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福井駅前の百貨店跡に204室・総事業費38.9億円 — 1室1,907万円、駅1km圏2,796室に+7.3%

投稿日 : 2026.10.19

福井県

投資・開発

福井駅前の百貨店跡に204室・総事業費38.9億円 — 1室1,907万円、駅1km圏2,796室に+7.3%

大和ハウスグループが2026年7月27日に公表したニュースリリースによると、福井市中央1丁目の旧西武福井店新館跡地で「(仮称)ダイワロイネットホテル福井」が着工した。地上9階建て・全204室、竣工予定は2028年1月31日、開業は2028年春の予定で、福井新聞は総事業費を約38億9千万円と報じている。単純に客室数で割ると1室あたり約1,907万円になる。本稿では、この公表値から必要ADR(平均客室単価)を逆算し、福井駅1km圏の既存2,796室(主要予約サイト掲載ベース)のどの単価帯に204室が入るのかを、地価・用途地域・洪水浸水想定・平日と土曜の予約の埋まり方とあわせて検証する。百貨店の閉鎖跡がホテル用地になるまでの経路を、地権者と行政の関与から整理する点が本稿の軸になる。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。確定月(2026年9月まで)のみを本文の基準とし、10月以降の見込み値は使っていません。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。
  • ブッキングカーブ:チェックイン日に向けたOTA残室数の推移。LT(リードタイム)=チェックイン日までの日数。本稿はLT45〜LT1の区間のみを使用。
  • 駅1km圏の客室ストック:福井駅(北緯36.0622・東経136.2233)から半径1km以内に所在し、直近3か月(2026年7〜9月)に価格観測がある施設の客室数合計。同一所在地でリブランド前後の掲載が重なる施設は1施設として数えた。
  • 必要ADR:総事業費×目標利回り÷(GOP率×365日×客室数×稼働率)で逆算した、目標利回りを満たすために必要な平均客室単価。土地の扱いと補助金の控除は本文で場合分けしている。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(追跡約168,000施設のうち稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象)、国土交通省 不動産情報ライブラリ、内閣府、福井県、大和ハウスグループ、福井新聞
Key Takeaways
  • — 1室1,907万円:総事業費約38億9千万円(報道値)÷204室。県・市のファンド補助(上限2億円)を控除すると約1,809万円。
  • — 必要ADR約8,700円:利回り6%・通年稼働率80%・GOP率45%の前提。福井市の推定成約ADR(2025年10月〜2026年9月平均8,922円、N=36〜38施設)とほぼ同水準。
  • — 利回り8.8〜9.6%:同ブランド北陸・東海4館の推定成約ADR12,800〜14,000円で売れた場合の総事業費ベース。土地を別途約7億円と置いても必要ADRは約10,300円。
  • — 駅1km圏は23施設・2,796室で、204室は+7.3%。単価帯別(2026年7〜9月、N=22施設・2,794室)では47.3%が8,000〜10,000円帯、10,000〜16,000円帯は761室(27.2%)。
  • — 平日と土曜で埋まる時点が違う:LT45時点の推定OCCは水曜51.7〜58.3%、土曜80.0〜84.0%(2026年9〜10月の4宿泊日、29〜33施設)。

要点 — 1室1,907万円は、必要ADRに直すと同ブランドの北陸水準を下回る

計画客室数
204室
地上9階・2028年春開業予定
総事業費(報道値)
38.9億円
1室あたり約1,907万円
必要ADR(利回り6%・通年OCC80%)
¥8,700
GOP率45%・総事業費ベース
駅1km圏の既存客室
2,796室
23施設・204室は+7.3%
福井市 推定成約ADR
¥8,900
2025年10月〜2026年9月平均・N=36〜38施設

結論を先に述べると、総事業費約38億9千万円を204室で割った1室1,907万円は、目標利回り6%・通年稼働率80%・GOP率45%という宿泊特化型の標準的な前提で必要ADR約8,700円に相当し、福井市の推定成約ADR(直近12か月平均8,922円、N=36〜38施設)とほぼ同水準に収まる。同じブランドが北陸で運営する富山駅前(204室)・金沢駅西口(188室)の直近12か月の推定成約ADRは12,851円・13,780円であり、ブランド水準で売れれば利回り8〜9%帯に届く計算になる。一方で、福井駅1km圏の既存2,796室のうち47.3%が推定成約ADR8,000〜10,000円帯に集中し、13,000円以上は685室(24.5%)にとどまる。204室が狙う10,000〜16,000円帯は現在761室(27.2%)と厚みがなく、ここが本件の収益機会になる。2024年3月の北陸新幹線福井開業以降に加わった客室は、この帯ではなく16,000円以上帯に入っている。

計画の概要 — 百貨店新館の跡地が5年でホテル用地になった経路

まずは一次情報を整理したい。大和ハウスリアルティマネジメント(東京都)を事業主体とする「(仮称)ダイワロイネットホテル福井」は、所在地が福井市中央1丁目105〜112番他、福井駅から徒歩約5分、地上9階建て・全204室で、着工予定日は2026年8月3日、竣工予定は2028年1月31日、開業は2028年春の予定である(PR TIMES、2026年7月27日配信)。設計・施工は大和ハウス工業が担い、同ブランドとしては福井県初進出となる。福井新聞(2026年7月29日)は建物を鉄骨造9階建て、総事業費を約38億9千万円と報じ、敷地面積と延床面積はいずれの資料にも記載がない。

用地の来歴は、地方県都の大型店跡地がどのようにホテルに転じるかを示す典型例といえる。福井新聞によれば、旧西武福井店新館は2021年2月に営業を終了し、2022年9月に長谷工コーポレーションが当時の建物所有者(不動産会社)と売買契約を結んでいたが、同社が所有権移転の仮登記を放棄し、2025年8月に大和ハウスリアルティマネジメントへ所有権が移った。地上部分はすでに解体済みで、着工までに閉店から5年半が経過している。閉店から着工まで買い手が一度入れ替わっている点は、百貨店・大型店跡地を抱える地権者にとって、最初の契約が最終形になるとは限らないという示唆になる。全国の百貨店跡地でホテル転用に至った比率と、そこでの必要ADRが市場中央値の何倍になるかは、百貨店跡地のホテル転用は14件中6件 — 必要ADRは市場中央値の1.4〜3.1倍で14件を横並びにしている。

行政の関与はファンドの補助として表れている。福井県と福井市が各12億円、計24億円を拠出する「県都まちなか再生ファンド」(事業期間は令和4〜8年度、事務局はまちづくり福井)は、中央1丁目・3丁目の店舗改修(補助率3分の2・上限300万円)に加えて、電車通り南側エリアでの建替・共同建替等に補助率3分の2以内・上限2億円の支援メニューを置いている(福井県「県都まちなか再生ファンド事業について」資料2-2・県都にぎわい創生協議会資料、上限2億円は福井新聞)。福井新聞によると本件はこの電車通り南側メニューで上限2億円の補助認定を受けた初の案件で、2億円は総事業費の約5.1%に相当する。補助を控除した実質投資額は約36億9千万円、1室あたり約1,809万円になる。

時期出来事出典
2021年2月旧西武福井店新館が営業終了福井新聞
2022年6月県都まちなか再生ファンド事業開始(県12億+市12億)福井県資料2-2
2022年9月長谷工コーポレーションが建物所有者と売買契約(のちに仮登記を放棄)福井新聞
2024年3月北陸新幹線 金沢〜敦賀間開業。駅前電車通り北地区A街区が一部先行開業(コートヤード・バイ・マリオット福井 252室を含む)内閣府・メトロエンジンリサーチ
2025年8月大和ハウスリアルティマネジメントへ所有権移転福井新聞
2026年7月着工を公表。電車通り南側メニューで上限2億円の補助認定PR TIMES・福井新聞
2026年8月3日着工予定PR TIMES
2028年1月31日竣工予定、同年春開業予定PR TIMES
出典:大和ハウスグループ ニュースリリース(PR TIMES 2026年7月27日)、福井新聞(2026年7月29日)、福井県「県都まちなか再生ファンド事業について」、内閣府「福井駅周辺地域のプロフィール」(令和6年4月1日現在)

同じ街区の周辺では再開発が段階的に進んでいる。内閣府の都市再生緊急整備地域プロフィール(令和6年4月1日現在)によると、駅前電車通り北地区A街区(FUKUMACHI BLOCK)は延床約71,200㎡・建設投資額約449億円で2024年3月に一部先行開業し、B街区(中央1丁目5番街区)は延床約6,800㎡・約49億円で令和6〜7年度の工期、駅前南通り地区(中央1丁目10番南街区・11・22番街区)は延床約28,900㎡・約140億円で用途に宿泊を含み、工期は令和6〜10年度以降の予定である。つまり本件の開業する2028年春の前後に、南通り地区からも宿泊床が供給される可能性があり、供給パイプラインの観点では本件単独ではなく街区単位で読む必要がある。

1室1,907万円を建築費の公表指標と並べる — 延床が未公表でも読める範囲

総事業費に土地代が含まれるかは、報道・リリースのどちらにも明記がない。ここでは総事業費38億9千万円を「土地を除く建築・設計・諸経費」とみなした場合の含意を先に確認し、土地を含む場合の補正は次節の必要ADRで扱う。国土交通省「建築着工統計」に基づくホテル建築費は、2024年の全構造平均で195.5万円/坪(RC造173.8万円、S造165.0万円)、2025年は全構造195.2万円・S造240.5万円(archi-book集計、用途分類が「ホテル又は旅館」に変わったため前年との比較には留意が必要)と、2022年の138万円から2年で+41%上昇した水準が続いている。

延床面積が未公表のため、1室あたりの延床を30・35・40㎡の3ケースで置いて逆算すると、総事業費を全額建築費とみなした場合の坪単価は210万円・180万円・158万円になる。比較対象として同じ中央1丁目で2017年11月〜2019年2月に施工された中央1丁目18番地区の優良建築物等整備事業(ドーミーイン福井、189室)は、内閣府の公表値で延床約6,200㎡・建設投資額約20億円、1室あたり約1,058万円・延床1室あたり32.8㎡である。本件を同じ32.8㎡/室で置くと延床約6,700㎡(約2,024坪)、坪単価約192万円となり、2025年のS造240.5万円を下回る。本件は大和ハウス工業の設計施工一貫で進む案件であり、グループ内で完結する体制が総事業費の抑制に寄与している可能性がある一方、延床1室あたりが32.8㎡より小さい可能性も残る。いずれにせよ1室1,907万円は、建設費が7年で約1.8倍に上昇した環境下で駅前の宿泊特化型を成立させる現実的な原価水準といえる。計画段階のホテル31件から逆算した1室あたり建築費の全国水準(約2,067万円・客室原単位35.0㎡)はホテル1室の建築費は2,067万円 — 計画31件の客室原単位35.0㎡から逆算で示しており、本件の1,907万円はその水準をやや下回る位置にある。

指標値出典・前提
本件 総事業費÷204室1,907万円/室福井新聞(総事業費約38億9千万円)。土地の内外は未公表
本件 補助2億円控除後1,809万円/室県都まちなか再生ファンド 上限2億円
本件 逆算坪単価(30/35/40㎡/室)210/180/158万円/坪総事業費を全額建築費とみなした上限値
中央1丁目18番地区(189室・2019年竣工)1,058万円/室内閣府プロフィール:延床約6,200㎡・建設投資額約20億円
建築着工統計 2025年 S造240.5万円/坪archi-book(国土交通省「建築着工統計」ベース)
建築着工統計 2025年 全構造平均195.2万円/坪同上(2024年195.5万円、2022年138.6万円はe-Stat)
福井県 宿泊業用 着工(2024年)18棟・7,132㎡e-Stat「建築着工統計」(2023年は25棟・9,845㎡)
出典:国土交通省「建築着工統計」よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成、内閣府「福井駅周辺地域のプロフィール」、福井新聞

必要ADRの逆算 — 利回り6%なら8,700円、同ブランド北陸水準なら利回り8〜9%

必要ADRは「総事業費×目標利回り÷(GOP率×365日×204室×稼働率)」で求めた。GOP率は45%を置いている。上場REITの開示ではインヴィンシブル投資法人のMHM運営91物件のGOP率が38.9%(2024年12月期)で、45%はこれを6ポイントほど上回る前提である。利回りは土地を含むかどうかで意味が変わるため、まず総事業費38億9千万円をそのまま分子に置いたグリッドを示す。

目標利回り\稼働率70%75%80%85%90%
5%¥8,293¥7,740¥7,256¥6,829¥6,450
6%¥9,951¥9,288¥8,707¥8,195¥7,740
7%¥11,610¥10,836¥10,158¥9,561¥9,030
8%¥13,268¥12,383¥11,610¥10,927¥10,320
9%¥14,927¥13,931¥13,061¥12,292¥11,610
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(総事業費38億9千万円・204室・GOP率45%。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要)

この表を市場の実測値と重ねると位置が見える。福井市のビジネスホテル(カテゴリ別)の推定成約ADRは直近12か月(2025年10月〜2026年9月)平均で9,144円(N=11〜13施設)、全業態の中央値は8,922円(N=36〜38施設)だった。利回り6%・通年稼働率80%の必要ADR8,707円は、この市場水準とほぼ同じである。一方、同ブランドの北陸・東海の既存4館の直近12か月平均は、富山駅前(204室)12,851円、金沢駅西口(188室)13,780円、金沢MIYABI(177室)14,065円、岐阜(203室)12,812円(いずれもN=12か月)で、福井市の市場水準を3,700〜4,900円上回る。仮に本件がブランドの既存館並みの12,800〜14,000円で通年稼働率80%を確保できれば、総事業費ベースの利回りは8.8〜9.6%に相当し、補助2億円を控除した36億9千万円ベースではさらに0.5ポイント程度上乗せされる。

土地を含むかの補正も置いておく。総事業費に土地が含まれていない場合、敷地を約1,600㎡(同じ中央1丁目で189室を建てた18番地区の敷地面積に準拠した仮定)、地価を中央1丁目の公示地価43万〜45.4万円/㎡と置くと土地代は約6.9〜7.3億円、総投資は約46億円・1室2,250万円前後になる。この場合、利回り6%・通年稼働率80%の必要ADRは約10,300円に上がるが、それでも同ブランド既存館の水準を下回る。要するに、本件の採算は「ブランド水準で売れるか」ではなく「福井市の市場水準でも成立するか」の問いに近く、後者であっても目標利回り6%前後が視野に入る原価構造だと読める。

駅1km圏の供給 — 2,796室の47.3%が8,000〜10,000円帯、204室が入る10,000〜16,000円帯は761室

次に、204室が入る市場の厚みを確認する。福井駅から半径1km圏で直近3か月(2026年7〜9月)に価格観測がある施設は23施設・2,796室(客室数の把握できる施設。ほかに客室数非公表の旅館1施設)で、204室は既存比+7.3%にあたる。開業日・閉館日ベースのエリア客室供給時系列では、2019年の32軒2,636室が2021〜2023年に27軒2,441室まで減り、新幹線開業年の2024年に28軒2,693室、2026年に29軒2,845室へ戻っている。2024年の増加分は駅前電車通り北地区A街区のコートヤード・バイ・マリオット福井(252室)、2026年は2月開業の御宿 野乃福井(152室)が主で、いずれも1km圏の上位単価帯を厚くした施設である。

福井駅1km圏 客室ストック推移(各年末時点・開業日/閉館日ベース)と本件開業後の試算
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(エリア客室供給時系列、半径1km)。2028年は2026年の2,845室に本件204室を加えた単純合算で、南通り地区の宿泊床や閉館は織り込んでいない

単価帯別に見ると、1km圏の客室は推定成約ADR8,000〜10,000円帯に7施設1,321室(47.3%)が集中し、8,000円未満が5施設291室(10.4%)、10,000〜13,000円が5施設497室(17.8%)、13,000〜16,000円が2施設264室(9.4%)、16,000円以上が3施設421室(15.1%)という分布になる(各施設の2026年7〜9月平均、客室数加重の中央値は9,410円)。同ブランドの北陸既存館の水準から見て204室が入ると考えられる10,000〜16,000円帯は、現状で7施設761室(27.2%)にとどまる。2024年以降に開業したコートヤード・バイ・マリオット福井と御宿 野乃福井はいずれも16,000円以上帯に入っており、この帯には新しい供給が加わっていない。開業後は+204室で965室となる。帯の中で競合するのは、温泉大浴場を備えたドーミーインPREMIUM福井と駅前のシティホテル群で、本件は駅徒歩5分・宿泊特化という同ブランドの標準形で差別化することになる。

福井駅1km圏 推定成約ADR帯別の客室分布(2026年7〜9月平均、N=22施設・2,794室)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(客室数非公表の1施設とADR推定対象外のゲストハウス1施設を除く)
福井駅1km圏の主な宿泊施設(直近3か月に価格観測のある23施設、円=客室数)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング、国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・地価公示)。計画地は中央1丁目電車通り南側の概略位置
施設客室開業年駅から
ホテルフジタ福井3542009548m
コートヤード・バイ・マリオット福井2522024154m
アパホテル〈福井片町〉2471999796m
東横INN福井駅前238200792m
福井マンテンホテル駅前1892016201m
天然温泉 羽二重の湯 ドーミーインPREMIUM福井1892019491m
アズイン福井1662000778m
ホテルルートイン福井駅前1612007127m
天然温泉 越前の湯 御宿 野乃福井1522026511m
ホテル リバージュアケボノ1421951812m
ホテルエコノ福井駅前138—92m
福井パレスホテル92—718m
福井フェニックスホテル871986217m
福井パレスイン801979603m
ユアーズホテルフクイ751979225m
ホテル京福 福井駅前751986116m
ホテルフクイキャッスル601988471m
福井プラザホテル301973110m
城町アネックス291984407m
9STAY福井駅前172025229m
宝永旅館17—637m
香爐園41965937m
ゲストHOUSE Loungeたき22015860m
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(開業年は把握できる施設のみ)

新幹線開業前後の単価 — 開業年の夏を2025年に割り込み、2026年夏は開業年を超えた

福井市の推定成約ADRを月次で重ねると、北陸新幹線開業年(2024年)、反動の2025年、回復の2026年という3段の動きが読み取れる。7〜9月の3か月平均は2024年8,917円、2025年8,684円、2026年9,869円で、2026年夏は前年同期比+13.6%、開業年の夏も+10.7%上回った。直近の確定月では2026年8月が10,988円(前年同月比+11.3%)、9月が9,516円(同+13.3%)である。ビジネスホテルに限っても9月は9,555円(同+13.2%、N=13施設)で、業態を問わず前年を1割以上上回る月が続いている。

福井市 推定成約ADR 月次推移(年次重ね合わせ、確定月のみ、N=35〜38施設)
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2024年は7月以降。2026年10月以降の見込み値は表示していない)

背景には需要側の変化がある。観光庁「宿泊旅行統計調査」の2025年確定値では福井県の延べ宿泊者数は392万9,570人泊と前年比−2.4%で、開業年の反動が人泊ベースでは残った。それでも単価が2026年に伸びた理由として、1km圏に2024〜2026年で404室の上位単価帯が加わり、市全体の中央値を押し上げたことが挙げられる。供給が増えて単価も上がった局面であり、204室の追加が市場単価を押し下げる局面とは異なるというのが現時点の読みになる。なお福井県内の階層構造(駅前・温泉・恐竜エリア)については福井3クラスタのADR階層で扱っており、本稿は駅前1件の原価と用地の出方に焦点を絞っている(参考:帯広・旭川・福井・岡山のホテルはなぜ高いのか、福井の朝食プレミアム)。

平日と土曜の埋まり方 — 水曜はLT45で58%、土曜は84%から始まる

開発原価が同じでも、稼働の作り方は曜日で変わる。福井市の全業態(OTA掲載枠が総客室の30%以上の固定コホート、対象29〜33施設・客室1,636〜1,666室)のブッキングカーブを、2026年9月16日(水)・9月19日(土、3連休初日)・9月30日(水)・10月3日(土)で比べると、平日はLT45時点の推定OCCが51.7〜58.3%にとどまり、LT14で67.7〜80.7%、LT1で84.3〜96.8%まで直前に積み上がる。対して土曜はLT45の時点で80.0〜84.0%に達し、LT1で94.5〜99.2%に至る。9月の日別推定OCCは日〜木曜の平均90.1%に対し金・土曜は92.3%、8月は90.9%対93.7%で、平均の差は2〜3ポイントだが、埋まる時点が大きく異なる。

福井市 全業態 ブッキングカーブ(推定OCC、LT45→LT1、対象29〜33施設/客室1,636〜1,666室・主要予約サイト掲載ベース)
出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(OTA掲載在庫ベースの推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なる)

施設別の在庫でも同じ構図が確認できる。2026年9月19日(土)宿泊を対象に、福井県内のビジネスホテルでOTA公開枠が総客室の30%以上の施設を抽出すると、対象94施設のうちデータのある39施設、条件を通過した13施設が得られ、福井駅から4km圏に立地する6施設(アパホテル〈福井片町〉247室、9STAY福井駅前17室、ドーミーインPREMIUM福井189室、御宿 野乃福井152室、足羽川リトアートasunowa 7室、コンフォートイン福井96室)はいずれも残室0を観測した。1km圏ではアパホテル〈福井片町〉がLT26時点で残室0/247室、御宿 野乃福井がLT20で残室0/152室となっている。全業態に広げると、ホテルエコノ福井駅前(138室)と福井プラザホテル(30室)は宿泊日の45日以上前から完売の観測が続いた。単一日・N=6施設の観測であり、これだけで値上げ余地を断定することはできないが、連休の土曜は早期に埋まり、平日は直前のビジネス需要で埋まるという二層の需要が駅前に存在することは、宿泊特化型204室の販売設計を考える上での前提になる。

月(2026年)日〜木曜 平均推定OCC金・土曜 平均推定OCC月平均対象施設・客室
8月90.9%93.7%91.7%19〜28施設
9月90.1%92.3%90.7%23〜33施設
出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(福井市・全業態、OTA掲載在庫ベースの推定、LT1時点)

立地条件 — 商業地域・容積率600%、地価は3年で+18.5%、足羽川の想定浸水は0.5〜3m

国土交通省 不動産情報ライブラリで計画地周辺を確認すると、中央1丁目の電車通り南側は商業地域で、指定容積率600%・建蔽率80%である。地価は駅前の商業地で上昇が続いており、計画地に最も近い公示地価の標準地「福井5-3」(中央1丁目1824番外、駅200m)は2023年の383,000円/㎡から2026年に454,000円/㎡へ3年で+18.5%(2026年は前年比+5.1%)、駅180mの「福井5-1」(大手2丁目2002番)は2021年の340,000円/㎡から2026年の408,000円/㎡へ5年で+20.0%、「福井5-2」(中央1丁目119番)は同じ5年で371,000円から430,000円へ+15.9%上がった。2025年の地価調査でも中央1丁目1707番1内は417,000円/㎡(前年比+6.4%)で、駅前の商業地は年4〜7%の上昇局面にある。用地費が総投資に占める比率を考えると、土地を先に押さえた2025年8月の所有権移転は、地価の上昇前に原価を固定したことになる。

福井駅前 商業地の公示地価推移(円/㎡)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)よりメトロエンジンリサーチ&コンサルティング作成
用途地域・建築規制(計画地周辺)
用途地域商業地域
指定容積率/建蔽率600%/80%
都市再生緊急整備地域福井駅周辺地域(66ha、平成30年10月指定)
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域)、内閣府
洪水浸水想定(想定最大規模)
足羽川(計画地・福井駅)0.5〜3.0m
九頭竜川(計画地)0.5〜3.0m
九頭竜川(福井駅東側)3.0〜5.0m
出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(洪水浸水想定区域)。足羽川は福井県が令和元年6月に指定、2日間総雨量774mmが前提

洪水浸水想定は設備配置の設計条件として読むべき数字である。計画地では足羽川・九頭竜川のいずれでも想定最大規模の浸水深が0.5〜3.0m未満の区分に入り、福井駅の東側では九頭竜川の区分が3.0〜5.0m未満になる。受変電設備・非常用発電機・ボイラーを2階以上に置くか、1階に置く場合は止水板と防水区画を設けるかが、鉄骨9階建ての断面計画で検討されるべき点になる。非常用電源の延長費用については別稿で100室あたりの単価を試算している。

需要の裏付けとして周辺の就業・居住人口も押さえておく。総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)に基づく福井駅1km圏の従業者数は22,578人(事業所2,676、オフィス系比率26.6%)で、県庁・市役所・金融機関が集まる業務地としての平日需要が本件の基礎になる。一方、国土交通省 国土数値情報の250mメッシュ将来推計人口では駅1.5km圏の居住人口は2025年の30,399人から2040年に26,128人(−14.0%)へ減り、2025年時点の高齢比率は35.7%である。居住人口は滞在・通過人口ではなく国勢調査ベースの数字だが、駅前の宿泊需要が住民ではなく来訪者と出張者に依存する構造を示している。

福井駅1.5km圏 250mメッシュ 居住人口(2025年推計)
出典: 国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)。居住人口(国勢調査ベース)であり滞在・通過人口ではない。

投資判断の整理 — 駅前の宿泊特化型を検討する側が持ち帰るべき3点

原価 1室1,907万円の意味

総事業費ベースで利回り6%・通年稼働率80%の必要ADRは約8,700円。福井市の市場中央値(8,922円)で成立し、同ブランドの北陸既存館水準(12,800〜14,000円)なら利回り8.8〜9.6%に相当する。土地を別に見ても必要ADRは約10,300円。

市場 10,000〜16,000円帯の厚み

駅1km圏2,796室のうち10,000〜16,000円帯は761室(27.2%)。2024〜2026年に加わった404室はこの帯の上の16,000円以上帯に入り、市の推定成約ADRは2026年夏に開業年を超えた。204室は帯を965室に厚くする。

用地 百貨店跡の出方

閉店(2021年2月)から着工(2026年8月)まで5年半。買い手の入れ替わりを経て、県・市のファンド(上限2億円・補助率2/3)が最後の一押しになった。地権者・地銀・自治体が同時に関わる型として参照できる。

感度も確認しておく。ADRが想定より10%低い場合、利回り6%の必要稼働率は80%から約89%へ上がり、稼働率が5ポイント低い75%の場合は必要ADRが9,288円に上がる。両方が同時に起きると必要ADRは約10,300円となり、福井市の市場中央値を1,400円ほど上回るため、ブランド水準の集客が利回り維持の条件になる。逆に、1km圏の上位帯が2024年以降に厚くなっても市の単価が上がり続けた実績は、204室の追加が単価を押し下げる懸念を現時点では小さくしている。

ケースADR稼働率年間客室売上GOP(45%)総事業費利回り
ベース(市場中央値)¥8,90080%約5.30億円約2.39億円6.1%
ブランド水準¥13,00080%約7.74億円約3.48億円9.0%
ADR−10%¥8,00080%約4.77億円約2.14億円5.5%
OCC−5pt¥8,90075%約4.97億円約2.24億円5.7%
両方¥8,00075%約4.47億円約2.01億円5.2%
出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(204室・365日・総事業費38億9千万円。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要)

最後に、上場ホテルREITとの接点に触れておく。いちごホテルリート投資法人(3463)、インヴィンシブル投資法人(8963)、日本ホテル&レジデンシャル投資法人(3472)、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、森トラストリート投資法人(8961)、霞ヶ関ホテルリート投資法人(401A)の7法人が開示する保有物件一覧(2026年10月11日時点、N=300物件・国内)のうち、福井県内の物件は2件にとどまる。日本ホテル&レジデンシャル投資法人が保有するあわら温泉の温泉宿泊施設(95室)と、星野リゾート・リート投資法人が保有する福井市内のビジネスホテル(97室、福井駅から約4km)で、福井駅1km圏の物件は含まれていない。駅前の宿泊特化型204室という規格は上場REITの取得対象として一般的な規模であり、開業後の運営実績次第では、福井駅前で初めてREITの保有物件が生まれる候補になり得る。

まとめ

福井駅前の百貨店新館跡に建つ204室は、総事業費38億9千万円・1室1,907万円という公表値から逆算すると、利回り6%・通年稼働率80%で必要ADR約8,700円、福井市の推定成約ADR中央値(8,922円、N=36〜38施設)とほぼ同じ水準で成立する原価構造にある。同ブランドの北陸既存館の推定成約ADR12,800〜14,000円で売れれば利回りは8.8〜9.6%に届く。駅1km圏の既存2,796室は47.3%が8,000〜10,000円帯に集中し、204室が入る10,000〜16,000円帯は761室と薄く、2024年以降は上の16,000円以上帯に404室が加わりながらも市の単価は上がり続けた。用地は閉店から5年半、買い手の入れ替わりと県・市のファンド補助(上限2億円)を経てホテルに転じており、地方県都の大型店跡地が宿泊に転用される経路の一つの型として参照できる。採算の分岐は、連休の土曜がLT45で8割埋まり平日が直前に埋まる駅前の二層需要を、どの単価で取りにいくかにある。

参考資料・出典一覧

■ 一次情報・報道

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計データ(推定成約ADR:福井市 N=36〜38施設・2025年10月〜2026年9月の確定月、駅1km圏 N=22施設・2026年7〜9月。ブッキングカーブ・推定OCC:福井市 全業態29〜33施設)。計画概要は大和ハウスグループのニュースリリースと福井新聞、用地・再開発は内閣府と福井県の資料、地価・用途地域・洪水浸水想定は国土交通省 不動産情報ライブラリによる。

■ 試算前提

必要ADR=総事業費×目標利回り÷(GOP率×365日×客室数×稼働率)。総事業費38億9千万円(報道値)、204室、GOP率45%を置いた。稼働率は通年の想定値(基準80%)であり、観測値ではない。利回りは総事業費に対するGOPの比率。土地別途のケースは敷地約1,600㎡×公示地価43万〜45.4万円/㎡の仮定による。

■ 限界・留意点

総事業費に土地代が含まれるか、敷地面積・延床面積はいずれも未公表で、坪単価と土地別途ケースは仮定に基づく。利回りはGOPベースで、FF&E積立・固定資産税・運営委託料などGOPより下の費用は控除していない。ADR・OCCはOTA掲載情報に基づく推定値で、各施設の実績・会計数値とは異なる。同ブランド既存館の単価は立地・開業年の異なる4館の参考値で、本件の開業後の単価を示すものではない。客室ストックは価格観測ベース(23施設・2,796室)と開業日・閉館日ベース(2026年 29軒・2,845室)で集計基準が異なる。駅前南通り地区など周辺の供給計画は織り込んでいない。

■ 市場データ

  • メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(福井市 N=36〜38施設、福井市ビジネス N=11〜13施設、1km圏 N=22施設)、エリア客室供給時系列、ブッキングカーブ・推定OCC(福井市 全業態 29〜33施設)、施設別在庫(福井県ビジネス 対象94施設・データあり39・条件通過13)、7投資法人が開示する保有物件一覧(2026年10月11日時点、N=300物件)

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