新型コロナウイルス感染症による世界での死者数が40万人を突破した。かつて日本では死因の第一位で「白いペスト」として恐れられた結核や熱帯地域における脅威であるマラリアによる死者数はどれほどなのか。第二波の襲来や冬季インフルとダブル流行への懸念が高まる中でなすべき有効な対策とは。
結核ー日本国内でも1900人が死亡、世界で180万人死亡
かつて白いペストとも呼ばれ、日本人の死亡原因の第1位であった結核。現在においてはBCGワクチンや抗生物質ストレプトマイシンの普及によって結核による死亡者・死亡率は激減した。
しかし、厚生労働省によると、現在でも、日本国内において、毎年約18,000人が新たに結核を発症し、約1,900人が結核で亡くなっている。
出典:日本政府広報
厚労省によると、都道府県別の結核罹患率(人口10万対)は、大阪府、東京都、愛知県、岐阜県、徳島県の順に高く、山形県、長野県、宮城県、秋田県、福島県の順に低くなっている。また、年齢階級別の結核罹患率は、高齢層ほど高く、60~69歳で12.0、70~79歳で24.5、80~89歳で60.8、90歳以上では96.3となっている。
結核の国内の感染者数・死者数の数字は、感染者数において現時点の新型コロナの感染者数をやや上回り、死者数については倍以上にのぼる。
結核は決して過去のストーリーではないのだ。
しかし、新型コロナに感染することを不安に思って暮らしている多くの日本人にとって結核への感染は脅威として感じられていない人がほとんどではないだろうか。
結核は空気感染のため、新型コロナの飛沫感染防止に有効なマスクによって防ぐことはできない。咳やくしゃみなどで感染し、免疫力が弱くなったときに発症する。日本政府は、結核を発症した場合の初期症状は、咳や痰、発熱など風邪に似た症状で、これらが2週間以上続くため、このような症状が長く続く場合は、早めに医療機関を受診するよう促している。
さらにWHOによると、2018年には世界で約1000万人が結核に罹患し、180万人が結核で死亡した。結核による死亡のほとんどは南アジアや東南アジア、アフリカなどの発展途上国で発生している。また、110万人の小児(15歳未満)が結核を発症し、20.5万人が結核で死亡したという。
マラリアー死者数40万超、幼児が67%占める
マラリアはPlasmodium属原虫の三日熱マラリア原虫、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫などの単独又は混合感染に起因する疾患であり、特有の熱発作、貧血及び脾腫を主徴とする。ハマダラカによって媒介される。
WHOによれば、2018年には推定で、マラリア患者が2億2,800万人、死者数が40.5万人となった。
この死者数は現時点の新型コロナによる死者数に匹敵するものであり、確認された感染者数でははるかに上回るものとなっている。
マラリアはアジア・アフリカ・南米の熱帯地域で特に5歳以下の幼児に最も危険な感染症で死者の67%を占めており、欧米諸国の高齢者が死者の中心となっている新型コロナとの違いとしてあげることができるだろう。
冬季インフルと新型コロナ第二波、まず「ワクチン」接種を
新型コロナとの戦いが超長期化するなかで、第二波の懸念も高まっている。特に、毎年1000万人が罹患し、約1万人が国内で死亡とされる冬季におけるインフルエンザと第二波が重なる場合に最も深刻な影響が出ることが指摘されている。
新型コロナ対策により今期大幅に減少させることに成功したインフルについては、来期においても新型コロナの第二波の有無にかかわらず、マスクや手洗いなどの対策については続けることが肝要だろう。
また、現在、新型コロナのワクチン開発が大きな焦点となっているが、まずはインフルエンザのワクチンを接種することが推奨されるだろう。
日本国内のインフルのワクチン接種率は5割程度にとどまっており(接種数 5,284万回、平成28年シーズン、厚労省)、これを大幅に引き上げることは、インフルエンザの集団感染を抑止するとともに、新型コロナの第二波襲来と重なることにより懸念される「医療崩壊」を避ける「新型コロナ対策」としても有効な処方箋になるだろう。
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