全体的な回復傾向にある一方で、懸念点も浮上している。その一つが、中国からの観光客の減少だ。2023年1月から5月までの中国からの訪日客数は2019年同期の10%以下に留まっており、特に大阪など中国人観光客に依存していた地域は厳しい状況にある。中国政府が日本への団体旅行に制約を課しているためとされており、これが続けばホテル業界にとって大きな打撃となる。
また、ビジネス需要の回復の鈍さも課題だ。コロナ禍以降、働き方の変化によりビジネス出張が減少し、これがホテル業界の収益に影響を及ぼしている。これに加えて、コロナ禍で人手が足りなくなったホテルが多く、需要の回復に対応できない現状がある。
ホテル業界は従業員の確保という問題に直面している。コロナ禍で人員を削減し、復帰させようとすると多くの人々が他業種に転職しているため雇用が困難である。また、業務負荷の高さと報酬の低さが人材確保を難しくしている。さらに、リネンの交換や客室清掃などに携わる高齢従業員や外国人労働者の退職、帰国による人員不足も問題化している。
これらの結果、サービス要員の不足から顧客の予約をキャンセルする事例が増えており、全体的な稼働率が100%に達しきれない状況となっている。また、コロナ禍により金融機関からの融資を受けていた中小ホテルの一部は、返済期間の到来とともに廃業や売却を余儀なくされている。
新規開発を予定しているホテル業者も建設費の高騰により採算が取れない状況となり、中小ホテルの買収が増えている。これらの要因により、ホテル業界は今後、物件や銘柄の新陳代謝が進み、大きく変動することが予想されている。
以上のことから、ホテル業界の回復が見え始めている一方で、新たな課題や懸念事項も浮上していることが明らかとなった。今後の業界の動向に注目が集まる。