株式会社リクルートのじゃらんリサーチセンター(JRC)は、公益財団法人東京観光財団(TCVB)および東京都台東区と共同で、オーバーツーリズムに関する研究を実施した。この研究の目的は、オーバーツーリズムの問題が発生するメカニズムや地域特性、旅行者の行動意識を検証し、観光地が対策を検討するための観点や考え方を整理することにある。
オーバーツーリズムとは、観光地やその周辺地域における観光客の過剰な集中が、地域の生活環境や観光体験の質にネガティブな影響を及ぼす現象だ。近年、この問題は世界各地で顕在化しており、特に日本においても重要な課題となっている。
本研究では、オーバーツーリズムの発生パターンを分類し、海外および国内の複数都市間で比較検証を行った。特に台東区における検証では、浅草を中心に、住民と旅行者の双方からの視点を取り入れた。研究結果からは、オーバーツーリズムは多様な要因が複合的に関わっており、地域の特性によって懸念される課題が大きく異なること、また、対策の重要性や優先順位が住民感情に大きく左右されることが明らかになった。
この研究を通じて、オーバーツーリズムという問題が、単に観光客の増加によるものではなく、地域住民との相互理解や信頼構築の不足にも起因することが示唆された。そのため、自治体や関連機関は、観光客と住民双方の声を拾う体制を整え、双方の間に信頼関係を構築することが、オーバーツーリズムの未然防止に向けた鍵である。また、観光客のマナー向上や生活環境の保全に向けた取り組みも重要であるが、それには住民の声を反映させることが不可欠である。
さらに、観光の推進と地域の日常生活との両立を目指し、地域住民が持つ地域への誇りや愛着、日々の暮らしや抱える困りごとを具体的に把握し、観光政策に反映させることが求められる。住民の視点を踏まえた観光地域づくりによって、観光客と地域住民双方が満足する持続可能な観光地域の実現に向けて、多くのステークホルダーが協力して取り組む必要がある。
このように、オーバーツーリズムに対する未然防止策として、観光客と地域住民の相互理解に基づく信頼構築の重要性が強調されている。自治体や観光関連機関は、この点に注目し、具体的な対策の検討と実施に努めるべきである。リクルート、東京観光財団、東京都台東区による共同研究は、オーバーツーリズム問題への対応における新たな視点を提供し、今後の観光産業の発展に貢献することが期待される。