AIやIoT機器の導入・普及により変貌を遂げるホテル業界の2019年。総合エンジニアリング&サービス会社として、ホテル向けに客室設置型タブレット「ee-TaB*®(イータブ・プラス)」を提供する(株)ミライト(以下、ミライト)にサービスと今後の展開について話を聞いた。
縮小するインフラ需要と東京五輪で新規事業展開へ
同社は1944年12月に設立された歴史ある会社で、電気通信設備構築や電気工事をメインとした情報通信エンジニアリング事業を展開。従業員数は約5,000人を数え、東証一部上場企業である(株)ミライト・ホールデイングス傘下の中核的事業会社のひとつだ。
そんな同社が客室タブレットの開発に乗り出したのは2014年のことだ。
元々は電話工事をメインとしたインフラを扱う会社が、国内市場においてインフラの需要が縮小することを見込み、モバイル系通信設備構築の技術を生かした新規事業分野への進出をめざし、2014年にプロジェクトチームとして「イータブ・プラス」を手がける新組織を立ち上げたのが始まり。
同社次世代モバイルビジネス創造本部ee-TaB*推進部部長の高橋秀一郎氏にその事業開始のきっかけから話を聞いた。
「目指すところは2020年東京オリンピック/パラリンピックでした。五輪会場が集う豊洲に本社が立地していることもあり、会社をあげてこれに取り組む様々なプロジェクトがスタートしました。その一つがイータブ・プラスだったのです。
ホテルにはWi-Fiなどの提供で既存の顧客がいたことや全国にミライトの支店があるため、2020年までに新規ホテル開発が進む中で異業種からの参入でも市場規模をある程度確保できるという見通しから、ホテルがターゲットになりました。
イータブ・プラスのビジネスは、ミライトと資本関係もあるテックファーム(株)との協業により推進されており、営業をはじめとするサービス提供自体は弊社が行い、システムの開発についてはテックファーム社が行なっています。」
顧客サービス、従業員の生産性、レピュテーション向上も
最初のホテルへの導入は2014年11月で、業界としてはパイオニアにあたる存在だ。導入から、年月を重ねるにつれ、顧客の声をもとに機能が追加され、サービスもブラッシュアップされていった。
導入事例としては、「相鉄フレッサイン」などの宿泊特化型ホテルから、「ホテルニューオータニ」などのシティホテル、宮古島の「ザ シギラ」などのリゾートホテル、「白玉の湯 泉慶」などの旅館まで宿泊施設のカテゴリーは幅広い。
北海道から沖縄までの全国で新規ホテルを中心に導入が進んでいる。
高橋氏はイータブ・プラスの特徴について以下のように語る。
「サービスの特徴としては、タブレットに掲載するホテル情報の制作、タブレットの設置といった導入時の支援や、導入後の情報の更新、24時間365日のコールセンターや端末保証などのサポート面が充実している点です。
また、 また機能面においても、ホテル情報の配信やアンケート機能、観光情報などの基本機能のほかにも、宿泊施設毎に選択可能な機能が充実しており、客室の照明・エアコン・テレビのリモコンとしての利用も可能です。
特に宿泊特化型施設に評価が高いのは、従業員の業務軽減につながる機能です。多言語対応のほかにも、清掃管理、遺失物管理、オーダーシステム、レストランの混雑状況表示やランドリー稼働状況表示などの機能による業務の効率化により、従業員の生産性の向上につながります。
さらに、イータブ・プラスを通じたアンケートでは従来の紙でのアンケートよりも回収率が高く、回収のスピードも速いことから、スタッフが素早く確認できるため、クレームに対して迅速に対応できることもメリットとしてあげられます。これにより、施設のレピュテーションの向上にも役立っています。」
ホテル向けトータルソリューション、サービスアパートメント
高橋氏に2019年と今後の展開について聞いた。
「業界ではパイオニアではあるものの、技術は常にキャッチアップされるものなので、今後はさらなるイータブ・プラスを使用することへの意味的価値の付与を含めたサービスの差別化を図っていきます。
ミライトの強みである、Wi-Fiの電波環境の改善、監視カメラやEV充電器設置などの総合エンジニアリング事業を全国で展開していることによる、ホテル向けトータルソリューションを提供いたします。
さらに、今後のイータブ・プラスの導入展開としては、ホテルからサービスアパートメントにも広げていき、富裕層の長期滞在向けなどに対応していきたいと考えています。」
AIやIoT業界においてホテルの客室タブレットやスピーカーなどを扱うベンチャー企業は数多く新規参入しているが、同社のように全国に支店を持つ老舗としての信頼感を有する企業の新規サービス展開は、顧客からの信頼を第一とするホテルにとっては大きな安心につながるものと言えるだろう。
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