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旅館業法とは?営業許可の種類・ホテル営業との違いと2026年最新の要点

投稿日 : 2026.05.24 更新日 : 2026.09.24
旅館業法とは — 1室営業解禁と2026年新規開業554軒データ

旅館業法とは、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を都道府県知事等の許可制で規律する法律(昭和23年法律第138号)である。営業種別は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つで、届出制・年180日上限の住宅宿泊事業法(民泊新法)とは制度が異なる。現行ルールの土台となったのが2018年6月15日施行の改正で、ホテル営業10室・旅館営業5室と定められていた最低客室数の基準が撤廃され、1室から旅館・ホテル営業の許可取得が可能になった。床面積は1室7㎡以上(ベッド設置時9㎡以上)、玄関帳場(フロント)は条件付きで未設置が認められ、ICTを活用した本人確認が許容された。その後も2023年12月の法改正(宿泊拒否事由の整理等)、2025年4月の運用見直し(自動チェックイン機器による本人確認の追加)と緩和が続き、民泊新法(年180日制限)と簡易宿所営業の中間にあった「小規模・通年営業」業態が365日営業できる「旅館・ホテル」として定着しつつある。2026年の新規開業554軒では町家・ヴィラ・古民家など小規模7業態が約6割を占める。本記事では旅館業法の基本と改正の要点を整理したうえで、この構造シフトをデータで読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):OTA等で公開されている販売価格の平均値。実際の成約価格とは異なります(成約ADRより平均+25〜30%高い傾向)。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きプランを含む)。
  • 新規開業データ:メトロエンジンリサーチが追跡するうち、OTA掲載確認ベースで設立日が2026年に登録された施設。OTA掲載は開業の数ヶ月前から出るため、直近以降の月は今後の掲載で増加する可能性があります。
  • 業態カテゴリ:施設名・公式情報から判定。旅館業法上の許可種別(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業/住宅宿泊事業)とは異なります。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(N=554施設、2026年新規開業)

旅館業法とは — 対象・営業種別・許可の枠組みをわかりやすく解説

旅館業法(昭和23年法律第138号)とは、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業=「旅館業」を規律する法律である。旅館業の適正な運営を確保し、公衆衛生と国民生活の向上に寄与することを目的とする(同法第1条)。ホテル・旅館はもちろん、ゲストハウス・カプセルホテル・一棟貸しヴィラなど、反復継続して宿泊料を受けて人を泊める事業は原則としてこの法律の対象となり、営業には都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可が必要だ(同法第3条)。実務上の窓口は所管の保健所である。

旅館業法上の営業種別は、同法第2条で次の3つに区分されている。

営業種別 法律上の定義(第2条) 主な該当例
旅館・ホテル営業施設を設け、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業のうち、簡易宿所営業・下宿営業以外のものホテル、旅館、一棟貸しヴィラ・町家(個室提供型)
簡易宿所営業宿泊する場所を多数人で共用する構造・設備を主とする施設での営業ゲストハウス、ホステル、カプセルホテル、山小屋
下宿営業1ヶ月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて人を宿泊させる営業下宿

出典:e-Gov法令検索「旅館業法」第2条・第3条よりホテルバンク編集部作成

混同されやすいのが住宅宿泊事業法(民泊新法)との違いである。民泊新法は住宅を活用した宿泊事業を対象とし、許可ではなく「届出」で始められる代わりに、年間提供日数が180日以内に制限される。一方、旅館業法の許可を取得すれば営業日数の上限はなく通年営業が可能だ。つまり「届出だけで手軽に・年180日まで」の民泊新法か、「保健所の許可を取って・365日営業」の旅館業法か、という選択構造になっている。2018年6月15日施行の改正で最低客室数の基準が撤廃されたことにより、これまで規模要件がネックだった1室・1棟の小規模施設でも旅館・ホテル営業の許可取得が現実的な選択肢となった。以下、改正の中身と2026年時点の最新ルールをデータとともに詳しく見ていく。

旅館業法の主な改正と運用見直しの経緯を、2026年8月時点で整理すると次のとおりである。本記事で「1室営業解禁」と呼ぶ最低客室数基準の撤廃は2018年6月15日施行の改正によるもので、2026年に法律・政令・省令の新たな改正があったわけではない(2026年8月31日時点、e-Gov法令検索の改正履歴で確認)。

施行日 根拠 主な内容
2018年6月15日旅館業法の一部を改正する法律(平成29年法律第84号)、同日施行の施行令・施行規則改正「旅館営業」「ホテル営業」を「旅館・ホテル営業」に統合/最低客室数(ホテル10室・旅館5室)を撤廃し1室から許可可能/床面積1室7㎡以上(ベッド設置時9㎡以上)/条件付きでフロント未設置可・ICT本人確認を許容/無許可営業の罰金上限を3万円から100万円へ引き上げ
2023年12月13日令和5年改正法(旅館業法等の一部を改正する法律)カスタマーハラスメントに当たる要求を繰り返す者の宿泊拒否を可能に/特定感染症の発生期間中の協力要請/宿泊者名簿に「連絡先」を追加し「職業」を削除/事業譲渡時に新規許可なしで営業者の地位を承継
2025年4月1日「旅館業における衛生等管理要領」改正(令和7年3月11日付 厚生労働省健康・生活衛生局長通知)フロント対面に代わる本人確認に、自動チェックイン機器等で事前共有情報と本人確認情報を照合する方式を追加(従業員との面接不要)/外国人宿泊者の旅券の写しは電子的保存でも可と明確化。技術的助言のため自治体によっては条例改正が必要
2026年(8月時点)—法律・政令・省令の新たな改正なし。墨田区(2026年4月)など自治体の上乗せ条例の見直しが個別に進む

出典:e-Gov法令検索(旅館業法・同施行令・同施行規則の改正履歴)、厚生労働省「平成29年旅館業法の改正について」「令和5年旅館業法の改正について」「フロント要件の見直しに係るリーフレット」よりホテルバンク編集部作成

改正の核心3点 — 5分で押さえる施行内容

現行の許可要件の骨格をつくったのは、2018年6月15日施行の改正旅館業法(平成29年法律第84号)と、同日施行の施行令・施行規則の改正である。2018年6月15日施行の核心は次の3つに集約され、2026年現在もこの枠組みが小規模業態の許可取得の前提になっている。

第一に、「旅館営業」と「ホテル営業」が「旅館・ホテル営業」に統合された。これまで存在した「和室か洋室か」「畳か絨毯か」といった内装基準による区分は実質的に消滅し、許可種別が一本化された。営業者にとっては「ホテル」「旅館」のブランディングを業態の実態に合わせて自由に選択できるようになった。

第二に、最低客室数の基準が完全撤廃された。これまでホテル営業は10室以上、旅館営業は5室以上が必要だった。改正後は1室からの営業が可能となり、最低床面積は1室7㎡以上(ベッド設置時は9㎡以上)と規定された。京都の町家1棟、伊豆の古民家ヴィラ1棟、沖縄離島のコテージ1棟が、簡易宿所ではなく「旅館・ホテル」として営業許可を取得できるようになった。

第三に、玄関帳場(フロント)の設置義務が緩和された。①緊急時に約10分以内に職員が駆けつけられる体制、②ビデオカメラによる常時確認、③鍵の適切な受け渡しの3条件を満たせばフロント未設置が認められる。さらにテレビ電話・タブレット端末を用いたICT本人確認が正式に許容され、無人運営が法令上明文化された。宿泊者名簿の保存期間も「3年以上」から「3年」に統一された。2025年4月1日からは衛生等管理要領の改正により、自動チェックイン機器等を通じて事前共有情報と本人確認情報を照合する方式も選択可能となり、従業員との面接を要しない本人確認の類型が加わった。

項目 改正前 改正後(2018/6/15〜・現行)
営業種別旅館営業/ホテル営業旅館・ホテル営業(統合)
最低客室数ホテル10室/旅館5室1室から営業可能
最低床面積客室全体で33㎡以上1室7㎡以上(ベッド9㎡以上)
玄関帳場受付台1.8m以上必須条件付きで未設置可
本人確認対面が原則ICT(テレビ電話等)OK
宿泊者名簿保存3年以上3年

出典:厚生労働省「平成29年旅館業法の改正について」、e-Gov法令検索「旅館業法施行令」、観光経済新聞(2018年2月13日付)よりホテルバンク編集部作成

2026年新規開業554軒の業態内訳 — 小規模7業態が約6割

メトロエンジンリサーチが追跡する2026年の新規開業ホテル554軒の業態構成を見ると、改正旅館業法の恩恵を最も受ける業態が既に市場の中心になりつつあることが分かる。貸別荘248軒、町家21軒、コテージ18軒、ペンション6軒、ホステル25軒、グランピング4軒、民宿7軒を合計すると329軒となり、新規開業全体の約59%に達する。とりわけ貸別荘は単独で全体の45%を占めており、平均1.9室/軒という超小規模業態が市場のメイントレンドになっている。

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、N=554施設)

注目すべきは1室あたり平均客室数のコントラストである。ビジネスホテル(87軒)の平均は118.6室、シティホテル(24軒)は163.5室、リゾートホテル(28軒)は115.8室と、大型施設の供給は依然として続いている。一方で貸別荘・町家・民宿・ペンションは平均1.9〜4.1室/軒と、ほぼ全てが現行法では「旅館営業5室基準」を満たせなかった規模感だ。これらの施設は従来「簡易宿所」として許可を取得するか、住宅宿泊事業法(民泊新法)の年間180日制限を受け入れるかの二択を迫られてきた。

都道府県別の分布を見ると、新規開業の集中エリアと小規模業態の集積エリアが明確に重なる。沖縄県(42軒・貸別荘22軒)、京都府(33軒・町家20軒)、静岡県(34軒・貸別荘21軒)、北海道(31軒・貸別荘20軒)、山梨県(28軒・貸別荘21軒)の上位5県では、小規模業態が地域開業の60〜80%を占める。特に京都府の町家21軒のうち20軒が京都市内に集中しており、改正旅館業法のインパクトを最も受ける地域は京都市と推察できる。 実際に沖縄離島で1棟ヴィラ業態が立ち上がる現場の手触りは沖縄・備瀬の一棟貸しヴィラ「備瀬縁梵」開業レポートを参照されたい。

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース)

町家・貸別荘業態の市場規模と単価ポテンシャル

2026年新規開業に限らず、既にOTA上で稼働が確認できる町家・貸別荘・古民家系の小規模業態は全国で約1,900軒に達する。内訳は貸別荘826軒、町家663軒、コテージ406軒であり、これに既存の旅館7,758軒・民宿1,833軒・簡易宿所カテゴリのホステル1,044軒を加えると、改正旅館業法による業態転換ポテンシャルを持つ施設は1万軒超に上る。

これら小規模業態が集中するエリアのADR水準を見ると、2026年4月時点で京都府¥48,300(前年同月比+14.6%、1,486施設)と、全国主要都市の中で突出して高い。京都市は町家業態が独自の「一棟貸し・古民家」プレミアム市場を形成し、すでに2名1室で5〜10万円台の価格帯が定着している。北海道¥29,700(前年同月比+10.2%)、沖縄県¥27,200(同+6.2%)も二桁近い上昇率を維持しており、リゾート系小規模業態の単価ポテンシャルは高い。

出典:メトロエンジンリサーチ(2026年4月・1室2名・税込)

業態転換による単価押し上げ余地はどの程度か。観光経済新聞や行政書士事務所の解説資料を総合すると、簡易宿所から旅館・ホテル営業への切替によって期待できる効果は以下の3点である。第一にOTA上での表示順・分類が「旅館・ホテル」カテゴリに格上げされ、検索結果での視認性が向上する。第二に「ホテル」「旅館」を施設名に冠せるようになり、ブランディング上の優位性が生まれる。第三に365日通年営業が法令上明確化され、住宅宿泊事業法の180日制限から完全に切り離される。

これらを総合すると、業態転換により客室単価の押し上げ余地が生じる可能性がある。ただし、これは「ホテル・旅館」名乗りによるプレミアムであり、実際の価値創造(インテリア・サービス・体験設計)が伴わなければ達成できない上限値である点に留意したい。 「1日1組・1棟貸し」型の古民家宿が地方都市でどのように成立しているかは滋賀・長浜の古民家宿「つなぐ宿喜兵衛」開業レポートが具体的なヒントを与えてくれる。

経営者目線で見る「1室営業化」のメリット3軸

改正旅館業法の施行により、小規模事業者・個人投資家が得る経営的メリットを3つの軸で整理する。

軸1:固定資産税の住宅特例リスクの再評価。建築基準法上、住宅を旅館・ホテル営業の施設として転用する場合、用途変更により住宅用地の固定資産税特例(小規模住宅用地で課税標準1/6、一般住宅用地で1/3)が外れるリスクがある。ただし用途変更面積が200㎡以下の場合は確認申請が不要となっており(2018年改正)、町家1棟・古民家1棟といった小規模物件は手続き負担が大幅に軽減される。改正旅館業法と組み合わせることで、1室・小面積での旅館業許可取得の経済合理性が高まる。

軸2:建築基準法の用途変更コストの相対的軽減。建築基準法上はホテル・旅館・簡易宿所の区別はなく全て「ホテル等」の用途とされる。つまり改正旅館業法による「旅館・ホテル営業」への許可種別変更そのものは建築基準法上の追加コストを生じない。ここに玄関帳場撤廃・ICT本人確認導入が重なることで、無人運営型の小規模旅館・ホテルが法令上完全に合法化された。

軸3:客層拡大とチャネル戦略。住宅宿泊事業法(民泊新法)下では「ホテル予約サイトでの上位掲載」や「インバウンド団体客の受入」に制約があった。旅館・ホテル営業への切替によりOTA・GDS・法人契約への接続可能性が広がる。特にビジネス利用、ペット同伴プラン、ワーケーション長期滞在といった「住居型・連泊型」客層は、180日制限のない通年営業形態とフィットする。改正により1室営業の通年運営型小規模ホテルという新カテゴリーが法的に成立する意義は大きい。 民泊新法側の規制強化と合わせて見るとさらに見通しが立ちやすい。違法民泊排除によるADR押し上げシナリオは違法民泊排除システム2026年度稼働とADR押し上げ試算で詳細に試算している。

業態転換ロードマップ ステップ 所要期間目安
①現状確認現行許可(簡易宿所/民泊/無許可)の確認、建築基準法上の用途確認、消防法適合状況の確認2-4週間
②設備要件確認床面積(1室7㎡・ベッド9㎡以上)、フロント代替ICT設備の検討、緊急時駆けつけ体制の設計2-4週間
③保健所事前相談所管保健所への図面持参、自治体独自条例の確認(東京都豊島区・墨田区等は上乗せ規制あり)2-6週間
④許可申請・切替旅館・ホテル営業許可申請、消防検査、保健所現地検査、許可証交付後にOTA等のリスティング更新1-3ヶ月

出典:厚生労働省、各自治体保健所資料よりホテルバンク編集部作成

投資家向けインプリケーション — 残る壁とチャンス領域

改正旅館業法は規制緩和の方向性であるが、消防法・建築基準法・自治体独自条例の壁は残存する。具体的には、収容人員30人以上の建物では消防設備士による点検義務、自動火災報知設備・誘導灯の設置、避難経路の確保が依然として必要だ。小規模1室業態であっても、建物全体としての用途変更(住居→ホテル等)が発生する場合、消防同意・建築確認が伴うケースがある。

また自治体ごとの上乗せ条例には注意が必要である。東京都墨田区は2026年4月から「営業者の常駐義務・近隣説明会義務」を強化、豊島区も2026年12月施行予定の上乗せ条例改正案が進行中だ。京都市も独自に「住居専用地域での旅館業許可の制限」を維持しており、改正旅館業法の規制緩和が自動的に全国一律で適用されるわけではない点に留意したい。

これらを踏まえると、1室営業解禁の恩恵を最も受ける投資領域は次の3つに集約される。第一にペット同伴特化型の小規模ヴィラ。住宅宿泊事業法では受入が困難だったペット同伴客を、通年・1室単位で受け入れられる業態は希少性が高い。第二にワーケーション・長期滞在型コテージ。1〜3週間単位の連泊需要は180日制限を意識せず365日設計でき、リモートワーク客層の取り込みに有利だ。第三に地方の古民家ブティック旅館。観光地以外の里山・離島・温泉地に分散する1〜3室の古民家を「旅館・ホテル」として再ブランディングすることで、客単価のステップアップが可能になる。

2026年新規開業に占める小規模7業態の都道府県分布(沖縄26、京都28、静岡23、北海道23、山梨23、東京20、福岡19)は、これらの投資領域がすでに地理的に立ち上がっていることを示している。特に京都市の町家、伊豆・箱根エリアの一棟貸し、沖縄離島のヴィラ、山梨富士五湖周辺のコテージは、改正旅館業法の追い風を最も受けるエリアとして注目されよう。

出典:メトロエンジンリサーチ(OTA掲載確認ベース、小規模7業態合計)

まとめ — 構造シフトの本質と残された論点

2018年6月15日施行の改正旅館業法は、最低客室数1室・フロント条件付き不要・ICT本人確認許容という3点で宿泊業の構造を書き換え、2025年4月の運用見直し(自動チェックイン機器による本人確認)がそれを後押ししている。とりわけ町家・貸別荘・古民家・コテージといった小規模業態は、簡易宿所営業から旅館・ホテル営業へ切り替えることで、単価押し上げのアップサイドが視野に入る。すでに2026年新規開業554軒のうち約59%がこれらの業態であり、業界全体の重心が「小規模・通年・一棟貸し」にシフトしていることが、メトロエンジンリサーチのデータからも読み取れる。

ただし、改正旅館業法はあくまで国の規制緩和であり、消防法・建築基準法・自治体独自条例という3重の壁が残存する点を見落としてはならない。墨田区・豊島区・京都市の上乗せ条例の動向、消防設備・避難経路の物理的制約、そして用途変更時の固定資産税負担の試算は、業態転換を検討する全ての事業者にとって必須の論点である。改正は新しい競争領域を切り拓くと同時に、コンプライアンス対応の精度を一層問う制度変更でもある。

当面の注目ポイントは、2026年下期の保健所許可申請件数の動向、町家集中エリア(京都市)と離島・リゾート(沖縄・山梨・静岡)の業態転換ペース、そして「ホテル」「旅館」名乗りに切り替えた既存簡易宿所のOTA上の単価変化となる。これらのデータは2026年下期から2027年上期にかけて顕在化する見込みであり、ホテルバンクでも継続的にトラッキングしていく。

旅館業の営業許可を取得する流れ — 事前相談から許可まで

旅館業の営業許可(旅館業法第3条)は、施設所在地を所管する保健所を窓口として取得する。申請書を出せば自動的に下りるものではなく、構造設備が政令で定める基準に適合しているかの審査と、保健所職員による実地の施設検査を経て許可される。標準的な流れは次の5ステップである。

ステップ 内容
① 事前相談施設の平面図等を持参し、所管の保健所に相談する。旅館業法の構造設備基準への適合に加え、都市計画法上の用途地域、建築基準法(用途変更の要否)、消防法(消防法令適合通知書)の確認もこの段階から並行して進める
② 許可申請申請書に構造設備の図面等を添えて保健所へ提出する。申請手数料は各自治体の条例で定められており金額が異なる(本記事で確認した自治体の例では2万円台〜5万円台)
③ 学校等への意見照会施設が学校(大学を除く)・幼保連携型認定こども園・児童福祉施設等の敷地の周囲おおむね100メートル以内にある場合、都道府県知事等は許可を与える前に教育委員会等へ意見を求める(同法第3条第4項)
④ 施設検査保健所職員が完成した施設に立ち入り、構造設備が基準に適合しているかを検査する
⑤ 許可審査・検査で基準適合が確認されると許可される。許可には公衆衛生上・善良の風俗の保持上必要な条件が付されることがある(同条第6項)。不許可の場合は理由を付した書面で通知される(同条第5項)

出典:e-Gov法令検索「旅館業法」第3条、各自治体保健所の公表資料よりホテルバンク編集部作成

許可を与えないことができるのは、①構造設備が政令の基準に不適合、②設置場所が公衆衛生上不適当、③申請者が欠格事由に該当(拘禁刑以上の刑に処せられ3年未経過、旅館業法違反の許可取消しから3年未経過、暴力団員等など)、④学校等の敷地の周囲おおむね100メートル以内で「清純な施設環境」を著しく害するおそれがある場合である(同法第3条第2項・第3項)。また、旅館業法の許可とは別に、前述のとおり自治体の上乗せ条例・消防法・建築基準法への対応が必要になる点にも注意したい。

旅館業法に関するよくある質問(FAQ)

Q. 旅館業法とはどのような法律ですか?

A. 宿泊料を受けて人を宿泊させる営業(旅館業)を規律する法律です(昭和23年法律第138号)。営業には都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可が必要で、営業種別は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つに区分されます。実務上の申請窓口は所管の保健所です。

Q. 旅館業法の「1室営業解禁」などの改正は、いつから適用されていますか?

A. 最低客室数基準(ホテル10室・旅館5室)の撤廃、1室7平方メートル以上(ベッド設置時9平方メートル以上)への床面積要件の再定義、条件付きのフロント未設置とICT本人確認の許容は、2018年6月15日施行の改正旅館業法(平成29年法律第84号)と同日施行の施行令・施行規則改正によるものです。その後、2023年12月13日施行の改正で宿泊拒否事由の追加や宿泊者名簿の記載事項見直し(連絡先を追加・職業を削除)が行われ、2025年4月1日からは衛生等管理要領の改正で自動チェックイン機器等による本人確認が新たに認められました。2026年8月時点で、法律・政令・省令の新たな改正はありません。

Q. 旅館業法と民泊新法(住宅宿泊事業法)の違いは何ですか?

A. 旅館業法は「許可制」で、許可を取得すれば年間の営業日数に上限はなく通年営業が可能です。一方、民泊新法は「届出制」で手続きは簡易ですが、年間提供日数が180日以内に制限されます。2018年改正で1室からの旅館・ホテル営業許可が可能になっているため、通年営業を目指す町家・古民家・ヴィラなどの小規模施設にとって旅館業法の許可取得が現実的な選択肢になっています。

Q. 旅館業法の許可が要らないケースはありますか?

A. あります。旅館業は「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されるため、宿泊料を受け取らない場合や、借主が生活の本拠を置くアパート・賃貸住宅のような貸室業は旅館業に当たらず、許可は不要です。有償で繰り返し泊める場合でも、住宅宿泊事業法の届出をした民泊(年間180日以内)と国家戦略特区の認定を受けた特区民泊は旅館業法の許可を取らずに営業できます。このほか、イベント開催時に自治体の要請で自宅等を提供する「イベント民泊」、自治体の計画に位置付けられた移住希望者向け空き家への短期居住、体験学習の指導料のみを受け取る農家民泊などは旅館業法の適用外とされています。該当するかどうかの最終判断は所管の保健所への確認が必要です。

Q. 旅館業法に違反して無許可で営業した場合の罰則は?

A. 許可を受けずに旅館業を営んだ場合、6ヶ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科されます(旅館業法第10条)。罰金の上限は2018年6月15日施行の改正で3万円から100万円へ大幅に引き上げられました。このほか、宿泊者名簿の備付け等の義務違反や、保健所への報告拒否・立入検査の拒否などには50万円以下の罰金(同法第11条)が定められており、法人の従業者が違反した場合はその法人にも罰金刑が科されます(同法第13条・両罰規定)。

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参考資料・出典一覧

■ 政府・公的データ

■ 業界メディア・専門家解説

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ — 2026年新規開業554施設のOTA掲載確認ベースデータ、業態カテゴリ別客室数・所在地・開業月分布
  • メトロエンジンリサーチ — 2026年4月時点 都道府県別ADR(東京・京都・大阪・北海道・沖縄・福岡、N=1,486〜1,777施設)
  • メトロエンジンリサーチ — 全国稼働中ホテル(カテゴリ別軒数、N=21,162施設)

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