栃木県日光市で、地域の空き家を活用した一棟貸しの民泊「日光和庭の家 寧々」が2026年1月に開業した。築44年の古民家を改修し、日本庭園を残した点が特徴だ。
客室には組子や雪見障子、信楽焼の浴槽など伝統意匠を取り入れつつ、寒さ対策を含む設備も整え、訪日客を含む幅広い利用を想定する。空き家増加が課題となる中、遊休資産の再生と観光需要の受け皿づくりを両立させる試みとして位置づけられる。施設は日光の社寺や中禅寺湖など観光拠点へのアクセス圏にあり、地域経済への波及も見込む。
本記事では、「日光和庭の家 寧々」開業の経緯やその魅力などについて、株式会社咲楽とらすとに取材した。
―――立ち上げの背景として、空き家問題とインバウンド需要の“2つの課題”を結びつけようと考えた決め手は何でしたか。
現場で感じているのは、日光は世界的な観光地である一方で、管理の行き届かない空き家が増え始め、地域の景観や活気が損なわれてきているという現実です。
その一方で、訪日外国人観光客(インバウンド)の中で複数回来日されている方ほど、「画一的なホテル」ではなく、その土地の歴史や生活を感じられる「本物の日本体験」を強く求めています。
だからこそ、負の遺産となりつつある「空き家」を、インバウンドが求める「価値ある体験の場」へと転換することで、地域の課題解決と観光振興そして経済活性化を同時に実現できると確信したことが決め手となりました。
さらに言えば、今後ますます人口が減少していく地方の課題解決や外貨獲得による日本経済の活性化につながると確信しているからです。
―――築44年の古民家改修で「残したもの/変えたもの」の線引きは、どのような基準で行いましたか。
「五感で和を感じる部分は残し、身体が触れる利便性は最新にする」という考え方で判断をしていきました。
具体的には、構造(梁や柱)、趣のある建具や床、畳などは主役としてそのまま残し、古民家特有の「伝統の趣」を五感で楽しめるようにしています。
一方で、水回り(キッチン・バス・トイレ)や空調、寝具といった快適性に直結する部分は現代のライフスタイルに合わせて一新しました。古いものへの敬意を払い、「不便を楽しむ」のではなく「快適に和を感じる」空間づくりを目指しています。
特に浴室は和の趣と快適性を兼ね備えたものにするために、五右衛門風呂と坪庭、つくばいを設け、さらにガス浴室暖房乾燥機も導入しました。
―――本施設の核である「和庭」について、庭園が“癒し”につながるように意図した設計ポイントはどこにありますか。
「家の中から外を眺める時間が、一番の贅沢になること」を意図しました。リビングや縁側から四季折々の表情(春の芽吹き、夏の深緑、秋の紅葉、冬の雪景色)を切り取った絵画のように眺められるよう配置を整えています。
特に、日光の清らかな空気の中で、鳥のさえずりや風に揺れる木の葉の音を聞きながら、何もしない時間を過ごしていただくことを想定しています。忙しい日常を忘れ、自然のサイクルに身を置くことで得られる「静寂」という癒しを大切に設計しました。
加えて、照明を設置してライトアップをすることで、夜も和庭をゆっくりと楽しんでいただけるようにしています。
―――インバウンド対応として導入した「寒さ対策に力を入れた設備」は、どのような不便・不満を想定し、どんな方向性で整えましたか。
日光の冬の寒さは、古民家宿泊において最大の懸念点であり、「日本家屋は寒くて眠れない」という不満につながるリスクがありました。
これを解消するため、既に実施済みであった二重サッシ設置や断熱窓改修に加え、最新のエアコンを部屋のみならず廊下にも新設、また玄関にはガスFFファンヒーターを設置し視覚的にも暖かさを感じられる工夫を取り入れています。
冬場でもTシャツで過ごせるほどの気密・断熱性を確保するのではなく、あえて「冬の凛とした空気」を感じつつも、温もりある滞在環境を整えました。
―――日光エリアの魅力向上と地域活性化に向けて「寧々」を起点に実現したい未来と、読者へのメッセージをお願いします。
「寧々」は単なる宿泊施設ではなく、地域再生の「種」となる可能性を秘めたものだと考えています。ここでの成功体験をモデルケースとして、日光エリアに点在する空き家を魅力的な拠点へ転換していきたいと思います。
そしてこの「種」が飲食などの他業種とつながり線となり、やがて面となって、地域全体に活気の連鎖が見えてくることをイメージしています。
日光というと寺社仏閣の印象が強いかもしれませんが、実はそれだけではなく、日本に残していきたい心が和む風景や、静けさの中で深呼吸したくなる時間があります。
「日光和庭の家 寧々」での滞在を通じて、そんな“ガイドブックには載っていない日光”にも触れていただけたら嬉しいです。
■施設概要
名称:日光和庭の家 寧々
所在地:栃木県日光市森友1519-49
公式サイト:https://nikko-nene.com/
LINE:https://line.me/R/ti/p/%40223xsefd
Instagram:https://www.instagram.com/nene.nikko.stay
宿泊プラン:
・1棟貸し切り、食事なし
・最大宿泊人数:12名
・料金:39,000円~
※宿泊料金は、シーズンやご予約状況等により変動いたします。
▷日光和庭の家 寧々 Airbnbサイト
アクセス:東武日光線 下今市駅 下車後、車で約8分