福岡で来年2月下旬に安室奈美恵のファイナルツアーとEXILE THE SECOND ライブツアーの講演が決定したことで宿泊施設の不足が懸念されている。
過去にも福岡で嵐とEXILEのツアーが重なり福岡ツアー期間中のホテルが非常に取りにくくなっており、ツアー開催による一時的なホテル不足は今に始まったことではない。
将来4,000万人になると想定される中、福岡県への訪日観光客は順調に増加しており、ますますホテル不足の常態化が進む福岡で何が起きているのかその実態に迫った。
インバウンド需要で年々売上を伸ばす福岡のホテル
かねてより、日本旅行ブームや日本政府によるビザ免除や発給要件の緩和、さらに航空運賃の安いLCC(ローコストキャリア)の拡充などで日本を訪れる外国人観光客数は右肩上がりに伸びている。2016年に日本を訪れた外国人観光客は約2,403万人を記録し、日本史上初めて2,000万人を突破した。
日本政府は、東京オリンピックが行われる2020年には訪日外国人数4,000万人を目標として掲げており、これからも様々な施策が打ち出されていくと見られている。この外国人観光客数の増加は、何も東京や大阪だけに影響を与えているわけではなく、九州地区の中でも福岡県にも大きな影響を与えている。
帝国データバンク福岡支店の発表によると、九州・沖縄地区の宿泊業者上位50社の中に福岡県の企業が13社と18社の沖縄と合わせると6割を占めている。そして、13社の合計の売上額は2015年は770億円あまりを記録。2013年は約700億円だったことから、わずか2年で70億円も売上を伸ばしていることになる。
売り上げが伸びているのは、全ての地域ではない。例えば鹿児島県は、トップ50に入っている企業の2013年の売上高は190億円あまりだったのに対して、2015年は170億円と売上を落としている。同様に、佐賀県も2013年は330億円あった売上が2015年には180億円あまりと激減させている。
つまりインバウンド需要を上手く取り入れた県と掴み損ねた県とで大きく差が付きだしているというのが、九州地区の傾向である。その点においては、福岡県はうまくインバウンド需要の波に乗れていると見ることができる。
ホテルの数でみるとダントツのNo.1は福岡市博多区
表は、メトロエンジンリサーチから福岡県の市区町村ごとの宿泊施設数、客室数をまとめたものだ。これを見ると明らかなように、宿泊施設数、客室数ともに福岡市博多区が他を圧倒している。福岡市博多区の施設数は180施設、客室数は1万7,674室を数え、いずれも2位の福岡市中央区に2倍近い差がある。
実際、福岡市博多区の客室数は全国的に見ても多く、客室数1万7,674室もある。これは全国の市区町村の中でも東京都港区、大阪市中央区、東京都中央区、札幌市中央区、東京都新宿区に次いで全国第6位につけている。(メトロエンジンリサーチより)
一見、宿泊施設数、客室数ともに非常に集まっているように見える福岡市博多区であるが、実は観光客に対して宿泊施設数、客室数ともに足りていない可能性が高い。2015年の福岡市内全体の客室稼働率は、全国平均の51.2%を大きく超える83.2%を記録している。
一般的に客室稼働率が80%を超えると宿泊予約が取りづらいとされているので、福岡市は全体で見ても宿泊施設が足りないのである。中でもとりわけ陸の玄関口・博多駅と空の玄関口・福岡空港がある博多区は、1年を通して宿泊施設が取りづらいことで有名だ。
さらには福岡ドーム、福岡コンベンションセンター、福岡市民会館といった大規模なイベントを開催することができるイベント会場が集中している。複数のイベント会場で大規模なイベントが行われる際には、いわゆる「宿泊難民」が続出することもあるそうだ。
このように、福岡市博多区は全国でも屈指の宿泊客の受け皿があるものの、それでもなお観光客数の増加に追いついていないのである。こうした状況を受けて博多区では現在、博多駅前を中心に新規ホテルの開発ラッシュが繰り広げられている。
出典:メトロエンジン リサーチ
現在は、博多区中心にホテルの開発競争が行われているが、やがてそれは周辺の行政区に移っていくと考えられている。今後の宿泊施設の誘致と観光地のあり方も注目になりそうだ。