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レジデンストーキョー「CEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉ」が見せる新たなホテルの多様性とは

レジデンストーキョーは、日本初のダイバーシティホテル「CEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉ」(44室)を東京都新宿区百人町に2019年7月20日開業。開業から半年を迎えた同ホテルのサービスの特徴や現状、今後の展開などについて同社代表取締役CEO兼CMOの野坂幸司氏に話を聞いた。

人種や国籍、宗教、セクシュアリティにとらわれない

「CEN DIVERSITY HOTEL & CAFÉ」は、百人町という地名にちなみ“百人百様の生き方を尊重し、人種や国籍、宗教、セクシュアリティにとらわれず、全ての人に寄り添う”をコンセプトとする日本初のダイバーシティホテル。LGBTタウンとして知られる新宿2丁目にもほど近い立地。

同ホテルは、44室のプライベートルームと、街の喧騒とは遮断されたオープンテラス付きのカフェを備えており、全ての人が、自分らしくゆっくりと過ごせるという。

野坂氏は言う「全従業員がLGBTの歴史文化、海外での状況や接し方などについて学ぶLGBT研修を受講し、マイノリティの方に配慮したサービスを提供しています。外国人やLGBTの方の積極的な採用、コンセプト設計に当事者のデザイナーを起用するなどの取り組みも行なっています。

当施設はIGLTA(国際ゲイ・レズビアン旅行協会)にも加盟、都内では2施設、日本国内でも10施設に満たない同加盟施設の内の一つとなりました。

ホテルの共用トイレを男女の区別なく提供していますが、そうした物理的な配慮以上に、ミスター・ミセスの呼称を使わないようにすることやそうした区分自体を予約・チェックインの際に設けないなどソフト面での配慮を行なっています。」

ホテルロビーのトイレには「ALL GENDER RESTROOM」の文字が記載されている。

人種や国籍、宗教、セクシュアリティにとらわれない全ての人が快適に過ごせる場所となることを目指す同ホテルだが、開業して半年、実際の顧客層は「多様だ」と野坂氏は言う。

「LGBT特化で限定することは考えていません。実際、当施設に宿泊しているゲストのうちLGBTの当事者は1日1組程度にすぎません。

客層としては、ミレニアム世代の外国人、20代30代が多く、ここ数ヶ月の客室稼働率は95%と極めて高くなっています。

訪日客が7割、内欧米で約半分、その他が中国・東南アジアとなっています。

新大久保駅にほど近い場所にありますが、韓国人の割合は小さいため、韓国人旅行客の減少の影響をほとんど受けていません。

トリップアドバイザーでも9.5/10と高い評価を受けていますが、特にLGBTを意識していることが評価されているというよりは、LGBTを含めた全ての人に快適なホテルを提供することを目指した結果として、スタッフの接客、デザイン、カフェやラウンドリー設備などの点が高評価につながっているようです。」

同ホテルロビーにはライブ創作の現代アーティスト 小松美羽氏の作品が展示されている。

地域ごとの特性を掴む、狭まる宿泊と住宅の垣根を開拓

同氏に今後の同ホテルと同社の展開について話を聞いた。

「今後のホテル市場については供給がやや過大になるとの認識を持っています。当施設の平均客室単価は1.2万円と周辺ホテルの8千円程度よりもやや高い設定を実施しています。価格競争ではなく良いサービスやデザイン性で高い価値を生み出していきたいと考えています。

ダイバーシティは弊社としてのコンセプトであり、今後とも継続的な取り組みを実施していきます。その上で、LGBTに特化するというよりは、より展開する地域ごとの特性をつかんだ形で特にインバウンドの顧客の獲得に注力していきたいです。

弊社の事業としては既存のマンスリーマンションやホテル事業のほかに、民泊とマンスリーを組み合わせる取り組みをエアトリステイと連携して2019年11月から新たに開始しました。

ホテルなどに「泊まる」という業界とマンスリーなどに「住む」という業界の垣根が狭まってきています。

純粋な宿泊事業も展開しつつ、住宅のような機能も持っている、その中間のニーズを掘り出していきたいです。」

【同施設 概要】

所在地:東京都新宿区百人町1丁目5番19号

アクセス:JR山手線「新大久保」駅徒歩5分、西武新宿線「西武新宿」駅徒歩3分

開業日:2019年7月20日(土)

築年:2019年7月竣工

客室数:44室(11平米40室、14平米4室)

館内施設:カフェ、テラス、共用ランドリー、共用バス

料金:12,000円/泊前後

東京都新宿区ホテル展開状況

メトロエンジンリサーチによると、新宿区には宿泊施設が285、部屋数にして23,469室が提供されている。

新規開業予定は13施設、部屋数にして1,694室が新たに供給される見込み。

同施設周辺半径1キロ圏内のホテル展開マップは以下の通り。

(大小のカラフルなサークルは既存施設、大小のサイズは客室数規模を示す。紫色のハウスマークは新規開業予定。)

出典:メトロエンジンリサーチ

同圏内に既存施設は207施設が確認された。

客室規模数の内訳としては、同施設と同様に16-99室の中小規模の施設展開が102施設と多くなっているエリア。

また、同圏内の新規開業予定は8施設、部屋数にして1,285室とホテル開発の激戦地ともなっている。

同ホテルが見せたダイバーシティホテルの新たな取り組みは、当事者のみならず、結果として全てのゲストにとって心地よい空間を提供することで、高い評価につながっている。

2020年東京オリンピック・パラリンピックを間近に迎えるなかで、LGBTや人種、宗教、障害などのダイバーシティに関わる課題へ取り組むことは、宿泊業・観光業界のみならず日本社会に課せられた大きな課題と言える。また、その課題への取り組みは日本社会が誰にとっても住みやすい社会となることを意味するだろう。

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