箱根で旅館5施設などを展開する株式会社金乃竹が、2025年の事業総括を公表した。
インバウンドの利用人数は前年比1.9倍に伸び、売上は約12.3億円と全体の55%を占めた。特徴は、需要回復を取り込むだけでなく、公式サイトを軸に直販比率を予約件数ベースで48%まで押し上げ、外部サイト依存を脱し、販売構造を転換した点にある。
さらに連泊時の清掃を任意で省略できる「Skip制度」を通年運用し、年間約1,800時間の労働時間削減と環境負荷低減の両立を図った。伸びる訪日市場の中で、宿側の収益性と現場の持続可能性をどう高めるのか。地域・体験価値まで含めた取り組みが注目される。
本記事では、今回発表された2025年の事業総括について、株式会社金乃竹に取材した。
▷金乃竹リゾート 公式HP:https://kinnotake-resorts.com/?utm_source=newsrelease01152026
―――2025年のインバウンド需要(利用人数前年差1.9倍、売上構成比55%・約12.3億円)について、伸長の要因を貴社としてどのように分析されていますか。
2025年のインバウンド需要伸長については、単一の要因ではなく、複数の背景が重なった結果だと捉えています。
訪日需要の本格回復といった外部環境の変化に加え、以前から取り組んできた「滞在そのものの価値」を重視する姿勢が、結果として海外のお客様のニーズと合致したことが大きかったと考えています。
体験や時間の質を大切にする層に選ばれたことが、売上構成比の伸長につながったと考えます。
―――欧米圏の比率拡大(米国9,128名・前年差約2倍、欧州各国も伸長)について、予約導線・商品設計・情報発信の観点で効果的だった施策を教えていただけますか。
欧米圏のお客様に対しては、特定の集客施策というよりも、予約導線や商品設計において、「日本文化を説明する」のではなく、「滞在の中で自然に体感していただく」ことを意識してきました。
情報発信についても、文化的背景や価値観の違いを踏まえた伝え方を心がけており、こうした積み重ねが、結果として体験価値を重視する欧米圏からの支持拡大につながったと考えています。
―――直販比率が約15pt上昇(予約件数48.24%、売上46.02%)したとのことですが、公式サイト中心の直販強化で実施した取り組みのうち、最も成果に直結したものは何でしょうか。
直販比率の上昇については、公式サイトを単なる「予約を取るための場所」ではなく、「滞在価値を理解していただく入口」として再定義したことが大きかったと考えています。
価格や条件の比較だけでなく、「なぜこの宿を選ぶのか」を納得していただける構成を意識してきました。
あわせて、予約のしやすさ等システム面についても、利用者目線での改善を継続的に行っています。
その結果として、公式サイト経由での予約が増え、直販比率の改善につながりました。
―――「Skip制度」(塔ノ澤で選択率約64%、約92万円相当を還元、年間約1,800時間の時短)について、制度設計で工夫した点と、運用して見えてきた効果・課題を教えてください。
Skip制度は、滞在中の清掃を簡略化することで、お客様・スタッフ・環境の三方にとって価値のある取り組みとして設計しました。
お客様には清掃省略時に館内利用券をお渡しし、満足度向上につなげる一方、スタッフにとっては業務負荷を軽減し、本来向き合うべき接客や品質向上に時間を使える環境づくりを意識しています。
実際に生まれた時間は、より深いお客様とのコミュニケーションや、細かな部分の清掃・手入れなどに充てることができています。
運用を通じて、時間削減や満足度向上といった効果が見える一方で、制度を正しく理解していただくための案内や、施設ごとの運用調整といった課題も見えてきました。
今後も現場の声を踏まえながら、改善を重ねていきたいと考えています。
―――2026年以降に向けて、貴社が掲げる「直販強化」と「体験価値の深化」を両輪に、まず優先して磨き込みたい“滞在前後を含めた体験”は何でしょうか。理由と、実現に向けた一歩目の取り組みも併せて伺えますか。
2026年以降は、滞在中だけでなく、予約前から滞在後までを一連の体験として捉え、磨き込んでいきたいと考えています。
予約前の段階で期待値を丁寧に整え、滞在中は期待を超える体験を提供し、滞在後も記憶として残る関係性を築くことを目指しています。
また、デジタル化が進む時代だからこそ、対面で生まれる情緒的な価値や、人を介した体験の質をより一層磨いていきたいと考えています。