京都市の旅館、分布状況
メトロエンジンリサーチによると、京都市の旅館の分布状況は以下の通り。
出典:メトロエンジンリサーチ
出典:メトロエンジンリサーチ
メトロエンジンリサーチによると、京都市の旅館は市内全域に点在しているものの、その立地には明確な偏りが見られる。
特に高密度で集積しているのは、市内中心部から東山エリアにかけての観光動線上となっており、歴史資源・景観価値・回遊性の高いエリアを軸に分布している点が特徴だ。
地図から確認できる主な集積エリアは、①四条河原町〜祇園・東山エリア、②京都駅周辺、③嵐山エリアの三つに大別できる。なかでも四条河原町から祇園、清水寺周辺にかけては、町家改修型や小規模高付加価値型の旅館が連続的に立地しており、京都らしい滞在体験を重視するインバウンド・観光客需要を強く意識したエリアを形成している。
京都駅周辺では、新幹線・在来線・地下鉄が集中する交通結節点としての利便性を背景に、比較的規模の大きい旅館や宿泊特化型施設が集積している。観光の起点としてだけでなく、短期滞在や団体利用、国内観光客の利用を想定した立地戦略が見られ、都心観光エリアとは異なる役割を担っている点が特徴といえる。
一方、嵐山エリアでは自然景観と歴史資源を背景に、滞在そのものを目的とした旅館が点在する形で分布している。市中心部の高密度集積とは対照的に、低層・低密度で景観との調和を重視した施設が多く、長めの滞在や体験型観光との親和性が高いエリアとなっている。
また、市北部や南部の住宅地エリアにも小規模な旅館・簡易宿所の分布が確認できるが、これらは観光動線から一段外れた立地を活かし、価格帯や滞在スタイルで差別化を図るケースが中心だ。
このように、京都市の旅館は「四条河原町・東山を核とした観光中心型」と「京都駅周辺の交通拠点型」「嵐山を代表とする滞在価値重視型」という三層構造を形成しており、観光都市・京都ならではの多層的な宿泊分布が浮き彫りとなっているようだ。
京都市の旅館、施設数の推移
高止まりから調整局面へ|量の拡大を終え、選別が進む京都旅館市場
京都市における旅館・施設数の推移には以下の傾向が見られた。
出典:メトロエンジンリサーチ
京都市の旅館の施設数は、2019年時点で約150施設前後だった旅館数は、2020年にかけて一時的に増加し、最大で154施設規模まで拡大し、その後、2020年後半から2021年にかけては減少局面に転じ、148〜149施設前後まで落ち込んだ。これはインバウンド需要の急減や運営継続が困難となった小規模旅館の休廃業が影響したものと考えられる。
