ロイヤルホテルが2025年11月14日に公表した温泉リゾート型の新ブランド1号「ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬」は、93室・全室40㎡以上・地上8階の規模で、2028年2月末頃の開業を予定している。建築主はリバー産業で、ロイヤルホテルは運営を担う。有馬温泉の中心から半径1km圏で販売を確認できる宿は49軒・1,740室、推定成約ADRの中央値は直近12か月平均で32,700円(N=38〜41)という温泉街である。本稿では、この93室が温泉街のどの規模帯・価格帯に入るのか、そして建てる会社と運営する会社を分ける構図が開発者・運営者・既存オーナーに何を示すのかを読み解く。
本記事における指標の定義
ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。完売の観測=予約サイト上の残室数が0室になった状態を指し、本稿では宿泊日の45日前から前日までの観測だけを使う。データ出典:メトロエンジンリサーチ。
- — 93室・全室40㎡以上、延べ9,698㎡(1室あたり約104㎡)。建築主はリバー産業、運営はロイヤルホテルで、2028年2月末頃の開業予定。
- — 有馬温泉1km圏は49軒・1,740室。2017年以降の新規開業は9軒・88室(最大22室)で、93室はこの10年ほどの新規供給に匹敵する。
- — 推定成約ADRの中央値は32,700円(直近12か月平均・N=38〜41)。60〜100室×4万円超の帯に既存施設は0。
- — お盆とシルバーウィークの6日では、5万円以上の宿でも60.0%の施設・日で残室0室を観測。冬(12〜3月)の単価は夏の約1.3倍。
- — 建設費の目安は約70.6億〜78.0億円(統計単価・土地代除く)。2028年開業の同社3計画・395室はいずれも建築主が別会社。
計画の全体像 — 93室・全室40㎡以上、1室あたり延べ面積は約104㎡
まずは公表資料で計画の輪郭を確認する。ロイヤルホテルのリリースによれば、所在地は神戸市北区有馬町、神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩約10分で、客室は7タイプ・93室(予定)、全室が40㎡以上になる。シェフズテーブル付きの個室を備えたレストラン、ティー&バーラウンジ、大浴場、貸切風呂、スパが付帯し、竣工は2027年11月頃、開業は2028年2月末頃の予定である。主な想定客層は国内の40〜60代のアッパーミドル層と報じられている。
建物の規模は、兵庫県が景観条例に基づく景観影響評価の手続きで公表した資料から読み取れる。リバー産業を事業者とする「(仮称)有馬プロジェクト」は鉄骨造・地上8階、敷地面積8,339.84㎡、延べ面積9,698.37㎡で、届出は2026年7月15日、手続きは同月28日に終了した。延べ面積を93室で割ると1室あたり約104㎡となり、客室を最小の40㎡で数えても延べ面積の約38%(3,720㎡)を客室が占める計算になる。残りは大浴場やスパ、レストランといった共用部に回ると読め、宿泊特化型とは設計思想が異なる建物といえる。
| 項目 | 内容 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 名称 | ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬 | ロイヤルホテル リリース(2025年11月14日) |
| 所在地・アクセス | 神戸市北区有馬町/神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約10分 | 同上 |
| 客室 | 93室(予定)・7タイプ・全室40㎡以上 | 同上 |
| 付帯施設 | レストラン(シェフズテーブル付き個室)、ティー&バーラウンジ、大浴場、貸切風呂、スパ | 同上 |
| 建築主/運営 | リバー産業/ロイヤルホテル | 同上 |
| 工程 | 2027年11月頃竣工予定、2028年2月末頃開業予定 | 同上 |
| 建物規模 | 鉄骨造・地上8階、敷地8,339.84㎡、延べ9,698.37㎡ | 兵庫県 景観影響評価(届出2026年7月15日) |
なお、リバー産業とロイヤルホテルの間の契約が賃貸借なのか運営受託なのかは、公表資料に記載がない。本稿では「建築主と運営者が別の会社である」という確認できた事実だけを前提に話を進める。賃貸借・運営委託・フランチャイズのそれぞれで誰がどのリスクを負うのかという一般的な整理は、ホテルのリーシングとは|賃貸借・運営委託・FCの違いと収益構造をREIT開示52物件で解説にまとめている。
温泉街の供給 — 1km圏は49軒1,740室、近年の新規開業は22室以下が中心
次に、93室が入っていく温泉街の客室ストックを見る。メトロエンジンリサーチが把握する範囲で、有馬温泉の中心(金の湯付近)から半径1km圏にあり、2026年7〜9月に販売価格を観測できた宿は49軒・1,740室だった(会員制施設など予約サイトに掲載のない宿は含まない)。客室数の中央値は22室で、100室以上の4軒が615室と全体の35.3%を占める一方、29室以下の宿が26軒ある。大型の数軒と小さな宿の厚い層が同居する構成といえる。
93室という規模は50〜99室の帯(7軒・440室)に入り、客室数の順では現在の5番目に相当する。1,740室に対しては5.3%の上乗せである。ただし、近年の新規開業と比べると位置づけが変わってくる。開業年を確認できる施設のうち、2017年以降に開業して現在も販売が続く宿は9軒・88室(既存建物の改装による開業を含む)で、最も大きい宿でも22室だった。2026年9月に開いた6室の1軒を加えても10軒・94室であり、この10年ほどに温泉街へ加わった客室の合計と、今回の1棟がほぼ同じ数になる。
一方で、既存の建物を引き継ぐ動きも進んでいる。2025年6月に営業を終えた「元湯 古泉閣」は、アイコニア・ホスピタリティが引き継ぎ「有馬温泉 わらや仁泉」として2026年冬にも開業すると神戸新聞が報じた。新築の93室と、既存旅館の再生が同じ時期に重なる格好で、温泉街の上位価格帯に新しい選択肢が続けて加わる局面にある。
ポジショニング — 60〜100室で4万円を超える帯に既存施設はない
それでは、価格と規模の地図のどこが空いているのか。過去12か月(2025年9月〜2026年8月、値のある11か月)の推定成約ADRを施設ごとに平均すると、対象39施設・1,640室の中央値は32,200円、四分位範囲は18,200〜47,700円だった。神戸市北区全体の同期間平均は31,400円(N=41〜42)で、有馬町の宿に絞った月次中央値の平均32,700円とほぼ同じ水準にある。
他の主要温泉地と同じ基準で並べると、有馬の単価水準がはっきりする。市町村単位の推定成約ADR(各月のエリア中央値を2025年9月〜2026年8月で平均)では、有馬温泉を含む神戸市北区は31,400円で、箱根町の26,400円、熱海市の24,600円を上回り、比較した8市町のなかで最も高い。一方、12〜3月の平均を6〜8月の平均で割った冬夏の比は1.33倍で、カニの季節に需要が集中する豊岡市(1.65倍)に次ぐ。単価の水準が高いうえに、冬への偏りもはっきりした温泉地といえる。
| 市町村 | 推定成約ADR(月次平均) | 対象施設数(月別N) | 冬夏の比(12〜3月÷6〜8月) |
|---|---|---|---|
| 神戸市北区(有馬温泉を含む) | 31,419円 | 41〜42 | 1.33倍 |
| 箱根町(神奈川県) | 26,385円 | 170〜187 | 1.10倍 |
| 熱海市(静岡県) | 24,594円 | 99〜108 | 1.15倍 |
| 豊岡市(兵庫県・城崎温泉を含む) | 23,330円 | 93〜104 | 1.65倍 |
| 加賀市(石川県) | 19,827円 | 44〜47 | 1.23倍 |
| 草津町(群馬県) | 17,644円 | 77〜92 | 1.13倍 |
| 下呂市(岐阜県) | 17,497円 | 42〜49 | 1.23倍 |
| 別府市(大分県) | 15,660円 | 113〜126 | 1.22倍 |
| 推定成約ADR帯 | 施設数 | 客室数 | 客室数の構成比 |
|---|---|---|---|
| 2万円未満 | 11 | 405室 | 24.7% |
| 2万〜3万円 | 5 | 228室 | 13.9% |
| 3万〜5万円 | 15 | 603室 | 36.8% |
| 5万〜7万円 | 4 | 336室 | 20.5% |
| 7万円以上 | 4 | 68室 | 4.1% |
帯別に見ると、客室数が最も厚いのは3万〜5万円(15軒・603室)である。5万円以上は8軒・404室あるが、その内訳は246室と50室の2軒を除けばすべて31室以下で、7万円以上の4軒は合計68室にとどまる。つまり高単価帯は「大型1軒」と「小規模の宿」に分かれており、その中間が薄い。客室数と単価を重ねた下の図では、60〜100室で4万円を超える領域に既存施設が1軒もないことが確認できる。
密集40室以下×2.5万〜5.5万円
17施設が集まる。老舗の中小旅館が競い合う帯で、同じ規模・価格での新規参入は個性の打ち出しが鍵になる。
空白60〜100室×4万円超
該当0施設。全室40㎡以上・93室という商品仕様は、規模の面でこの空白に位置する。単価がどこに着地するかは開業後の実績を待つことになる。
高単価5万円以上
8施設・404室。246室と50室の2軒のほかは31室以下で、小規模ゆえの希少性が単価を支える構図が読み取れる。
ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬の料金は公表されておらず、実際の単価帯はまだ分からない。ただ、全室40㎡以上、シェフズテーブル、スパという仕様と「アッパーミドル層」という想定客層を踏まえれば、3万〜5万円帯の上側から5万円超にかけての領域が視野に入ると考えるのが自然だろう。その領域で60〜100室の規模を持つ宿が現在ないことは、既存施設と正面から重なりにくい位置取りといえる。開業直後の単価が市場に対してどの水準から始まるかについては、2025年に開業した137施設を追った新規開業ホテルの単価、初月から市場の1.16倍|2025年137施設・12ヶ月実測も参考になる(同記事の対象は100室以上の施設で、93室の本計画とは規模の条件が異なる)。
ピーク日の在庫 — 5万円以上の宿も6割の施設・日で残室0室を観測
空白帯に需要の裏づけはあるのか。確定済みのピーク日で、予約サイト上の残室の動きを確かめた。対象は、平常日(2026年9月9日・水曜)に予約サイトの公開枠が総客室数の30%以上あった29施設・1,084室(主要予約サイト掲載ベース)で、この顔ぶれを固定したまま、お盆の3日(8月13〜15日)とシルバーウィークの3日(9月19〜21日)の宿泊日を追った。集計に使ったのは、その宿泊日にも公開枠が30%以上あった121の施設・日(24施設)である。
121の施設・日のうち、宿泊日の前日までに残室0室を観測したのは91(75.2%)、14日以上前に0室へ達していたのは62(51.2%)だった。平常日の9月9日は29施設のうち8施設(27.6%)にとどまるため、ピーク日の逼迫ははっきりしている。期間別では、お盆の3日が71施設・日のうち43(60.6%)だったのに対し、5連休となったシルバーウィークの3日は50施設・日のうち48(96.0%)に達し、41は14日以上前に残室が0室になっていた。
価格帯別に見ても、単価の高い宿が売れ残っているわけではない。5万円以上の帯(固定29施設のうち7施設、集計対象は6施設)は35施設・日のうち21(60.0%)で残室0室を観測し、13(37.1%)は14日以上前だった。3万〜5万円の帯(同7施設、集計対象5施設)は23施設・日のうち15(65.2%)、14日以上前は7(30.4%)で、3万円未満の帯(同11施設、集計対象9施設)は41施設・日のうち33(80.5%)、14日以上前が24(58.5%)である。高単価帯でもピーク日には在庫が早めに消える日が4割近くあり、上位価格帯の客室を受け止める需要の厚みがうかがえる。なお、ここでの残室0室は予約サイトの公開枠での観測であり、公式サイトや電話予約の枠を含む館全体の満室を示すものではない点は押さえておきたい。
季節性 — 冬の山は1月38,400円、6〜7月は27,000円台
単価の季節性も、開業時期を考えるうえで欠かせない。有馬町の施設に絞った推定成約ADRの月次中央値は、2026年1月が38,400円(N=38)、2025年12月が38,000円(N=38)と冬に山があり、2026年6月は27,300円(N=39)、7月は27,700円(N=41)まで下がる。12〜3月の平均37,300円に対し6〜8月の平均は28,600円で、冬は夏の約1.3倍の水準になる。
前年同月比で見ると、冬の伸びが際立つ。2026年1月は前年同月比+27.3%、2025年12月は同+16.2%、2026年3月は同+18.7%だった一方、2026年7月は同−9.4%、8月は同−7.6%と夏は前年を下回った。冬に単価が伸び、夏は落ち着くという形が1年前より鮮明になっている。2月末頃という開業時期は冬の山の終盤に当たり、開業直後に春から夏の落ち着いた時期を迎える。裏を返せば、最初の冬の本番までに運営を磨き込む時間を取れる工程とも読める。
建てる会社と運営する会社 — 公表済みの3計画はいずれも建築主が別会社
ここからは運営の構図に目を移す。ロイヤルホテルは「中期経営計画2026『ReRISE』」(2024〜2026年度)で、ビジネスモデルを運営特化型へ転換しアセットライト経営へシフトする方針を掲げている。2023年1月には旗艦のリーガロイヤルホテル(大阪)の土地・建物をベントール・グリーンオーク・グループへ譲渡すると発表し(譲渡は同年3月)、売却後も運営を継続する形に改めた。土地建物を持たずに運営ホテルを増やすという路線の延長線上に、今回の有馬がある。
同社の2025年12月18日付リリースによれば、リーガロイヤルホテルズは2025年12月現在、国内外15ホテルで構成され、2026年以降に6軒の新ホテル開業を予定している。このうち2028年に開業を予定する3計画は、公表資料で建築主・事業主が別の会社であることを確認できた。
| 計画 | 客室数(予定) | 開業予定 | 建築主・事業主(公表資料の表記による) | 運営 |
|---|---|---|---|---|
| ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬 | 93室 | 2028年2月末頃 | リバー産業 | ロイヤルホテル |
| リーガグラン広島 | 168室 | 2028年6月末頃 | JA三井リース建物 | ロイヤルホテル |
| 沖縄・今帰仁新ホテル | 134室 | 2028年10月末頃 | 京阪電鉄不動産、セキスイハイム東海 | ロイヤルホテル |
3計画の客室数は合計395室で、建築主はマンション開発、リース系不動産、電鉄系不動産と業種が分かれている。ノワ・バイ・リーガは箱根強羅でも2028年12月末頃の開業を公表しており、同社は2029年3月末頃に千歳(227室予定)への出店も明らかにした。ブランドと運営力を持つ会社が建物を持たずに出店を重ね、資金と土地を持つ会社が建物を用意するという分担が、温泉地にも広がってきたといえる。
有馬の側から見ると、この分担は新しい。いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)の上場7法人の保有物件に、有馬町の施設は見当たらない(上場ホテルREITの保有関係データ、2026年10月3日時点)。老舗旅館を中心に所有と運営が一体の宿が多い温泉街で、外部の建築主と運営会社が組む93室は、所有と運営を分けた事例としても注目される。
事業規模の目安 — 延べ9,698㎡を統計単価で置くと70億〜78億円
本計画の事業費は公表されていない。そこで、同じ規模の建物を新築する場合の一般的な目安を、公的統計の単価で置いてみる。延べ面積9,698.37㎡は約2,934坪に当たる。国土交通省の建築着工統計に基づく2025年の鉄骨造の単価240.5万円/坪を当てはめると約70.6億円、1室あたりでは約7,590万円になる。竣工が2027年11月頃であることを踏まえ、ターナー&タウンゼントが示す建設コスト上昇率(2026年+5.3%、2027年+5.0%)を複利で織り込むと、単価は約265.9万円/坪、建設費は約78.0億円、1室あたり約8,390万円となる。
| 前提 | 坪単価 | 建設費の目安 | 1室あたり |
|---|---|---|---|
| 2025年実績ベース(鉄骨造) | 240.5万円 | 約70.6億円 | 約7,590万円 |
| 建設期間の上昇を織り込み(2027年水準) | 約265.9万円 | 約78.0億円 | 約8,390万円 |
| 高価格帯ホテルの目安(250万〜350万円) | 250万〜350万円 | 約73.3億〜102.7億円 | 約7,890万〜1億1,040万円 |
一方の売上は、単価と稼働の置き方で幅が出る。93室が365日稼働する場合の販売可能客室数は33,945室で、客室売上は下表のとおり年8.8億〜17.3億円のレンジになる。建設費の上昇は新規参入の敷居を上げる要因でもあり、既存施設にとっては当面の新規供給が限られるという追い風として働く面もある。
| 想定ADR | 稼働率(通年・仮定)65% | 稼働率(通年・仮定)75% | 稼働率(通年・仮定)85% |
|---|---|---|---|
| 4万円 | 8.8億円 | 10.2億円 | 11.5億円 |
| 5万円 | 11.0億円 | 12.7億円 | 14.4億円 |
| 6万円 | 13.2億円 | 15.3億円 | 17.3億円 |
建設費の3つの前提と想定ADRを掛け合わせ、客室売上が建設費の何%に当たるかを並べたのが下表である(稼働率は通年75%の仮定)。2027年水準の建設費78.0億円に対し、ADR4万円では客室売上は約13.1%、6万円で約19.6%となる。土地代・温泉設備・開業費を含まない建設費だけと比べても2割に届かない水準であり、料飲・スパの売上と冬の単価をどこまで積み上げられるかが事業性を左右すると読める。
| 建設費の前提 | ADR 4万円 | ADR 5万円 | ADR 6万円 |
|---|---|---|---|
| 2025年実績ベース(約70.6億円) | 14.4% | 18.0% | 21.6% |
| 2027年水準(約78.0億円) | 13.1% | 16.3% | 19.6% |
| 高価格帯の上限(350万円/坪)(約102.7億円) | 9.9% | 12.4% | 14.9% |
※上記は公的統計の単価と仮定値による簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。
立地の条件 — 地価は4年で+7.1%、約1km四方に土砂災害警戒区域が44区域
立地の基礎条件は、国土交通省の不動産情報ライブラリで確認した。有馬温泉駅から650mの地価公示地点(神戸北-24、有馬町字峠堂)は、2022年の46,700円/㎡から2026年には50,000円/㎡へと4年で+7.1%上昇し、直近3年は毎年プラスが続く。駅から800mの都道府県地価調査地点(北-3、有馬町字石倉)も2026年は36,000円/㎡で前年比+2.9%だった。
| 地点 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2026年 | 2026年の前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 地価公示 神戸北-24(有馬町字峠堂・住宅地) | 46,700円 | 46,700円 | 47,500円 | 48,800円 | 50,000円 | +2.5% |
| 地価調査 北-3(有馬町字石倉・住宅地) | 34,500円 | 35,000円 | 35,000円 | 35,000円 | 36,000円 | +2.9% |
温泉街の中心部は商業地域(容積率400%・建蔽率80%)、その周囲は第一種・第二種住居地域(同200%・60%)が広がり、準防火地域の指定がある。
温泉街を含む約1km四方に44区域(急傾斜地の崩壊37区域、うち特別警戒区域18、土石流7区域)。谷あいの温泉地らしく、敷地ごとの確認が前提になる。
1日あたり2019年3,384人、2020年2,005人、2023年3,576人。2019年の水準を上回るところまで戻っている。
計画の敷地は8,339.84㎡で、延べ面積はその約116%に当たる。商業地域の容積率400%と比べても、住居系地域の200%と比べても、敷地にゆとりを残した計画であることが分かる。景観影響評価の手続きを経ていることと合わせ、温泉街の景観や斜面地の条件に配慮した低密度の計画といえるだろう。警戒区域の指定と建築の許可の関係については、土砂災害レッドゾーンの宿71軒・711室 — 同じ敷地で建て替えられるかで全国の温泉地8商圏を対象に整理している。
居住人口と働き手 — 1km圏は1,473人、通勤圏と住まいの設計が開業準備の軸に
運営の面で押さえておきたいのが、周辺の居住人口である。国土交通省の250mメッシュ別将来推計人口によれば、半径1km圏の居住人口は2020年の1,648人から2025年推計で1,473人となり、2040年には1,108人(2020年比−32.8%)と見込まれている。2025年の高齢化率は49.0%で、15〜64歳は671人にとどまる。93室の高付加価値型の宿を動かすスタッフを近隣だけで集めるのは現実的ではなく、神戸市街地や三田方面からの通勤、あるいは社員寮の確保が開業準備の柱になると考えられる。
加えて、働き手の確保は既存の宿にとっても共通のテーマである。大型の新規開業は採用市場を刺激する一方、研修制度や待遇の水準を地域全体で引き上げるきっかけにもなりうる。
口コミに表れる有馬の強み — 温泉への言及は21.2%、客室の広さは10.3%
最後に、宿泊者が有馬の宿のどこを評価しているのかを口コミから確かめておく。ホテルバンク編集部が集計した1km圏49施設の宿泊者口コミ17,139件(直近24か月、2024年10月〜2026年9月)では、温泉そのものへの言及が3,638件(言及率21.2%)にのぼり、客室の広さが1,770件(同10.3%)、露天風呂が1,382件(同8.1%)、貸切風呂が1,048件(同6.1%)あった。露天風呂付き客室(591件)や記念日利用(647件)への言及も一定数あり、「…貸切風呂があって良かった」「お風呂もご飯もとても…」といった声が寄せられている。
| 言及された項目 | 言及件数 | 言及率 |
|---|---|---|
| 温泉(泉質・湯そのもの) | 3,638件 | 21.2% |
| 客室の広さ | 1,770件 | 10.3% |
| 露天風呂 | 1,382件 | 8.1% |
| 貸切風呂 | 1,048件 | 6.1% |
| 記念日での利用 | 647件 | 3.8% |
| 露天風呂付き客室 | 591件 | 3.4% |
全室40㎡以上、大浴場と貸切風呂、スパという新ホテルの仕様は、宿泊者がすでに有馬で評価している要素と重なっている。温泉と客室の広さという土地の強みを、ホテル型のサービスでどう表現するかが見どころになる。
読者別の示唆 — 開発・運営・承継・融資それぞれの着眼点
ここまでを整理すると、有馬の93室は「近年の新規開業10軒分に相当する客室を1棟で供給し、規模と単価の空白帯に入る計画」と要約できる。立場ごとの着眼点を挙げておきたい。
| 立場 | 着眼点 |
|---|---|
| 温泉地で開発を検討するデベロッパー | 60〜100室×4万円超のように、規模と単価を重ねて空いている帯を探す手法は他の温泉地にも応用できる。1室あたり延べ約104㎡という共用部を厚く取る設計は、建設費の目安(1室7,590万〜8,390万円)と合わせて事業計画の出発点になる。 |
| 運営受託を広げたいオペレーター | 建築主がマンション開発、リース、電鉄系と多様化している。土地と資金を持つ異業種に対し、ブランドと運営体制を示して組む余地は温泉地でも広がっているといえる。 |
| 旅館の承継・再投資を検討するオーナー | 5万円以上の帯でもピーク日の6割で残室0室を観測しており、上位価格帯の需要は厚い。小規模ゆえの希少性は引き続き強みであり、客室の広さや貸切風呂への投資は口コミの評価軸とも合致する。 |
| 地域金融機関 | 所有と運営を分ける案件では、建物側の返済原資が賃料か運営成果かで見るべき指標が変わる。冬と夏で単価が約1.3倍開く季節性を、返済計画の前提に織り込んでおきたい。 |
いずれの立場でも、開業後の最初の冬(2028年12月〜2029年3月)に単価と稼働がどこに着地するかが、空白帯の大きさを測る最初の材料になるだろう。
まとめ
ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬は、93室・全室40㎡以上・地上8階、建築主リバー産業・運営ロイヤルホテルという計画で、2028年2月末頃の開業を予定している。有馬温泉1km圏の客室ストックは49軒・1,740室で、2017年以降の新規開業は9軒・88室、最大でも22室だった。推定成約ADRの中央値は32,700円、60〜100室で4万円を超える帯に既存施設はなく、5万円以上の宿でもピーク日には6割の施設・日で残室0室を観測している。所有と運営を分けた出店は同社の2028年の3計画・395室に共通しており、温泉地の開発に新しい組み方を示す事例として、開業後の実績が注目される。
よくある質問
Q. ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬はいつ開業しますか。
A. ロイヤルホテルの公表では、2027年11月頃に竣工し、2028年2月末頃に開業する予定です。
Q. 客室数と広さはどのくらいですか。
A. 客室は7タイプ・93室(予定)で、全室が40㎡以上です。建物は鉄骨造・地上8階、延べ面積は9,698.37㎡と公表されています。
Q. 建てる会社と運営する会社は同じですか。
A. 別の会社です。建築主はリバー産業、運営はロイヤルホテルで、両社の契約形態は公表資料に記載がありません。
Q. 有馬温泉の宿の単価はどのくらいですか。
A. 1km圏の推定成約ADR(中央値)は直近12か月平均で32,700円(N=38〜41)です。1月は38,400円、6〜7月は27,000円台と季節差があります。
将来日程のADRに関する注意:本記事のうち2026年9〜12月のADRは、調査時点で公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下がる可能性がある点にご留意ください。確定月(2026年8月まで)と同列には比較していません。
集計方法
客室ストックは、有馬温泉の中心(北緯34.7975度・東経135.2480度)から半径1km以内にあり、2026年7〜9月に販売価格を観測できた施設を、施設単位で名寄せして数えた(49軒・1,740室)。推定成約ADRは、2025年9月〜2026年8月の確定月のうち値のある月の平均で、算出できる業態の39施設を対象にした。ピーク日の在庫は、2026年9月9日に公開枠が総客室の30%以上だった29施設・1,084室を固定し、8月13〜15日と9月19〜21日の宿泊日について、宿泊日の45日前から前日までの残室数(室ベース)を集計した。口コミは直近24か月の17,139件が対象である。数値はいずれも2026年10月4日時点の調査値。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
客室ストック・推定成約ADR・ピーク日の残室推移はメトロエンジンリサーチの集計(OTA公開価格・公開在庫ベース)。計画概要はロイヤルホテルのプレスリリースと兵庫県の景観影響評価、地価・用途地域・土砂災害警戒区域・駅別乗降客数・将来推計人口は国土交通省の公表データ、建設費単価は国土交通省「建築着工統計」と Turner & Townsend の予測による。
■ 試算前提
建設費は延べ9,698.37㎡(約2,934坪)×鉄骨造の坪単価240.5万円(2025年)、および2026年+5.3%・2027年+5.0%の上昇を複利で織り込んだ約265.9万円で置いた。客室売上は93室×365日×想定ADR(4万〜6万円)×稼働率(通年65〜85%の仮定)。土地代・温泉設備・什器備品・開業前費用、料飲・スパ等の売上は含まない。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは公開価格からの推定値で、実際の成約価格とは異なる。残室0室は予約サイトの公開枠での観測で、館全体の満室を示すものではない。予約サイトに掲載のない宿(会員制施設の一部など)は集計に含まない。本計画の料金・事業費・契約形態は公表されておらず、試算はいずれも一般的な目安である。2026年9〜12月のADRは調査時点の掲載水準に基づく推定で、確定値ではない。
■ 市場データ
メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(N=39施設)、客室ストック(N=49施設・1,740室)、ピーク日の残室推移(N=29施設・1,084室)
ホテルバンク編集部調べ — 宿泊者口コミの言及分析(N=17,139件)
■ 政府統計・公的データ
兵庫県「景観条例に基づく景観影響評価」((仮称)有馬プロジェクト、届出2026年7月15日)
国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示・地価調査・用途地域・土砂災害警戒区域・駅別乗降客数
国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)
国土交通省「建築着工統計」
■ 企業の公表資料・業界レポート
株式会社ロイヤルホテル「ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬」開業に関するプレスリリース(2025年11月14日)
株式会社ロイヤルホテル 沖縄・今帰仁新ホテルに関するプレスリリース(2025年12月18日)
株式会社ロイヤルホテル「リーガグラン広島」に関するプレスリリース(2026年5月14日)
株式会社ロイヤルホテル「中期経営計画2026『ReRISE』」(有価証券報告書の記載)
Turner & Townsend「Trends shaping Japan’s construction market in 2026」
■ ニュース
トラベルボイス「ロイヤルホテル、温泉リゾート型の新ブランドを有馬に」(2025年11月17日)
TRAICY「ロイヤルホテル、『ノワ・バイ・リーガ 神戸有馬』を2028年2月末頃開業」(2026年1月27日)
TRAICY「『リーガグラン千歳』、2029年3月に開業へ」(2026年7月26日)
トラベルボイス「リーガロイヤルホテル(大阪)の土地・建物譲渡と運営継続」(2023年1月23日)
神戸新聞「古泉閣を引き継ぎ『わらや仁泉』開業へ」(2026年7月2日)
