NPO法人おりがみは、全国初となる「持続可能な大規模ユニバーサルツーリズム」のモデルづくりに挑戦している。ユニバーサルツーリズムとは、高齢者や障がいのある人など、誰もが安心して旅行を楽しめる社会の実現を目指す取り組みである。同法人は、障がいのある方と若者ボランティアが支援・被支援の関係を超え、同じ目線で旅を楽しむことを目的とした「パラ旅応援団」を展開している。
本事業では、単なる観光支援にとどまらず、参加者同士が「出会えてよかった」と思い合える関係を築くことに重きを置いている。これまでに延べ611名が参加し、その中には障がいのある方109名と学生ボランティア239名が含まれている。2025年6月22日には、成田ゆめ牧場の協力のもと、「パラ旅DAY~成田ゆめ牧場6月編~」が実施された。参加者はグループごとに動物とのふれあいや観光ミッションなどを楽しんだ。
障がいのある方にとって、外出は「誰と」「どこへ行くか」の選択肢が非常に限られており、実際に千葉市の調査では、外出時に「友人」や「ボランティア」と同行する人はわずか1.0%にとどまっていた。外出の目的も通院や買い物が中心で、友人との交流や趣味を目的とする人は15%程度に過ぎない。加えて、移動支援制度は原則として利用者とヘルパーの一対一の関係で構成されており、この制度構造自体が“支援する側”と“される側”という固定的な関係性を生み出しやすい。
こうした背景から、外出が「楽しい時間」ではなく「必要な移動」として認識される傾向がある。外出への心理的・制度的なハードルの高さが、障がいのある方の孤立を深めている実情がある。参加者からは「支援しやすい場所ばかりになってしまう」「本当はもっと新しい出会いがほしい」といった声が聞かれた。
一方で、国土交通省の試算では、障がいのある人に適切なサポートと環境が整えば、年間564万回分の新たな観光需要が生まれるとされている。この数値は、制度の限界と環境整備の遅れによって、潜在的な観光ニーズが十分に掘り起こされていないことを示している。
今回実施された「パラ旅DAY」では、障がいのある方と学生ボランティアがミッションラリーや昼食交流などを通じて共に行動し、旅の楽しさと出会いの価値を共有した。参加者は“支援される側”という枠を超えて、互いに対等な立場で関係を築く機会を得た。このような取り組みを通じて、ユニバーサルツーリズムが一過性の支援ではなく、継続可能な地域共生のモデルとして広がることが期待されている。