株式会社星野リゾートは、株式会社王子ホールディングスおよびグループ会社の株式会社王子ネピアと共同で、使用済み紙製ハンドタオルからnepiaハンドタオルへ再生する日本初の「水平リサイクル」を2025年6月1日より開始した。水平リサイクルとは、使用済み製品を原料として同じ種類の製品に再生する手法であり、廃棄物の削減や資源の有効活用、二酸化炭素排出量の削減につながる取り組みとして注目されている。
星野リゾートは1992年から環境経営を推進しており、2011年には軽井沢事業所において、廃棄物の再資源化100%を目指す「ゼロエミッション」をホテル業界で初めて達成した。このゼロエミッションは、廃棄物を焼却や埋立処分することなく、すべて資源として再利用することを目的とした取り組みである。2024年7月からは、株式会社王子ホールディングスと連携し、軽井沢星野エリアの星野温泉トンボの湯にて、使用済み紙コップを回収し、nepiaハンドタオルへと再生する活動を開始していた。さらに効率的な資源循環を促し、より一層環境負荷を低減するためには、使用済み製品を同種の製品に戻す「水平リサイクル」の実現が重要であり、今回の取り組みはその発展形である。
これまで紙製ハンドタオルは、水に濡れても破れにくい特性を持たせているため溶解性が低く、汚れや臭いの問題もあることから、従来は焼却処分されるのが一般的だった。株式会社王子ホールディングスは、グループ内の協力工場において独自技術を開発し、紙の溶解性を向上させることに成功した。これにより、繊維分を効率的に回収・再製品化できる仕組みが確立され、ハンドタオルを再び同じハンドタオルとして再生することが可能となった。
本取り組みには、星のや軽井沢、軽井沢ホテルブレストンコート、軽井沢星野エリア 村民食堂、リゾナーレ八ヶ岳の4施設が参加している。トイレや洗面所、レストラン厨房などのスタッフが使用するエリアに専用の回収ボックスを設置し、回収体制を整備した。この活動を支えているのが、軽井沢星野エリア内に組織された「ZERO委員会」である。ZERO委員会は、ゼロエミッションの実現と持続を目的に現場のスタッフが中心となって構成されたチームであり、廃棄物の分別・回収方法の徹底や、現場改善の提案など、具体的かつ実装的な取り組みを継続してきた。
また、物流面では、日用品や消耗品の納品を担ってきた株式会社ツチハシと連携し、既存の物流網を活用することで、回収と納品を一体化した効率的なルートを確立した。これにより、新たな輸送手段を設けることなく、CO₂排出量の抑制にもつなげている。
2025年1月15日から2月14日のテスト期間においては、4施設から合計58.3kgの使用済み紙製ハンドタオルが回収され、これは年間換算で約700kgに相当する。nepiaハンドタオルに再製品化すると、年間で約2,917パック(1パック200枚入り)の生産が可能となる見込みである。今後、再生されたハンドタオルは、参加施設にて再び活用される予定である。
本施策は、星野リゾートが推進する環境経営の三本柱である「ゼロエミッション」「自然エネルギーの活用」「エコツーリズム」のうち、特にゼロエミッションの深化に貢献するものである。さらに、持続可能な開発目標(SDGs)の目標12「つくる責任 つかう責任」の達成に向けた、CSV経営の一環として今後も継続的な取り組みが期待されている。