日本政府観光局(JNTO)の7月の発表によると、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅に減少していた訪日外客数が、2023年6月に初めて200万人を突破した。この数字は2019年同月比で72.0%となり、回復の兆しを見せている。2023年1月から6月までの累計では、1,071万2千人となり、上半期で既に1,000万人を超える規模にまで回復している。
地域別に見ると、東アジア地域、特に台湾からの訪日客数が増加したことが顕著である。また、欧米や豪中東地域でも、特に米国や豪州などでは2019年同月比を超える回復が見られた。国際線の定期便に関しては、2023年夏ダイヤ時点でコロナ禍前の約6割まで運航便数が回復し、その後も東アジアを中心に増便・復便が続いている。
しかし、日本路線の航空座席供給量はいまだ回復途上であり、物価の高騰や航空券代の高騰、航空・旅行会社を取り巻く人手不足等の課題が存在する。また、欧州地域ではウクライナ情勢に伴う飛行ルートの変更によるフライト時間増加も訪日旅行の懸念材料となっている。
特に回復した東アジアの訪日外客数を見てみると、韓国からは545,100人(対2019年同月比89.1%)、中国からは208,500人(対2019年同月比23.7%)、台湾からは389,000人(対2019年同月比84.4%)、香港からは186,300人(対2019年同月比89.1%)と、各国からの回復傾向が確認できる。
国内では、新たな観光立国推進基本計画を踏まえて、観光地・観光産業の持続可能な形での「稼ぐ力」を高めるとともに、地方誘客や消費拡大を促進する必要があるとの指摘もある。このため、国内関係者が連携し、海外旅行会社等へのセールス強化や情報発信を通じた高付加価値旅行、アドベンチャートラベルの推進、MICE誘致等の取組を強化していくことが求められている。
以上の結果から、訪日旅行市場は新型コロナウイルス感染症の影響から徐々に回復しつつあると言える。しかし、回復途上であることや、航空券代の高騰や人手不足などの課題が存在するため、今後の対策が重要となるだろう。特に、地域別にみても訪日客数の回復傾向が見られるが、それぞれにおける規制や制限が存在していることから、それらを解消し、安全な旅行環境を提供することが求められている。