JR帯広駅南口の旧長崎屋帯広店跡地で、ホテル・分譲マンション・商業施設を一体で整備する再開発が動き出した。中核となるのが、勝毎ホールディングスが2026年5月14日に公表した「サウナ&スパリゾート 北海道ホテル 帯広駅南」(全130室、2028年春開業予定)である。モール温泉の大浴場と多彩なサウナ、サウナ付き・露天風呂付きの客室を備える計画で、駅徒歩1分の立地に温泉地型の商品を持ち込む構成になっている。本稿では、帯広市の推定成約ADR7,743円と十勝川温泉を抱える音更町の14,920円という2つの価格帯のあいだに、この130室がどう位置づくのかを、駅1km圏の価格帯別ストック、季節性、推定稼働率、複合街区の構成から読み解く。
本記事における指標の定義
| ADR(平均客室単価) | 各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。施設単位の集計では2025年10月〜2026年9月のうち6か月以上の推定値がある施設の月平均を用いました。 |
| OCC(稼働率) | エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。 |
| ブッキングカーブ | チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。本稿ではLT45〜1のみを用います。 |
| 駅1km圏 | JR帯広駅を中心とする半径1km。2026年7〜9月に価格が観測された宿泊施設を数えています(ホテル営業を終了し業態変更した施設を除く)。 |
| データ出典 | メトロエンジンリサーチ&コンサルティング |
- — 130室・2028年春開業予定:JR帯広駅南口の旧長崎屋跡地約25,000㎡に、ホテル・分譲185戸・商業3棟を一体で整備。延床は1室あたり約69㎡と共用部に厚い設計。
- — 7,743円と14,920円:帯広市の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月平均)は十勝川温泉を抱える音更町のほぼ半分。季節の振れ幅も2.01倍対1.56倍と大きい。
- — 駅1km圏で1.5万円以上は0施設:28施設2,826室のうち1万〜1.5万円帯に5施設914室。新ホテルは中位帯では既存と並び、上位帯では駅前で最初の施設になる。
- — 夏から秋の推定稼働は9割超:帯広市の2026年7〜9月は月平均92〜96%(OTA掲載在庫ベース)。金曜と日曜が相対的に低く、温浴目的の滞在で埋める余地がある。
- — 上位帯の客室は3割強増える:2027年11月末完成予定のホテル十勝屋185室と合わせて315室。駅前で1万円以上の帯で売る既存914室に対し+34.5%となる。
計画の骨格 — 街区約25,000㎡にホテル130室・分譲185戸・商業3棟
まずは計画の全体像を一次資料で確認しておきたい。勝毎ホールディングスの発表によれば、ホテルの所在地は帯広市西4条南12丁目3番地、敷地面積6,200.20㎡、延床面積8,974.08㎡で、2026年5月に着工し、2028年春の開業を予定している。事業主は合同会社帯広開発、開発代行は東電不動産、設計監理は久米設計、施工は宮坂建設工業、運営は勝毎ホールディングスが担う。建設通信新聞は建物をS造10階建てと報じており、合同会社帯広開発には登寿ホールディングス、中道リース、北海道電力などが出資しているという。
街区全体は旧長崎屋帯広店(2024年3月閉館)の跡地約25,000㎡で、ホテルのほかに2つの機能が並ぶ。ひとつはエスコン、フージャースコーポレーション、JR北海道の3社が分譲する「ミッドレジデンス帯広駅前」で、鉄筋コンクリート造14階建て・総戸数185戸、入居開始は2028年3月下旬の予定である。もうひとつが商業施設「ナンモナンモ帯広」で、Impress Watchの報道では3棟・延床5,827㎡に飲食などの店舗が入り、513台を収容する自走式駐車場も整備される計画になっている。
| 項目 | 内容 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 名称 | サウナ&スパリゾート 北海道ホテル 帯広駅南 | 勝毎ホールディングス発表(2026年5月14日) |
| 客室数 | 全130室(サウナ付き客室・露天風呂付き客室を含む) | 同上 |
| 客室タイプ | スイート63〜71㎡/デラックスツイン42㎡/スタンダードツイン25㎡ | ホテル公式サイト |
| 敷地・延床 | 敷地6,200.20㎡・延床8,974.08㎡(S造10階建て) | 同社発表/建設通信新聞 |
| 温浴 | モール温泉の大浴場、複数種のサウナ、貸切サウナ、水風呂、外気浴 | 同社発表・公式サイト |
| 付帯施設 | レストラン、カフェラウンジ、クラブラウンジ、24時間フィットネス | 公式サイト |
| 事業主/運営 | 合同会社帯広開発/勝毎ホールディングス | 同社発表 |
| 開業時期 | 2028年春(予定) | 同社発表 |
| 住宅 | ミッドレジデンス帯広駅前 RC造14階・185戸(2028年3月下旬入居開始予定) | エスコン発表(2026年2月19日) |
| 商業 | ナンモナンモ帯広 3棟・延床5,827㎡、駐車場513台 | Impress Watch(2025年10月) |
数字のなかで目を引くのは、1室あたりの延床面積である。8,974.08㎡を130室で割ると約69㎡となり、宿泊特化型で一般的な1室25〜35㎡前後の水準を大きく上回る。大浴場とサウナ、レストラン、2種類のラウンジといった共用部に床を厚く配分した設計と読め、客室売上だけでなく温浴・飲食の利用を収益源に組み込む施設といえる。なお総事業費は公表されていないため、本稿では投資額や利回りの推計は行わない。
帯広市と音更町の単価 — 7,743円と14,920円、季節の振れ幅も違う
それでは、この130室が入っていく市場はどのような価格構造なのか。メトロエンジンリサーチのデータによると、帯広市の推定成約ADRは2025年10月〜2026年9月の12か月平均で7,743円(N=32施設、各月28〜36施設)だった。一方、十勝川温泉を抱える音更町は14,920円(N=9施設)と、帯広市のほぼ2倍の水準にある。隣接する幕別町は11,937円(N=4〜5施設)で、両者の中間に位置している。なお2026年9月は調査時点の掲載水準に基づく推定を含むため、確定済みの11か月(2025年10月〜2026年8月)に限ると帯広市の平均は7,270円になる。この帯広市の単価水準を全国393市区のなかで位置づけた分析は、帯広・旭川・福井・岡山のホテルはなぜ高い?を参照されたい。
年間を通した形を比べると、両者の違いは水準だけではない。2025年の暦年で見ると、帯広市は8月の10,958円が山、3月の5,451円が谷で、山と谷の比は2.01倍だった。これに対し音更町は8月19,314円、3月12,368円で1.56倍にとどまる。駅前のビジネス需要中心の市場は夏から秋に単価が大きく伸び、冬から春に下がる。温泉地の宿は年間を通じて1.2万円台を下回らず、冬の1月にも16,000〜18,000円近い水準をつけている。温泉と食事を伴う滞在は、雪の季節にも単価の下支えになっていると読める。
前年同月比で見ると、帯広市の2026年1〜8月の平均は7,088円で、前年同期の7,022円に対して+0.9%とほぼ横ばいだった。月別には6月が前年同月比+16.1%、8月が同−13.0%と振れており、夏の単価は年によって上下する。開業後の単価計画を立てる際には、ピーク月の水準を単年で決め打ちせず、複数年の幅で見ておきたい。
道内のほかの都市と並べると、帯広の位置がもう少しはっきりする。同じ集計で道内の地方中核6市を比べると、帯広市の12か月平均7,743円は北見市(6,897円)に次いで低く、函館市8,591円・旭川市8,617円・釧路市9,159円・苫小牧市9,203円を下回る。季節の振れ幅(2025年の月別ADRの最高月÷最低月)は帯広市の2.01倍が旭川市の2.31倍に次いで大きい。一方、温泉地は登別市1.20倍・音更町1.56倍・洞爺湖町1.70倍と、いずれも帯広市より振れが小さかった。ただし北見市(1.29倍)のように温泉地でなくても振れの小さい市場はあり、温泉の有無だけで季節性が決まるわけではない点には留意したい。
| 区分 | 市町 | 12か月平均ADR | N(施設) | 2025年の最高月 | 2025年の最低月 | 最高÷最低 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 地方中核市 | 帯広市 | ¥7,743 | 28〜36 | 8月 ¥10,958 | 3月 ¥5,451 | 2.01倍 |
| 地方中核市 | 旭川市 | ¥8,617 | 35〜38 | 7月 ¥13,528 | 4月 ¥5,844 | 2.31倍 |
| 地方中核市 | 函館市 | ¥8,591 | 80〜88 | 8月 ¥12,474 | 3月 ¥6,737 | 1.85倍 |
| 地方中核市 | 釧路市 | ¥9,159 | 26〜31 | 8月 ¥11,988 | 3月 ¥6,922 | 1.73倍 |
| 地方中核市 | 苫小牧市 | ¥9,203 | 13〜19 | 8月 ¥10,607 | 1月 ¥6,596 | 1.61倍 |
| 地方中核市 | 北見市 | ¥6,897 | 26〜29 | 9月 ¥7,332 | 1月 ¥5,674 | 1.29倍 |
| 温泉地 | 音更町(十勝川温泉) | ¥14,920 | 9 | 8月 ¥19,314 | 3月 ¥12,368 | 1.56倍 |
| 温泉地 | 洞爺湖町 | ¥13,785 | 13〜15 | 8月 ¥17,206 | 4月 ¥10,148 | 1.70倍 |
| 温泉地 | 登別市 | ¥18,894 | 14〜15 | 12月 ¥20,754 | 3月 ¥17,288 | 1.20倍 |
駅1km圏の価格帯別ストック — 1.5万円以上は0施設、1万円以上は5施設914室
次に、駅前の市場を施設単位で分解する。JR帯広駅から半径1kmには、2026年7〜9月に価格が観測された宿泊施設が28施設・2,826室ある。このうち12か月のADRを算出できた25施設・2,741室を価格帯別に並べると、7,500円〜1万円の帯に10施設・1,307室が集まり、5,000円〜7,500円の8施設・455室と合わせて全体の約3分の2(客室ベースで64.3%)を占めていた。施設別ADRの中央値は8,411円である。
| 12か月ADRの価格帯 | 帯広駅1km圏 | 帯広市その他・近郊市街地 | 十勝川温泉・幕別温泉 |
|---|---|---|---|
| 5千円未満 | 2施設/65室 | 3施設/88室 | — |
| 5千〜7.5千円 | 8施設/455室 | 7施設/302室 | — |
| 7.5千〜1万円 | 10施設/1,307室 | 1施設/34室 | 1施設/43室 |
| 1万〜1.25万円 | 3施設/549室 | — | 2施設/52室 |
| 1.25万〜1.5万円 | 2施設/365室 | — | 1施設/170室 |
| 1.5万〜2万円 | — | 1施設/117室 | 3施設/361室 |
| 2万円以上 | — | — | 3施設/146室 |
| 合計 | 25施設/2,741室 | 12施設/541室 | 10施設/772室 |
| 12か月ADRの中央値 | ¥8,411 | ¥6,538 | ¥16,938 |
「駅前と温泉地のあいだ」にあたる1万〜1.5万円の帯は、駅1km圏でも空白ではない。1万〜1.25万円に3施設・549室、1.25万〜1.5万円に2施設・365室があり、合計5施設・914室がすでにこの帯で売っている。客室数100〜270室規模の、大浴場や朝食を訴求する施設が中心である。一方で、1.5万円以上は駅1km圏に1施設もなく、この帯にあるのは駅の南西約1kmに立つ森のスパリゾート 北海道ホテル(117室、勝毎ホールディングス運営)と、約8km離れた十勝川温泉の旅館群に限られる。十勝川温泉・幕別温泉の10施設・772室は、中央値が16,938円で、1.5万円以上が6施設を占めていた。
つまり、新ホテルが向き合う市場は二層になっている。1万〜1.5万円帯では駅前の既存5施設と同じ棚に並び、1.5万円以上では駅1km圏で最初の施設になる。客室構成がスタンダードツイン25㎡からスイート63〜71㎡まで幅を持つのは、この二層にまたがって売る設計と整合的である。ここで押さえておきたいのは、1.5万円以上の帯に駅前の施設がないという事実は、その帯に需要があることまでは示していない点だ。温泉地の単価は夕食付きの滞在が支えており、駅前で同じ水準を取るには、温浴と客室の体験価値で食事の分を補う組み立てが要る。
競合分布 — 駅北側に集まる既存ストックと、南口の新街区
地図に落とすと、既存の28施設は駅北口の西1条〜西3条・南9〜12丁目に集中しており、南口側は数施設にとどまる。新ホテルの敷地は駅から約240mの南口正面で、既存の集積とは線路を挟んだ反対側に立つ。北口の飲食街への距離は既存施設より遠くなるが、街区内に商業3棟が併設されるため、館内と街区で滞在が完結する構成になっている。
供給面では、同じ時期にもう1件の計画が進んでいる。TRAICY(2026年8月5日)によれば、ホテル十勝屋が西2条南9丁目の旧北洋銀行跡地に地上14階建て・185室のホテルを建設しており、2026年6月1日に着工、2027年11月末の完成を予定している。最上階にはモール温泉の大浴場とサウナ、露天風呂を備える計画という。2件を合わせると315室で、駅1km圏の既存2,826室に対して+11.1%にあたる(新ホテル単独では+4.6%)。両計画とも温泉とサウナを前面に出しており、1万円以上の帯で売る既存914室を基準にすると、315室は+34.5%の上乗せになる。駅前の上位価格帯は、2028年にかけて選択肢が一気に厚くなる局面を迎える。
※計画段階の情報は各社発表・報道と国土交通省「建築物動態統計調査」の確認申請ベースで把握したもの。調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値として参照。
推定OCCとブッキングカーブ — 夏から秋は9割超、金曜と日曜に余地
需要の強さは在庫の消化からも確認できる。帯広市の推定OCC(稼働率、OTA掲載在庫ベース・推定)は、2026年7月が92.3%、8月が92.6%、9月が95.6%だった(対象20施設/客室2,304室、主要予約サイト掲載ベース)。ブッキングカーブを見ると、宿泊日の45日前の時点で7月は70.2%、8月は72.7%、9月は75.5%まで消化が進んでおり、そこから1日前にかけて20ポイント前後を積み上げる形になっている。直前の2週間で9〜10ポイント伸びる点は、出張と個人旅行の間際予約が厚い駅前市場らしい動きである。
曜日別に並べると、補完の余地が見えてくる。2026年7〜9月の92日間を平均すると、木曜が96.1%、水曜が95.3%、火曜と土曜が95.2%と高く、金曜は91.0%、日曜は88.7%にとどまった。平日の中日に出張需要が集まり、週末は土曜の1泊に寄るという、ビジネス主体の市場の典型的な形である。温浴とサウナを目的にした滞在は金曜発や日曜泊を選びやすく、既存市場で相対的に空いている曜日に需要を足す方向に働くと考えられる。
※推定OCCはOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる。対象は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する施設で、夏から秋の3か月の観測である点にも留意したい。冬から春の谷については、前掲の月別ADRが示す季節性を参照されたい。
温浴・サウナの単価効果 — 既刊の全国集計から読めること
温泉とサウナは単価にどの程度効くのか。この点は当サイトの既刊で全国データを集計している。ビジネスホテル4,925施設を対象にした分析では、大浴場に温泉とサウナの表記がそろう施設(574施設)は、同一市区町村・客室規模・開業年代・ブランドをそろえた比較で推定成約ADRが+9.3%高かった(95%区間+6.5%〜+12.1%)。この差は市区町村の価格帯で異なり、ビジネスホテルの中央値が7,000〜9,000円の中位都市では+14.8%と大きい。帯広市はまさにこの中位都市の帯に入る。
客室側の設備についても参照できる数字がある。旅館・リゾートホテル792軒で、同じ宿・同じ宿泊日・同じ食事条件の最安プラン同士を比べた分析では、露天風呂付客室の掲載価格は一般客室を中央値で約1万円(+23.4%)上回っていた。ただし、いずれも全国の既存施設で観測された差であり、設備が単価を押し上げる因果を示すものではない。帯広駅南の新ホテルの単価がこの率で決まると読むこともできない。温浴フル型の差が中位都市で大きいこと、客室露天の上乗せが定額に近いことの2点を、価格設計の参考線として置いておくのが妥当だろう。
参考として、130室の客室売上が単価と稼働の組み合わせでどう動くかを単純計算で示す。これは算術上の感度表であり、同ホテルの計画値や当社の予測ではない。
| 年間ADRの仮定 | 稼働70% | 稼働80% | 稼働90% |
|---|---|---|---|
| ¥10,000 | 3.32億円 | 3.80億円 | 4.27億円 |
| ¥12,500 | 4.15億円 | 4.75億円 | 5.34億円 |
| ¥15,000 | 4.98億円 | 5.69億円 | 6.41億円 |
| ¥17,500 | 5.81億円 | 6.64億円 | 7.47億円 |
表から分かるのは、単価の1段(2,500円)と稼働の10ポイントが近い大きさで売上を動かすことである。ADR12,500円・稼働80%(4.75億円)と、ADR15,000円・稼働70%(4.98億円)の差は約0.2億円にすぎない。厳密には単価1段のほうがやや効きが大きく、ADR12,500円・稼働80%を起点にすると、単価を1段上げれば+0.95億円、稼働を10ポイント上げれば+0.59億円となる。冬春に単価が下がる市場では、通年のADRを高く置くよりも、谷の時期の稼働を温浴の集客で底上げする設計のほうが売上の安定に効きやすいといえる。
立地と商圏 — 隣接地の公示地価は5年で+20.2%、居住人口は緩やかに減少
立地の評価に移る。国土交通省の地価公示によると、街区の西隣にあたる標準地「帯広5-8」(西5条南12丁目、商業地域・容積率400%)の2026年の価格は1㎡あたり65,500円で、前年比+3.1%、2021年の54,500円からは+20.2%上昇した。駅北側の中心商業地「帯広5-1」(西2条南9丁目、容積率600%)は109,000円で、同じ5年間の上昇率は+6.9%にとどまる。大通南10丁目の「帯広5-7」は72,000円で+30.0%だった。水準では北口の中心部が高いが、伸びでは駅周辺の広い範囲に上昇が及んでおり、南口の再開発はその流れのなかで進んでいる。
商圏の人口はどうか。国土交通省の250mメッシュ将来推計人口によれば、帯広駅を中心とする半径1.5kmの居住人口は2020年の24,296人から2025年に23,359人、2040年には20,457人(2020年比−15.8%)へ減る見通しで、2025年時点の65歳以上の比率は32.2%である。経済センサスでは、駅から半径1kmの事業所は354、従業者は2,893人、うちオフィス系の従業者比率は19.5%だった。ただし地方都市では町丁字単位の就業データが小さめに出る傾向があるため、この数字は下限に近い目安として扱いたい。また居住人口は国勢調査ベースの常住人口であり、来街者や通過人口は含まない。
| 指標 | 値 | 範囲・時点 |
|---|---|---|
| 居住人口 | 23,359人 | 駅半径1.5km・2025年推計 |
| 2040年の居住人口 | 20,457人(2020年比−15.8%) | 同上 |
| 65歳以上の比率 | 32.2% | 同上・2025年推計 |
| 事業所数 | 354 | 駅半径1km・2021年 |
| 従業者数(うちオフィス系比率) | 2,893人(19.5%) | 同上 |
居住人口が減る商圏で、駅前に185戸の分譲住宅と温浴を核にしたホテルを同時に置く意味はここにある。住宅は街区に定住人口を足し、商業とホテルの飲食・温浴は宿泊客だけでなく住民と周辺の就業者の日常利用を受け止める。宿泊需要が細る冬春に、地元利用が温浴と飲食の稼働を支える構図をつくれるかどうかが、複合開発としての相互補完の要点になる。
投資・開発の視点 — この計画から読み取れる3つの示唆
価格帯の上端を駅前につくる
駅1km圏の25施設はADR1.5万円未満に収まる。温泉地の単価帯を駅前に持ち込む商品は、既存の集積と正面から重ならない位置取りになる。
谷の季節を温浴で埋める
帯広市のADRは山と谷で2.01倍、音更町は1.56倍。季節の振れを抑える要素として温泉・サウナを組み込む設計は、通年の売上を均す方向に働く。
住宅・商業と需要を持ち合う
185戸の住民と駐車場513台の来街者が、ホテルの飲食・温浴の平日利用を支える。宿泊と日常利用の両輪で共用部の床を回す発想である。
ここまでを整理すると、地方中核都市の駅前で宿泊特化型の供給が一巡したあとに、温浴を核とする滞在型の商品が上位価格帯を開きにいく動きと位置づけられる。帯広では2027年末から2028年春にかけて、温泉付きの新築が2件・315室続く。金融機関や運営会社にとっては、1万円以上の帯の客室が3割強増える前提で、既存施設を含めた価格帯ごとの需給を見直す時期といえる。既存の上位施設にとっても、大浴場やサウナの訴求を磨き直す機会になり得る。
一方で、留意しておきたい点もある。第一に、夏の単価は年によって振れており、2026年8月の帯広市は前年同月比−13.0%だった。第二に、推定OCCが9割を超えるのは観測した夏から秋の3か月であり、冬春の稼働は別に確かめる必要がある。第三に、温泉地の単価は夕食付きの滞在が前提で、駅前の泊食分離型とは売り方が異なる。開業までの1年半で、近隣の計画の進捗と冬季の需要を継続して観測しておきたい。
将来日程のADRに関する注意:本記事の2026年9月以降のADRは調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前の調整で下がる可能性がある点にご留意ください。開業時期・計画内容は各社の発表時点のもので、今後変更される場合があります。
まとめ
帯広駅南口の「サウナ&スパリゾート 北海道ホテル 帯広駅南」は、帯広市の7,743円と音更町の14,920円という2つの価格帯のあいだに、温泉とサウナを備えた130室を置く計画である。駅1km圏の既存ストックは28施設・2,826室で、1万円以上で売る施設は5施設・914室、1.5万円以上は1施設もない。夏から秋の推定OCCは9割を超える一方、単価は冬春に半分近くまで下がり、金曜と日曜には稼働の余地が残る。分譲185戸と商業3棟を併設する街区の構成は、こうした谷を地元利用と温浴で埋めにいく設計と読める。2027年末には近隣で185室の温泉付きホテルも完成予定で、駅前の上位価格帯がどこまで厚みを持てるかが、開業後の焦点になるだろう。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
推定成約ADR・推定稼働率・ブッキングカーブは、メトロエンジンリサーチ&コンサルティングがOTA上の公開価格と掲載在庫から推計した集計値です(市町別の月次集計、および駅1km圏・帯広市その他・十勝川温泉/幕別温泉の施設別集計N=47施設)。計画概要は勝毎ホールディングス・エスコン等の発表資料と報道、地価は国土交通省の地価公示、人口は国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)、事業所・従業者は経済センサス-活動調査(2021年)によります。
■ 試算前提
表4の客室売上は130室×365日×稼働×ADR(客室売上のみ・税抜相当)の算術上の感度であり、同ホテルの計画値や当社の予測ではありません。施設別ADRは2025年10月〜2026年9月のうち6か月以上の推定値がある施設の月平均、市町のADRは月別推定値の12か月単純平均です。季節の振れ幅は2025年1〜12月の月別ADRの最高月÷最低月、駅1km圏は各施設の所在地の位置情報からJR帯広駅までの距離で判定しています。
■ 限界・留意点
推定稼働率は総客室の30%以上を主要予約サイトに掲載する帯広市の20施設が対象で、本稿で用いたのは2026年7〜9月の観測です。冬から春の稼働は同じ方法では示せないため、月別ADRの季節性で代替しています。2026年9月のADRは調査時点の掲載水準に基づく推定を含みます。総事業費が公表されていないため、投資額・利回りは推計していません。音更町・幕別町は対象施設数が1桁で、1施設の価格変化が平均を動かしやすい点にも留意が必要です。
■ 市場データ
| メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(帯広市N=32施設・音更町N=9施設ほか、施設別集計N=47施設)、推定稼働率・ブッキングカーブ(帯広市・対象20施設/客室2,304室) |
■ 政府統計・公的データ
| 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(2021年・2026年) |
| 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口) |
| 総務省・経済産業省 経済センサス-活動調査(2021年) |
| 国土交通省「建築物動態統計調査」 |
■ 事業者発表・ニュース
