岩手県北上市の山間にある「夏油温泉観光ホテル」が、約1年半ぶりに営業を再開した。運営するGETO Village 株式会社は、2025年10月から11月11日までの期間限定でプレオープンし、新たに温泉とワーケーションを組み合わせた「湯ノケーション」プランを実施する。
宿は源泉かけ流しの温泉と自炊型の素泊まりスタイルが特徴で、自然に囲まれた静かな環境での滞在を提案する。ネット環境をあえて設けず、温泉文化の継承と地域とのつながりを重視した運営を目指している。
本記事では、「夏油温泉観光ホテル」プレオープンの経緯やホテルの特徴などについて、GETO Village 株式会社に取材した。
▷公式サイト:https://geto-village.com/
―――今回の営業再開にあたり、あえて「プレオープン」という形を選ばれた理由をお聞かせください。
夏油温泉観光ホテルの再開を“プレオープン”という形にしたのは、いきなり完成を目指すよりも、「少しずつ皆さんと一緒につくっていく宿」でありたいという思いからです。
今はまだ建物も人の体制も整備の途中ですが、まずはこの場所に湯を戻し、昔から通ってくださる方々に再びお湯を楽しんでいただくことを大切にしました。
プレオープン期間を通じて、利用される皆さんの声を聞きながら、これからのかたちを育てていきたいと思っています。
―――「湯ノケーション」プランは Wi-Fiも携帯の電波も届きにくい環境を特徴とされていますが、この環境がもたらす価値をどのように考えていらっしゃいますか。
Wi-Fi も携帯の電波も届きにくいこの環境は、実は夏油温泉らしさのひとつです。今の時代だからこそ、少しだけデジタルから離れ、自然の音や湯の音、人との素朴な会話に身をゆだねる時間を大切にしていただけたらと思っています。
今年度は特に、“デジタルデトックス”をテーマに掲げていますが、今後はWi-Fi整備も検討し、利用目的に応じて過ごし方を選べるようにしていく予定です。
「湯ノケーション」という言葉には、湯治(Toji)とロケーション(場所)、そしてコミュニケーション(つながり)を掛け合わせた想いが込められています。自然と共に、自分自身や人とゆっくりつながる時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。
―――夏油温泉観光ホテルでは「自炊可能な素泊まりスタイル」にこだわられていますが、このスタイルに込めた思いや狙いをお聞かせください。
今回のプレオープンでは、かつての湯治文化をそのまま感じていただけるよう、「自炊スタイル」を中心にしています。これは、再生の第一歩として「原点に立ち返る」ための期間でもあります。
今後は、より幅広い世代の方にも楽しんでいただけるよう、自炊以外の宿泊スタイルも提案していきたいと考えています。
―――キーワードとして掲げている「つながりに浸かる社交湯」について、具体的にどのような交流やコミュニティ形成を想定されていますか。
「社交湯(しゃこうゆ)」とは、お湯を介して人と人が自然につながっていく場を表しています。将来的には、訪れる人たちが自然体で関われるような“開かれた湯の場”を育てていくことを大切にしていきたいと考えています。
まずはこの土地の空気と人の関わりから、ゆるやかなつながりを育んでいくことを目指しています。
―――GETO Village 株式会社が掲げる「湯治をつなぎ、共に未来をひらく。」という理念を、今後どのように具体的な形で実現していかれるご予定でしょうか。
この理念には、先人たちが守ってきた「湯治の文化」に敬意を払いながらも、次の世代へつなぎ、そこから新しい未来を拓いていきたいという願いが込められています。
湯治は単なる滞在スタイルではなく、自然と人、人と人が向き合う「生き方」そのものです。
今後は、教育・研究・企業との協働など、さまざまなかたちで湯治文化を現代に活かし、地域から未来をあたためていく取り組みを進めていきたいと考えております。
■施設概要
名称:夏油温泉観光ホテル(湯治宿)
所在地:〒024-0322 岩手県北上市和賀町岩崎新田8-7
利用料金:素泊まり 7,700円(税込)※入湯税別途150円/室
チェックイン:15:00/チェックアウト:10:00
アクセス:秋田自動車道「北上西IC」から車で約40分
駐車場:あり(15台・無料)
公式サイト:https://geto-village.com/