星野リゾートが運営する「星のや富士」では、2024年10月3日から12月12日までの期間、全6回にわたって「狩猟体験ツアー」を開催する。このツアーは、参加者が狩猟の見学・体験を通じて命のサイクルを学ぶ大人の食育を目的としている。今年で8回目となるこのツアーでは、新たに「自然に触れる森歩き」というプログラムが加わり、より自然との距離を感じることができる内容となった。
富士北麓地域では、増えすぎたシカやイノシシが農林業に被害をもたらす「獣害」が問題となっている。これに対処するため、毎年県の管理計画に基づき狩猟が行われているが、捕獲されたシカやイノシシの大部分は破棄されている。星のや富士では、この問題に取り組む一環として、ジビエを使った食事を提供してきた。この背景から、自然との共生や命の尊さを感じてもらうための狩猟体験ツアーを企画した。
ツアーの特徴として、まず、狩猟体験を通じて命をいただくことへの理解を深めることが挙げられる。富士五湖周辺の森で行われるこの体験では、狩猟に精通した地元の猟師が案内役を務める。猟師はシカやイノシシの生態を熟知し、一連の狩猟プロセスを迅速かつ技術的に行うことが求められる。参加者は、猟師のこだわりを聞きながら狩猟の一連の流れを見学・体験し、命をジビエとして昇華させる過程を学ぶ。
新たに加わった「自然に触れる森歩き」は、狩猟体験前日に行われる。星のや富士の敷地内をグランピングマスターとともに散策し、動物たちの痕跡を見つけながら、自然と人間の共生を感じる時間を過ごす。夜には焚き火を囲み、自然の中で感じたことを振り返る時間も設けられている。
狩猟体験後の夕食は、鹿肉や猪肉を使った「ジビエディナー」である。このディナーは、富士山麓周辺で獲れたジビエを使ったコース料理で、アウトドア器具を使って仕上げる体験も含まれる。特に秋は脂を蓄えたシカやイノシシが美味しい時期であり、ジビエと茸を組み合わせた料理が提供される。
さらに、ツアーでは山梨の伝統工芸品「甲州印伝」の漆付け体験も行われる。甲州印伝は、鹿革に漆で文様をあしらったもので、約400年の歴史を持つ。参加者は、日本唯一の甲州印伝の伝統工芸士から漆付けを学び、完成品は後日自宅に届けられる。これにより、食材としてだけでなく、資源として命を無駄にしない方法も学ぶことができる。
「狩猟体験ツアー」は、2024年10月3日、10月17日、10月31日、11月28日、12月5日、12月12日の全6回開催され、2泊3日のプログラムとなる。料金は1名111,000円で、宿泊料は別途必要である。公式サイトで2週間前まで予約を受け付けている。
星のや富士の本取り組みは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に寄与することを目指しており、地域の課題解決と持続可能な社会の実現に向けた活動を続けていく。