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【カトープレジャーグループ代表取締役社長兼グループCEO 加藤宏明氏】日本のレジャーを楽しく!多角的な事業展開で業界に新風を(後編)

投稿日 : 2024.12.11

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インタビュー

コラム

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「日本のレジャーをもっと楽しく!」をテーマに、ホテル、リゾート、レストラン、エンターテインメント、リバークルーズなど多岐にわたる事業の開発や運営を手がけるカトープレジャーグループ。トータルプロデュースカンパニーとして、土地の魅力を活かした独自の視点で、新たな魅力を生み出し続けています。カトープレジャーグループ全体での施設数を約90施設にまで伸ばし、業界に新たな風を吹き込んでいます。

2023年4月に代表取締役社長 兼 グループCEOに就任した加藤宏明氏。後編では、同社の特徴的な施設運営の考えや、今後の展望について伺いました。

前編はこちら

経営体制とブランドクオリティの維持

──具体的な経営と、ブランドのクオリティの保ち方を教えてください。

加藤:まず、グループ代表の加藤と私が最終決定権者として全体を統括しています。その下に、エリアごとに決裁権を持つ社長がいます。彼らがスピード感を持って判断を下す体制で、ある種手綱を渡しながらオペレーションを行う形です。

私自身も年間を通じて全施設を回るようにしていますが、施設数が増えるにつれて難しくなってきています。そのため、同じ目線を持ったオペレーションリーダーを育成することが重要だと考えています。現在、エリア・業態別に社長が3名と、グループ会社をあわせますと社長が7名いますが、今後の事業展開を考えると、さらに15名から20名ほど、同様の目線を持った社長候補を育成する必要があります。

──多様な事業を展開する中で、ブランドのクオリティはどのように維持されているのでしょうか。

加藤:各施設やブランドごとに基準を設けており、例えば「ふふ」ブランドでは、ルーム数や施設の作り方、必要なスタッフ数など基準を設定しています。また、リブランディングやリノベーションも計画的に行っています。「ふふ 熱海」では2007年の開業から15年を機に大規模なリニューアルを実施しました。これは、ブランドの鮮度を保ち、お客さまの期待に応え続けるために不可欠な取り組みだと考えています。

2024年7月に再開業した「ふふ 熱海」の客室。全室源泉掛け流しの露天風呂がついている

 

300人の料理人が支える食のクオリティ

──「つるとんたん」をはじめ、日本料理、イタリアンなど幅広い店舗がそろっています。リゾートの食事に対する顧客満足度も非常に高いです。食についてどのような取り組みをしていますか?

加藤:はい、宿泊業において、食もとても大切なものとなります。社内には、各地の施設にいる300名もの料理人が集まる「料理人会」という組織があるので、知恵を出し合いメニュー開発に携わっています。
また、社内で決裁権を持つメンバーによる試食も必ず行い、クリアしたメニューのみが世に出ています。私もその一人として担当施設には必ず毎月行き、全メニューの試食をしています。

例えば、弊社施設は年間で750万人を超える多くのお客さまにお越しいただいています。それだけのお客さまにお出ししても良い料理なのか?非常に厳しい目線で確認しています。店舗にお越しいただく全てのお客さまにとって感動レベルに達しているのかどうか、年齢やキャリア関係なく、感じたことをお伝えしています。

また、私自身国内外のさまざまな価格帯のレストランに年間300箇所以上に足を運んでいます。料理人会のメンバーとさまざまな業態の店舗を周り、「なぜ流行しているのか」「どうしてこの店に魅力を感じたのか」などを言語化し合っています。こうした体験と体感を通じて、目線を合わせていくことも大事ですね。

インタビューに答える加藤宏明氏

 

多角的な事業展開とドミナント戦略

──御社の事業展開の特徴について教えてください。

加藤:弊社がプロジェクトを手がけるリゾートエリアについては、どこでやるかということはもちろんですが、どういう形でオペレーションできるかということにも重要視しています。軽井沢や箱根、熱海といった確立された成熟したマーケットで戦っていくのも一つのポイントと捉えております。

弊社の強みは業態開発とオペレーションができるトータルプロデュースカンパニーである点です。これにより、一つのマーケットの中でドミナント戦略を取ることができます。例えば、一泊の価格帯が2万円から、10万円を超えるホテル・旅館など様々な価格帯のブランドを一つのエリアで展開し、ワンチームでオペレーションできるのが我々の強みの一つです。


業態の垣根を超えた人材育成

──人材育成や組織づくりについてどのようなお考えをお持ちですか。

加藤:私たちはトータルプロデュース業なので、ホテルやレストランなど一つの専門性だけではなく、様々な業務に対応できる人材がいることも強みです。業態開発ができ、オペレーションもでき、「ふふ」のオペレーションも「つるとんたん」のオペレーションもできる、そういった人材育成をしていければと考えています。

──つるとんたんで人手が多く、ホテルに足りない場合にホテルへヘルプに行く、というようなこともあり得るということでしょうか?

加藤:そうですね。実際、制服を着替えて近隣の施設に移動するといったクロスワークもしていただいています。大型施設であれば、レストランで勤務するスタッフがフロントや清掃をする、マーケティングチームもフロントに立つといった働き方もしています。中途採用の方も社風を理解した上で活躍してくれており、非常に心強いです。

特に最近は、ChatGPTの活用やAIスピーカーの導入、自動チェックインシステムの普及など、テクノロジーの進化により、単一作業を行うオペレーションは機械に置き換わっていく可能性が高いです。そのため、今後必要となる人材は、マルチに活躍でき、考える力を持った人財だと考えています。



21万人のカスタマークラブの取り組み

──顧客との関係性構築についての取り組みがあれば教えてください。

加藤:カスタマークラブを運営しており、現在約21万名の会員がいます。そのうち、プレミアムカスタマーが2万3000名ほどいます。さらに、エグゼクティブオーナーという、別荘やホテルの一室を所有いただいている方もいらっしゃいます。例えば、沖縄の「カフーリゾート」では、分譲型のホテルを展開しており、各部屋にオーナーがいらっしゃいます。こういった方々に対して、付加価値の高いサービスを提供することを目指しています。

理想としては、会員の方々にカトープレジャーグループの施設を中心としたライフスタイルを築いていただくことです。カジュアルな居酒屋から高級イタリアン、ビジネスでの接待、宿泊まで、 様々なシーンに応じてご提案をし、弊社の施設をご利用いただきたいと思います。将来的には、そういったブランド化された企業になることを目指しています。

具体的には、新店舗のオープン時の優先予約や、花火が見える季節のオーナーさま優先予約など、会員さまへの特別なサービスを提供しています。単なる情報提供だけでなく、カトープレジャーグループという企業に価値を感じていただけるようなご提案を、BtoCの観点からしっかりと行っていきたいと考えています。

 

開発戦略と今後の展望

──カトープレジャーグループの特徴的なプロジェクトについて教えてください。

加藤:近年力を入れているのが、別荘事業とホテルコンドミニアム事業です。軽井沢では「GLAMDAY(グランデイ)」ブランドを展開しており、「GLAMDAY STYLE TEITAKU」シリーズでは、1棟を24名で所有し、年間14日間ご滞在いただけるシェア別荘を提供しています。また、沖縄では「GLAMDAY STYLE HOTEL&RESORT OKINAWA YOMITAN」という、1棟を所有し、年間20日間のご滞在以外はホテルとして運用する収益型のホテルコンドミニアムを展開しています。

2023年1月に長野県軽井沢町に誕生した「GLAMDAY STYLE TEITAKU 庭ノ空」

加藤:EC事業の強化も重要な戦略の一つです。各ブランドの商品をオンラインで販売することで、実店舗以外の収益源を確立し、ビジネスモデルの多角化を図っています。

さらに、2025年には「ふふ 東京銀座」がオープン予定です。東京都内初の「ふふ」ブランドとなるこのプロジェクトは、都市型ラグジュアリーホテルの新たなモデルケースとなることを目指しています。


──最後に、今後の展望についてお聞かせください。

加藤:今後も「日本のレジャーをもっと楽しく!」というビジョンのもと、常に新しい価値の創造に挑戦し続けていきます。お客さまに感動と喜びを提供し、地域社会に貢献できるような事業展開を進めていきたいと考えています。

カトープレジャーグループは、施設にお越しいただいているお客さま、私たちを信頼し事業を託してくださるクライアントの皆さま、共に歩んでくださるお取引先の皆さま、そして全国各地の施設を支えてくださる地域の皆さまからの、大きなご協力とご支援をいただいています。そのおかげもあり、コロナ禍が明けてから全ての施設が高稼働を維持しており、大きな外的要因の影響は感じていません。この強みを活かしつつ、さらなる成長を目指していきます。

今後も「日本のレジャーをもっと楽しく!」というビジョンのもと、常に新しい価値の創造に挑戦し続けていきます。お客さまに感動と喜びを提供し、地域社会に貢献できるような事業展開を進めていきたいと考えています。

 

カトープレジャーグループ 代表取締役 兼 グループCEO 加藤宏明氏

1990年大阪生まれ。青山学院大学卒業後、ニューヨーク大学大学院にてホテルファイナンスを専攻。カトープレジャーグループに入社。2017年設立の KPG Internationalの担当責任者に就任。

つるとんたんブランドの海外展開や海外事業投資などを行なう。18年カトープレジャーグループ取締役本部長に就任。21年 1月カトープレジャーグループの執行部体制改革に伴い、代表取締役専務兼グループ COOに就任。23年 4月 1日代表取締役社長兼グループ CEOに就任。

(取材・執筆 かたおか由衣)

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