ホテルの立地を測る物差しは、これまで需要(商圏・交通・イベント)、供給(競合客室数)、地価、そして災害リスクの四つで語られてきた。本稿では五つ目の軸——気候そのものが毎年生む運営コスト——を、気象庁の平年値とメトロエンジンリサーチの宿泊単価データで定量化する。夏の冷房費は近年よく議論されるが、冬の暖房と除排雪は通年コストでありながら、立地選定の判断材料として数値化されることがほとんどない。
結論から述べる。豪雪地帯の23市町村を調べると、平年降雪量は冬季単価のばらつきの4分の1しか説明しない。同じ降雪量帯のなかで、冬の単価が夏の0.62倍まで沈む街と、2.66倍まで跳ね上がる町が併存している。雪の量ではなく「雪を収益に変換する仕組みが立地に備わっているか」が、GOPマージンと利回りを分けている。
本記事における指標の定義
- ADR(平均客室単価):各施設がOTA等の上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(検証済カテゴリ=ビジネスホテル・シティホテル・リゾートホテル・旅館・カプセルホテル)で誤差中央値は6.6%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
- 冬季/夏季:冬季=2025年12月〜2026年3月の4ヶ月平均。夏季=2025年7〜9月の3ヶ月平均。都道府県単位の分析のみ、公的統計との系列整合のため冬季を2025年1〜3月+12月として2025暦年内で揃えています。
- 客室稼働率(OCC):観光庁「宿泊旅行統計調査」が公表する都道府県別・宿泊施設タイプ別の客室稼働率(2025年)。当社の推定値ではなく公表実績値です。
- RevPAR(推定):上記の推定成約ADRに観光庁公表の客室稼働率を乗じた合成指標。出所の異なる二つの数値を掛け合わせた参考値であり、個々の施設の実績RevPARとは異なります。
- 暖房度日(HDD18)/冷房度日(CDD24):気象庁の月平均気温平年値(1991〜2020年)から算出。暖房度日=各月について max(0, 18℃ − 月平均気温) × 当月日数 を年間合計した値。冷房度日は基準24℃で同様に算出。建物の年間熱負荷を比較する標準的な指標です。
- 平年降雪量・平年最深積雪:気象庁「平年値(1991〜2020年)」の年降雪量合計および最深積雪。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ、気象庁、観光庁
- — 冬夏ADR比は0.62〜2.66に分散 — 豪雪地帯を含む23市町村で、冬の推定成約ADRが夏を4割近く下回る街と、2.66倍に跳ね上がる町が併存する。
- — 降雪量の説明力は決定係数0.25 — 平年降雪量は冬夏ADR比のばらつきの4分の1しか説明しない。分岐しているのは雪の量ではなく、雪を単価に変える需要装置の有無。
- — 青森県の冬季RevPARは夏季の0.53倍 — 単価と稼働率が同時に沈む。ビジネスホテルの冬夏の稼働率差は20.3ポイントで、全国平均3.7ポイントの5倍を超える。
- — 暖房度日の較差は冷房度日の約18倍 — 東京都区部1,586に対し旭川市4,101。立地間の格差という論点では、議論の多い夏側ではなく冬側が支配的。
- — 気候だけでGOP利回りは1.45ポイント動く — 150室モデルの試算。前提を振った3シナリオでも差は1.06〜1.84ポイントに収まり、立地の順序は反転しない。
雪はコストか資産か — 立地評価の第5軸を定義する
国土交通省によれば、豪雪地帯対策特別措置法に基づく豪雪地帯は国土面積の約51%、総人口の約15%を占める。日本のホテル投資は、統計上おおよそ国土の半分が「雪の降る場所」であるという前提の上に成り立っている。それにもかかわらず、投資判断のプロセスで冬季の運営コストが独立した変数として扱われることは少ない。
当編集部は既刊「ホテル立地評価の第4軸『災害リスク』を定量化する」で、洪水・津波・土砂といったハザードを投資判断に組み込む枠組みを示した。ハザードは「起きるかもしれない一回性の事象」である。これに対し、雪と寒さがもたらすコストは毎年必ず発生し、しかも収益が最も細る季節に集中する。性質がまったく異なるため、別の軸として扱う必要がある。
まず、雪の重さを二つの数字で押さえる。一つは暖房度日(外気温が基準を下回った量の年間積算)、もう一つは平年降雪量である。前者は暖房・給湯のエネルギー量を、後者は除排雪・融雪の作業量を規定する。いずれも気象庁の平年値から機械的に計算でき、立地を検討する段階で誰でも同じ値を得られる。
A群 雪を売れる立地
スキー場・雪見の温泉といった冬季需要装置が商圏内にあり、冬季の推定成約ADRが夏季を上回る。暖房・除排雪の増加分を単価で回収できる構造。今回の23市町村のうち11。
B群 雪がコストで終わる立地
業務需要が中心で、冬季ADRが夏季を下回る。気候コストは増えるのに単価は下がるため、GOPマージンが二重に圧縮される。23市町村のうち12。
分岐は降雪量では決まらない
平年降雪量と冬夏ADR比の相関は+0.50、決定係数は0.25。同じ降雪量帯のなかで冬夏比は約2.5倍の幅に散らばる。雪の量ではなく需要装置の有無が分岐点になる。
降雪量は冬季単価のばらつきの25%しか説明しない — 23市町村の実データ
気象観測地点の平年値が取得でき、かつ当社が冬季・夏季それぞれ10施設以上の推定成約ADRを算出できた23市町村を抽出した。横軸に平年降雪量、縦軸に「冬季ADR ÷ 夏季ADR」を取ると、緩やかな右上がりの傾向は見える。降雪量が多い立地ほど、冬の単価が高くなりやすいのは事実である。
しかし相関係数は+0.50、決定係数は0.25にとどまる。冬夏比のばらつきの4分の3は、降雪量以外の要因で説明される。実際、降雪量900cm以上の6市町村の冬夏比はみなかみ町1.06から倶知安町2.66まで2.5倍の幅があり、400〜700cm帯の6市町村も青森市0.62から白馬村1.59まで2.6倍に散らばる。
個別に並べると構図がはっきりする。上位は倶知安町(2.66)、白馬村(1.59)、湯沢町(1.53)、山形市(1.41)と、いずれも国際的なスキーデスティネーションか大規模スキー場を抱える市町村である。下位は青森市(0.62)、函館市(0.64)、旭川市(0.70)、新潟市中央区(0.73)と、雪国の業務中心地が並ぶ。
特筆すべきは山形市である。平年降雪量285cmは23市町村中16位と決して多くないが、冬夏比1.41は全体4位につける。蔵王という需要装置が、少ない雪を高い単価に変換している。逆にみなかみ町は平年降雪量1,152cmと国内屈指の多雪地でありながら冬夏比は1.06にとどまる。雪の量そのものは、収益への変換効率を保証しない。
| 市町村 | 都道府県 | 平年降雪量(cm) | 平年最深積雪(cm) | 暖房度日 | 冬季ADR | 夏季ADR | 冬/夏 | N |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| A 倶知安町 | 北海道 | 921 | 183 | 4,044 | ¥47,554 | ¥17,850 | 2.66 | 20 |
| A 白馬村 | 長野県 | 655 | 100 | 3,313 | ¥19,130 | ¥12,046 | 1.59 | 40 |
| A 湯沢町 | 新潟県 | 1,054 | 208 | 2,782 | ¥20,506 | ¥13,365 | 1.53 | 34 |
| A 山形市 | 山形県 | 285 | 51 | 2,691 | ¥15,427 | ¥10,967 | 1.41 | 59 |
| A 山ノ内町 | 長野県 | 821 | 144 | 2,930 | ¥14,849 | ¥11,613 | 1.28 | 94 |
| A 野沢温泉村 | 長野県 | 1,087 | 205 | 3,101 | ¥15,799 | ¥12,401 | 1.27 | 15 |
| A 妙高市 | 新潟県 | 1,061 | 204 | 2,688 | ¥12,408 | ¥9,796 | 1.27 | 36 |
| A 十日町市 | 新潟県 | 967 | 217 | 2,761 | ¥16,855 | ¥14,950 | 1.13 | 18 |
| A みなかみ町 | 群馬県 | 1,152 | 207 | 3,411 | ¥18,806 | ¥17,755 | 1.06 | 46 |
| A 草津町 | 群馬県 | 644 | 99 | 3,835 | ¥18,758 | ¥17,751 | 1.06 | 77 |
| A 長野市 | 長野県 | 163 | 33 | 2,661 | ¥11,272 | ¥10,945 | 1.03 | 70 |
| B 福井市 | 福井県 | 186 | 48 | 1,954 | ¥8,510 | ¥8,684 | 0.98 | 35 |
| B 高山市 | 岐阜県 | 305 | 55 | 2,867 | ¥16,582 | ¥16,999 | 0.98 | 120 |
| B 札幌市中央区 | 北海道 | 479 | 97 | 3,420 | ¥15,665 | ¥16,948 | 0.92 | 130 |
| B 福島市 | 福島県 | 122 | 26 | 2,276 | ¥8,151 | ¥8,831 | 0.92 | 67 |
| B 上越市 | 新潟県 | 413 | 96 | 2,175 | ¥6,980 | ¥7,666 | 0.91 | 33 |
| B 富山市 | 富山県 | 253 | 51 | 2,021 | ¥6,206 | ¥7,031 | 0.88 | 53 |
| B 金沢市 | 石川県 | 157 | 32 | 1,866 | ¥8,897 | ¥10,174 | 0.87 | 113 |
| B 秋田市 | 秋田県 | 273 | 37 | 2,671 | ¥6,686 | ¥8,050 | 0.83 | 29 |
| B 新潟市中央区 | 新潟県 | 139 | 32 | 2,164 | ¥5,764 | ¥7,892 | 0.73 | 44 |
| B 旭川市 | 北海道 | 557 | 89 | 4,101 | ¥8,565 | ¥12,163 | 0.70 | 34 |
| B 函館市 | 北海道 | 306 | 45 | 3,329 | ¥7,116 | ¥11,061 | 0.64 | 80 |
| B 青森市 | 青森県 | 567 | 101 | 2,981 | ¥7,632 | ¥12,298 | 0.62 | 37 |
暖房度日の較差は冷房度日の較差の18倍 — 気候コストの非対称
次に熱需要そのものを見る。気象庁の月平均気温平年値から暖房度日と冷房度日を算出すると、日本の南北較差がいかに非対称かがわかる。
暖房度日は東京都区部1,586に対して旭川市4,101で、差は2,515度日。倍率にして2.6倍である。一方の冷房度日は、最も大きい大阪市306に対して旭川市・札幌市・青森市などはいずれも0で、日本海側・北日本の主要都市と首都圏の差は143度日(東京都区部の値)にとどまる。暖房側の較差は冷房側の較差のおよそ18倍のスケールにある。
この非対称は、近年の議論の力点とずれている。当編集部でも「2026年夏季 電気代高騰がホテルGOPを蝕む」「2026年夏季の電気代高騰がホテルGOPに与えるインパクト試算」と、夏の冷房負担を継続して扱ってきた。夏の議論が重要であることは変わらないが、立地間の格差という観点では、勝負がついているのは冬側である。冷房費は全国どこでも似た水準に収束するのに対し、暖房費は立地によって2倍以上に開く。
さらに雪は、熱に加えて物理的な作業量を生む。青森市は令和8年1月29日に豪雪災害対策本部を設置し、3月25日まで維持した(青森市公式発表)。同市の2025年度の除排雪対策費は補正後で71億円余と過去最大規模に達し、青森県全体の除排雪経費も約90億7千万円と2年連続で過去最大を更新している。これは自治体の公的負担だが、同じ気象条件のもとで民間施設も敷地内の除排雪・屋根雪処理・ロードヒーティングの費用を負担している。
県単位では冬季RevPARが夏の0.53倍 — 単価と稼働率が同時に沈む
市町村単位では単価だけを見たが、県単位では観光庁「宿泊旅行統計調査」の公表稼働率を組み合わせられる。2025暦年について、冬季(1〜3月+12月)と夏季(7〜9月)の推定成約ADRと公表稼働率を掛け合わせた合成RevPARを比較する。
結果は明快である。青森県の冬夏比は0.53、秋田県0.58、北海道0.65、富山県0.65。対して東京都は1.07、福岡県は1.03と、冬のほうがむしろ強い。雪の降る県では、単価と稼働率がそろって冬に沈む。これは片方だけが下がる場合よりも収益への打撃が大きい。
| 都道府県 | 冬季ADR | 夏季ADR | 冬季OCC | 夏季OCC | 冬季RevPAR | 夏季RevPAR | 冬/夏 | N(ADR) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 青森県 | ¥6,496 | ¥8,673 | 49.6% | 70.5% | ¥3,222 | ¥6,117 | 0.53 | 175 |
| 秋田県 | ¥7,324 | ¥8,458 | 37.6% | 56.3% | ¥2,754 | ¥4,764 | 0.58 | 158 |
| 富山県 | ¥6,956 | ¥7,870 | 44.6% | 61.0% | ¥3,104 | ¥4,801 | 0.65 | 156 |
| 北海道 | ¥8,751 | ¥11,945 | 61.2% | 68.9% | ¥5,356 | ¥8,230 | 0.65 | 875 |
| 大阪府 | ¥10,058 | ¥13,287 | 74.4% | 79.7% | ¥7,480 | ¥10,585 | 0.71 | 627 |
| 長野県 | ¥11,790 | ¥12,056 | 36.6% | 45.6% | ¥4,312 | ¥5,497 | 0.78 | 810 |
| 石川県 | ¥10,132 | ¥11,227 | 50.9% | 57.5% | ¥5,155 | ¥6,459 | 0.80 | 228 |
| 福島県 | ¥7,244 | ¥7,558 | 44.8% | 52.6% | ¥3,245 | ¥3,978 | 0.82 | 426 |
| 新潟県 | ¥9,634 | ¥10,063 | 43.9% | 50.4% | ¥4,232 | ¥5,075 | 0.83 | 409 |
| 岐阜県 | ¥10,577 | ¥11,446 | 52.3% | 57.8% | ¥5,529 | ¥6,620 | 0.84 | 352 |
| 山形県 | ¥9,341 | ¥9,255 | 45.7% | 54.5% | ¥4,271 | ¥5,047 | 0.85 | 278 |
| 群馬県 | ¥12,079 | ¥11,839 | 43.8% | 50.6% | ¥5,285 | ¥5,995 | 0.88 | 417 |
| 愛知県 | ¥8,251 | ¥8,665 | 66.8% | 69.6% | ¥5,516 | ¥6,031 | 0.91 | 495 |
| 福井県 | ¥12,941 | ¥11,089 | 40.5% | 50.1% | ¥5,235 | ¥5,559 | 0.94 | 208 |
| 福岡県 | ¥11,062 | ¥10,994 | 71.5% | 70.0% | ¥7,915 | ¥7,692 | 1.03 | 460 |
| 東京都 | ¥14,082 | ¥13,232 | 75.2% | 74.8% | ¥10,596 | ¥9,902 | 1.07 | 1,074 |
稼働率だけを業態別に取り出すと、格差はさらに際立つ。ビジネスホテルの2025年の稼働率を月次で追うと、青森県は1月55.3%に対し8月84.8%。冬季(1〜3月+12月)平均62.1%と夏季平均82.4%の差は20.3ポイントに達する。秋田県19.9ポイント、長野県17.7ポイント、新潟県17.6ポイント、富山県16.9ポイントと日本海側が続く。
一方で全国平均の季節差はわずか3.7ポイント、東京都に至っては冬のほうが1.9ポイント高い。雪国のビジネスホテルは、全国平均の5倍を超える季節振幅を抱えている。しかもその谷は、暖房費と除排雪費が最大化する時期と完全に重なる。
隣り合う自治体で結論が逆になる — 妙高と上越、湯沢と長岡
この構造がもっとも鮮明に出るのは、同じ気候圏の隣接自治体を並べたときである。
新潟県上越地方。妙高市(代理観測地点・関山の平年降雪量1,061cm)の冬夏ADR比は1.27。直線距離で約25km、同じ上越地方の上越市(高田・413cm)は0.91である。降雪量は妙高市が2.6倍多いにもかかわらず、冬の単価が上がるのは妙高市のほうだ。妙高高原のスキー場群が冬季需要を生み、雪が単価に転化している。高田側は業務需要が主体で、雪はコストとしてのみ現れる。
新潟県魚沼地方。湯沢町(1,054cm)1.53に対し、長岡市0.89。長野県北信では山ノ内町1.28に対し長野市1.03。北海道では倶知安町(921cm)2.66に対し旭川市(557cm)0.70。いずれも同一の気候圏で、雪の量ではなく需要装置の有無が結論を分けている。
| 妙高市(1,061cm) | 1.27 |
| 上越市(413cm) | 0.91 |
| 湯沢町(1,054cm) | 1.53 |
| 長岡市 | 0.89 |
| 倶知安町(921cm) | 2.66 |
| 旭川市(557cm) | 0.70 |
立地選定段階で見積もるべき年間コスト差 — 試算の枠組み
ここまでの二つの物差し(暖房度日・平年降雪量)を、金額に置き換える枠組みを示す。個別物件の実額は設備仕様と契約条件で大きく動くため、以下は立地を比較するための相対的な枠組みであり、実際のデューデリジェンスでは自社の設備仕様と現地の見積を代入して使うことを前提としている。
■ 試算前提
- モデル施設:地方都市立地の宿泊特化型ホテル150室
- 推定成約ADR ¥8,500・通年客室稼働率55%(本稿で確認した日本海側県のビジネスホテル水準に近似)→ 年間客室売上 2億5,596万円
- 水道光熱費比率:売上の6.5%(中小企業基盤整備機構「中小旅館業の経営実態調査」2017年は旅館の水道光熱費を売上の8.3%としており、宿泊特化型はこれより低い水準として設定)
- 水道光熱費の内訳:暖房・給湯に係る分40%、冷房に係る分40%、残り20%は季節に依らない基礎負荷
- 暖房費は暖房度日に、冷房費は冷房度日に比例させる(度日法)。東京都区部(暖房度日1,586・冷房度日143)を参照値とする
- 敷地除排雪・融雪の年間外注費:平年降雪量1cmあたり客室1室あたり年間100円と仮置き(150室・平年降雪量567cmなら年851万円)。実務では現地の見積に置き換えること
- GOPマージンは参照立地で35%、想定取得価格12億円(1室あたり800万円)。GOP利回り=GOP÷取得価格
- ADR・稼働率・売上構成・人件費は全立地で同一とし、気候由来コストのみを変動させる
この前提で計算すると、気候由来コストの合計は参照立地(東京都区部相当)の年1,343万円に対し、旭川市相当で2,556万円、倶知安町相当で3,078万円となる。ここで重要なのは冷房側の戻りである。北日本では冷房度日がゼロになるため冷房費が消え、暖房費の増加分の一部を相殺する。この相殺を織り込んだうえでの純増は、旭川市相当で年1,213万円、倶知安町相当で年1,735万円である。
| 立地(気候条件) | 暖房度日 | 冷房度日 | 平年降雪(cm) | 暖房費 | 冷房費 | 除排雪費 | 気候コスト計 | 参照比増減 | GOPマージン | GOP利回り |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東京都区部(参照) | 1,586 | 143 | 8 | 6.7 | 6.7 | 0.1 | 13.4 | +0.0 | 35.0% | 7.47% |
| 金沢市 | 1,866 | 158 | 157 | 7.8 | 7.4 | 2.4 | 17.5 | +4.1 | 33.4% | 7.12% |
| 上越市(高田) | 2,175 | 105 | 413 | 9.1 | 4.9 | 6.2 | 20.2 | +6.8 | 32.4% | 6.90% |
| 青森市 | 2,981 | 0 | 567 | 12.5 | 0.0 | 8.5 | 21.0 | +7.6 | 32.0% | 6.83% |
| 札幌市 | 3,420 | 0 | 479 | 14.4 | 0.0 | 7.2 | 21.5 | +8.1 | 31.8% | 6.79% |
| 旭川市 | 4,101 | 0 | 557 | 17.2 | 0.0 | 8.4 | 25.6 | +12.1 | 30.3% | 6.45% |
| 倶知安町 | 4,044 | 0 | 921 | 17.0 | 0.0 | 13.8 | 30.8 | +17.4 | 28.2% | 6.02% |
気候だけで利回りは1.45ポイント動く — 感度分析
同じADR・同じ稼働率・同じ取得価格でも、気候由来コストだけでGOPマージンは35.0%から28.2%まで6.8ポイント動く。GOP利回りに換算すると7.47%から6.02%へ、1.45ポイントの低下である。旭川市相当の立地でも6.45%と、参照立地から1.02ポイント下がる。
キャップレートが5%台で推移する市場において、1.0〜1.5ポイントの利回り差は投資判断を反転させうる大きさである。にもかかわらず、この差は取得時のプロフォーマで明示的に置かれることが少ない。理由は単純で、暖房と除排雪が「運営費」の一項目に埋没しており、立地属性として切り出されていないからである。
ここから、投資判断に直結する一つの問いが立てられる。増えた気候コストを冬季の単価で回収するには、冬季ADRを何%引き上げる必要があるか。
モデル施設の冬季(12〜3月・121日)の客室売上は8,485万円。旭川市相当の純増1,213万円を回収するには冬季ADRを14.3%引き上げればよい。倶知安町相当の1,735万円なら20.5%である。
回収に必要な水準と、実勢の距離
旭川市:回収に必要な冬季単価の引き上げは+14.3%。実データの冬夏ADR比は0.70(冬は夏より30%安い)。
倶知安町:回収に必要な引き上げは+20.5%。実データの冬夏ADR比は2.66(冬は夏の2.7倍)。
同じ北海道、同じ暖房度日4,000度日級の立地でありながら、片方は必要水準に遠く届かず、片方は必要水準を大きく超えて回収している。
この差は運営の巧拙ではなく、立地が持つ需要構造に由来する。旭川市の施設が冬季に14%の値上げを実行しようとしても、そもそも冬季の需要量が夏季を大きく下回っている(北海道全体のビジネスホテル稼働率は冬季74.5%・夏季84.0%)以上、単価だけを引き上げれば稼働をさらに失う。雪を売れない立地では、気候コストは価格転嫁の対象ではなく、設備投資と運用設計で圧縮すべき対象になる。
裏を返せば、B群の立地には収益機会が残っている。暖房・給湯の熱源更新、断熱改修、ロードヒーティングの制御最適化は、いずれも冬季に集中する費用を直接削る施策であり、効果が季節的に偏らない冷房側の対策より投資回収の見通しを立てやすい。気候コストが売上の8〜10%に達する立地では、その2割を削るだけで売上の1.6〜2.0%相当がGOPに戻る。
前提を振っても立地の順序は反転しない — 3シナリオと2軸グリッド
ここまでの試算は、水道光熱費比率6.5%と除排雪単価100円という二つの仮置きに依存している。この二つを同時に動かし、結論がどこまで頑健かを確認する。ADR・客室稼働率・客室数・想定取得価格・参照立地のGOPマージンは据え置き、気候由来コストだけを振る。
| 立地 | 指標 | 楽観 | 中位(本文前提) | 悲観 |
|---|---|---|---|---|
| 旭川市相当(暖房度日4,101・冷房度日0・平年降雪量557cm) | 気候由来コストの純増(対 参照立地・百万円/年) | +9.1 | +12.1 | +15.2 |
| GOP利回り | 6.71% | 6.45% | 6.20% | |
| 参照立地との利回り差 | −0.76pt | −1.01pt | −1.27pt | |
| 回収に必要な冬季ADR引き上げ | +10.7% | +14.3% | +17.9% | |
| 倶知安町相当(暖房度日4,044・冷房度日0・平年降雪量921cm) | 気候由来コストの純増(対 参照立地・百万円/年) | +12.7 | +17.4 | +22.0 |
| GOP利回り | 6.41% | 6.02% | 5.63% | |
| 参照立地との利回り差 | −1.06pt | −1.45pt | −1.84pt | |
| 回収に必要な冬季ADR引き上げ | +14.9% | +20.5% | +26.0% |
楽観・中位・悲観のいずれでも、参照立地→旭川市相当→倶知安町相当という順序は変わらない。前提を最も甘く置いた楽観ケースでも、倶知安町相当の立地は参照立地より1.06ポイント低い。キャップレートが5%台の市場では、この幅は前提の置き方では消えない。回収に必要な冬季ADRの引き上げ幅も、旭川市相当で+10.7〜17.9%、倶知安町相当で+14.9〜26.0%と動くが、両者の比は1.39〜1.45倍でほぼ一定である。気候コストの大小関係は前提に対して不変で、動くのは絶対値だけだと言える。
次に、二つの入力(暖房度日と平年降雪量)が利回りに与える寄与を分解する。行の暖房度日には、その水準の地点が実際に持つ冷房度日を対にしている。
| 暖房度日(冷房度日)\平年降雪量 | 8cm | 157cm | 413cm | 567cm | 921cm |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,586(143) | 7.47% | 7.28% | 6.96% | 6.77% | 6.32% |
| 1,866(158) | 7.31% | 7.12% | 6.80% | 6.61% | 6.17% |
| 2,175(105) | 7.41% | 7.22% | 6.90% | 6.71% | 6.27% |
| 2,981(0) | 7.53% | 7.35% | 7.03% | 6.83% | 6.39% |
| 4,101(0) | 7.14% | 6.95% | 6.63% | 6.44% | 6.00% |
グリッドを横に読むと、同じ暖房度日の行でも平年降雪量8cmから921cmへ動くだけで利回りは1.15ポイント下がる。一方、縦に読んだ暖房度日1,586から4,101への低下は0.33ポイントにとどまる。B群の利回り低下を主に作っているのは暖房費ではなく除排雪費である。省エネCapexの検討に入る前に、除排雪・融雪の契約条件と敷地形状を精査するほうが効果の大きい立地が多い。
さらに、暖房度日2,981の行が参照行(1,586)を上回る逆転が現れる。降雪量8cmの列で7.53%対7.47%である。冷房度日がゼロになる立地では冷房費が消えるため、暖房費の増加を相殺してなお余る。参照立地では水道光熱費を暖房40%・冷房40%と同額に置いているので、逆転は暖房度日が参照の2倍=3,172度日まで続く計算になる。青森市(2,981)と上越市(2,175)はこの内側、札幌市(3,420)と旭川市(4,101)は外側にある。ただしこれは40%・40%という配分前提の帰結であり、熱源構成が異なれば境界も動く。実務では自社物件の実績光熱費から配分比を求めて置き換えることになる。
上場ホテルREITの45物件・7,314室が豪雪12道県にある
この気候コストは、すでに機関投資家のポートフォリオに組み込まれている。上場ホテルREIT7法人の保有関係マスター(国内300物件)を確認すると、豪雪地帯を含む12道県(北海道・青森・秋田・山形・新潟・富山・石川・福井・長野・岐阜・福島・群馬)に所在する物件は45物件・7,314室にのぼる。うち23物件が北海道、3物件ずつが青森県・新潟県・石川県・群馬県である。
法人別ではインヴィンシブル投資法人が26物件と突出する。アートホテル青森(211室)、アートホテル旭川(265室)、アートホテル新潟駅前(304室)、ホテルマイステイズプレミア金沢(244室)など、本稿でB群に分類した都市に立地する規模の大きい宿泊特化型が中心である。いちごホテルリート投資法人が6物件、星野リゾート・リート投資法人が5物件、ジャパン・ホテル・リート投資法人と日本ホテル&レジデンシャル投資法人がそれぞれ4物件を保有する。
ただし、この気候コストを外部から検証することは現状では難しい。上場ホテルREITの月次開示は稼働率・ADR・RevPARといった売上側の指標が中心で、物件別の水道光熱費や除排雪費は開示対象外である。インヴィンシブル投資法人が2026年6月分として公表した国内ホテル101物件の実績は、稼働率82.7%(前年同月比▲0.1ポイント)、ADR12,412円(同▲3.9%)、RevPAR10,264円(同▲4.0%)だが、これはポートフォリオ全体の値であり、豪雪地帯の物件だけを切り出した費用構造は読み取れない。
だからこそ、立地評価の段階で気候コストを自ら見積もる意味がある。開示から逆算できない以上、取得検討時に暖房度日と平年降雪量を入力として自前でモデル化するほかない。幸い、両方とも気象庁の平年値から誰でも同じ数値を得られる。
立地選定チェックリスト — 気候軸で見るべき5項目
1. 暖房度日を先に引く
気象庁の平年値から暖房度日を算出し、既存ポートフォリオの平均と比較する。参照立地の1.5倍を超えるなら、熱源仕様と断熱性能をデューデリジェンスの必須項目に加える。
2. 平年降雪量で作業量を測る
敷地面積・駐車場面積・屋根形状と組み合わせ、除排雪と融雪の年間外注費を現地見積で押さえる。平年最深積雪は屋根雪荷重と一時排雪の頻度に効く。
3. 冬夏ADR比で回収可能性を判定
商圏の冬夏ADR比が1.0を下回るなら、気候コストは価格転嫁できない前提でモデルを組む。1.0を上回るなら、必要な引き上げ幅と実勢の差を数値で確認する。
4. 冷房側の戻りを忘れない
暖房費だけを積むと過大評価になる。北日本では冷房費がほぼ消え、暖房増分の一部を相殺する。両方を度日で対称に扱うことで初めて正味の差が出る。
5. 省エネCapexの回収年数を冬側で立てる
気候コストが売上の8〜10%に達する立地では、熱源更新・断熱改修の削減効果が大きく、回収年数の見通しを立てやすい。夏側の対策より優先度が高い場合がある。
まとめ
豪雪地帯を含む23市町村の推定成約ADRを冬季と夏季で比較すると、平年降雪量と冬夏ADR比の相関は+0.50、決定係数は0.25にとどまった。雪の量は冬季単価のばらつきの4分の1しか説明しない。同じ降雪量帯のなかで冬夏比は約2.5倍の幅に散らばり、青森市0.62から倶知安町2.66まで開く。
県単位では、単価と稼働率が同時に沈む構造が確認できた。青森県の冬季RevPARは夏季の0.53倍、秋田県0.58倍。ビジネスホテルの稼働率で見ると青森県の冬夏差は20.3ポイントで、全国平均3.7ポイントの5倍を超える。
熱需要の較差は非対称である。暖房度日は東京都区部1,586に対し旭川市4,101と2,515度日の開きがあるのに対し、冷房度日の較差は143度日にとどまる。暖房側の較差は冷房側のおよそ18倍のスケールにあり、立地間の格差という論点では冬側が支配的である。
150室モデルでの試算では、気候由来コストだけでGOPマージンが6.8ポイント、GOP利回りが1.45ポイント動いた。この増分を冬季単価で回収するには旭川市相当で+14.3%の引き上げが必要だが、実勢の冬季ADRは夏季比0.70倍である。一方の倶知安町は必要水準+20.5%に対し実勢2.66倍と、回収して余りある。
立地評価に第5の軸を置く意味はここにある。気候は変えられないが、気候が生むコストは取得前に数値化できる。暖房度日と平年降雪量という二つの公開データを入力にすれば、同じADR・同じ稼働率を前提としたモデルでも、立地によって利回りが1ポイント以上動くことが事前にわかる。そして、その差を単価で吸収できる立地とできない立地は、隣接自治体のあいだですら分かれている。
よくある質問
暖房度日はどうやって計算すればよいですか。
気象庁が公開する月平均気温の平年値(1991〜2020年)を使い、各月について「max(0, 18℃ − 月平均気温) × 当月日数」を求め、12ヶ月分を合計します。本稿の暖房度日はすべてこの方法で算出しています。冷房度日は基準を24℃に置き、「max(0, 月平均気温 − 24℃) × 当月日数」を年間合計します。市町村内に観測地点がない場合は、同一地域の最寄観測地点を代理値として使います。
降雪量が多い立地ほど冬季単価が高いなら、雪は資産と考えてよいのでは。
傾向としては正しいものの、決定係数は0.25にとどまります。降雪量900cm以上の6市町村でも冬夏ADR比は1.06〜2.66と2.5倍の幅があり、平年降雪量1,152cmのみなかみ町は1.06にすぎません。逆に285cmの山形市は1.41です。雪が資産になるのは、スキー場や雪見の温泉といった需要装置が商圏内にある場合に限られます。降雪量だけを見て投資判断をすると誤ります。
冬の暖房費が増えても、夏の冷房費が減るなら差し引きゼロではありませんか。
相殺は起きますが、ゼロにはなりません。暖房度日の較差(東京都区部1,586と旭川市4,101の差=2,515度日)は、冷房度日の較差(東京都区部143と北日本主要都市0の差=143度日)のおよそ18倍のスケールです。本稿の試算でも冷房側の戻りを織り込んだうえで、旭川市相当の立地は年1,213万円の純増が残りました。加えて、除排雪・融雪の費用には相殺項がありません。
本稿の試算をそのまま自社物件に当てはめてよいですか。
当てはめないでください。本稿の金額は「■ 試算前提」に示した仮定に基づく立地比較用の枠組みであり、熱源方式(電気・都市ガス・LPG・灯油・A重油)、断熱性能、大浴場の有無、敷地形状、除排雪の契約条件によって実額は大きく変わります。使い方としては、暖房度日と平年降雪量を自社の既存物件の実績光熱費・除排雪費と突き合わせて原単位を求め、その原単位を検討中の立地の度日・降雪量に掛けるのが実務的です。
冬季と夏季の期間の取り方が市町村単位と都道府県単位で違うのはなぜですか。
市町村単位の分析は当社データのみを使うため、直近の一冬(2025年12月〜2026年3月)と直近の夏(2025年7〜9月)を比較しています。一方、都道府県単位では観光庁「宿泊旅行統計調査」の公表稼働率を組み合わせるため、同調査が2026年1月分から層化基準を従業者数から客室数へ変更した影響を避け、変更前の系列で完結する2025暦年内(冬季=1〜3月+12月、夏季=7〜9月)で揃えています。
あわせて読みたい
- ホテル立地評価の第4軸「災害リスク」を定量化する — 全国8商圏のハザード×ADR×防災Capex
- 2026年夏季 電気代高騰がホテルGOPを蝕む — 200室ビジホ vs 500室リゾートの空調コスト試算
- 2026年夏季の電気代高騰がホテルGOPに与えるインパクト試算 — 中規模ビジホ200室・大規模リゾート500室モデルケース
- 新潟県ホテル投資マップ — 新潟市・越後湯沢・佐渡の三層で読むエリア別余地
- 駅から何分までが「駅前価格」か — 主要8駅で測る立地プレミアムの距離減衰
- 2026年電気料金上昇がホテル経営に与える供給側コスト構造インパクト分析
- 2026-27冬シーズン早期予約 — ニセコ・白馬・湯沢と豪州リピーター需要の先取り
- 白馬・野沢温泉は「第二のニセコ」になるのか — ラグジュアリー開発パイプラインと投資妥当性の境界線分析
参考資料・出典一覧
■ データソース
市町村別・都道府県別の推定成約ADRはメトロエンジンリサーチ&コンサルティングの集計(市町村単位は冬季=2025年12月〜2026年3月・夏季=2025年7〜9月、都道府県単位は2025暦年内で冬季=1〜3月+12月・夏季=7〜9月)。採用したのは冬季・夏季とも算出対象施設数10以上の23市町村で、対象期間に薄いカバレッジの月はない。客室稼働率は観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年の都道府県別・宿泊施設タイプ別の公表実績値。暖房度日・冷房度日・平年降雪量・平年最深積雪は気象庁の平年値(1991〜2020年)から算出。上場ホテルREITの保有物件は当社の保有関係マスター(国内300物件)。
■ 試算前提
150室・推定成約ADR ¥8,500・客室稼働率は通年55%・想定取得価格12億円・参照立地のGOPマージン35%を全立地で共通とし、気候由来コスト(暖房費・冷房費・除排雪費)のみを変動させた簡易モデル。水道光熱費は売上の6.5%とし、うち暖房40%・冷房40%・季節に依らない基礎負荷20%。暖房費は暖房度日、冷房費は冷房度日に比例させ、除排雪費は平年降雪量1cm・1室あたり年100円と仮置きしている。感度は水道光熱費比率5.5〜7.5%・除排雪単価70〜130円の3シナリオで確認した。詳細は本文の「■ 試算前提」に記載。
■ 限界・留意点
推定成約ADRは推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なる。試算は気候由来コスト以外(人件費・修繕費・保険料・公租公課)を全立地同一と置いているため、立地間の実際の収支差をすべて表すものではない。金額は熱源方式(電気・都市ガス・LPG・灯油・A重油)、断熱性能、大浴場の有無、敷地形状、除排雪の契約条件で大きく変わるため、立地を比較するための相対値として扱う必要がある。市町村内に気象官署がない場合は同一地域の最寄観測地点の平年値を代理値として使用している(山ノ内町=飯山、妙高市=関山、みなかみ町=藤原)。上場ホテルREITの月次開示は売上側の指標が中心で物件別の水道光熱費・除排雪費は開示対象外のため、本稿の気候コストを開示実績で直接検証することはできない。
■ 市場データ
- メトロエンジンリサーチ&コンサルティング — 推定成約ADR(市町村別・都道府県別、2025年1月〜2026年3月)、REIT保有関係マスター(国内300物件)
■ 気象・気候データ
- 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(1991〜2020年) — 月平均気温、年降雪量合計、最深積雪
■ 政府統計・公的データ
- 観光庁「宿泊旅行統計調査」 — 都道府県別・宿泊施設タイプ別 客室稼働率 推移表(月別)
- 国土交通省「豪雪地帯対策の推進」 — 豪雪地帯・特別豪雪地帯の指定状況(国土面積の約51%、総人口の約15%)
- 国土交通省「地価公示」 — 倶知安町の住宅地公示地価(2026年)
- 青森市「令和7年度 青森市豪雪災害対策本部設置に伴う市の対応状況」 — 豪雪災害対策本部の設置(令和8年1月29日)・廃止(同3月25日)
- 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小旅館業の経営実態調査」(2017年3月) — 旅館の水道光熱費比率
- 資源エネルギー庁「ホテル業のベンチマーク制度の概要」 — 宿泊業のエネルギー消費原単位の考え方
■ REIT・企業開示
- インヴィンシブル投資法人「2026年6月度の運営状況」 — 国内ホテル101物件の稼働率・ADR・RevPAR
■ 報道
試算に関する注意:本記事の費用・GOP・利回りの数値は「■ 試算前提」に明示した仮定に基づく簡易試算です。実際の投資判断には、物件個別の設備仕様・契約条件・現地見積を反映した詳細なフィージビリティ・スタディが必要です。
