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宿1軒以下の自治体は全国429 — 真の空白は51、その6割が北海道

投稿日 : 2026.08.24 更新日 : 2026.09.02

指定なし

投資・開発

宿1軒以下の自治体は全国429 — 真の空白は51、その6割が北海道

全国の市区町村を一つずつ数えると、OTA上で稼働が確認できる宿泊施設が1軒以下の自治体は429あった。判定対象1,721自治体の24.9%、およそ4つに1つである。ただしこの429をそのまま「宿泊供給の空白地帯」と読むと、大きく判断を誤る。役場所在地から半径30kmの客室在庫を測り直すと、429のうち378(88.1%)は隣接エリアに厚い受け皿がある。市域の中に宿が無いだけで、商圏としては足りている。周辺30km圏の客室も1,000室に満たない真の空白は51自治体で、その30が北海道、13が離島だった。本稿では、この2類型の切り分け方と、空白側に残る出店余地の輪郭を数字で示す。

本記事における指標の定義

  • 掲載施設数:2026年8月にOTA上で販売価格の掲載が確認できた宿泊施設の数(自治体単位)。OTAに掲載されていない民宿・簡易宿所・自治体運営の宿泊研修施設、および一般宿泊向けに販売されていない施設は含まれない。したがって「掲載施設数0」は「その自治体に泊まれる場所が一切ない」ことを意味しない。
  • 半径30km圏の客室数:各自治体の代表地点(国土地理院の地名検索で得た自治体中心座標)から半径30km以内に所在する宿泊施設の客室数の合計。メトロエンジンリサーチが把握する施設マスターを母集団とし、OTA非掲載の施設も含む広めの集計である。したがって「30km圏でも客室が薄い」という判定は、供給の薄さを控えめに見積もった上での結論となる。
  • 判定対象自治体:総務省「全国地方公共団体コード」に収録された1,741市区町村(北方領土6村を除く)のうち、掲載データが行政区単位で集計される政令指定都市20市を除いた1,721自治体。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング/総務省「全国地方公共団体コード」/国土地理院「地名検索API」
判定対象
1,721
政令市20市を除く市区町村
宿1軒以下
429
24.9%(うち0軒205)
受け皿型(B)
378
429の88.1%
真の空白(A)
51
30km圏1,000室未満
北海道の割合
30/51
空白51のうち58.8%
Key Takeaways
  • — 判定対象1,721自治体のうち、OTA上で稼働が確認できる宿泊施設が1軒以下は429(24.9%)。うち掲載ゼロが205自治体だった。
  • — 半径30kmの客室在庫で測り直すと、429のうち378(88.1%)は圏内に1,000室以上の受け皿を持つ。市域の在庫ゼロは商圏の空白と同義ではない。
  • — 30km圏も1,000室に満たない真の空白は51自治体。うち北海道が30(58.8%)、離島が13を占め、本土部38の中心は北海道と岩手県北部である。
  • — 2025年の地方部の外国人延べ宿泊者数は前年比19.1%増と三大都市圏の5.1%増を上回る一方、計画・建設中の宿泊施設は既存集積地に集中し、類型A 51自治体に該当する案件は確認できない。
  • — 類型Aの30km圏客室数は最小15室・中央値362室・最大975室。100室級は中央値地点の圏内在庫を1.28倍にする規模で、成立する開発規模は地点ごとに一桁違う。

「宿1軒以下」は全国429自治体 — 都市圏の県ほど多い

まず全国の分布から確認する。総務省「全国地方公共団体コード」に収録された市区町村のうち、掲載データが行政区単位で集計される政令指定都市20市を除いた1,721自治体について、2026年8月時点の掲載施設数を突き合わせた。結果、掲載施設が1軒以下の自治体は429、うち掲載が1軒も確認できなかった自治体が205だった。

意外なのは、その割合が高い県が過疎県ばかりではないという点である。比率で並べると首位は佐賀県の45.0%(20自治体中9)、次いで福岡県44.8%(58中26)、青森県42.5%、奈良県41.0%、埼玉県40.3%と続く。福岡・奈良・埼玉はいずれも大都市圏を抱える県だ。つまり「宿が1軒以下」という状態は、需要が無いことの証明ではなく、隣の自治体に宿泊需要が吸い上げられている状態としても発生する。

都道府県別 「掲載施設1軒以下」の自治体比率 上位15県(2026年8月時点)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載確認ベース)/総務省「全国地方公共団体コード」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成

実数で見ると北海道が62自治体と最も多く、福岡県26、埼玉県25、福島県20、青森県17と続く。以下の表は比率上位20県の内訳で、右端の「うち空白型」は次章で定義する類型Aの数である。北海道の62のうち30、岩手県の7のうち6が空白型に分類された一方、佐賀・福岡・奈良・埼玉は空白型がゼロだった。同じ「1軒以下」でも中身がまったく違う。

表1 都道府県別「掲載施設1軒以下」自治体数と空白型(類型A)の内訳 — 比率上位20県(2026年8月時点)
都道府県判定対象1軒以下うち0軒うち空白型(A)比率
佐賀県2092045.0%
福岡県582615044.8%
青森県40179242.5%
奈良県39164041.0%
埼玉県622512040.3%
岐阜県421611038.1%
鳥取県1972036.8%
北海道17862253034.8%
福島県59209033.9%
神奈川県30106033.3%
京都府2584032.0%
群馬県35117031.4%
愛知県531610030.2%
大阪府41124029.3%
熊本県44124027.3%
宮崎県2673026.9%
宮城県3495026.5%
山口県1954026.3%
山形県3593025.7%
徳島県2463025.0%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(掲載確認ベース)/総務省「全国地方公共団体コード」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。比率上位20県を掲載(1軒以下の自治体が1つ以上ある45都道府県が対象)

半径30kmで測り直すと、88%は「受け皿がある」側に落ちる

そこで429自治体すべてについて、代表地点から半径30km以内にある宿泊施設の客室数を集計した。30kmという距離は、地方部の道路事情でおおむね車40〜50分の移動圏にあたる。宿泊客がその自治体を目的地にしていても、実際の投宿先が隣接自治体になり得る範囲である。

結果の分布は極端に歪んでいた。429自治体の30km圏客室数の中央値は11,038室。上位には30km圏に30万室超を抱える自治体が並ぶ。たとえば東京都三鷹市は市域の掲載施設が1軒(三鷹シティホテル・67室)だが、30km圏には4,508施設・335,125室がある。市内に宿が無いという事実は、この商圏では供給不足を意味しない。

「掲載施設1軒以下」429自治体の 半径30km圏 客室数の分布
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設マスターベース、N=429自治体)

この分布の左端、30km圏の客室が1,000室に満たない自治体は51だった。1,000室という線は、その圏域が一晩に受け入れられる宿泊者がおおむね2,000人規模を下回る水準にあたる。中規模の温泉地1か所分にも届かない。以降、この51を類型A(真の空白)、残る378を類型B(受け皿型)と呼ぶ。

類型B 受け皿型 — 378自治体

市域の掲載は1軒以下だが、30km圏に1,000室以上。宿泊需要は隣接する中心都市が吸収している。新規出店を考えるなら、比較対象は「その自治体の中の競合」ではなく中心都市の既存在庫になる。

類型A 真の空白 — 51自治体

市域も30km圏も薄い。訪問需要が生じても圏内で吸収できず、宿泊が隣県・遠方へ流れるか、日帰りに切り替わる。受け皿の新設が滞在時間そのものを作る領域である。

切り分けの実務的な意味

「宿が無い自治体リスト」を出店候補としてそのまま使うと、9割近くが実際には競合過密な都市圏の内側に入る。市域単位の在庫ゼロは、商圏の空白と同義ではない。

類型B:福岡・奈良・埼玉の「1軒以下」は中心都市の裏側にある

類型Bを都道府県別に見ると、北海道32、福岡県26、埼玉県25、福島県20、奈良県16、愛知県16、岐阜県16の順になる。福岡県は26自治体すべてが類型Bで、空白型は1つも無い。粕屋町(掲載0軒)の30km圏には1,115施設・59,369室、大野城市(同1軒)には1,151施設・61,304室がある。いずれも福岡市の宿泊在庫が圏内に丸ごと入る位置だ。

四国も同様である。徳島県で1軒以下となったのは6自治体(勝浦町・上勝町・佐那河内村・石井町・北島町・板野町)だが、いずれも30km圏に7,000〜10,000室規模の在庫があり、全て類型Bに分類された。高知県の7自治体(田野町・安田町・北川村・馬路村・大川村・佐川町・三原村)も同じく全てが類型Bで、30km圏客室数は最少の田野町でも1,082室ある。四国の「宿が無い自治体」は、徳島市・高知市・室戸方面の在庫が背後に控えている構図だ。

表2 類型B(受け皿型)の抜粋 — 市域の掲載は1軒以下だが30km圏に厚い在庫がある10自治体
都道府県自治体掲載施設30km圏 施設数30km圏 客室数
東京都三鷹市14,508335,125
東京都狛江市04,437334,300
埼玉県八潮市13,905289,769
神奈川県座間市01,36977,946
奈良県斑鳩町12,704167,668
福岡県粕屋町01,11559,369
福岡県大野城市11,15161,304
佐賀県基山町11,24063,197
徳島県北島町040610,104
高知県佐川町02137,640
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。類型B(378自治体)からの抜粋。30km圏の施設数・客室数は施設マスターベース(OTA非掲載施設を含む)

類型A:真の空白51自治体の6割が北海道、4分の1が離島

類型Aの51自治体を都道府県別に分けると、北海道30、岩手県6、沖縄県5、青森県2、東京都2、島根県2、鹿児島県2、新潟県1、大分県1となる。北海道が58.8%を占める。また51のうち13は離島(鹿児島県三島村・十島村、沖縄県多良間村・粟国村・北大東村・伊平屋村・渡名喜村、東京都青ヶ島村・御蔵島村、新潟県粟島浦村、島根県知夫村、北海道奥尻町、大分県姫島村)で、残る38が本土の内陸・沿岸部である。離島側の宿泊単価がどのような階層をつくっているかは、主要離島10市町村の宿泊単価を比べた分析で詳しく扱っている。

類型A(真の空白)51自治体の都道府県内訳 — 本土部/離島部
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=51自治体)

地図に落とすと構造がはっきりする。本土部38のうち29が北海道で、オホーツク海側(雄武町・興部町・西興部町・滝上町・浜頓別町・猿払町)、日本海側の留萌〜宗谷(遠別町・初山別村・苫前町・小平町・幌延町)、道南(松前町・福島町・知内町・長万部町・今金町)、十勝・道東(浦幌町・大樹町・本別町)、道北内陸(中川町・音威子府村・美深町)に散らばる。北海道以外では岩手県北部・三陸沿岸(葛巻町・一戸町・九戸村・野田村・普代村・田野畑村)に6自治体が固まった。

類型A 51自治体の分布(円の大きさ=30km圏客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土地理院「地名検索API」(自治体代表座標)

下表は51自治体の全リストである。30km圏の客室数が少ない順に並べた。上位には離島が集中し、鹿児島県三島村は30km圏でも3施設15室、沖縄県多良間村は3施設37室にとどまる。本土部で最も薄いのは北海道雄武町で、15km圏5施設61室・30km圏14施設145室だった。

表3 類型A(真の空白)51自治体 — 半径30km圏の客室数が少ない順
#都道府県自治体掲載施設15km圏 施設数15km圏 客室数30km圏 施設数30km圏 客室数
1鹿児島県三島村(島)0315315
2鹿児島県十島村(島)028437
3沖縄県多良間村(島)0337337
4東京都青ヶ島村(島)0646646
5沖縄県粟国村(島)0537849
6沖縄県北大東村(島)0680680
7北海道雄武町156114145
8北海道浦幌町175923180
9沖縄県伊平屋村(島)12120721207
10北海道遠別町166716219
11新潟県粟島浦村(島)01211431231
12北海道西興部村122819237
13青森県今別町01414029242
14北海道島牧村096524243
15北海道猿払村047815253
16東京都御蔵島村(島)073433253
17北海道松前町189720264
18北海道浜頓別町067617272
19北海道長万部町11316629292
20北海道大樹町187525302
21島根県知夫村(島)04127543311
22北海道奥尻町(島)02631226312
23北海道本別町11319131332
24北海道知内町11826930340
25岩手県葛巻町035023348
26北海道中川町045126362
27北海道寿都町087336389
28北海道初山別村123230399
29北海道黒松内町059545400
30北海道音威子府村133915428
31北海道福島町01319632433
32北海道苫前町11925635459
33北海道幌延町11531527462
34北海道今金町11320341548
35北海道小平町02138438572
36岩手県田野畑村12233541611
37岩手県一戸町11938245671
38北海道新冠町12047633690
39北海道滝上町135626698
40青森県佐井村02330957716
41岩手県野田村12039041723
42北海道興部町098931732
43沖縄県渡名喜村(島)031289761
44岩手県普代村11321143782
45大分県姫島村(島)12119547808
46岩手県九戸村11833951831
47北海道美深町1727930850
48島根県吉賀町1915873884
49北海道雨竜町02951258928
50北海道秩父別町11822856932
51北海道沼田町11218057975
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=51自治体)。掲載施設数はOTA掲載確認ベース(2026年8月)、15km/30km圏は施設マスターベース(OTA非掲載施設を含む)

出店余地の輪郭 — 需要側の手がかりと、供給パイプラインの偏り

空白51自治体を単純に「未開拓市場」と呼ぶことはできない。供給が薄いのは需要も薄いからだ、という説明が成り立つ場所が大半である。それでも、需要側の手がかりが確認できるエリアはいくつかある。

マクロの追い風は数字ではっきりしている。観光庁「宿泊旅行統計調査」によれば、2025年の延べ宿泊者数は6億6,111万人泊、うち外国人は前年比9.4%増の1億7,992万人泊だった。内訳を見ると三大都市圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫)の外国人延べ宿泊者数が1億1,936万人泊で前年比5.1%増だったのに対し、地方部は6,056万人泊で前年比19.1%増と、都市部の伸びを大きく上回った。需要の増加分は地方に厚く配分されている。

個別に見ると、類型Aのなかにも訪問理由が具体的なエリアがある。岩手県北部の5自治体(沿岸の野田村・普代村・田野畑村と、内陸の九戸村・一戸町)は、2021年12月18日に全線開通した三陸沿岸道路(仙台〜八戸359km、無料区間として国内最長)の沿線または近傍に位置する。アクセス条件は震災前と別物になったが、田野畑村の30km圏客室数は611室、普代村は782室、野田村は723室にとどまる。一戸町には2021年に世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産として登録された御所野遺跡があり、30km圏は671室である。

北海道大樹町も同様の構図だ。同町の北海道スペースポート(HOSPO)は2021年4月に本格稼働した民間商業宇宙港で、複数事業者が発射場として選定しており、2027年度には再使用型ロケットの打ち上げが計画されている。一方で大樹町の掲載施設は1軒、30km圏でも25施設302室しかない。打ち上げ関連の来訪が積み上がっても、圏内で吸収できる客室は限られる。

そして供給側のパイプラインは、この空白を埋める方向には向いていない。国土交通省「建築動態統計調査」に基づく計画・建設中案件を見ると、北海道で確認できるのは8件だが、その内訳は札幌市5件、富良野市1件、倶知安町1件、北広島市1件で、いずれも既存の集積地である。道央の千歳・苫小牧に積み上がる2026年開業7施設738室の内訳も、需要が読める地点に供給が寄る同じ構図を示している。岩手県は陸前高田市の1件、沖縄県は浦添市の1件のみ。類型A の51自治体に該当する計画案件は1件も無い。※調査時点での確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数は増加する見込みで、現時点での確定パイプラインの下限値として参照されたい。

読み方 — 「空白」は候補地リストではなく、前提条件のチェックリストである

ここまでの整理を出店検討の手順に置き換えると、次のようになる。

第一に、市域単位の在庫ゼロを候補地シグナルとして扱わないこと。429のうち88.1%は類型Bであり、中心都市の在庫と正面から競合する立地だ。この場合に問うべきは「なぜこの自治体に宿が無いのか」ではなく、「中心都市に泊まる客を、あえてここに泊める理由を作れるか」である。空港・高速インターへの近接、大型施設の隣接、長期滞在向けの設備といった、中心都市の在庫が提供しにくい条件が要る。商圏単位で在庫の厚みを測り直す手つきは、主要20商圏の15年供給曲線で参入余地を読む分析と共通している。

第二に、類型Aでは受け皿の新設そのものが滞在時間を作る余地がある。30km圏に1,000室未満という環境では、既存在庫の稼働が高まっても新規客を受け止めきれない。ただし51のうち13は離島で、建設コスト・人材確保・季節変動の制約が本土部と桁違いに大きい。本土部38、とりわけアクセス条件が近年変わったエリア(三陸沿岸道路沿線の岩手県北部)や、来訪理由が新たに生まれているエリア(北海道大樹町)は、需要の根拠を個別に検証する価値がある。

第三に、規模の設計である。類型Aの30km圏客室数は最小15室から最大975室まで幅がある。100室級の新設は、圏内在庫を一気に倍増させかねない規模だ。実際に稼働を確認しながら段階的に増やせる小規模・分散型の形態、あるいは既存施設の再生・リブランドのほうが、この規模感には馴染む。飛騨に283室が加わるケースのように、供給比率が読める形で設計することが前提になる。

規模別の供給インパクト — 新設客室数を30km圏在庫で割り戻す

前章の「規模の設計」を数字に置き換えておく。類型Aで問題になるのは絶対的な室数ではなく、新設が圏内在庫に対して占める比率である。本稿の数値だけで計算できる恒等式は一つで、供給押し上げ率 = 新設客室数 ÷ 半径30km圏の客室数。稼働率も単価も置いていない単位換算であり、収益予測ではない。

表4 供給規模3水準 × 類型Aの3断面 — 圏内在庫に対する押し上げ率
供給規模最薄地点
15室
中央値地点
362室
最大地点
975室
中央値地点の
在庫倍率
小規模・分散型(10室)66.7%2.8%1.0%1.03倍
中規模(50室)333.3%13.8%5.1%1.14倍
100室級(100室)666.7%27.6%10.3%1.28倍
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティングよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。断面は本文の類型A一覧の実測値(最薄=鹿児島県三島村15室、中央値=北海道中川町362室、最大=北海道沼田町975室、N=51自治体)。押し上げ率は新設客室数を30km圏客室数で割った単位換算であり、稼働・単価の前提を含まない

中央値の地点(30km圏362室)に100室級を新設すると、圏内の客室在庫は1.28倍になる。本文で触れた「一気に倍増させかねない規模」は、類型Aの下位側ではさらに極端になり、最薄地点では10室の新設でも圏内在庫を66.7%押し上げる。逆に975室を抱える上限側では、100室でも10.3%にとどまり、通常の新規参入と変わらない比率に収まる。同じ「空白」でも、成立する規模は一桁違う。

表5 供給押し上げ率の2軸グリッド — 新設客室数 × 30km圏客室数(単位:圏内在庫に対する%)
新設客室数 \ 30km圏客室数15室
鹿児島県三島村
145室
北海道雄武町
302室
北海道大樹町
611室
岩手県田野畑村
975室
北海道沼田町
10室66.7%6.9%3.3%1.6%1.0%
20室133.3%13.8%6.6%3.3%2.1%
50室333.3%34.5%16.6%8.2%5.1%
67室446.7%46.2%22.2%11.0%6.9%
100室666.7%69.0%33.1%16.4%10.3%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティングよりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成。横軸は本文の類型A一覧に実在する5地点の30km圏客室数、縦軸は圏内既存施設の平均規模(雄武町 14施設145室=1施設あたり約10室)から本文記載の「100室級」までの範囲。67室は本文で挙げた三鷹シティホテルの客室数。中間の20室・50室は観測レンジ内の内挿であり外挿は行っていない

読み方は単純である。グリッドの右下、押し上げ率が10%台に収まる領域は既存在庫の厚みが受け止めてくれる範囲で、左上に寄るほど自分の新設が自分の商圏の需給を作り替えてしまう領域に入る。類型Aの51自治体のうち30km圏客室数が362室以下なのは26自治体(51のうち過半)で、この側では100室級は27.6%以上の押し上げになる。段階的に稼働を確認しながら増やす形態や、既存施設の再生・リブランドが馴染むと述べたのは、この比率の非対称性による。

まとめ

全国1,721自治体のうち、OTA上で稼働が確認できる宿泊施設が1軒以下なのは429(24.9%)、うち掲載ゼロが205だった。しかし半径30kmの客室在庫で測り直すと、378(88.1%)は隣接エリアに1,000室以上の受け皿を持つ。市域の在庫ゼロは、商圏の空白とは別の現象である。

周辺30km圏も1,000室に満たない真の空白は51自治体で、北海道が30、離島が13を占めた。地方部の外国人延べ宿泊者数は2025年に前年比19.1%増と都市部を大きく上回っており、需要は地方へ厚く流れている。それでも計画・建設中の宿泊施設は既存集積地に集中し、空白51自治体には1件も確認できない。自治体単位で客室在庫を棚卸しする視点は、イベント対応でも出店検討でも同じ効き方をする。市域だけを見て「無い/有る」を判断せず、商圏の半径で測り直すことが出発点になる。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの自治体別 掲載施設数(2026年8月・OTA掲載確認ベース/判定対象1,721自治体)と、自治体代表座標から半径15km/30km圏の施設数・客室数(施設マスターベース、OTA非掲載施設を含む)。自治体マスタは総務省「全国地方公共団体コード」(1,741団体、北方領土6村を除く)、代表座標は国土地理院「地名検索API」。需要側の全国値は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年(令和7年)年間値(確定値・2026年7月6日公表)、供給パイプラインは国土交通省「建築動態統計調査」に基づく計画・建設中案件(確認申請ベース)。

■ 試算前提

判定対象は1,741団体から、掲載データが行政区単位で集計される政令指定都市20市を除いた1,721自治体。「1軒以下」は掲載施設数0軒と1軒の合計で、0軒は当該自治体に掲載施設が1件も確認できなかったことを指す。類型の切り分けは半径30km圏の客室数1,000室を境界とし、1,000室以上を類型B(受け皿型)、1,000室未満を類型A(真の空白)とした。規模別の供給押し上げ率は「新設客室数 ÷ 30km圏客室数」の単位換算のみで算出しており、稼働率・単価・費用の前提は一切置いていない(収益予測ではない)。グリッドの横軸5水準(15/145/302/611/975室)はいずれも本文の類型A一覧に実在する地点の値、縦軸は圏内既存施設の平均規模(約10室)から本文記載の「100室級」までの範囲に収め、観測レンジ外への外挿は行っていない。

■ 限界・留意点

掲載施設数はOTA上で販売価格の掲載が確認できた施設に限られ、OTAに掲載されていない民宿・簡易宿所・自治体運営の宿泊研修施設は含まない。したがって「掲載0軒」は、その自治体に泊まれる場所が存在しないことを意味しない。半径15km/30km圏は自治体の代表地点1点からの直線距離で測っており、実際の到達時間は道路事情や離島の航路条件によって大きく変わる。政令指定都市20市は集計単位が行政区であるため判定対象から除外しており、本稿の全国比率はこの20市を含まない母数に対する値である。供給パイプラインは調査時点の確認申請ベースであり、今後の申請追加により件数が増える下限値として参照されたい。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 自治体別 掲載施設数(2026年8月、判定対象1,721自治体)、半径15km/30km圏の施設数・客室数(施設マスターベース、N=429自治体)

■ 政府統計・公的データ

■ ニュース・自治体・事業者公表

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