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工業都市ホテルの単価ブレは京都の約3分の1 — コンビナート7市の推定成約ADRと平日稼働2026

投稿日 : 2026.10.15

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エリア・施設分析

工業都市ホテルの単価ブレは京都の約3分の1 — コンビナート7市の推定成約ADRと平日稼働2026

メトロエンジンリサーチが集計した2024年10月〜2026年9月の推定成約ADR(24ヶ月)を、コンビナートを抱える7つの工業集積都市(四日市・市原・周南・大分・堺・倉敷・神栖)のビジネスホテルについて月次で並べると、年間の最大月と最小月の比は中央値で1.37倍にとどまり、観光主導の京都(下京区)の2.28倍と比べて谷がはるかに浅かった。加えて2026年6月〜9月の在庫消化を曜日別に見ると、工業7市のうち稼働推定が可能な6市すべてで火〜木曜の稼働が土曜を上回り、京都・金沢・別府の3市ではすべて土曜が火〜木曜を上回っていた。本稿では、この「観光需要と逆位相の平日需要」が単価と稼働の両面でどの程度の安定性をもたらしているかを定量化し、背景にあるとされるプラント定期修理(定修)の季節性を一次情報で検証する。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)で、本稿はビジネスホテル業態(各市の対象施設数は表1のN)に限定して集計した。
  • 最大月/最小月比:2025年10月〜2026年9月の12ヶ月について、月次ADRの最大値を最小値で割った倍率。1.00倍に近いほど年間の波形が平坦で、「谷」が浅い。参考として最大月を1つ除いた倍率(上位2位÷最小)と変動係数(標準偏差÷平均)も併記する。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。本稿では2026年6月10日〜9月30日の日別推定値を曜日別に平均した。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設を追跡し、うち主要予約サイト上で稼働が確認できる約27,000施設を分析対象)
Key Takeaways
  • — 最大月/最小月比は中央値1.37倍 — コンビナート7市のビジネスホテル推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月)。京都(下京区)は2.28倍、金沢1.69倍、別府1.47倍。
  • — 変動係数は京都の約3分の1 — 工業7市の中央値9.3%に対し京都(下京区)は30.8%。ただし四日市(1.63倍)と神栖(1.87倍)は金沢並みに振れる。
  • — 火〜木曜が土曜を上回る平日型 — 2026年6月10日〜9月30日の曜日別推定稼働で、稼働推定が可能な工業6市すべてが該当(四日市は+7.4pt)。観光3市はすべて土曜が高い(別府−10.4pt)。
  • — 山の月が都市ごとに分散 — 工業7市の最大月は2月・3月・6月・9月・10月に散らばり、観光3市は2025年11〜12月に揃う。組み合わせると山と谷が相殺しやすい。
  • — 定修の春(5〜6月)集中は公表資料で確認、秋は仮説 — 保安検査は年1回、大規模な定期修理は2〜4年周期で、生産量とは別の論理で工事需要が発生する。

対象10都市 — 7つのコンビナート都市と3つの観光都市

まず対象の置き方を整理する。工業集積都市は、石油精製・石油化学・製鉄といった大規模プラントが臨海部に集まる7市を選び、ADRはビジネスホテル業態に限定した。堺市は市内7区のうちホテルが集まる堺区を、京都市は京都駅を含む下京区を、それぞれ市区町村レベルの集計単位として用いている。比較対象の観光主導都市には、紅葉期に単価が跳ねる京都(下京区)、北陸の広域観光拠点である金沢、温泉需要の別府を置いた。別府と大分は同じ大分県内で隣接しており、同一県内で「観光主導」と「工業主導」の波形を比べられる組み合わせになる。

表1 対象10都市と集計対象のビジネスホテル施設数
都市都道府県主要なプラント集積/比較軸ビジネスホテル N(施設)
四日市三重県四日市コンビナート(石油精製・石油化学)18
市原千葉県京葉臨海(五井・姉崎・市原地区)13
周南山口県周南コンビナート(徳山・新南陽)15
大分大分県大分臨海工業地帯(製鉄・石油精製・石油化学)33
堺(堺区)大阪府堺泉北臨海工業地帯13
倉敷岡山県水島臨海工業地帯24
神栖茨城県鹿島臨海工業地帯14
京都(下京区)京都府比較対象:観光主導(京都駅周辺)116
金沢石川県比較対象:観光主導82
別府大分県比較対象:観光主導(温泉)21

表1 出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。Nは2025年10月〜2026年9月の推定成約ADR算出に用いたビジネスホテル施設数の中央値

月次波形 — 工業7市の中央値は年間を通じて6,000〜7,400円に収まる

工業7市の月次ADRの中央値を取ると、2025年は1月の約6,100円から6月の約7,200円までの範囲に収まり、2026年も1〜9月で約6,400円〜7,400円の帯を動いている。一方で観光3市の中央値は、2025年11月に約12,200円まで上がった後、2026年6月には約7,200円まで下がった。観光3市の中央値の最大月/最小月比が1.69倍、変動係数が13.9%であるのに対し、工業7市の中央値は1.18倍・4.5%である。2026年1〜9月の平均を前年同期と比べると、工業7市の中央値は約6,800円で前年同期比+3.6%、観光3市の中央値は約9,100円で+1.9%と、単価水準では観光都市が上回るものの、伸び率では工業都市が上回った。

図1 工業7市・観光3市のビジネスホテル推定成約ADR中央値(月次、年別重ね描き)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

ここで注意したいのは、工業7市の波形が平坦に見えるのは中央値を取っているためでもある、という点である。各都市を個別に見ると、イベント起因の突出月が存在する。それを次に確認する。

都市別の谷の深さ — 最大月/最小月比は工業7市で1.25〜1.87倍、京都は2.28倍

都市別に2025年10月〜2026年9月の最大月/最小月比を並べると、工業7市は大分の1.25倍から神栖の1.87倍まで分布し、中央値は1.37倍だった。観光3市は京都(下京区)2.28倍、金沢1.69倍、別府1.47倍である。変動係数で見ても工業7市の中央値9.3%に対し京都は30.8%で、工業都市の単価のばらつきは京都のおよそ3分の1にとどまる。ただし工業7市の中で四日市(1.63倍)と神栖(1.87倍)の2市は観光都市の金沢と同等以上の倍率を示しており、工業都市ならどこでも平坦というわけではない。

図2 都市別の最大月/最小月比(2025年10月〜2026年9月、ビジネスホテル推定成約ADR)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表2 都市別のビジネスホテル推定成約ADRと年間の振れ幅(2025年10月〜2026年9月)
都市区分12ヶ月平均最大月最小月最大/最小最大1月除外変動係数26年9月 前年同月比
四日市工業¥7,56026年3月(¥10,214)26年2月(¥6,274)1.63倍1.49倍15.6%+31.1%
市原工業¥6,81826年2月(¥7,928)25年12月(¥6,208)1.28倍1.18倍7.0%+11.2%
周南工業¥5,55426年9月(¥6,326)26年3月(¥4,925)1.28倍1.26倍7.2%+10.7%
大分工業¥6,50526年3月(¥7,457)26年6月(¥5,969)1.25倍1.20倍6.6%+8.7%
堺(堺区)工業¥7,41325年10月(¥8,998)26年2月(¥6,410)1.40倍1.22倍9.3%-30.6%
倉敷工業¥7,56826年9月(¥9,104)26年6月(¥6,628)1.37倍1.29倍9.9%+27.4%
神栖工業¥7,11226年6月(¥10,823)25年10月(¥5,802)1.87倍1.63倍20.6%+6.8%
京都(下京区)観光¥14,70125年11月(¥22,408)26年6月(¥9,846)2.28倍2.21倍30.8%-6.2%
金沢観光¥8,95525年11月(¥12,186)26年2月(¥7,190)1.69倍1.48倍18.3%+16.1%
別府観光¥8,61825年12月(¥10,379)26年6月(¥7,050)1.47倍1.42倍11.2%+13.6%

表2 出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。期間は2025年10月〜2026年9月の確定月のみ。堺(堺区)の前年同月比は2025年の大阪・関西万博期間(2025年4月13日〜10月13日)を比較基準に含む

四日市の突出月は2026年3月(約10,200円)で、これは例年秋に開催されてきたF1日本グランプリが2026年は3月27日〜29日に鈴鹿サーキットで春開催となったことと時期が一致する。前年の2025年は4月(約8,300円)が上半期の山(年間の最大は8月の約8,600円)であり、F1の開催月が4月から3月へ移ったのに合わせて春の山も移動している。神栖の突出月は2026年6月(約10,800円)で、前年の2025年も5月(約8,300円)が山だった。こちらは後述する定期修理の季節と重なるが、原因を一つに断定できる材料はない。倉敷と周南は2026年9月が最大月で、どちらも前年同月比で2桁の上昇(倉敷+27.4%、周南+10.7%)を示した。四日市・市原・水島・大分の4拠点について、定修の集中度と周辺の客室ストックを突き合わせた分析はコンビナート定修年2026、四日市の宿単価3月+45.9% — 4拠点の客室ストックで扱っている。

堺(堺区)だけは前年同月比が−30.6%と大きく下がっているが、これは2025年9月が大阪・関西万博の会期中にあたり、比較基準が万博需要で押し上げられていたためである。2025年10月〜2026年9月の最大月も万博閉幕月の2025年10月(約9,000円)であり、堺の波形は工業都市の素の季節性としては読まない方がよい。万博閉幕後の2026年2月以降は約6,400〜7,800円のレンジで推移しており、この水準が堺の平常時の姿と考えられる。

山の月がばらける工業都市、揃う観光都市

表2でもう一つ目を引くのは、山と谷の「月」である。観光3市は最大月が京都・金沢とも2025年11月、別府が2025年12月と秋冬に揃い、最小月は京都・別府が2026年6月、金沢が2026年2月と、梅雨と冬に揃っている。つまり観光主導都市は互いに同じ暦で動く。これに対し工業7市の最大月は3月(四日市・大分)、2月(市原)、6月(神栖)、9月(周南・倉敷)、10月(堺)と分散し、最小月も2月・3月・6月・10月・12月に散らばる。複数の工業都市を組み合わせたポートフォリオでは、互いの山と谷が相殺しやすいということになる。観光都市は単価水準こそ高いが、全国の観光地が同じ月に山を迎えるぶん、ポートフォリオ全体の月次収入の振れは大きくなりやすい。

図3 四日市・神栖のビジネスホテル推定成約ADR(月次、2025年と2026年の重ね描き)。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

曜日別の在庫消化 — 工業6市は火〜木曜が土曜を上回り、観光3市はその逆

単価の波形に続いて、稼働を曜日で切る。メトロエンジンリサーチの推定稼働率(OTA掲載在庫ベース)を2026年6月10日〜9月30日の日別で取得し、曜日ごとに平均した。対象はビジネスホテル業態を基本とし、ビジネス業態単独では施設数が集計基準に満たない市原・堺(堺区)・神栖は全業態の推定値で代替した(表3の※)。周南は推定稼働率の算出対象施設数が基準に満たないため、この比較から外している。

結果は明確に二分された。四日市(ビジネス11施設・1,307室)は火〜木曜の平均稼働が92.5%、土曜が85.1%で、平日が土曜を7.4pt上回る。倉敷(16施設・1,973室)は88.3%対84.0%で+4.3pt、大分(12施設・1,606室)は88.4%対87.2%で+1.2pt、市原・堺・神栖も+0.9〜+1.6ptと、稼働推定が可能な工業6市はすべて火〜木曜が土曜を上回った。これに対し京都(下京区、ビジネス70施設・7,858室)は火〜木曜83.5%に対して土曜88.0%で−4.5pt、金沢(56施設・8,063室)は83.8%対89.8%で−6.0pt、別府(13施設・1,166室)は76.4%対86.8%で−10.4ptと、観光3市はすべて土曜が高い。日曜はどの都市も週の底になるが、工業都市の日曜(65.7〜75.9%)は観光都市の日曜(72.9〜78.4%)よりやや低く、工業都市の需要が「月曜から木曜に泊まり、金曜に帰る」出張・工事型であることを示している。なお京都府全体のビジネスホテルを曜日別に分解すると週後半3日が横並びになる構図があり、その詳細は京都の曜日別稼働、木曜が金曜に並ぶで確認できる。

図4 曜日別の推定稼働率(火〜木曜平均・土曜・日曜、2026年6月10日〜9月30日)。※は全業態ベース。出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成

表3 曜日別の推定稼働率(OTA掲載在庫ベース、2026年6月10日〜9月30日)
都市業態対象火〜木土日火〜木 − 土観測日数
四日市ビジネス11施設/1,307室92.5%85.1%75.9%+7.4pt113日
市原全業態※15施設/732室87.4%86.3%65.7%+1.1pt96日
大分ビジネス12施設/1,606室88.4%87.2%70.9%+1.2pt113日
堺(堺区)全業態※13施設/1,818室82.8%81.9%73.9%+0.9pt93日
倉敷ビジネス16施設/1,973室88.3%84.0%69.3%+4.3pt113日
神栖全業態※12施設/1,026室82.9%81.3%67.6%+1.6pt48日
京都(下京区)ビジネス70施設/7,858室83.5%88.0%78.4%-4.5pt113日
金沢ビジネス56施設/8,063室83.8%89.8%75.0%-6.0pt113日
別府ビジネス13施設/1,166室76.4%86.8%72.9%-10.4pt112日

表3 出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値(主要予約サイト掲載ベース)で、施設全体の実稼働率とは異なる。※ビジネス業態単独では集計基準に満たないため全業態で代替。神栖は2026年7月3日以降の48日間

観光都市のビジネスホテルが土曜に埋まるのは、レジャー客が週末に泊まるからであり、工業都市のビジネスホテルが火〜木曜に埋まるのは、プラントや工場に通う出張者・工事関係者が平日に泊まるからである。この2つの需要は曜日の軸で逆位相にあり、同じ「ビジネスホテル」という箱でも需要の出どころが異なる。月次の単価波形で観光都市が秋冬に山を迎え、工業都市が季節に依らず平坦であった構図は、この曜日構造の延長線上にある。

定期修理(定修)は春秋に集中するのか — 一次情報で確認できた範囲と仮説

工業都市の平日需要を支える要素として業界で語られるのが、プラントの定期修理(定修、SDM)である。この慣行がどこまで公表資料で裏づけられるかを確認した。まず法的な枠組みとして、高圧ガス保安法第35条第1項は高圧ガス製造事業者に対し都道府県知事が行う保安検査を年1回受けることを求めており、認定保安検査実施者(認定事業所)は自ら検査を行って記録を提出すればよいとされる(消防庁 危険物保安技術協会 検討会資料「他法令に係る認定事業所制度の概要について」)。エチレンプラントについては、2018年11月の日刊工業新聞(ニュースイッチ)の記事が、三菱ケミカルと旭化成の水島エチレン設備の定期修理は「法律により4年に1度」で、2019年5月22日〜6月25日に誘導品プラントの定修時期に合わせて臨時修理を実施すると報じている。三菱ケミカルグループは2025年8月のインタビュー記事で、一部の大型プラントでは2年ごとに約2ヶ月かけて定期修理を行い、多い日には1日4,000人近い作業員を動員すること、2024年度の茨城(鹿島)地区の定期修理で工期を9日間短縮したことを述べている。

時期については、確認できた個別事例が春に偏る。三井化学は2011年5月13日のリリースで鹿島工場(神栖市)の法定定期修理を「5月中旬から6月下旬」に予定していたと述べ、水島の臨時修理も5月下旬〜6月下旬、三菱ケミカル茨城事業所の2022年の定期修繕は5月〜8月である。製油所では、出光興産が2026年2月の決算説明で京浜製油所(川崎)の常圧蒸留装置を2026年度中に大規模定期修理で停止する計画と、四日市製油所でも2026年度に小規模な定期修理を予定していることを示した(Hydrocarbon Processing、2026年2月10日)。また北海道新聞は2025年11月、出光興産北海道製油所が2028年に予定する4年に1回の大規模定期保全工事(SDM)の工程を見直し、一部作業を前倒しして作業集中を緩和する方針を伝えており、その背景として苫小牧で複数の大型プロジェクトが重なり作業員の宿泊先の受け皿が限られる懸念を挙げている。定修が地域の宿泊需要を直接動かすことを、事業者側が認めた例といえる。

一方で、「秋にも集中する」という点は、本稿で確認できた一次情報では個別事例に乏しい。2010年代にコスモ石油四日市製油所の定期修理が11月中旬まで続いたとする海外報道はあるが、業界全体の年間分布を示す公表統計は見つからなかった。したがって本稿では「定修は春(5〜6月)に集中する傾向が複数の事業者の公表資料で確認できる。秋にも第2の山があるという点は仮説にとどまる」と整理する。なお、国内のエチレン設備稼働率は2026年4月に67%と統計開始以来の低水準にあり(石油化学工業協会データを伝えるニュースイッチ報道)、生産量そのものは縮小局面にある。それでも保安検査と定期修理は法令と設備寿命に基づいて実施され、2年〜4年周期の工事需要は生産量の増減とは別の論理で発生する点が、工業都市の宿泊需要の特徴である。

この仮説を本稿のデータに重ねると、神栖の2025年5月・2026年6月の山、堺の2025年5月〜6月の高水準(万博期間と重なるため切り分けは難しい)、倉敷の2025年5月(約9,200円)は、いずれも5〜6月に位置する。ただし大分や市原には同じ時期の山がなく、四日市の山はF1と重なる。定修の春集中が工業都市のADRを一律に押し上げるとまでは言えず、「都市ごとに、その年に定修を迎えるプラントがあれば5〜6月に平日単価が上がる」という読み方が妥当である。倉敷を含む岡山県内の市町村別の単価階層と、単価が高騰する日の分布については岡山のホテルはなぜ高い?高騰日は83日中13日 — 市町村別単価の4層構造が整理している。

運営・投資への示唆 — 逆位相の需要を持つ立地の安定性

ここまでを整理すると、工業集積都市のビジネスホテルは、第一に単価の年間波形が平坦で(最大月/最小月比の中央値1.37倍、変動係数の中央値9.3%)、第二に稼働の山が火〜木曜にあり、第三に都市ごとに山の月が異なる、という3つの性格を持つ。これらは観光主導都市の「秋冬に高く、梅雨に低く、土曜に埋まる」構造とほぼ逆位相にある。単価水準そのものは工業7市の12ヶ月平均が約5,600円〜7,600円と、京都(下京区)の約14,700円や金沢の約9,000円を下回る。したがって工業都市の価値は単価の高さではなく、月次・曜日の両面で収入の振れが小さいこと、そして観光都市と組み合わせたときに相殺効果が働くことにある。

運営面では、火〜木曜に90%前後まで埋まる四日市のような都市では、平日の在庫をいかに単価を保ちながら売るかが収益の中心になる。四日市の2026年9月は火〜木曜の高稼働とADR前年同月比+31.1%が同時に起きており、平日需要の強さを単価に転換できる余地が示されている。工事関係者の連泊・長期滞在は曜日を越えて在庫を固めるため、週末の観光需要が薄い立地でも月間の稼働を底支えする。土日に稼働が落ちる構造は、裏を返せば週末のレジャー向け料金や周辺観光との連携で伸ばせる領域が残っているということでもある。

投資面では、観光地の宿泊単価が為替や訪日客数の変動に反応しやすいのに対し、工業都市の平日需要は国内の設備保全サイクルに紐づく。保安検査は年1回、大規模な定修は2〜4年周期という法令・慣行に基づくため、短期の景況に左右されにくい需要の下限が形成される。複数の工業都市を1つのポートフォリオに組み込めば、本稿で確認したように山の月が分散するため、観光物件だけで構成した場合よりも月次収入の平準化が期待できる。もちろんプラントの統廃合は長期的な供給側の変数であり、エチレン設備の稼働率低下が示すように生産拠点の再編は続く。その意味で、工業都市の宿泊需要を評価する際は、生産量の見通しよりも「その地域で今後10年に保全・更新・新設の工事が続くか」を見る方が、本稿のデータに照らして筋が通る。

まとめ

コンビナート7市のビジネスホテル推定成約ADRは、2025年10月〜2026年9月の最大月/最小月比が中央値1.37倍と、京都(下京区)の2.28倍より谷が浅く、変動係数は京都の約3分の1にとどまった。2026年6〜9月の曜日別の推定稼働率では、稼働推定が可能な工業6市すべてで火〜木曜が土曜を上回り、観光3市ではすべて土曜が上回るという逆位相が確認できた。定期修理の春(5〜6月)集中は複数の事業者の公表資料で裏づけられる一方、秋の集中は仮説にとどまる。工業都市の宿泊需要は単価の高さではなく、観光需要と逆相関の平日需要による月次・曜日両面の安定性と、都市間で山の月が分散する性格に価値があり、観光物件と組み合わせたポートフォリオの平準化要素として評価できる。

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よくある質問

Q. 工業都市のビジネスホテルは、観光都市と比べて単価がどのくらい安定していますか?
A. 2025年10月〜2026年9月のビジネスホテル推定成約ADRで見ると、月次の最大月/最小月比はコンビナート7市の中央値が1.37倍、京都(下京区)が2.28倍でした。変動係数も工業7市の中央値9.3%に対し京都は30.8%です。ただし四日市(1.63倍)や神栖(1.87倍)のようにイベントや工事の時期で突出月が出る都市もあり、工業都市ならどこでも平坦というわけではありません。

Q. 工業都市のホテルは何曜日に埋まりやすいですか?
A. 2026年6月10日〜9月30日の曜日別推定値(OTA掲載在庫ベースで、施設全体の実稼働率とは異なります)では、稼働推定が可能な工業6市すべてで火〜木曜が土曜を上回りました。四日市は火〜木曜平均92.5%に対し土曜85.1%です。京都(下京区)・金沢・別府の観光3市は逆にすべて土曜が高く、日曜はどの都市も週の底になります。

Q. プラントの定期修理(定修)は春と秋に集中するのですか?
A. 春(5〜6月)に実施された例は、複数の事業者の公表資料や報道で確認できます。一方、秋にも山があるという点は、本稿で確認できた一次情報では個別事例が乏しく、仮説にとどまります。保安検査は年1回、大規模な定期修理は2〜4年周期で行われるため、その年に定修を迎えるプラントがある都市で平日の宿泊単価が上がる、という読み方が妥当です。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチが集計したビジネスホテルの推定成約ADR(市区町村×業態、2024年10月〜2026年9月の確定月、各市の対象は表1のN=13〜116施設)と、曜日別の推定稼働(OTA掲載在庫ベース、2026年6月10日〜9月30日の日別値)。定期修理の実施時期・周期は各社の公表資料と報道による。

■ 試算前提

最大月/最小月比と変動係数は2025年10月〜2026年9月の12ヶ月で算出した。堺市は堺区、京都市は下京区を集計単位とし、「工業7市」「観光3市」の値は各月の都市別ADRの中央値。曜日別の比較は火〜木曜の平均と土曜・日曜を対比し、市原・堺(堺区)・神栖は全業態の推定値で代替、周南は比較から外した。

■ 限界・留意点

ADR・稼働はいずれも推定値で、各施設の実際の成約価格・実稼働率とは異なる。対象が13〜18施設の市は個別施設の価格改定の影響を受けやすく、神栖の曜日別推定は48日間の観測にとどまる。堺(堺区)は大阪・関西万博、四日市はF1日本グランプリの影響を含み、定期修理の秋集中は仮説である。

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