2026年は西暦の数字「026」が「お風呂」と読めることから、日本記念日協会により千年に一度の「お風呂の年」として記念年に登録された。次に「026」が並ぶのは3026年。そんな節目の年を背景に、客室にサウナを備えるホテルや館内サウナを売りにする宿泊施設が続々と登場している。本記事では、メトロエンジンリサーチが追跡する1,500施設超のサウナ訴求ホテルのプラン価格・客室名データを集計し、客室サウナのプレミアム率は平均+47%、中央値+32%であることを定量的に検証する。さらに同訴求施設のレビュースコアは全国平均を大きく上回ることも確認できた。
本記事における指標の定義
- 客室サウナ:客室内にプライベートサウナが設置されているタイプ。
- 館内サウナ:大浴場併設や独立サウナ室など、宿泊者が共用する施設。
- プレミアム率:同一ホテル内で「サウナ部屋の平均価格 ÷ 非サウナ部屋の平均価格 − 1」で算出した相対差。
- ADR(平均客室単価):OTA等で公開されている販売価格の平均値。実際の成約価格とは異なります。2名1室利用時の1室あたり料金(税込)・全プラン平均(素泊まり〜食事付きプランを含む)。
- データ出典:メトロエンジンリサーチ
2026年「お風呂の年」が映すサウナーマーケットの現在地
「2026 お風呂の年プロジェクト」は、全国公衆浴場生活衛生同業組合連合会、日本サウナ・スパ協会、温浴振興協会など、銭湯・温浴施設・サウナ業界を横断する初の取り組みとして2025年11月26日(いい風呂の日)に発足し、日本記念日協会の初の「記念年」として登録された。参加施設は全国約2,000ヶ所にのぼり、毎月26日には子ども入館無料などの企画が展開されている。
こうしたお風呂業界の機運は、サウナ市場の構造変化を映している。日本サウナ・温冷浴総合研究所が2026年2月に実施した「日本のサウナ実態調査2026」によると、年1回以上サウナに行く愛好家全体人口は約1,500万人で前年並みの推移であるものの、月4〜8回以上通うヘビーサウナーは前年比+35%(180万人→約250万人)と急増している。一方、ミドル・ライト層はやや減少傾向にあり、市場は「コア層の濃密化」と「ライト層からの離脱」という二極化の様相を見せている。
この構造は、ホテル業界にとって明確なシグナルとなる。ヘビー層は単なる「ととのう」体験ではなく、本格的なサウナ設備、水風呂の質、外気浴環境、そしてプライベート性を求める。価格帯が上がっても満足度を得られる体験設計が、客室サウナや専用ロウリュ機能の搭載といったハイクラス訴求に結実している。一方、共用サウナを備えた中価格帯ビジネスホテルは、ライト〜ミドル層の差別化策として機能している。
2026年新規開業:サウナ訴求の代表施設
2026年に開業を予定する新規ホテルのうち、サウナを明確な訴求軸とする施設をピックアップする。共通するのは、単なる付帯設備ではなく「滞在体験の中心」としてサウナを位置付ける設計思想である。
| 施設名 | 所在地 | 客室数 | サウナ訴求の特徴 |
|---|---|---|---|
| FAV LUX 宮崎 | 宮崎県宮崎市 | 41室 | METOS製オートロウリュ、温度別2種類のチラー付き水風呂、大淀川沿い外気浴テラス、「サウナしきじ」プロデュースのサウナージュ付スイート |
| 森のスパリゾート 北海道ホテル「ととのえ」ツイン | 北海道帯広市 | 客室タイプ | フィンランド式プライベートサウナ、テラス外気浴チェア2脚、自身でロウリュ可能、十勝の自然を一望 |
| 小豆島オーシャンフロントリゾート | 香川県小豆島 | 非公開 | 瀬戸内海を望むオーシャンビュープレミアムルームに専用サウナ&スパを設置、リゾート滞在型のサウナ体験 |
出典:各社プレスリリース(FAV LUX宮崎は2026年7月1日開業予定)、ホテルバンク編集部より作成
注目すべきはFAV LUX 宮崎(2026年7月1日開業)が掲げる「サウナ×睡眠で回復する滞在」のコンセプトである。共用サウナには100年以上の歴史を持つMETOS社製オートロウリュストーブとベンチ下ヒーターを採用し、90℃のサウナ室に対して15℃(深さ90cm)と9℃(深さ60cm)の温度が異なる2種類のチラー付き水風呂を併設。大淀川を望むととのいテラスで外気浴を楽しめる設計だ。さらに83㎡のサウナスイートには40㎡の専用バルコニーと客室内プライベートサウナを完備し、標高2,500m相当を再現した低酸素ジム「LOX-Fit」やTENTIAL「BAKUNE」リカバリーウェアの導入など、サウナ・フィットネス・睡眠を統合したウェルネスステイを提案している。
FAV LUX宮崎は、同ブランドが全国5拠点(飛騨高山・長崎・鹿児島天文館・札幌すすきの・宮崎)で展開するサウナホテルチェーンの最新施設にあたる。全施設にフィンランド式×モリス式のハイブリッドサウナと2種類の水風呂を標準装備しており、2024年12月に開業した鹿児島天文館では日本サウナの聖地「サウナしきじ」の笹野美紀恵氏がプロデュースした客室内サウナ「SAUNAGE®」を日本のホテルで初めて導入するなど、サウナ体験の質にこだわった展開が特徴的だ。サウナはもはや単独の設備ではなく、滞在型ウェルネスの中核要素として再定義されつつある。
客室サウナのプレミアム率を定量検証:平均+47%、中央値+32%
メトロエンジンリサーチが追跡する宿泊予約データから、客室サウナを備えるホテル(N=574施設)と館内サウナを備えるホテル(N=1,051施設)を抽出した。これらの2026年5月15〜22日(GW明けの平日)チェックインプランの平均価格を比較する。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=客室サウナ施設530、館内サウナ施設936、2026年5月15-22日チェックイン)
客室サウナを持つホテルの平均ADRは¥69,900、館内サウナホテルは¥31,200と、約2.2倍の開きがある。ただしこの差は、客室サウナ訴求が高級旅館・リゾートに集中していることに起因する側面が大きい。データを精緻化するため、同一ホテル内でサウナ部屋と非サウナ部屋を両方持つ356施設を対象に、内部プレミアム率を算出した。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=356施設、同一ホテル内のサウナ部屋vs非サウナ部屋ADR比較)
結果は明快である。356施設の85.4%でサウナ部屋がプラスのプレミアムを実現しており、平均プレミアム率は+47.0%、中央値で+32.4%となった(なお、客室名から「プライベートサウナ」を厳密に抽出した別稿の38施設分析ではプレミアム率+20.4%となっており、母数の取り方で数値が変わる点に留意されたい)。金額換算では中央値で¥13,400、平均で¥23,000の上乗せである。とりわけ100%以上のプレミアムを実現している施設が11.0%(39施設)存在しており、ハイクラス層では客室サウナが価格決定要因として明確に機能していることがわかる。
一方、14.3%の施設では非サウナ部屋の方が高価格となっている。これらは多くの場合、サウナ付きスタンダードルームと、より広いスイートやビューが優れた高層階の非サウナ部屋が並存しているケースで、サウナ単体ではなく面積・眺望が優先される価格設計になっていると考えられる。
サウナ訴求とレビュースコアの強い正の相関
プレミアム価格を支えているのは、宿泊者の高い満足度である。サウナ訴求ホテルのレビュースコア分布を、メトロエンジンリサーチ収集の口コミデータ(30件以上の評価がある施設に限定)で確認する。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(客室サウナN=236、館内サウナN=804、全国ベースラインN=49,913)
客室サウナホテルの平均レビュースコアは4.11/5.0、中央値4.26と、全国平均3.42を大きく上回る水準である。スコア4.0以上の施設比率は65.7%に達し、約3社に2社が「優良施設」レンジに入っている。館内サウナホテルでも平均3.93/5.0と高水準で、全国平均との差は約+0.5ポイント。サウナを訴求する施設は、設備投資のみならず接客・清掃・食事といった総合的な品質管理を高度に維持している傾向が読み取れる。
もっとも、相関は因果ではない。サウナがあるから評価が高いというよりも、体験品質に投資する余力のある施設がサウナを導入するという関係性が背景にあると考えられる。それでも結果として「サウナあり=ハイスコア」という選別効果が市場に生じており、宿泊者にとっては施設選びの有用なシグナルとなっている。
客室サウナホテルのカテゴリ・グレード分布
客室サウナを備える236施設(レビュー30件以上)のグレード・カテゴリ分布を見ると、市場の重心が明確に浮かび上がる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(N=236施設)
カテゴリ別では旅館が118施設(50.0%)と最多で、リゾートホテル37施設、ビジネスホテル36施設、シティホテル13施設、コテージ12施設と続く。グレード別ではラグジュアリーが107施設(45.3%)と圧倒的で、アッパー50、ハイグレード40。客室サウナは現状、高級旅館の差別化軸として最も活発に導入されており、ビジネスホテル領域はまだ余白がある。
一方、館内サウナ(共用)の文脈では、ドーミーインに代表されるビジネスホテルチェーンが独自の天然温泉+サウナ訴求で全国展開しており、ミドル価格帯の有力な差別化策として定着している。客室サウナと館内サウナは競合関係ではなく、異なる顧客セグメントに対する補完的なポジショニングとして機能している。
読者向け:高評価×手頃価格の客室サウナホテル10選
客室サウナを持つ全国574施設のうち、レビュースコア4.3以上、サウナ部屋平均価格6万円以下、価格データ件数5件以上という条件で抽出した上位10施設を紹介する。個別施設のエリア別プレミアム率やTOP20ランキングについては「客室サウナ付きホテル市場分析|全国38施設の価格プレミアムを検証」も併せて参照されたい。同一ホテル内でのサウナ部屋vs非サウナ部屋のプレミアム率もあわせて掲載する。プレミアムがマイナスの施設は、サウナ部屋がより手頃なエントリープランに位置付けられているケースである。
| No. | 施設名 | 所在地 | タイプ | レビュー | サウナ部屋 平均価格 | プレミアム率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 伊香保 明野屋 | 群馬県 | アッパー旅館 | 5.0 | ¥30,800 | +39.3% |
| 2 | 温宿 三河屋 | 群馬県 | ラグジュアリー旅館 | 4.95 | ¥55,600 | −2.3% |
| 3 | 三朝温泉 清流荘 | 鳥取県 | ハイグレード旅館 | 4.7 | ¥59,800 | +32.7% |
| 4 | 萩一輪 | 山口県 | ラグジュアリー旅館 | 4.61 | ¥56,800 | −15.3% |
| 5 | 軽井沢Log HOTEL塩沢の森 | 長野県 | アッパーコテージ | 4.57 | ¥36,700 | −7.7% |
| 6 | ラ・ジョリー元町 by WBF | 北海道 | ハイグレードシティ | 4.56 | ¥18,500 | +11.2% |
| 7 | 農園リゾート ザファーム | 千葉県 | ハイグレードコテージ | 4.56 | ¥53,400 | −5.6% |
| 8 | イマジン ホテル&リゾート函館 | 北海道 | アッパーリゾート | 4.51 | ¥49,000 | +46.2% |
| 9 | リーガロイヤルホテル小倉 | 福岡県 | ラグジュアリーシティ | 4.5 | ¥39,100 | −18.0% |
| 10 | ナイスインホテル 舞浜東京ベイ PREMIERE | 千葉県 | アッパービジネス | 4.5 | ¥39,900 | +38.2% |
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成(2026年5月15-22日チェックインの公開価格平均、全プラン平均)
地域的には北海道(2施設)と群馬県(2施設)が複数ランクインしており、温泉とサウナの併設文化が根付くエリアがコスパ評価を押し上げている構図がわかる。価格帯では¥18,500〜¥59,800と幅広く分布しており、シティホテルやビジネスホテルでも高評価のサウナ付き客室が選択肢として存在することは、出張需要にとって朗報である。
市場へのインプリケーション
定量分析から導かれる示唆を整理する。
第一に、客室サウナは確立した価格プレミアム要因である。同一ホテル内で平均+47%、中央値+32%の上乗せが実現している事実は、設備投資の収益性を裏付ける。とりわけラグジュアリー旅館においては、客室サウナがADR水準を100%以上引き上げる「決定的差別化」として機能しているケースも珍しくない。
第二に、館内サウナは中価格帯ホテルの差別化を支える堅実なツールである。客室サウナのような派手なプレミアムは生まないが、レビュースコア+0.5ポイントという品質シグナルを獲得しており、リピート率と直販比率の改善に寄与する可能性が高い。ヘビーサウナーのコア層が拡大している現在、立地不利を補う訴求軸として有効である。
第三に、市場には「ビジネスホテル領域の客室サウナ」という余白が残されている。客室サウナの導入はラグジュアリー旅館に集中している一方、ビジネスホテル36施設、シティホテル13施設はまだ少数派である。ナイスインホテル舞浜東京ベイ PREMIEREやラ・ジョリー元町のような事例は、出張×ウェルネスという新しい需要層を開拓するヒントを示している。
2026年「お風呂の年」は、単なる業界マーケティング企画ではなく、サウナ・温浴市場の構造的成熟と、それを背景にした客室サウナの定着を象徴する節目となるだろう。データが示す+32%のプレミアム率は、この市場の本気度を物語っている。
注:本記事のADRは調査時点でOTA等に公開されている販売価格の平均であり、実際の成約価格とは異なります。チェックイン日に近づくにつれて変動する可能性がある点にご留意ください。FAV LUX宮崎は2026年7月1日開業予定のため、現時点では本検証の対象には含まれません。
