野村不動産と野村不動産ホテルズは2026年10月15日、新宿区新宿一丁目で建設中のライフスタイルホテル「ノーガ新宿御苑」を2027年7月15日に開業すると発表し、同日から公式サイトで宿泊予約の受付を始めた。ブランド4施設目となる同館は全72室で、客室はすべて30㎡以上、全室に新宿御苑を望むバルコニーが付く。最上階の14階には約70㎡の「御苑スイート」2室、13階には約25mのテラスを持つルーフトップバー、1階にベーカリーとカフェ・バーラウンジ、2階に薪火を中心に据えたレストランを配する計画だ。
本稿では、この72室が入る新宿御苑前1km圏の宿泊市場を供給・価格帯・需給・地価の4面から定量化し、全室御苑ビューという商品がどの価格帯に位置取れるのかを検証する。結論を先に示すと、1km圏で推定成約ADRを算出できる32施設・3,905室のうち、ADR4万円以上は3施設・390室にとどまり、その375室を占める小田急ホテルセンチュリーサザンタワーは全館改装のため2028年春まで宿泊営業を休止している。ノーガ新宿御苑が開業する2027年7月の時点で、1km圏の4万円以上帯に残るのは7室と8室の小規模2施設だけになる計算で、50〜300室規模のアッパーミドル帯は実質的に空白である。
既刊との線引き:新宿の宿泊市場はノーテッドコレクション新宿207室で歌舞伎町中心の1km圏を、小田急サザンタワー375室の休止で新宿南口の1km圏を扱った。野村不動産のホテル開発は浅草二丁目の2件で触れている。本稿は新宿御苑前を基準点とする1km圏に絞り、既存ノーガホテル3施設の推定成約ADRをブランドのベンチマークとして、72室の位置取りを読む。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
- LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。LT0=当日。本稿のブッキングカーブはLT45〜LT1のみを用いています。
- 掲載価格=OTA上の全プラン平均(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)。推定成約ADRを算出できない業態の施設に限って用い、ADRとは呼びません。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
- ■新宿御苑前1km圏の客室は2016年の4,327室から2026年の5,648室へ10年で+30.5%。ただし2024年以降は年+65室以下にとどまり、建築計画の届出ベースでも1km圏の案件は延床1,000㎡前後の小規模が中心である。
- ■1km圏32施設の推定成約ADR中央値は¥15,700。2.5〜4万円帯に7施設1,154室が並ぶ一方、4万円以上は3施設390室で、2027年7月時点では小規模2施設・15室しか稼働していない見込みだ。
- ■既存のノーガホテル上野(127室)の直近12ヶ月の推定成約ADRは¥63,500で前年同期比+21.3%、台東区中央値の4.4倍。清水京都(207室)は¥32,600で東山区中央値の1.4倍。ブランドは立地の区中央値を大きく上回る価格帯で運営されてきた。
- ■新宿区の推定成約ADRは2025年10月〜2026年5月の8ヶ月がいずれも前年超えだったのち、6〜8月は−5.8〜−8.3%と反転した。9月は+1.1%、稼働率(推定)は90.1%と高位で、単価より量が先に戻る局面にある。
- ■計画地は商業地域(容積率700%・建蔽率80%)。最寄りの地価公示地点(新宿5-22、約270m)は2026年に230万円/㎡・前年比+15.0%で、1km圏の商業地14地点のうち10地点で前年比二桁の上昇が続く。
プロジェクト概要 — 72室・全室30㎡以上・御苑ビューの商品設計
公表されている計画概要を整理する。野村不動産が所有する土地にホテルを建て、竣工後は野村不動産ホテルズが「ノーガホテル」ブランドで運営する直営方式で、2025年11月の着工発表時点では「2027年夏」とされていた開業時期が、今回の発表で7月15日に確定した。所在地は新宿区新宿一丁目6番13号、丸ノ内線新宿御苑前駅出口1から徒歩2分、新宿三丁目駅から徒歩7分、JR新宿駅南口から徒歩13分である。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 名称 | ノーガ新宿御苑(NOHGA HOTEL ブランド4施設目) | 野村不動産ホテルズ 2026-10-15 |
| 開業日 | 2027年7月15日(木)。宿泊予約は2026年10月15日から公式サイトで受付開始 | 同上 |
| 所在地・アクセス | 新宿区新宿1-6-13。新宿御苑前駅徒歩2分、新宿三丁目駅徒歩7分、JR新宿駅南口徒歩13分 | 同上 |
| 敷地面積 | 620.24㎡(187.6坪) | 同上 |
| 構造・階数 | 鉄骨造 地上14階 | 野村不動産 2025-11-06 |
| 客室 | 72室。全室30㎡以上、全室に新宿御苑を望むバルコニー。14階に約70㎡の御苑スイート2室(幅約13mの窓) | 野村不動産ホテルズ 2026-10-15 |
| 飲食・共用部 | 1階ベーカリー/カフェ・バーラウンジ、2階 薪火を中心としたレストラン(1〜2階をらせん階段で接続)、13階ルーフトップバー(約25mのテラス) | 同上 |
| 事業形態 | 野村不動産が開発・土地所有、野村不動産ホテルズが運営 | 野村不動産 2025-11-06 |
| ブランドの展開 | 上野127室(2018年)、秋葉原118室(2020年)、清水京都207室(2022年)に続く4施設目。都内で5棟の開発計画を推進、2030年までに全国累計8棟の予定 | 野村不動産 2025-11-06 |
出典:野村不動産ホテルズ プレスリリース(2026年10月15日)、野村不動産・野村不動産ホテルズ ニュースリリース(2025年11月6日)より作成
延床面積と総事業費は事業者から公表されていない。参考として、国土交通省「建築物動態統計調査」をもとにした建築計画の届出情報には、同一敷地(敷地620.24㎡・地上14階・2025年10月着工・2027年6月竣工予定)の案件として延床5,045.63㎡が記録されている。届出段階の数値であり事業者の公表値ではないが、この値を72室で割ると1室あたりの延床は約70㎡となり、ベーカリー・レストラン・ルーフトップバーといった共用部の比重が高い構成であることがうかがえる。本稿では総事業費や建設費の推定は行わない。
商品面で注目すべきは、72室という規模と客室30㎡以上・全室バルコニーという仕様の組み合わせである。後述する1km圏の既存施設は、2.5万円以上の価格帯でも客室数100〜375室の中大型が中心で、全室が特定の景観に向いた小規模なライフスタイルホテルは見当たらない。野村不動産ホテルズは「全客室から新宿御苑を望めるホテルは国内初」としており(同社リリース、未来トレンド研究機構調べ・2026年10月時点)、景観そのものを商品価値の中核に置く設計といえる。
1km圏の供給 — 10年で+30.5%、2024年以降は年+65室以下に鈍化
計画地を中心とする半径1km圏の宿泊施設ストックは、メトロエンジンリサーチが把握する範囲で2026年時点63施設・5,648室である。2016年の35施設・4,327室から10年で+1,321室(+30.5%)増えたが、増加の大半は2019年までに集中しており(2016〜2019年で+709室)、2024年から2026年にかけては5,583室→5,648室と年+65室以下の微増にとどまる。新規供給の圧力は、少なくともOTA掲載が確認できる範囲では、ここ数年ほとんど働いていない。
図表1 新宿御苑前1km圏の宿泊施設ストック推移(各年末時点で開業済・閉館前の施設)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(OTA掲載確認ベース、N=63施設)
一方で、既存ストックの中には稼働していない客室も含まれる。1km圏で最大の上位帯施設である小田急ホテルセンチュリーサザンタワー(375室)は、全館リニューアルのため宿泊営業を2026年10月1日チェックアウトをもって休止し、2028年春のグランドオープンを目指している(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー「改装のお知らせ」)。ノーガ新宿御苑が開業する2027年7月は、この375室が市場から抜けている期間にあたる。また、新宿三丁目のセントラルホテル東京(129室)も建替え計画(旧メトロ会館・旧セントラルホテル建替え、地上16階・ホテル158室・2029年5月竣工予定)の対象で、現在は価格データが観測されていない。
将来の供給は、国土交通省「建築物動態統計調査」をもとにした建築計画の届出情報で確認できる。1km圏で用途にホテルを含む案件は、ノーガ新宿御苑を除いて15件・延床合計約54,240㎡である(図表2は、このうち歌舞伎町二丁目の小規模3件〈延床710〜2,619㎡、2026年12月〜2027年7月竣工予定〉を除く12件を掲載)。ただし客室数が記録されているのは1件(158室)のみで、残りは延床600〜4,500㎡の小規模案件が大半を占める。計画地から70mの新宿1-7-21では14階・延床1,110㎡のホテルが2027年6月竣工予定で、同じ月にほぼ隣接して開業する。
| 所在地 | 距離 | 階数 | 延床(㎡) | 竣工予定 | 建築主 |
|---|---|---|---|---|---|
| 新宿1-7-21 | 70m | 14 | 1,110.65 | 2027年6月 | 第一リアルター |
| 新宿1-12-14 | 185m | 8 | 969.25 | 2027年5月 | 三幸アセットマネジメント |
| 新宿1-18-15 | 239m | 13 | 1,951.14 | 2028年6月 | 大和ハウス工業 |
| 新宿1-11-26 | 276m | 10 | 685.47 | 2027年9月 | 中日新聞社 |
| 新宿2-19-19 | 487m | 12 | 4,217.04 | 2028年5月 | 第一リアルター |
| 新宿5-11-4 | 510m | 13 | 4,540.00 | 未定 | 日鉄興和不動産 |
| 新宿4-4-23(事務所・ホテル・飲食) | 539m | 13 | 9,999.80 | 2030年3月 | 野村不動産 |
| 新宿5-9-19 | 548m | 8 | 820.31 | 2027年7月 | マーベリックユニオン |
| 新宿5-36 | 575m | 10 | 1,200.00 | 2027年1月 | 大和ハウス工業 |
| 新宿3-34-4(旧メトロ会館・旧セントラルホテル建替え、158室) | 749m | 16 | 14,088.00 | 2029年5月 | 新宿企業・大和ハウス工業・フジタ |
| 四谷3-11-3 | 774m | 14 | 1,944.88 | 2028年12月 | 南海不動産 |
| 新宿3-18-1(ホテル・物販) | 852m | 12 | 8,658.38 | 2029年9月 | ヒューリック |
図表2 新宿御苑前1km圏の建築計画(用途にホテルを含む案件、ノーガ新宿御苑を除く)。出典:国土交通省「建築物動態統計調査」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成 ※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加で件数・延床は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照。客室数は多くが未記載のため合算していない
価格帯の構造 — 4万円以上は3施設390室、50〜300室のアッパーミドルは空白
1km圏のうち、直近12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)に6ヶ月以上の推定成約ADRを算出できるホテル・旅館は32施設・3,905室である(カプセルホテルと価格が観測できない施設を除く)。その中央値は¥15,700で、新宿区全体の直近12ヶ月平均(¥16,100)とほぼ同じ水準にある。価格帯別に見ると、1.5万円未満に13施設1,182室、1.5〜2.5万円に9施設1,179室、2.5〜4万円に7施設1,154室、4万円以上に3施設390室と、4層がほぼ等しい客室数で積み上がる構造だ。
| 推定成約ADR帯 | 施設数 | 客室数 | 客室シェア | 主な施設(2.5万円以上のみ) |
|---|---|---|---|---|
| 1.5万円未満 | 13 | 1,182 | 30.3% | 宿泊特化型のビジネスホテルが中心 |
| 1.5〜2.5万円 | 9 | 1,179 | 30.2% | アパホテル〈新宿御苑前〉411室、ONSEN RYOKAN 由縁 新宿193室、ヴィアイン新宿226室 ほか |
| 2.5〜4万円 | 7 | 1,154 | 29.6% | ビスポークホテル新宿106室(¥38,100)、シタディーン新宿東京160室(¥34,500)、東急ステイ新宿イーストサイド208室(¥34,200)、ホテル アマネク新宿歌舞伎町169室(¥34,100)、東急ステイ新宿120室(¥33,800)、シタディーンセントラル新宿東京206室(¥31,600)、KOKO HOTEL 新宿四谷185室(¥27,900) |
| 4万円以上 | 3 | 390 | 10.0% | ホテル パセラリビング7室(¥55,400)、サクラクロスホテル新宿東アネックス8室(¥42,000)、小田急ホテルセンチュリーサザンタワー375室(¥40,600・2026年10月から休止中) |
図表3 新宿御苑前1km圏の推定成約ADR帯別の施設構成(2025年10月〜2026年9月の施設別平均、N=32施設・3,905室)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
この構造を客室規模との二軸で見ると、ノーガ新宿御苑が入り得る位置がはっきりする。2.5〜4万円帯の7施設はいずれも106〜208室の中型で、サービスアパートメントや長期滞在対応の業態が多い。4万円以上で50室を超えるのはサザンタワー1施設だけで、それも2028年春まで休止している。つまり、50〜300室規模でADR4万円以上という領域は、2027年7月の時点で1km圏に1施設も存在しない。72室・全室30㎡以上・全室バルコニーという仕様は、この空白帯を狙った設計と読める。
図表4 客室規模×推定成約ADRのポジショニング(円の大きさ=口コミ件数、N=32施設)。点線枠は50〜300室×4万円以上の空白帯、縦線はノーガ新宿御苑の72室。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
密集帯:1.5万円未満 × 20〜260室
13施設1,182室。宿泊特化型の供給が厚く、価格は新宿区中央値を下回る。新規参入の差別化余地は小さい。
充足帯:2.5〜4万円 × 100〜210室
7施設1,154室。サービスアパートメント型と中型の新築が占め、¥31,600〜¥38,100に集中。ここに72室が入ると規模で最小になる。
空白帯:4万円以上 × 50〜300室
現時点でサザンタワー1施設のみ、2027年7月には0施設。全室御苑ビュー・30㎡以上の商品がこの帯に位置取れるかが投資上の焦点になる。
ブランドのベンチマーク — 上野¥63,500・清水¥32,600、区中央値の1.4〜4.4倍
ノーガホテルが実際にどの価格帯で運営されてきたかは、既存3施設の推定成約ADRから読める。ノーガホテル上野 東京(127室)の直近12ヶ月(2025年10月〜2026年9月)の平均は¥63,500で、前年同期(¥52,300)から+21.3%伸びた。同じ期間の台東区の推定成約ADR平均は¥14,500であり、区中央値の4.4倍の水準で売れている計算になる。ノーガホテル 清水 京都(207室)は¥32,600(前年同期比−2.0%)で、東山区平均¥23,600の1.4倍。月別には2026年4月の上野¥83,900、清水¥49,200がそれぞれのピークで、季節変動は区全体より大きい。
ノーガホテル 秋葉原 東京(118室)はデラックス業態として分類されるため推定成約ADRの算出対象外である。掲載価格(全プラン平均・税込)で見ると直近12ヶ月の平均は¥92,800で、上野の掲載価格¥91,900とほぼ同水準にあり、3施設の中では東京の2施設が京都より明確に高い価格帯で運営されている。
図表5 ノーガホテル上野・清水京都と新宿区の推定成約ADR月次推移(2025年10月〜2026年9月、税抜相当)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
この実績を新宿に機械的に当てはめることはできない。上野・秋葉原はいずれも駅至近の繁華街立地で、訪日客の比率が高いエリアであり、新宿御苑前は駅の乗降人員でも商業集積でも新宿三丁目・新宿駅周辺より一段静かな立地である。一方で、新宿区の推定成約ADR(直近12ヶ月平均¥16,100)は台東区(¥14,500)より高く、1km圏には既に2.5〜4万円帯の中型施設が7施設並んでいる。ブランドが上野で区中央値の4.4倍、清水で1.4倍を実現してきたことを踏まえると、新宿御苑前で区中央値の2.5〜3.5倍、すなわち4万〜5.6万円前後の価格帯に位置取ることは、既存施設の延長線上にある目標といえる。新規開業ホテルが参入時にエリア中央値の何倍の単価を置くかは、新規開業17件の参入ADR(2026年10月〜2027年1月開業分、エリア中央値の0.6〜4.3倍)で横断的に比較している。
価格帯を支える基盤として、既存施設の宿泊者評価も確認しておく。ホテルバンク編集部が集計した直近24ヶ月の宿泊者口コミをカテゴリ別に見ると、3施設とも「従業員」「清潔感」「施設」の評価が5点満点で4.8点前後に達し、上野と清水京都はこの3項目で所在エリアの上位10%、秋葉原も上位25%以内に入る。立地の評価は上野4.77(N=1,133)、秋葉原4.81(N=1,528)、清水4.81(N=2,465)と安定しており、音楽・アート・食を軸にしたブランド体験が評価に結びついている。
| 施設(客室数) | 総合 | 従業員 | 清潔感 | 施設 | 客室 | 立地 | 朝食 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ノーガホテル 上野 東京(127室) | 4.58 | 4.85(N=366) | 4.81(N=170) | 4.76(N=163) | 4.66(N=613) | 4.77(N=1,133) | 4.55(N=101) |
| ノーガホテル 秋葉原 東京(118室) | 4.71 | 4.88(N=514) | 4.86(N=124) | 4.84(N=126) | 4.69(N=796) | 4.81(N=1,528) | 4.74(N=121) |
| ノーガホテル 清水 京都(207室) | 4.77 | 4.95(N=897) | 4.93(N=317) | 4.88(N=303) | 4.76(N=1,272) | 4.81(N=2,465) | 4.84(N=122) |
図表6 既存ノーガホテル3施設の宿泊者評価(5点満点、カテゴリ別は直近24ヶ月の口コミ件数N)。出典:ホテルバンク編集部調べ
新宿区の需給 — 単価は夏に反転、稼働率(推定)は90%台を維持
需要側の環境は、単価と量で局面が分かれている。新宿区の推定成約ADRは2025年10月から2026年5月までの8ヶ月がいずれも前年同月を上回り、2026年4月には¥20,700(前年同月比+16.3%)と直近2年のピークをつけた。ところが6月は¥12,900(−5.8%)、7月¥13,300(−7.7%)、8月¥12,400(−8.3%)と3ヶ月連続で前年を下回り、9月は¥15,100(+1.1%)で小幅な前年超えに戻った。日本政府観光局(JNTO)の推計では2026年8月の訪日外客数は309万8,900人・前年同月比−9.6%で、中国が41万8,000人(−59.0%)と大きく落ち込む一方、韓国は85万500人(+28.7%)で最多だった。訪日需要の国別構成が変わる中で、新宿区の夏の単価が前年を割った事実は、2027年夏の開業に向けた前提として重い。
図表7 新宿区の推定成約ADR 年次重ね合わせ(2024年7月〜2026年12月、税抜相当、N=84〜105施設)。2026年10〜12月は調査時点の掲載水準に基づく推定。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
量の面では、2026年9月の新宿区の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)は日平均67施設・8,309室(日により64〜70施設)で90.1%、ビジネスホテルに限ると日平均42施設・6,382室で90.5%だった。8月も日平均63施設・8,058室で89.0%と、単価が前年を割った月でも在庫の消化は進んでいる。9月のブッキングカーブを見ると、LT45時点で既に55.8%が販売済みで、LT14で72.6%、LT3で84.2%、前日(LT1)で90.1%に達する。直前3日間で約6ポイント積み上がる形は、新宿区が当日・前日需要を厚く持つ市場であることを示している。
図表8 新宿区 2026年9月のブッキングカーブ(月間平均、LT45〜LT1、全業態67施設8,309室・ビジネスホテル42施設6,382室の固定コホート)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
日別に見ると、9月19日(土)98.0%、20日(日)98.4%と5連休の前半はほぼ満室に近づき、連休最終日の23日(水・祝)83.1%、連休明けの24日(木)82.0%が月間の底になった。平日でも82%を下回る日がなく、週末と連休に98%まで積み上がる形は、1km圏で72室を売る際に週末と繁忙期の単価をどこまで伸ばせるかが収益を左右することを意味する。ノーガホテル上野の月別推移で4月(¥83,900)と8月(¥39,200)の差が2.1倍に開いていたように、ライフスタイルホテルは季節による単価の振れ幅が区全体より大きい。
図表9 新宿区 2026年9月の日別稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定、日平均67施設8,309室・日により64〜70施設)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
立地評価 — 商業地域700%、地価+15%、御苑という「動かない景観資産」
計画地は用途地域上の商業地域で、容積率700%・建蔽率80%である(国土交通省 不動産情報ライブラリ)。最寄りの地価公示地点は約270m離れた新宿5-22(商業地、新宿御苑前駅200m)で、2026年1月1日時点の公示価格は230万円/㎡、前年比+15.0%。新宿三丁目寄りの新宿5-48(約300m)は355万円/㎡・+15.3%、新宿5-3(約350m)は820万円/㎡・+13.1%と、駅に近づくほど水準は上がるが、上昇率は1km圏の商業地14地点のうち10地点で二桁に達している。計画地の北側、富久町の住宅地(新宿-25、約680m)でも100万円/㎡・+10.0%で、住商ともに地価の上昇が続く。
| 地点 | 計画地からの距離 | 用途 | 2026年公示価格 | 前年比 | 容積率 | 最寄駅 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 新宿5-22 | 271m | 商業地 | 230万円/㎡ | +15.0% | 600% | 新宿御苑前 200m |
| 新宿5-48 | 299m | 商業地 | 355万円/㎡ | +15.3% | 700% | 新宿三丁目 300m |
| 新宿5-3 | 351m | 商業地 | 820万円/㎡ | +13.1% | 800% | 新宿三丁目 220m |
| 新宿5-30 | 547m | 商業地 | 370万円/㎡ | +15.6% | 800% | 新宿三丁目 130m |
| 新宿5-23 | 610m | 商業地 | 193万円/㎡ | +17.0% | 600% | 新宿三丁目 400m |
| 新宿-25 | 680m | 住宅地 | 100万円/㎡ | +10.0% | 300% | 新宿御苑前 700m |
| 新宿5-15 | 577m | 商業地 | 2,200万円/㎡ | +10.0% | 800% | 新宿三丁目 0m |
図表10 計画地周辺の地価公示(2026年1月1日時点)。出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
交通面では、東京メトロの2025年度実績で新宿御苑前駅の1日平均乗降人員は49,258人(同社ランキング79位、前年度比+0.9%)。新宿三丁目駅159,057人(15位、+4.3%)、丸ノ内線新宿駅201,609人(8位)と比べると小さいが、徒歩7分で新宿三丁目駅、13分でJR新宿駅に届く位置にあり、繁華街の喧騒から一歩引いた立地を「静けさ」として商品化できる距離感である。周辺の就業基盤も厚く、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)によると計画地1km圏の事業所数は8,498、従業者数は134,806人で、うちオフィス系従業者の比率は34.6%。国土交通省の250mメッシュ推計では1km圏の居住人口は41,440人(2025年)、2040年でも41,745人(+0.7%)と減らない見通しで、生産年齢人口比率は73.2%と高い。
図表11 新宿御苑前1km圏の宿泊施設分布(円の大きさ=客室数、色=推定成約ADR帯、灰色=ADR算出対象外、紺の四角=建築計画の届出案件、★=ノーガ新宿御苑計画地)。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省「建築物動態統計調査」
立地の核心は新宿御苑そのものにある。環境省の報道発表によれば、新宿御苑の年間入園者数は2017年度に過去最高の2,502,561人を記録し、同省の資料では来園者の約半数が外国人(推計)とされる。来園は春(桜)と秋(紅葉)に集中する。御苑は国民公園として恒久的に維持される緑地であり、計画地の南側に将来高層建物が立って眺望が失われるリスクは、通常の都心立地より構造的に小さい。全室バルコニーで御苑に向くという設計は、この「動かない景観資産」を72室すべてに配分する発想であり、同じ区内でも新宿駅周辺や歌舞伎町の施設とは異なる需要層(滞在そのものを目的とするレジャー・記念日・長期滞在)を取りにいく位置取りといえる。
投資論点 — 価格帯×稼働率の感度と、開業時の競合環境
総事業費が公表されていないため利回りの試算は行わないが、72室がどの価格帯でどれだけの客室売上を生むかは、1km圏とブランドの実績から幅を持って示せる。推定成約ADRを4万円・4.8万円・5.6万円(新宿区の直近12ヶ月平均¥16,100の約2.5倍・3倍・3.5倍)、稼働率を75〜85%と置くと、年間の客室売上は約7.9億円〜12.5億円の範囲に収まる。ブランドの上野(¥63,500)の水準に届けば上限はさらに上がるが、新宿御苑前の駅勢圏と1km圏の価格帯構造を踏まえ、本稿では4万〜5.6万円を検討レンジとした。
| 推定成約ADR(税抜相当) | 通年OCC 75% | 通年OCC 80% | 通年OCC 85% |
|---|---|---|---|
| ¥40,000(区平均の約2.5倍) | 7.9億円 | 8.4億円 | 8.9億円 |
| ¥48,000(約3倍) | 9.5億円 | 10.1億円 | 10.7億円 |
| ¥56,000(約3.5倍) | 11.0億円 | 11.8億円 | 12.5億円 |
図表12 ノーガ新宿御苑72室の年間客室売上の感度(72室×365日×OCC×ADR、料飲売上を含まない)。試算の前提値であり、事業者の計画値ではない。出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング
料飲部門の比重も見逃せない。1階ベーカリーとカフェ・バーラウンジ、2階の薪火レストラン、13階のルーフトップバーという構成は、72室のホテルとしては共用部に厚く投資している。前述の届出ベースの延床(約5,046㎡)を前提にすれば1室あたり約70㎡で、客室30㎡以上を差し引いても相応の面積が共用部と料飲に充てられる。ノーガホテル上野・秋葉原・清水京都がいずれも宿泊者口コミの「施設」「朝食」で高い評価を得ていることを考えると、料飲は宿泊単価を支える装置であると同時に、周辺の居住人口4.1万人・従業者13.5万人を取り込む独立した収益源にもなり得る。
開業時の競合環境は、現時点の見通しでは追い風が多い。サザンタワー375室は2028年春まで休止し、再開後は改装を経て現在より上の価格帯に移る可能性が高い。1km圏の届出済み案件は延床1,000㎡前後の小規模が中心で、158室の新宿3-34-4は2029年5月、ヒューリックの新宿3-18-1は2029年9月、野村不動産自身の新宿4-4-23(事務所・ホテル複合)は2030年3月の竣工予定で、いずれも開業から2年近く後になる。歌舞伎町では、1km圏内(計画地から約0.9km北西)のシタディーンセントラル新宿東京(206室、推定成約ADR¥31,600)が改装を経て2027年にIHGのノーテッドコレクション新宿(207室)としてリブランド開業する予定で、改装後の価格設定によっては上位帯の競合に加わる可能性がある。
一方で留意点もある。第一に、新宿区の単価は2026年夏に前年割れを経験しており、訪日需要の国別構成の変化が続けば、開業初年度の単価目標は保守的に置く必要がある。第二に、72室という規模は固定費の吸収力が中大型より小さく、料飲部門の立ち上がりが全体収支を左右する。第三に、「全室御苑ビュー」は強い差別化であると同時に、客室タイプの多様性を制約するため、2名利用を前提としたレジャー需要への依存度が高くなる。平日のビジネス需要をどう取り込むかは、1km圏の従業者13.5万人という基盤をどこまで活かせるかにかかっている。
まとめ
ノーガ新宿御苑は、供給が鈍化し価格帯が4層に積み上がった新宿御苑前1km圏で、唯一空いている「50〜300室×ADR4万円以上」の帯に、72室・全室30㎡以上・全室御苑ビューという商品を置く計画である。開業する2027年7月はサザンタワー375室の休止期間にあたり、上位帯の競合は現時点の価格では小規模2施設・15室しかない(1km圏内のシタディーンセントラル新宿東京206室が2027年にノーテッドコレクション新宿としてリブランド開業する予定で、改装後の価格設定次第では上位帯に加わる可能性がある)。既存のノーガホテルは上野で区中央値の4.4倍、清水で1.4倍の単価を実現しており、新宿御苑前で2.5〜3.5倍(4万〜5.6万円)を目指すことはブランドの実績の範囲内にある。
需要側では、新宿区の稼働率(推定)が90%台を維持する一方、単価は2026年夏に前年割れを経験した。地価は計画地から600m以内の商業地5地点で+10.0〜15.6%と上昇が続き、商業地域700%の計画地を自社保有する野村不動産にとっては、土地の含み益と運営収益の両面で保有価値を高める案件となる。残る焦点は、料飲を含む共用部への投資をどこまで宿泊単価に転換できるかであり、2026年10月15日に始まった予約受付の初期価格は、その答えを最初に示す指標になる。
⚠ 将来日程のADRに関する注意:図表7の2026年10〜12月の値は、調査時点でOTAに公開されている販売価格に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前に下落する可能性がある点にご留意ください。
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参考資料・出典一覧
■ データソース
OTA公開価格・在庫に基づく推定成約ADR・推定OCC・ブッキングカーブ・宿泊施設ストック推移・宿泊者口コミ集計(メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/ホテルバンク編集部)、国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示・用途地域)、国土交通省「建築物動態統計調査」(建築計画の届出情報)、国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)、東京メトロ「各駅の乗降人員ランキング」(2025年度)、日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計、環境省 新宿御苑 報道発表資料、野村不動産・野村不動産ホテルズ・小田急ホテルセンチュリーサザンタワーの公表資料。
■ 試算前提
年間客室売上=72室×365日×OCC×ADR(税抜相当)。ADRは新宿区の直近12ヶ月平均(2025年10月〜2026年9月、¥16,053)の約2.5倍・3倍・3.5倍として4万円・4.8万円・5.6万円、OCCは75〜85%を前提値とした。1km圏の価格帯区分は施設別の直近12ヶ月平均推定成約ADRに基づき、6ヶ月以上の算出実績がある施設に限定した。
■ 限界・留意点
推定成約ADRはOTA上の最安プラン水準に業態別係数を掛けた推定値で、実際の成約価格・会計数値とは異なる(上場ホテルREITの物件別実績との誤差中央値は約7%)。延床面積5,045.63㎡は建築計画の届出情報に記録された値で事業者の公表値ではなく、本稿では総事業費・建設費の推定を行っていない。建築計画の届出件数は調査時点の確認申請ベースであり、今後の申請追加で増加する。1km圏のストック(63施設5,648室)はOTA掲載が確認できる施設に限る。宿泊者評価はホテルバンク編集部が集計した口コミの平均で、投稿媒体による偏りを含む。試算は個別施設の実績・計画や投資判断を示すものではない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(新宿区・台東区・千代田区・東山区・1km圏32施設・ノーガホテル3施設)、推定OCC・ブッキングカーブ(新宿区)、宿泊施設ストック推移(1km圏63施設)
■ 政府統計・公的データ
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ — 地価公示(2026年1月1日)・用途地域
- 国土交通省「建築物動態統計調査」
- 東京メトロ「各駅の乗降人員ランキング」(2025年度)
- 環境省「新宿御苑の平成29年度入園者数が過去最高に」(報道発表資料)
- 環境省 新宿御苑関連資料(年間来園者数の推移・外国人来園者比率)
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年8月推計値)」
- 総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)、国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)
■ ニュース・プレスリリース
