一般社団法人ホテルコンシェルジュ協会は、コンシェルジュの専門人材養成とその価値向上を目的に、ホテルコンシェルジュアカデミーの設立を行った。
この動きは、日本政府が設定した2025年までの訪日外国人旅行者数の目標、2019年の実績3188万人を超えるという野心的な計画に対応するものである。新型コロナウイルス感染症の流行を受け、ホテルをはじめとする観光業界では人材不足が深刻化し、人材育成が急務とされている。特に、訪日外国人旅行者にとって重要なコンシェルジュの不足は、首都圏だけでなく地方においても感じられており、その需要に応えるための人材育成が求められている。
現在、多くのホテルではコンシェルジュの養成プログラムが不足しており、実践を通じたOJTに依存する状況にある。コンシェルジュは、顧客の多様なリクエストに対応する能力を必要とし、広範な知識とネットワークが求められる職業である。しかし、インターンシップの機会が限られており、他部署での経験を経てからの配属が一般的であるため、未経験者や新入社員がコンシェルジュとして働くことは難しい現状がある。
このような背景の中、ホテルコンシェルジュアカデミーは、専門の教育と指導を行う場を設け、効率的かつ効果的なカリキュラムをもとに、市場からの要望に応えるコンシェルジュの養成を目指している。アカデミーの第一弾として、2月から東京マリオットホテルでホテルコンシェルジュマスターコースの授業が開始され、コンシェルジュ人材育成業務がスタートした。
アカデミーの設立には、ホテル業界におけるコンシェルジュのネットワーク組織「レ・クレドール ジャパン」で2011年から2017年までプレジデントを務めた田隝益美と、「レ・クレドール ジャパン」の創立メンバーであり、名誉会員である阿部佳が中心となっている。二人は長年にわたりコンシェルジュの発展と人材育成に尽力してきた。
ホテルコンシェルジュアカデミーは、基本的な概念や現場での技術、知識サービス方法の習得の場を提供する。現場体験をもとに仕事の遣り甲斐や楽しさを共有し、即戦力となるコンシェルジュを養成する。また、ホテル入社までのフォローアップや、終了後の国内ホテルへの紹介・採用・派遣登録の実施など、幅広い支援を行っている。将来的には認定制(公的資格)の導入も計画されている。
ホテルコンシェルジュアカデミーの設立は、ホテル業界における人材不足の解消と観光業界の発展に貢献するものと期待される。一般社団法人ホテルコンシェルジュ協会は、プロフェッショナルなスキルと知識を有するコンシェルジュ人材の需要の高まりに応え、日本政府が目指す「観光先進国」の一端を担う。