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結婚式の宿泊需要はどれだけか — 11月は式場売上の14.4%、1組で8〜18人泊、仙台・広島・熊本の土曜在庫

投稿日 : 2026.10.15

宮城県

広島県

熊本県

石川県

香川県

結婚式の宿泊需要はどれだけか — 11月は式場売上の14.4%、1組で8〜18人泊、仙台・広島・熊本の土曜在庫

総務省「サービス産業動態統計調査」の参考表によると、結婚式場業の2025年の売上高は11月が870億円と年間6,055億円の14.4%を占め、10月の653億円と合わせた2か月で25.2%に達した。春の3〜5月(27.7%)と並ぶ二つ目の山であり、この秋も10月から挙式のピークに入る。本稿は婚礼そのものではなく「参列者が泊まる客室」に焦点を当て、挙式の季節波形を婚姻届の月別件数と切り分けたうえで、招待客数の公表値から1組が生む宿泊人泊を仮定レンジで試算し、シティホテルが厚い仙台・広島・熊本の3都市圏で土曜の客室がいつ埋まり、単価が平日とどれだけ開くかをメトロエンジンリサーチのデータで確かめる。結論として置くのは、秋の土曜に婚礼由来の宿泊がどこまで乗り得るかという規模感と、宿泊単体の宿がその需要を前後泊や送迎で取りにいく余地である。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。本稿の「稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)」はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定の施設集合です。
  • 掲載価格:2名1室利用時の1室あたり料金(税込)の全プラン平均。曜日別の比較はこの掲載価格ベースで、観測行の平均です。
  • LT(リードタイム):チェックイン日までの日数。ブッキングカーブは宿泊日に向けたOTA残室数の推移で、本稿はLT45以内の観測のみを用います。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ(宿泊データ)、総務省・厚生労働省・経済産業省の各統計、リクルートブライダル総研の公表値。
Key Takeaways
  • — 11月が式場売上の14.4%:2025年の結婚式場業売上6,055億円のうち11月が870億円、10〜11月で25.2%と、3〜5月(27.7%)に並ぶ秋の山。婚姻届の月別件数(7月・3月が多い)は挙式時期の代理にならない。
  • — 1組で8〜18人泊(仮定):招待客52.0人(2024年調査)に遠方比率15・25・35%を置いた試算で、2名1室換算3.9〜9.1室。九州(68.8人)なら遠方25%で17.2人泊。
  • — 土曜は45日前に85〜95%:2026年10月8日〜11月21日宿泊分のシティホテル(OTA掲載在庫ベース・推定)は宮城95.1%・広島85.3%・熊本86.8%で、火〜木を4〜12pt上回る。
  • — 20組が重なれば130〜260室:遠方25%なら260人泊。45日前の土曜残室は宮城約57室・熊本約166室・広島約247室で、会場ホテルに収まらない分は周辺の宿へ波及する。
  • — 土曜の掲載価格は火〜木の1.4〜1.7倍(2025年10〜11月・5都市)。宿泊単体の宿の余地は金曜前泊・日曜後泊と、送迎・団体予約窓口の組み合わせにある。

挙式の二山 — 11月が年間の14.4%、婚姻届の波形とは別物

まずは挙式がいつ行われているかを売上の側から確かめたい。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」は2024年12月分で終了し、2025年1月からは総務省の「サービス産業動態統計調査」に統合されたが、同調査の参考表(事業活動の産業細分類別売上金額)には結婚式場業の月次売上高が引き続き収録されている。2025年の月別売上高を並べると、11月が870億円で最大、次いで10月の653億円、5月の627億円、3月の569億円と続き、8月の336億円と1月の291億円が谷になる。年間に占める比率でみると11月14.4%・10月10.8%・5月10.4%・3月9.4%で、10〜11月の2か月で25.2%、3〜5月の3か月で27.7%という二山の形がはっきり出る。

この波形は2026年も崩れていない。同じ参考表の2026年1〜7月は累計3,256億円と前年同期(3,165億円)を2.9%上回り、1月+10.3%・2月+9.4%・3月+3.2%と年初が強く、4月−4.1%・5月−0.2%と春の山はほぼ前年並みだった。秋の山に向かう9〜11月分はまだ公表されていないが、春の山が維持された以上、10〜11月に結婚式場業の売上が再び年間最大になる見込みは高いといえる。なお、件数ベースでも同じ形で、旧調査(経済産業省、調査対象企業ベース)の2024年の取扱件数は年間63,190件のうち11月が8,274件(13.1%)、10月が7,191件(11.4%)と、やはり秋に最大の山があった。この結婚式場業の売上規模と、ホテルの非客室売上に占める婚礼・宴会の季節性については、婚礼2,292億円・組単価363万円|ホテル非客室売上の61%は9-11月と3-5月で整理している。

結婚式場業の月別売上高(億円)— 2024〜2026年

出典:総務省「サービス産業動態統計調査」参考表(事業活動の産業細分類別売上金額)よりホテルバンク編集部作成。2025年1月に旧調査を統合しており、2024年以前との時系列比較には注意が必要(総務省注記)

一方で、婚姻件数の月別推移は挙式の季節性を表さない。厚生労働省「人口動態統計速報」の2025年の婚姻件数は年間505,656組(前年比+1.1%)で、月別では7月の58,764組(11.6%)と3月の55,762組(11.0%)が突出し、11月は49,489組(9.8%)、10月は41,891組(8.3%)にとどまる。届出日は7月7日や11月22日の「いい夫婦の日」のような記念日や年度替わりに寄るため、挙式の時期とは別の論理で動いている。宿泊需要を読む指標としては、届出件数ではなく式場売上の波形を使うべきだと分かる。

2025年 月別構成比の比較 — 結婚式場業売上 vs 婚姻届件数(%)

出典:総務省「サービス産業動態統計調査」参考表、厚生労働省「人口動態統計速報」(令和7年1〜12月分)よりホテルバンク編集部作成

ただし、挙式月を当事者に尋ねた調査では別の順位が出る点には触れておきたい。リクルートブライダル総研「結婚マーケット調査2025」の挙式月は6月14.0%・5月13.1%・4月12.4%・3月10.4%・10月9.1%・11月8.0%と春〜初夏が上位で、売上統計の秋の山とは一致しない。調査対象期間と回答者構成の違いによるもので、本稿は会場側の売上として実際に計上された月を採る。

表1 婚姻件数 — 5県(2025年速報・2024年届出月別の10〜11月)と3政令市
地域2025年 婚姻件数(速報)うち10〜11月2024年 届出月別 10〜11月(確定数)
宮城県8,331組—1,436組(580+856)
石川県3,950組—705組(266+439)
広島県10,408組—1,655組(637+1,018)
香川県3,266組—566組(204+362)
熊本県6,082組—999組(397+602)
仙台市/広島市/熊本市5,225/5,424/3,514組——

出典:厚生労働省「人口動態統計速報」令和7年12月分(都道府県・指定都市別、2025年1〜12月累計)、「人口動態調査」2024年確定数(婚姻件数、都道府県・届出月別)よりホテルバンク編集部作成。速報は日本における外国人等を含み概数・確定数と一致しない

1組が生む宿泊人泊 — 招待客52.0人に遠方比率15・25・35%を置く

次に、1組の挙式が何人泊の宿泊を生むかを仮定を明示して試算する。招待客数の公表値は、リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」の全国推計で披露宴・ウエディングパーティーの招待客人数が平均52.0人(前年調査比105.9%、2.9人増)である。地域別では宮城・山形50.7人、岡山・広島・山口・鳥取・島根48.1人、四国50.3人、富山・石川・福井45.0人、九州68.8人と、九州が突出して多い。同総研の「結婚マーケット調査2025」では全国平均57.2人と報じられており(講談社「現代ビジネス」掲載記事)、招待客数はコロナ禍の42.8人(2021年調査)から回復が続いている。

遠方からの参列者比率については、全国を代表する公表統計が見当たらなかった。そこで本稿は、宿泊を伴う参列者の比率を15%・25%・35%の3シナリオとして置く。これは仮定値であり、都市部の式では両家の地元が離れているほど高く、地元同士の式では低くなる。宿泊は1泊、客室換算は2名1室を基準とし、1名1室が多ければ室数は最大で2倍になる。この前提で全国値52.0人を使うと、1組あたりの宿泊は15%で7.8人泊、25%で13.0人泊、35%で18.2人泊、客室換算(2名1室)で3.9〜9.1室となる。

表2 1組あたりの宿泊人泊・客室数(招待客数×遠方比率、遠方比率は仮定)
招待客数の基準(2024年調査)遠方15%遠方25%遠方35%
全国推計 52.0人7.8人泊/3.9室13.0人泊/6.5室18.2人泊/9.1室
宮城・山形 50.7人7.6人泊/3.8室12.7人泊/6.3室17.7人泊/8.9室
岡山・広島・山口・鳥取・島根 48.1人7.2人泊/3.6室12.0人泊/6.0室16.8人泊/8.4室
四国 50.3人7.5人泊/3.8室12.6人泊/6.3室17.6人泊/8.8室
富山・石川・福井 45.0人6.8人泊/3.4室11.2人泊/5.6室15.8人泊/7.9室
九州 68.8人10.3人泊/5.2室17.2人泊/8.6室24.1人泊/12.0室

出典:リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」全国推計および地域別平均をもとにホテルバンク編集部試算。遠方比率は仮定値、宿泊1泊・2名1室換算(1名1室なら室数は2倍)

この1組あたりの値を都市の土曜に積み上げるには、同じ日に市内で何組の披露宴が重なるかという二つ目の仮定が要る。本稿では10組・20組・30組の3段階を置く。全国値(遠方25%・13.0人泊)で計算すると、10組で130人泊(65〜130室)、20組で260人泊(130〜260室)、30組で390人泊(195〜390室)になる。九州の招待客数68.8人を使えば同じ遠方比率で1組17.2人泊となり、20組で344人泊(172〜344室)まで膨らむ。あくまで仮定の組み合わせだが、後段で見る各都市のシティホテルの客室規模(1,100〜1,700室)と比べると、土曜1日の婚礼由来宿泊は対象客室の1割から2割に相当し得る量だと分かる。

仙台・広島・熊本のシティホテル、土曜は45日前に掲載在庫ベース稼働85〜95%

それでは、会場になりやすいシティホテルの土曜在庫は秋の挙式期にどう動いているのか。メトロエンジンリサーチのブッキングカーブ(宿泊日に向けたOTA残室数の推移)を、シティホテルの固定集合が10施設以上で成立した宮城県(対象10施設/客室1,172室、主要予約サイト掲載ベース)、広島県(14施設/1,683室)、熊本県(11施設/1,255室)について、2026年10月8日〜11月21日の宿泊日で曜日別に平均した。石川県と香川県はシティホテルの対象施設数が10未満でカーブを出せないため、この節では扱わない。

宮城県では、土曜の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)がLT45(45日前)の時点ですでに95.1%に達し、火〜木の83.1%を12pt上回っていた。広島県は土曜85.3%に対し火〜木81.6%、熊本県は土曜86.8%に対し火〜木81.3%と、45日前の差は4〜6ptだが、宿泊日が近づくにつれ土曜だけが先に細り、LT30では広島89.3%・熊本93.4%、LT14では広島95.2%・熊本94.9%まで埋まる(LT14の土曜は10月10日・17日の2日分)。金曜は3県とも土曜と火〜木の中間(LT45で84〜90%)に位置し、前泊需要が乗る余地を残している。実績側でも、宮城県のシティホテルは9月12日(土)に98.3%、熊本県は9月26日(土)に97.1%と、連休でない通常の土曜で97%超を観測しており、秋の土曜は構造的に満室に近い。宮城県の土曜カーブがイベント日にはどう形を変えるかは、仙台七夕2026、8/8(土)は45日前80.8%から+11.7ptで45日前からの積み上がりを追っている。

シティホテルの土曜 vs 火〜木 ブッキングカーブ(稼働率・OTA掲載在庫ベース・推定、2026年10/8〜11/21宿泊分の平均)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。宮城県10施設/1,172室、広島県14施設/1,683室、熊本県11施設/1,255室(総客室の30%以上をOTAに掲載する施設の固定集合、主要予約サイト掲載ベース)。LT45以内の観測のみ。LT14付近は土曜2日分の平均

表3 シティホテルの曜日別ブッキングカーブ(OTA掲載在庫ベース・推定、2026年10月8日〜11月21日宿泊分)
県(対象)曜日LT45LT30LT14LT45時点の掲載価格
宮城県(10施設/1,172室)土曜95.1%94.7%95.0%¥36,323
金曜89.6%92.1%90.4%¥24,237
火〜木83.1%85.5%85.1%¥15,425
日曜86.6%87.9%87.4%¥15,931
広島県(14施設/1,683室)土曜85.3%89.3%95.2%¥40,914
金曜84.3%86.5%86.1%¥27,922
火〜木81.6%83.6%86.3%¥26,020
日曜82.3%84.5%85.2%¥26,439
熊本県(11施設/1,255室)土曜86.8%93.4%94.9%¥28,825
金曜86.6%89.6%87.2%¥22,311
火〜木81.3%82.9%87.5%¥18,657
日曜79.0%82.7%92.5%¥18,152

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値で施設全体の実稼働率とは異なる。掲載価格は2名1室・税込・全プラン平均(調査時点の掲載水準に基づく推定)。土曜6日・金曜7日・火〜木19日・日曜6日の宿泊日平均(LT45時点)

単価 — 土曜の掲載価格は火〜木の1.4〜1.7倍、推定成約ADRは秋に金沢・広島で上振れ

在庫が先に細る土曜は、単価の側でも平日と大きく開く。昨年の挙式期である2025年10〜11月について、5都市のシティホテル(市区町村単位、仙台市青葉区7施設・金沢市4施設・広島市中区9施設・高松市5施設・熊本市中央区8施設)の掲載価格(2名1室・税込・全プラン平均)を曜日別に平均すると、土曜は仙台市青葉区で¥40,100と火〜木平均(¥28,100)の1.42倍、広島市中区で¥48,200と1.40倍、熊本市中央区で¥38,200と1.38倍だった。金沢市は土曜¥65,800で1.68倍、高松市は¥47,200で1.62倍と、観光需要が重なる都市ほど倍率が高い。金曜は仙台¥31,200・広島¥35,200・熊本¥29,200と火〜木より2〜11%高い。参列者が宿泊する土曜は、年間でも単価が最も高い夜の一つにあたる。なお、挙式日そのものの価格を婚礼会場の周辺1km圏で日別に追い、六曜や連休と重ねた分析は挙式最多の11月、会場周辺ホテルは高いかが扱っている。

2025年10〜11月 曜日別掲載価格(シティホテル、2名1室・税込・全プラン平均)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。市区町村内のシティホテル(仙台市青葉区N=7、金沢市N=4、広島市中区N=9、高松市N=5、熊本市中央区N=8)、2025年10月1日〜11月30日の観測行平均。金沢市は施設数が少なく参考値

推定成約ADR(最安プラン水準に業態別補正を加えた税抜相当の推定値、月次中央値)でみても、秋は水準が上がる都市が多い。2025年は仙台市青葉区が10月¥12,400・11月¥13,100(N=8)、金沢市が10月¥18,100・11月¥20,600(N=8)、広島市中区が10月¥16,100・11月¥16,500(N=7)、高松市が10月¥17,400・11月¥14,100(N=5)、熊本市中央区が10月¥9,200・11月¥9,500(N=9)だった。直近の確定月である2026年9月は仙台¥14,500・金沢¥14,800・広島¥14,700・高松¥11,400・熊本¥11,200で、金沢は9月から10〜11月にかけて例年どおり大きく上がる季節性を持つ。2026年10〜11月は調査時点の掲載水準に基づく推定(下表の右2列)で、確定月とは基準が異なるため前年との増減率は示さない。

表4 シティホテルの推定成約ADR(税抜相当・月次中央値)
市区(シティホテル)2025年10月2025年11月2026年9月2026年10月※2026年11月※
仙台市青葉区(N=8〜9)¥12,419¥13,076¥14,469¥15,478¥14,762
金沢市(N=8)¥18,124¥20,574¥14,762¥18,011¥19,586
広島市中区(N=7)¥16,122¥16,512¥14,652¥23,324¥19,320
高松市(N=5〜6)¥17,394¥14,096¥11,392¥13,124¥12,444
熊本市中央区(N=9)¥9,168¥9,460¥11,194¥14,801¥14,912

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。推定成約ADR(税抜相当・月次中央値)。※2026年10〜11月は調査時点の掲載水準に基づく推定で、確定月とは基準が異なる

秋の土曜に婚礼由来の宿泊はどれだけ乗り得るか

ここまでを整理すると、挙式は10〜11月に年間の4分の1が集中し、1組あたり8〜18人泊(仮定)の宿泊を生み、会場になりやすいシティホテルの土曜は45日前の時点で85〜95%が埋まっている。この三つを重ねると、婚礼由来の宿泊が土曜にどれだけ乗り得るかの規模感が出る。LT45時点の土曜残室を客室数に直すと、宮城県のシティホテル集合(1,172室)は約57室、広島県(1,683室)は約247室、熊本県(1,255室)は約166室である。一方、仮に市内で20組の披露宴が重なり、全国値の遠方比率25%で1組13.0人泊が生まれるとすれば260人泊、2名1室換算で130室、1名1室が多ければ260室の需要になる。

感度 — 組数×遠方比率で見る土曜1日の婚礼由来宿泊

組数と遠方比率という二つの仮定を同時に動かすと、土曜1日の婚礼由来宿泊は下表の9通りになる。招待客数は全国値の52.0人、宿泊は1泊とし、客室数は2名1室換算〜1名1室換算の幅で示した。

表5 土曜1日の婚礼由来宿泊の感度(市内の披露宴組数×遠方比率、いずれも仮定)
同日の披露宴組数遠方15%遠方25%遠方35%
10組78人泊(39〜78室)130人泊(65〜130室)182人泊(91〜182室)
20組156人泊(78〜156室)260人泊(130〜260室)364人泊(182〜364室)
30組234人泊(117〜234室)390人泊(195〜390室)546人泊(273〜546室)

出典:リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」の招待客人数(全国推計52.0人)をもとにホテルバンク編集部試算。組数・遠方比率は仮定値、宿泊1泊、室数は2名1室〜1名1室換算

2名1室換算で、45日前の土曜残室と比べると、宮城県(約57室)を上回るのは9通り中8通りで、収まるのは10組・遠方15%(39室)の1通りだけである。熊本県(約166室)は20組・遠方35%と30組・遠方25%以上の3通り、広島県(約247室)は30組・遠方35%の1通りで残室を上回る。1名1室の参列者が多ければ必要室数は最大で2倍になり、上回る組み合わせはさらに増える。

つまり宮城県では、45日前にシティホテルに残る土曜の客室(約57室)だけでは20組分の参列者宿泊(130〜260室)を収めきれない計算になり、広島県・熊本県でも宿泊日が近づくにつれ残室は60〜80室前後(LT14時点、広島約81室・熊本約64室)まで減るため、挙式の1〜2か月前に招待状の返信を済ませてから宿を探す参列者の多くは会場ホテル以外に泊まることになる。この量は組数と遠方比率という二つの仮定に強く依存するが、10組・遠方15%という控えめな組み合わせでも78人泊(39〜78室)であり、宮城県の土曜残室とほぼ同じ規模になる。婚礼由来の宿泊は、会場ホテルに収まらない分が周辺の宿泊特化施設へ波及する構造にあると読める。

加えて、土曜の掲載価格が火〜木の1.4〜1.7倍に達している以上、参列者にとって会場ホテルの宿泊費は無視できない負担になっている。ゼクシィの参列者調査では、宿泊費の負担やホテル手配といった配慮があると9割近くが悩まず出席したいと答えており、新郎新婦側が宿泊先の案内に関与する余地も大きい。周辺の宿がこの需要を取りにいく際の論点は、会場との距離や送迎、そして参列者向けの料金設計に置かれることになる。

宿泊単体の宿が取りにいく余地 — 前後泊・送迎・グループ窓口

宿泊特化型のビジネスホテルや周辺の旅館にとって、秋の土曜はすでに高稼働の夜であり、婚礼需要は「新たに土曜を埋める」というより「土曜の前後に泊数を伸ばし、単価の高い夜に確度の高い予約を早く確保する」機会として捉えるのが実態に合う。データ上の余地は三つある。第一に金曜の前泊で、3県のシティホテルはLT45で金曜84〜90%と土曜を0.2〜5.5pt下回り、遠方からの参列者が前日入りする行動に合う在庫が残っている。第二に日曜の後泊で、日曜は79〜87%と週で最も余地が大きい曜日の一つであり、翌日に観光を組み合わせる参列者を取り込める。第三に、婚礼の予約確定は挙式の2〜3か月前に進むため、LT60〜90の段階で確度の高い団体予約が入る点で、直前の個人予約より早い時期に土曜の下地を作れる。

具体的な打ち手として考えられるのは、会場からの距離と所要時間を明記した参列者向けの前後泊プラン、会場までの送迎やタクシー手配の案内、早朝の着付け・ヘアセットに合わせた時間設定、そして新郎新婦や式場からの一括問い合わせを受けるグループ予約の窓口である。式場との提携で招待状に宿泊案内を同封してもらえれば、参列者が宿を探し始める前に選択肢に入れる。土曜の単価が高い都市ほど「会場ホテルより手頃で、会場に近い」というポジションの価値は大きく、会場ホテルの土曜在庫が45日前に細る宮城県のような市場では、その波及分を受け止める準備があるかどうかで秋の土曜の収益が変わり得る。

一方で注意点もある。本稿の組数と遠方比率は仮定であり、同じ都市でも式場の立地(駅前か郊外か)や参列者の年齢構成で宿泊比率は変わる。また掲載在庫ベースの稼働率は掲載外の客室を消化済みとして数えるため実稼働率より高めに出る。婚礼需要の取り込みを検討する際は、自館の商圏にある式場の件数と挙式日のカレンダーを式場側に直接確かめ、ここで示した規模感を自館の客室数に当てはめて考えるのが現実的である。

まとめ

結婚式場業の売上は2025年に11月が年間の14.4%、10〜11月で25.2%を占め、2026年1〜7月も前年同期を2.9%上回って春の山を維持した。婚姻届の月別件数は7月・3月に寄るため挙式の代理変数にはならず、宿泊需要を読む指標は式場売上の波形である。招待客52.0人(2024年調査)に遠方比率15〜35%を置くと1組の宿泊は8〜18人泊で、20組が重なる土曜には130〜260室に相当し得る。仙台・広島・熊本のシティホテルは土曜が45日前に85〜95%まで埋まり、掲載価格は火〜木の1.4〜1.7倍に開くため、婚礼由来の宿泊は会場ホテルに収まらない分が周辺へ波及する構造にある。宿泊単体の宿にとっては、金曜前泊・日曜後泊と送迎・グループ窓口を組み合わせて、その波及分を早い時期に確度高く取りにいく余地が残っている。

よくある質問

Q. 結婚式が最も多い時期はいつですか。

会場の売上で見ると秋です。総務省の統計で結婚式場業の2025年の売上は11月が年間の14.4%で最大、10〜11月の2か月で25.2%を占め、3〜5月(27.7%)と並ぶ二山になっています。婚姻届の件数は7月・3月に多く、挙式の時期とは別の動きをします。

Q. 結婚式1組でどれくらいの宿泊が生まれますか。

招待客数の全国平均52.0人(ゼクシィ結婚トレンド調査2024)に、宿泊を伴う遠方参列者の比率を15・25・35%と仮定すると、1組あたり7.8〜18.2人泊、2名1室換算で3.9〜9.1室です。招待客が68.8人と多い九州では、遠方25%で17.2人泊になります。

Q. 秋の土曜、シティホテルはどのくらい前から埋まっていますか。

2026年10月8日〜11月21日宿泊分の平均で、45日前の時点の土曜はOTA掲載在庫ベースの推定で宮城県95.1%・広島県85.3%・熊本県86.8%に達し、火〜木を4〜12pt上回ります。広島・熊本は14日前に95%前後まで埋まります。

Q. 土曜の宿泊料金は平日よりどれだけ高いですか。

2025年10〜11月のシティホテルの掲載価格(2名1室・税込・全プラン平均)で、土曜は火〜木の1.38〜1.68倍でした。仙台市青葉区1.42倍・広島市中区1.40倍・熊本市中央区1.38倍に対し、観光需要が重なる金沢市は1.68倍、高松市は1.62倍です。

Q. 宿泊特化型の宿は婚礼の宿泊需要をどう取り込めますか。

土曜より在庫に余地のある金曜の前泊(45日前で84〜90%)と日曜の後泊(79〜87%)を参列者向けに用意し、会場までの距離・送迎の案内、早朝の着付けに合わせた時間設定、新郎新婦や式場からの一括問い合わせを受ける団体予約の窓口を組み合わせるのが現実的です。

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⚠ 将来日程のデータに関する注意:本記事の2026年10〜11月の稼働率(OTA掲載在庫ベース・推定)・掲載価格・推定成約ADRは調査時点(2026年10月7日)でOTAに公開されている販売状況に基づく推定であり、宿泊日に近づくにつれて在庫の追加や価格調整で変動します。1組あたりの宿泊人泊と組数は仮定値であり、実測ではありません。

参考資料・出典一覧

■ データソース

結婚式場業の月次売上高は総務省「サービス産業動態統計調査」参考表(2024年1月〜2026年7月)、取扱件数は経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」(2024年)、婚姻件数は厚生労働省「人口動態統計速報」(2025年)と「人口動態調査」確定数(2024年)、招待客数はリクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2024」。ブッキングカーブ・曜日別掲載価格・推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ(シティホテル)。

■ 試算前提

1組あたりの宿泊人泊は招待客数×遠方比率(15・25・35%の仮定)、宿泊1泊、客室は2名1室換算(1名1室なら最大2倍)。同じ土曜に市内で重なる披露宴の組数(10・20・30組)も仮定値。土曜残室は県別のシティホテル集合の総客室数×(1−45日前時点の推定稼働)で算出した。推定成約ADRは最安プラン水準に業態別補正を加えた税抜相当の施設中央値、掲載価格は2名1室・税込の全プラン平均(観測行の平均)。

■ 限界・留意点

遠方比率と組数は全国を代表する公表統計が無いため仮定で置いており、式場の立地や参列者の構成で大きく変わる。推定稼働はOTA掲載在庫ベースで、掲載外の客室を消化済みとして数えるため実稼働より高めに出る。2026年10〜11月の値は調査時点(2026年10月7日)の推定で、宿泊日までに変動する。石川県・香川県はシティホテルの対象施設が10未満のためブッキングカーブを示しておらず、金沢市の曜日別価格は4施設の参考値である。

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