達するが、この差の要因は母集団・業態構成・分母の客室の扱い・時点の4点に分解でき、その分解はホテル客室稼働率、2026年7月は全国60.8% — OTA在庫ベース83.5%との差22.7ptを4要因で分解で扱っているため、本稿では再計算しない。宿泊単価の過去系列をどこまで遡れるかは過去のホテル料金を調べる方法|CPI宿泊料は1998年、都道府県別は2019年7月から遡れる、本統計における「外国人」の定義とインバウンド指標の読み方はインバウンドとは|定義と宿泊の5指標を参照されたい。

まとめ — 運営者は「回答してベンチマークを得る」、アナリストは「確定値で結論を出す」

宿泊旅行統計調査は、統計法に基づく一般統計調査として観光庁が毎月実施し、2026年1月調査からは客室数20室以上を悉皆、1〜19室を都道府県別の抽出率で標本とする設計に移行した。基幹統計調査に課される罰則付きの報告義務はないが、都道府県×業態で客室稼働率を公表する唯一の公的統計であり、自社の稼働率を同じ県・同じ業態の平均と比べられる基準値は、回答した施設の数だけ精度が上がる。調査票が届いた運営者にとって、回答は自社の市場データを整える投資として位置づけるのが合理的だろう。

数値を使う側には、二段階公表の性質を踏まえた作法が求められる。2025年の年間値は、速報値から確定値への改定で延べ宿泊者数が+763万人泊(+1.2%)上方修正され、前年比は−0.8%から+0.3%へ符号が反転した。月次でも第1次速報から第2次速報で業態別の客室稼働率が1pt近く動く例があり、細かいセルの比較ほど確定を待つ価値がある。加えて2026年分は層化基準の変更で前年比に断層が含まれうるため、長期系列と接続する際はその旨を脚注に残しておきたい。都道府県別の直近値は観光庁の集計結果(Excel)から取れ(e-StatのAPIで取れるのは2016年分まで)、市区町村別は2026年1月分から主な市区町村の実数集計が月次で載るようになった。そこに載らない市区町村は、広域市町村130区分の年次集計と自治体統計で補うことになる。この統計の作られ方を知っておくことが、公表値と自社や当社実測との差を正しく読む出発点になる。

よくある質問

Q. 宿泊旅行統計調査の調査票が届いた。回答しないと罰則があるのか。
A. ありません。統計法第13条の報告義務と第61条の罰則は基幹統計調査に限られ、宿泊旅行統計調査は一般統計調査です。ただし、回答内容は統計法に基づき統計以外の目的に使われず外部にも出ないこと、そして都道府県×業態の客室稼働率という自社の数少ない公的ベンチマークの精度が回答数で決まることを踏まえると、回答する価値は大きいといえます。

Q. 速報値と確定値、どちらを使えばよいか。
A. 年間の結論を出すときは確定値(翌年6月末〜7月公表)を使ってください。2025年分は速報値から確定値への改定で延べ宿泊者数の前年比が−0.8%から+0.3%に変わっています。月次で使う場合は、第1次速報(有効回収率3割台)より第2次速報(4割台)のほうが安定しますが、いずれも翌年の年間確定値の公表時点で各月の値が確定します。

Q. 市町村別の客室稼働率はどこで見られるか。
A. 2026年1月分から、観光庁の月次集計結果(Excel)の参考第12表に主な市区町村(2026年7月分で185市区町村)の客室稼働率が載っています。ただし回収した調査票の実数集計で、10施設以上の回収があった区分のみの掲載です。2025年分以前は、2021年分以降の年確定値に添付される「広域市町村(130区分)別集計」(延べ宿泊者数と外国人延べ宿泊者数のみ)が最小単位で、それより細かい宿泊実態は各自治体の観光入込客統計を併用するのが現実的です。

Q. 客室稼働率と定員稼働率はどう使い分けるか。
A. ホテルは客室単位で販売するため客室稼働率が実態に近く、1室に複数人が泊まる旅館や相部屋型の簡易宿所は定員稼働率も併せて見ると業態の構造を誤読しにくくなります。両方とも観光庁の集計結果(Excel、客室稼働率は第8表、定員稼働率は第6表)に都道府県×施設タイプ別で収録されています(e-Statのデータベースで取れるのは2016年分まで)。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

観光庁「宿泊旅行統計調査」の報道発表資料(2025年年間値の速報値・確定値、2026年7月分・8月分の第1次/第2次速報)、調査概要、協力依頼文書(2026年4月)、記入要領、観光統計公表予定日、e-Stat(政府統計コード00601020)、e-Gov法令検索(統計法)。OTA在庫ベースの推定稼働率は当社既存記事の公表数値を参照したのみで、本稿で新規集計は行っていない。

■ 試算前提

改定幅・改定率・有効回収率の差は、観光庁が公表した速報値・確定値の差としてホテルバンク編集部が算出した(改定率=改定幅÷速報値)。2019年差・前年差は観光庁の公表値をそのまま用いた。将来値の推計や独自の試算は行っていない。

■ 限界・留意点

月次の第1次→第2次速報の業態別改定は2026年7月分の1か月のみで、一般的な改定幅を示すものではない。2026年分は層化基準の変更により前年比に断層が含まれうる。観光庁の客室稼働率は標本調査に基づく推計値で、OTA掲載在庫から推定する稼働率とは母集団・定義が異なる。公表予定日は変更されうる。

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