大手OTAのブッキングは、グーグルの広告料に四半期で10億USDの支払いを行なっていることが、収益レポートに基づく分析で明らかとなった。他方で、グーグルは自社アプリGoogle Tripsなどを開発、旅行事業に参入することにより、ブッキングは顧客であるとともに、競争者となっている。
CNBCの報道によると、ブッキングは、四半期において1.2〜1.3億USDをグーグルを主としたオンライン検索エンジンに関連したネットマーケティングに支出しており、RBC Capital MarketsのアナリストMark Mahaney氏によればブッキングの広告予算の大部分である約8割、10億USDが四半期でグーグルに支払われており、多くの旅行者が旅行を計画する際に検索エンジンで検索を行うことから、その広告料はさらに拡大しているという。
ブッキングの広告料はグーグルの広告収入の3.6%に相当する額であり、グーグルにとってブッキングはトップ5の大口顧客だ。
現状においては、ブッキングのCEOであるGlenn Fogel氏は、グーグルとの関係性は良好な状態にあるとしているが、その関係性はより複雑である。
ブッキングはエクスペディアやトリップアドバイザー、トリバゴなどが競合として認知されているが、同時に、グーグル自体との競争にもさらされているからだ。
ブッキングへのアクセスの多くがグーグルに依存しており、検索結果の表示をグーグルに握られている状態でありながら、グーグルは世界のスマホの8割を占めるアンドロイドとiOSの自社アプリでGoogle Tripsの提供を開始し、旅行事業に直接乗り出している。
グーグルは「潜在的に」自社商品に有利な表示を行うことができる状態にある。
こうした独占的状況に対して、EU当局はグーグルに対して最も厳しい姿勢を示している。
EU当局は、本年7月にグーグルがアンドロイドの端末メーカに対してアンドロイドに依存させる契約を結ばせることで、メーカ各社に不利益を与えているとして、アンチトラスト法違反で50億USDに及ぶ制裁金をグーグルに科した。
英国における2020年4月からのグーグルを含めたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの巨大IT企業へのデジタル課税導入の動きが報じられるなかで、ブッキングなどのOTA各社や端末メーカなどに限らず、日本政府当局にとってもその規制対応の是非が政治的課題となってきた。
最も懸念されるのは、消費者自身の選択肢が意図的に誘導・制限されることであり、それは旅行者にとっても無関心ではいられない事態と言えるだろう。
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