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ホテルのGOPとは|計算式・USALIの階層・100室モデル感応度(ADR±5%でGOP±10.7%)2026

投稿日 : 2026.10.16

指定なし

ホテルのGOPとは|計算式・USALIの階層・100室モデル感応度(ADR±5%でGOP±10.7%)2026

ホテルの収益力を測るとき、オーナー・投資家・運営受託会社の間で共通言語になるのがGOP(Gross Operating Profit=営業総利益)である。損益計算書の営業利益ではなく、賃借料や減価償却を引く前のこの段階で切るのは、「運営の巧拙だけで説明できる利益」を所有の条件から切り離して見るためだ。本稿ではUSALI(Uniform System of Accounts for the Lodging Industry)の階層を1枚の図に整理したうえで、RevPARからGOPPARに至るまでに何が引かれるかを1室1泊あたりの円で積み上げ、メトロエンジンリサーチの推定成約ADRと推定稼働率から3業態のRevPARレンジを示し、100室モデルでADR±5%・OCC±3ptの感応度と、人件費・水道光熱費の上昇を吸収するために必要なADRリフト率までを一本で読み解く。

本記事における指標の定義

  • ADR(平均客室単価):各施設がOTA等で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。エリア単位のADRは対象施設の中央値(エリアの標準的な施設の水準)。
  • OCC(稼働率):エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値、REIT月次公表値との整合性検証で概ね数pt 程度の精度を確認済)。本稿では「推定稼働率」と表記し、観光庁「宿泊旅行統計調査」の客室稼働率(「公式稼働率」と表記)とは母集団も定義も異なる別指標として扱う。
  • RevPAR:客室売上÷販売可能客室数=ADR×OCC。TRevPAR:総売上÷販売可能客室数。
  • GOP:総売上−部門費用−非配賦営業費用。GOP率:GOP÷総売上。GOPPAR:GOP÷販売可能客室数(客室数×日数)。AGOP:GOPから基本運営委託料を控除した調整後GOP。NOI:所有者に帰属する純営業収益(本稿ではEBITDAからFF&E積立を控除した値)。
  • 掲載価格に言及する箇所は2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
  • データ出典:メトロエンジンリサーチ/観光庁「宿泊旅行統計調査」/日本旅館協会「営業状況等統計調査」/各REIT決算説明資料
Key Takeaways
  • — GOP=総売上−部門費用−非配賦営業費用。賃借料・保険・固定資産税・減価償却・支払利息はGOPの下で引く。所有と運営の責任境界がこの線にある。
  • — RevPARからGOPPARへは1室1泊で約6割が消える。100室ビジネスホテルモデル(ADR¥7,600・OCC80%通年前提)では客室売上¥6,080に対しGOPPARは¥2,706。GOP率40.5%。
  • — 2026年9月の推定RevPAR中央値は、ビジネスホテル¥6,700・シティホテル¥10,700・旅館¥10,300(47都道府県、推定成約ADR×推定稼働率)。旅館とシティはRevPARが近いのにGOPPARは倍近く開く。
  • — ADR±5%でGOP±10.7%、OCC±3ptで±6.4%。両方が同時に動くとGOPは−16.7%〜+17.5%の幅で揺れる。
  • — 人件費+5%を吸収するADRリフトは約1.9%、水道光熱費+10%を加えても約2.8%。2026年の賃上げ環境でも価格側の対応余地は小さくない。

GOPの定義 — USALIの階層を1枚の図で読む

GOPはホテル業界の会計基準USALIで定義される利益段階の一つで、計算式はGOP=総営業収益−部門費用−非配賦営業費用である。USALIは米国ホテル・ロッジング協会(AHLA)とHFTP、Global Finance Committeeが共同で改訂しており、現行の第12改訂版は2024年に公表され、適用開始日は2026年1月1日とされている。日本のホテル運営受託契約やJ-REITの変動賃料契約でも、この階層に沿ったGOPが基準として用いられることが多い。

まずは階層の全体像である。損益は上から、部門別(客室・料飲・その他)の収益と直接費を差し引いた「部門利益」、そこから部門に配賦しない間接費を引いた「GOP」、運営受託フィーを引いた「AGOP(調整後GOP)」、賃借料・固定資産税・保険など所有に伴う費用を引いた「EBITDA」、FF&E(家具・什器・備品)積立を控除した「NOI」という順に下りていく。減価償却・支払利息・法人税はさらにその下にあり、USALIの運営計算書の外側で処理される。

表1 USALIの利益階層と、各段階で引かれる費用・責任範囲
階層計算ここで引かれる費用の例誰の責任範囲か
総営業収益客室+料飲+その他売上—運営
部門利益収益−部門費用客室清掃・リネン・アメニティ・販売手数料・部門人件費・料飲原価運営
GOP(営業総利益)部門利益−非配賦営業費用一般管理・情報通信システム・販売促進・施設維持管理・水道光熱運営
AGOP(調整後GOP)GOP−基本運営委託料運営会社への基本フィー(売上比が一般的)契約
EBITDAAGOP−営業外費用賃借料・固定資産税・保険料・インセンティブフィー等所有
NOIEBITDA−FF&E積立更新投資のための積立(売上の3〜5%が目安)所有
(USALIの外)当期純利益NOI−減価償却−支払利息−法人税減価償却費・支払利息・法人税等資本構成

出典:USALI第11・12改訂版の運営計算書構成(HFTP/AHLA)をもとにホテルバンク編集部作成。EBITDAとNOIの境界は契約・評価実務により異なる

この表で押さえたいのは、GOPに含まれないものがはっきり決まっている点である。賃借料、保険料、固定資産税、減価償却費、支払利息はいずれもGOPより下で引く。これらは建物を誰がどう持っているか(自社所有か賃借か、借入比率はいくらか)で変わる費用であり、同じ運営チームが同じ稼働とADRを出しても、所有形態が違えば営業利益は別の数字になる。GOPは、その差を取り除いたうえで運営の成果だけを比べるための物差しだといえる。

一方で、何を「非配賦営業費用」に入れるかには実務上の幅がある。水道光熱費はUSALIでは非配賦に属するが、日本の旅館会計では「業務費」に含めて部門費用的に扱う例が多い。日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」(有効回答167棟)の損益表にも「GOP」の行があるが、同調査では経費合計(減価償却費を含む)を控除した営業利益に減価償却費を足し戻した値として示されており、USALIのGOPより一段下、償却前営業利益に近い位置の数字になる。他社や業界統計のGOP率を自館と比べる前に、まず計算範囲を揃える必要があるのはこのためだ。業態別のGOP率の目安と、ADR×OCCからGOPを逆算する手順は、ホテルのGOPとは — GOP率の平均・目安と計算式、ADR×OCCからの逆算2026で整理している。

計算式の分解 — RevPARからGOPPARまで、1室1泊の円で積み上げる

客室部門の指標はRevPAR=ADR×OCCで始まる。ADRは「売れた1室あたり」の単価、OCCは「売れる部屋のうち売れた割合」で、両者を掛けると「売れる部屋1室あたり」の客室売上になる。これに料飲・その他の売上を加えて販売可能客室数で割ったものがTRevPAR、さらに費用を引いてGOPを販売可能客室数で割ったものがGOPPAR=GOP÷(客室数×日数)である。GOP率が「売上に対する比率」であるのに対し、GOPPARは「部屋1室が1晩に稼ぐ利益の絶対額」であり、業態をまたいだ比較や投資判断にはGOPPARの方が向く。インヴィンシブル投資法人の2026年6月期決算説明資料も、運営会社が「GOPPAR(販売可能室数に対するGOP)を最大化する戦略」を採っていると明記している。

ここからは具体的な円で見ていく。モデルは100室のビジネスホテル、ADR¥7,600(2026年9月の推定成約ADR・47都道府県中央値¥7,633を丸めた値)、OCC80%(当社推定稼働率中央値85.8%と観光庁公式のビジネスホテル稼働率75.7%(2026年8月・第1次速報)の中間に置いた前提)とした。費用率は日本旅館協会調査の人件費率29.7%、上場REIT開示のGOP率33.6〜38.4%といった公表値を参照しつつ、本稿が独自に設定したモデル前提である(前提の一覧は後掲の表)。

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(100室ビジネスホテルモデル・販売可能客室1室1泊あたり円。ADRは推定成約ADR 2026年9月・47都道府県中央値をもとにした前提値)

客室売上¥6,080に朝食などの料飲・その他売上¥608を足した総売上は¥6,688。そこから客室部門費¥2,258(清掃・リネン・アメニティ、販売手数料、客室部門の人件費)と料飲部門費¥389を引いた部門利益は¥4,041で、総売上の60%が残る。次に一般管理・販促・情報通信・施設維持・水道光熱の非配賦営業費用¥1,335を引くと、GOPは¥2,706、GOP率40.5%になる。RevPAR¥6,080から見ればGOPPARは44%、つまり1室1泊で客室売上の約6割が運営費用に充てられている計算だ。

GOPの下では、基本運営委託料(総売上の2%=¥134)を引いたAGOPが¥2,572、固定資産税・保険料等¥250を引いたEBITDAが¥2,322、FF&E積立3%(¥200)を引いたNOIが¥2,122になる。100室・年間に直すとGOPは約9,880万円、NOIは約7,750万円で、RevPAR 1円に対して所有者の手元に残るNOIは約35銭という関係になる。賃借方式であればこのEBITDAの位置に賃借料が入り、所有者側の数字は賃料収入そのものに置き換わる(後述)。

表2 100室ビジネスホテルモデルの前提と参照した公表値
モデル前提(当社設定)値参照した公表値(別系列・混用せず)
ADR¥7,600推定成約ADR ビジネスホテル 47都道府県中央値 ¥7,633(2026年9月・N=7,427施設)/東京商工リサーチ 上場ビジネスホテル9ブランド 2025年度 ¥14,463
OCC80%推定稼働率 中央値 85.8%(2026年9月・OTA掲載在庫ベース)/観光庁 ビジネスホテル 75.7%(2026年8月・第1次速報)
料飲・その他売上客室売上の10%宿泊特化型の朝食・駐車場等を想定
清掃・リネン・アメニティ¥1,200/販売室変動費
販売手数料客室売上の10%OTA等の手数料率を想定した変動費
人件費(固定分)¥1,150/販売可能室夜清掃委託分を含む人件費計は総売上の31.5%。日本旅館協会調査(令和6年度)の人件費率29.7%と同水準
水道光熱費固定¥250+変動¥300/販売室合計で総売上の7.3%
施設維持・修繕/販促・IT・一般管理各¥250/販売可能室夜固定費
結果:GOP率40.5%インヴィンシブル投資法人 国内101物件 GOP比率 33.6%(2026年6月期)・38.4%(2025年12月期)/宿泊特化型の解説資料の目安 40〜60%

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成。右列の公表値は参照先であり、モデル値とは別系列

実データで骨格を作る — 3業態のRevPARレンジ(2026年9月・47都道府県)

GOPPARの出発点はRevPARである。メトロエンジンリサーチの推定成約ADR(2026年9月・確定月)と、同月のOTA掲載在庫ベースの推定稼働率を都道府県×業態で掛け合わせ、47都道府県の分布をとった。推定稼働率の対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホートで、掲載外の客室を消化済み側に数えるため公式稼働率より高めに出る点はあらかじめ断っておく(ビジネスホテルで当社推定85.8%に対し観光庁8月速報は75.7%)。

表3 3業態の推定成約ADR・推定稼働率・推定RevPAR(2026年9月・47都道府県の分布)
業態推定成約ADR
25%/中央値/75%
推定稼働率(2026年9月)
25%/中央値/75%
推定RevPAR
25%/中央値/75%
対象
ビジネスホテル¥6,881/¥7,633/¥8,66882.7/85.8/88.8%¥5,598/¥6,725/¥7,65847都道府県
ADR N=7,427施設
稼働 3,722施設・449,969室
シティホテル¥8,473/¥9,714/¥13,18483.2/85.8/90.0%¥9,140/¥10,723/¥12,767ADR 47都道府県 N=1,134施設
稼働 21都道府県・428施設・77,786室
旅館¥11,155/¥12,545/¥15,32079.6/83.5/85.9%¥9,185/¥10,313/¥13,043ADR 47都道府県 N=6,814施設
稼働 46都道府県・3,382施設・94,636室

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年9月・都道府県中央値の分布。RevPARは推定成約ADR×推定稼働率。シティホテルの稼働率は推定コホートが成立した21都道府県のみ。稼働の施設数・客室数は2026年9月1日時点の対象数で、月内に対象施設が増える業態がある)

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(帯は都道府県分布の25〜75%、点は中央値。2026年9月)

ビジネスホテルのRevPAR中央値は¥6,700で、¥10,000を超えたのは東京都(ADR¥13,400×稼働90.3%≒¥12,100)、愛知県(¥10,700)、北海道(¥10,100)の3都道県にとどまる。愛知は9月に国際スポーツ大会を抱えた月で、推定成約ADRが前年同月比で大きく上がっており、恒常的な水準として読むべきではない。逆に大阪府はビジネスホテルのADRが前年同月の万博期から3割強下がって¥8,900、RevPARは¥7,100と全国中央値に近い位置へ戻った。

目を引くのは旅館とシティホテルの関係である。RevPAR中央値は旅館¥10,300、シティ¥10,700とほぼ並ぶ。ところが旅館のRevPARは2食付きが標準の料金から出ている数字で、総売上に占める宿泊料理売上の比率は日本旅館協会調査で82.0%、料理仕入だけで総売上の14.1%を占める。同じRevPARでも、GOPに至るまでに引かれる費用の構造がまったく違うのだ。

出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(横軸:推定成約ADR、縦軸:推定稼働率。1点=1都道府県、2026年9月。シティホテルは21都道府県)

散布図にすると、ビジネスホテルは「ADR¥6,000〜9,000・稼働80〜93%」の狭い帯に密集し、旅館は「ADR¥7,000〜21,000」と横に長く広がる。旅館のRevPARが¥15,000を超えたのは神奈川県(箱根・湯河原を含む、ADR¥20,800×83.7%≒¥17,400)、兵庫県(¥16,000)、京都府(¥16,900)の3府県で、いずれも単価の高さで稼いでいる。この違いが、次に見るGOPPARの業態差を生む。

RevPARをGOPPARに翻訳してみよう。ビジネスホテルは客室売上が総売上の約9割で、GOP率をREIT開示(33.6〜38.4%)と当社モデル(40.5%)の間の35〜41%と置けば、RevPAR中央値¥6,700に対しGOPPARは約¥2,600〜3,000になる。シティホテルは客室売上比率を6割と置くとTRevPARは約¥17,900、フルサービス型の目安であるGOP率20〜30%ではGOPPARは約¥3,600〜5,400。旅館は宿泊料理売上比率82%からTRevPAR約¥12,600、GOP率を日本旅館協会調査の償却前営業利益率13.0%から20%の幅で置くとGOPPARは約¥1,600〜2,500にとどまる。RevPARで並んでいた旅館とシティホテルは、GOPPARでは2倍前後の開きになる。GOP率の数字だけで業態を比べることに意味が薄いのは、この翻訳の過程を見れば明らかだろう。

表4 公表統計の客室稼働率・客室単価(参考・当社推計とは別系列)
公表値(参考・当社推計とは別系列)旅館リゾートホテルビジネスホテルシティホテル
観光庁 客室稼働率 2025年(確定値)38.2%56.9%75.3%74.1%
観光庁 客室稼働率 2026年7月(第2次速報)40.2%59.0%74.6%71.9%
観光庁 客室稼働率 2026年8月(第1次速報)47.4%66.9%75.7%72.3%
東京商工リサーチ 上場ホテル 2025年度 客室単価/稼働率——¥14,463/83.9%
(9ブランド)
¥25,490/81.2%
(3ブランド)
日本旅館協会 令和6年度調査 客室稼働率(会員旅館ホテル167棟)56.9%(旅館・ホテル合算。宿泊単価¥18,121/人)

出典:観光庁「宿泊旅行統計調査」(2026年8月・第1次速報、2026年7月・第2次速報)、東京商工リサーチ「2025年度 上場ビジネス・シティホテル『客室単価・稼働率』調査」(2026年6月17日)、日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」よりホテルバンク編集部作成

公式統計の稼働率が当社推定より低いのは、観光庁調査がOTAに出ていない施設や団体・法人契約中心の施設を含む全数ベースの推計であるのに対し、当社推定はOTAで在庫を動かしている施設のコホートに限られるためである。上場ホテルの客室単価が当社の都道府県中央値より高いのも、上場チェーンが大都市中心に展開していることの反映で、両者は食い違いではなく母集団の違いとして読むのが正しい。本稿のモデルが前提をこれらの中間に置いた理由もここにある。

感応度 — ADR±5%・OCC±3ptの4象限でGOPはいくら動くか(100室モデル)

定義と水準が揃ったところで、GOPが何にどれだけ反応するかを同じ100室モデルで確かめる。ADRの変化は販売手数料(10%)を除いてほぼそのままGOPに落ち、本モデルでは客室売上に連動する料飲売上の貢献も加わるため、ADRが1円上がると販売1室あたりGOPは約0.95円増える。一方、稼働の変化には清掃・リネン・水道光熱の変動費と料飲原価がついて回り、稼働1pt(100室で年間365室夜)の増加がGOPに加えるのは1販売可能室夜あたり約¥58である。

表5 ADR±5%×OCC±3ptの4象限で見た年間GOPの増減(100室モデル)
100室モデル・年間GOP(基準 9,880万円)OCC −3pt(77%)OCC 80%(基準・通年前提)OCC +3pt(83%)
ADR +5%(¥7,980)+390万円(+3.9%)
GOPPAR ¥2,813
+1,060万円(+10.7%)
GOPPAR ¥2,997
+1,730万円(+17.5%)
GOPPAR ¥3,180
ADR ±0(¥7,600)−630万円(−6.4%)
GOPPAR ¥2,534
基準 9,880万円
GOPPAR ¥2,706・GOP率40.5%
+630万円(+6.4%)
GOPPAR ¥2,879
ADR −5%(¥7,220)−1,650万円(−16.7%)
GOPPAR ¥2,254
−1,060万円(−10.7%)
GOPPAR ¥2,416
−470万円(−4.7%)
GOPPAR ¥2,578

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(前掲モデル前提による試算。費用は変動費・固定費の区分に従って再計算)

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(100室モデル・年間GOPの基準比増減、百万円)

4象限の対角はGOPで3,380万円、基準の34%に相当する幅がある。注目したいのは非対称性で、「ADR+5%・OCC−3pt」は+390万円のプラスにとどまるのに対し、「ADR−5%・OCC+3pt」は−470万円とマイナスになる。単価を5%下げて稼働を3pt取り戻しても、GOPは元に戻らない。値下げで埋めた部屋には清掃・リネン・光熱の変動費がついてくるからで、販売1室あたりの貢献利益¥5,758に対し、固定費¥1,900(販売可能室夜あたり)を回収するGOP損益分岐稼働率は33%と低い。損益分岐を大きく上回る稼働帯では、稼働よりも単価がGOPを決めるという構造が、この表には表れている。

では、2026年のコスト環境をADRでどこまで吸収できるか。連合の2026年春闘最終集計は賃上げ率5.01%(中小4.69%)、最低賃金は2026年度に全国加重平均で56円引き上げられ1,177円となり、厚生労働省「毎月勤労統計調査」2026年7月分速報では宿泊業・飲食サービス業のパートタイム労働者の現金給与総額が前年同月比+5.6%だった。モデルの人件費(清掃委託分を含め総売上の31.5%)が5%上がると、販売可能室夜あたり約¥106の追加コストになる。これを客室単価で吸収するには、手数料控除後の客室売上に対してADRを1.9%(約¥150)上げればよい。水道光熱費については2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金が過去最高の4.18円/kWhに設定されたが、モデルの水道光熱費7.3%が10%上がっても必要なADRリフトは0.9%(約¥70)で、両方を合わせても2.8%(約¥220)に収まる。最低賃金改定が人件費と必要なADR転嫁率に与える影響を都道府県別に試算した最低賃金2026で人件費は1室年9,600円増 — 旅館は2.3倍、必要ADR転嫁率を47都道府県で試算も参考になる。

表6 コスト上昇シナリオと吸収に必要なADRリフト(100室モデル)
コスト上昇シナリオ(100室モデル)追加コスト
(販売可能室夜あたり)
年間(100室)吸収に必要なADRリフト
人件費 +3%¥63約230万円+1.2%(約¥90)
人件費 +5%¥106約390万円+1.9%(約¥150)
水道光熱費 +10%¥49約180万円+0.9%(約¥70)
人件費 +5%・水道光熱費 +10%¥154約560万円+2.8%(約¥220)

出典:メトロエンジン株式会社、ホテルバンク編集部作成(必要ADRリフト=追加コスト÷手数料控除後の客室売上。稼働一定を仮定)

2026年9月の推定成約ADRは前年同月比で、ビジネスホテルの47都道府県中央値が+7.9%、旅館が+4.5%だった。コスト上昇を吸収するのに必要な2〜3%のリフトは、市場が現に実現してきた上昇幅の内側にある。価格改定の余地は数字の上では十分に残っており、焦点はそれを季節・曜日・リードタイムのどこで取りにいくかという設計の側にあるといえる。

よくある誤読 — GOPとNOIの混同、業態間比較、賃貸借契約の見え方

最後に、GOPをめぐって実務で繰り返し起きる読み違いを整理する。いずれも定義そのものではなく、「どの階層の数字を、誰の立場で見ているか」の取り違えから生じる。

表7 GOPをめぐるよくある誤読と正しい読み方
誤読何が起きているか正しい読み方
GOPとNOIを同じ利益だと思うGOPは運営費用まで、NOIは賃借料・固定資産税・保険・FF&E積立まで引いた後の数字。モデルではGOP¥2,706に対しNOI¥2,122と、1室1泊で¥584の差がある。不動産の利回りはNOIで、運営受託の成果はGOPで語られる。取得価格に対する利回りを見るならNOI。運営会社を評価するならGOP(またはAGOP)。
GOP率で業態を横並び比較する料飲比率が高い旅館・シティホテルは分母の総売上が膨らみ、GOP率は構造的に低く出る。RevPARが並んでいた旅館とシティホテルのGOPPARが2倍前後開くのはこのため。業態をまたぐならGOPPAR(1室1泊あたりの利益額)。GOP率は同業態・同契約形態の中で。
統計の「GOP」をUSALIのGOPと同一視する日本旅館協会調査のGOP(全体13.0%)は営業利益6.0%に減価償却費6.9%を足し戻した償却前営業利益で、管理費まで控除した後の数字。REIT開示のGOP比率(インヴィンシブル 33.6%)とは計算範囲が違う。比較の前に「減価償却費・賃借料・固定資産税が引かれているか」を確認する。
賃貸借契約でオーナーP/LのGOPを探す賃貸借方式では、GOPはテナントである運営会社のP/Lに現れ、賃借料はその下で費用になる。オーナー側には賃料収入しか届かない。変動賃料契約では「賃料=固定賃料+ホテルGOPに連動する変動部分」の形でGOPが賃料に翻訳される。オーナーは契約上のGOP定義(どの費用を控除するか)と変動賃料の算式を押さえる。
AGOPをGOPと取り違える運営受託契約ではGOPから基本運営委託料を引いたAGOP(調整後GOP)を基準にインセンティブフィーや変動賃料を計算することが多い。基本フィー2%のモデルではGOP¥2,706に対しAGOP¥2,572。契約書の定義条項で、GOPとAGOPのどちらが基準かを確認する。

出典:ホテルバンク編集部作成。数値は前掲モデルおよび日本旅館協会「令和6年度 営業状況等統計調査」、インヴィンシブル投資法人 第46期決算説明会資料による

賃貸借契約の見え方は、J-REITの開示を見ると具体的につかめる。インヴィンシブル投資法人は保有ホテルを「変動賃料ホテル」「固定賃料ホテル」などに分類し、変動賃料ホテルでは固定賃料に加えてホテルGOPに連動する変動部分を賃料として収受していると説明している。同法人の2026年6月期は、国内101物件のRevPARが前年同期比+1.6%、GOPが+0.4%、GOP比率は0.9pt低下の33.6%だったが、大阪・関西万博の需要が剥落した関西エリアを除くとGOP比率は0.2pt上昇の33.9%だった。運営側で生まれたGOPの増減が、変動賃料を通じてそのまま投資法人の分配原資に伝わる構造である。賃貸借方式のホテルを評価する側は、GOPの数字そのものより、GOPのどの部分がどの比率で賃料に変わる契約かを読む必要がある。賃貸借・運営委託・所有直営の3方式と固定・変動賃料の実例については、ホテルリーシングとは — 契約3方式と賃料形態、J-REIT4社の開示で読む固定・変動が詳しい。

運営者・オーナーへの示唆 — GOPPARで会話を揃える

ここまでを整理すると、GOPを実務で使う際の要点は三つにまとまる。第一に、自館のGOPがUSALIのどの階層かを確定させることである。水道光熱費を部門費用に入れているか、賃借料を引いた後の数字をGOPと呼んでいないか。ここが揃わないと、REIT開示や業界統計との比較はどれも意味を持たない。第二に、業態をまたぐ比較や投資判断ではGOP率ではなくGOPPARで語ることだ。1室1泊で¥2,700を稼ぐ宿泊特化型と、¥4,500を稼ぐが料飲設備と人員を抱えるシティホテルでは、必要な投資額も人員も違う。GOPPARは「部屋1室が1晩に生む利益」という単位で、それらを同じ土俵に載せる。

第三に、感応度の非対称性を価格設計に生かすことである。ADR+5%はGOP+10.7%、OCC+3ptはGOP+6.4%というレバーの大きさの差、そして「値下げで稼働を取り戻してもGOPは戻らない」という構造は、繁忙期・週末・直前の需要が強い日程で単価を取りにいく判断を後押しする。人件費+5%と水道光熱費+10%を吸収するADRリフトが2.8%で済むという試算は、2026年のコスト環境が価格側の工夫で十分に受け止められる範囲にあることを示している。GOPは診断の道具ではなく、どこに伸びしろがあるかを運営者と所有者が同じ言葉で話すための道具として使いたい。

よくある質問

Q. ホテルのGOPとは何ですか。計算式を教えてください。

A. GOP(Gross Operating Profit・営業総利益)は、総営業収益から部門費用(客室清掃・販売手数料・料飲原価・部門人件費など)と非配賦営業費用(一般管理・販促・情報通信・施設維持・水道光熱)を差し引いた利益です。計算式は「GOP=総売上−部門費用−非配賦営業費用」。賃借料・保険料・固定資産税・減価償却費・支払利息はGOPの下で引きます。

Q. GOPPARとRevPARの違いは何ですか。

A. RevPARは客室売上を販売可能客室数で割った「売上」の指標で、ADR×OCCに一致します。GOPPARはGOPを販売可能客室数(客室数×日数)で割った「利益」の指標です。本稿の100室ビジネスホテルモデルではRevPAR¥6,080に対しGOPPARは¥2,706で、売上の約6割が運営費用に充てられています。

Q. AGOPとは何ですか。

A. AGOP(Adjusted GOP・調整後GOP)は、GOPから運営会社への基本運営委託料を控除した利益です。運営受託契約のインセンティブフィーや、J-REITなどの変動賃料の算定基準として使われることが多く、契約書でGOPとAGOPのどちらが基準になっているかを確認する必要があります。

Q. GOP率の目安はどれくらいですか。

A. 上場REITの開示では、インヴィンシブル投資法人の国内101物件のGOP比率が2026年6月期33.6%、2025年12月期38.4%でした。宿泊特化型の解説資料では40〜60%、フルサービス型では10〜30%といった幅が示されます。ただし計算範囲や料飲比率で大きく変わるため、業態をまたぐ比較にはGOP率よりGOPPARが適しています。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

業態別の推定成約ADRはメトロエンジンリサーチの都道府県×業態別集計(2026年9月・確定月、ビジネスホテル・シティホテル・旅館の3業態)、推定稼働率は同月のOTA掲載在庫ベースの推定値(総客室の30%以上をOTAに掲載する施設のコホート)。原価率・GOP率・公式稼働率は日本旅館協会、上場REITの決算説明資料、観光庁「宿泊旅行統計調査」、東京商工リサーチの公表値を出典どおりに引用し、当社推計とは別系列として扱った。

■ 試算前提

100室ビジネスホテルモデルはADR¥7,600・OCC80%(通年前提)、料飲・その他売上=客室売上の10%、販売手数料10%、清掃・リネン・アメニティ¥1,200/販売室、人件費(固定分)¥1,150・施設維持¥250・販促IT一般管理¥250/販売可能室夜、水道光熱費は固定¥250+変動¥300/販売室、料飲原価は料飲売上の約45%。基本運営委託料は総売上の2%、固定資産税・保険料等¥250、FF&E積立は総売上の3%。感応度は変動費・固定費の区分を保ったまま再計算し、ADRリフトは「追加コスト÷手数料控除後の客室売上」(稼働一定)で求めた。

■ 限界・留意点

推定成約ADRは最安プラン水準に業態別係数を掛けた推定値(税抜相当)で、各施設の会計上の客室単価とは一致しない。推定稼働率はOTA掲載在庫ベースのため公式稼働率より高めに出る。業態別GOPPARのレンジは客室売上比率とGOP率を置いた換算であり、実際の損益の観測値ではない。100室モデルの費用構造は宿泊特化型を想定した一例で、立地・契約形態・料飲比率によってGOP率と感応度は大きく変わる。

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