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【取材】滞在型アートワークプロジェクト『不時泊』2024年6月下旬より順次開業

有限会社アースケイプは、数々のランドスケープデザインやコンセプトデザイン、トータルデザインを手掛け、国内外で高い評価を受けている風景司 団塚栄喜氏(だんづかえいき・有限会社アースケイプ代表取締役)が、滞在型アートプロジェクト『不時泊』を立ち上げ、一日一組限定の宿泊施設を2024年6月下旬より順次開業することを発表した。

ラグジュアリーホテルとは一味違う、アートと自然を楽しむための全く新しいコンセプトの宿泊施設。団塚氏が、その土地に触れ、自然と共存・共鳴しながら約8年かけて完成させたコンセプト空間の宿泊施設が、大分県竹田市、佐伯市大入島、神奈川県横須賀市など、全5軒開業する。

本記事では、滞在型アートプロジェクト『不時泊』を立ち上げた経緯やその魅力などについて、団塚氏に取材を行った。

▷ 不時泊公式サイト:https://fujihaku.earth/

――― どのような経緯や背景で『不時泊』のプロジェクトを立ち上げるに至ったのでしょうか

画像出典:不時泊

東日本大震災のとき、仙台で被災し避難所を転々とした経験から、どんな災害に見舞われても生き抜く知恵や力が必要だと感じました。そこで、郷里の大分や横須賀で人間本来の野性を取り戻すべく、実験的な住宅を個人的に作り始めました。

電気やガス、水道などの便利なインフラに頼らないオフ・ザ・グリッドの生活を通じて、季節に合わせた暮らしや自然の息吹と共にある暮らしを続けているうちに、居住空間のコンセプトやデザインに対する意識が変わりました。

そこを訪ねてくる友人たちも、いつもの日常と違う時間と空間を楽しんで帰っていく姿を見て、多くの人にこの特別な体験をしてほしいと思い、「不時泊」のコンセプトのもと、さらに3つの異なる環境を見つけ、その風景や歴史に合わせたコンセプトで新たなプロジェクトを立ち上げました。

――― 各施設のコンセプト(「PERMA」「IROA」「LUTEN」「HASO」「IKUSA」)について、それぞれの特徴や魅力を教えてください

「PERMA(パーマ)」大分県竹田市 / ©Sato Shinichi

「PERMA(パーマ)」 は、大分県竹田市の城下町に、昭和の時代から人気だったパーマ屋さんを改築した、再生可能エネルギー(オフ・ザ・グリッド)で過ごす空間です。

電気やガスのなかった頃の日本の暮らしを体験していただくことで、「足るを知る」を実感し、ご自身で未来のライフスタイルを描くことができます。

豊後竹田駅から徒歩10分ほどの便利な立地も魅力の一つです。城下町の散策や、竹田に住むクリエイティブな人々との交流も楽しめます。

また、オフサイトミーティングやデザインミーティング、展示会、イベントスペースにもご利用いただけます。

「IROA(色空)」 大分県竹田市久住 / ©Sato Shinichi

阿蘇くじゅう国立公園に位置する「IROA(色空)」は、標高約1,700m級の山々と高原が目の前に広がる素晴らしいロケーションが魅力です。

建築はテント型のコンクリートシェルターで、本格的な不時泊(ビバーク)体験が待っています。必要な水はスタッフが竹田の名水(湧き水)を用意します。

薪を使ったダッチタブでお風呂に浸かったり、屋外バーベキューを楽しんだりできます。そして夜は大自然の中で自分と向き合い、星空が、自分が、宇宙の一部であることを教えてくれます。展示会や撮影場所としてもご利用いただけます。

「LUTEN(流転)」大分県竹田市神原 ※デイユースのみ / ©Sato Shinichi

ユネスコパークに指定されている祖母山の源流、神原渓谷に位置する「LUTEN(流転)」は、秘密基地のような隠れ家です。渓流には天然のイワメが生息し、ヤマシャクヤクやブナ、ツバなどの原生林に囲まれ、四季折々の日本の原風景を楽しめます。

また、特別天然記念物のニホンカモシカの生息地でもあります。祖母山のネイチャーツアーの拠点や、竹田の老舗和菓子・但馬屋特製のランチボックスを持参してのピクニック、ヨガや瞑想で心身を整える時間を過ごすことができます。

崇高な空気と大自然の清らかさに身を委ねる究極の寛ぎ体験が待っています。

「HASO(波礎)」大分県佐伯市大入島 / ©Sato Shinichi

大分県の佐伯港からフェリーで約10分の場所に位置する大入島にある「HASO(波礎)」。大入島は人口約500名の小さな島で、日本が抱える高齢化社会のプロトタイプのような限界集落。静かな海岸線にひときわ目立つガラス張りの建物は、日本の未来への希望を示すかのようなデザインです。

自転車で島を一周したり、魚釣りやシーカヤックを楽しんだりする時間は、子供時代に戻ったような無邪気な遊び心を呼び起こします。筏(いかだ)としての機能を持つHASOのデッキで屋外バスや地元食材を使ったバーベキューを楽しめるのも魅力です。

「IKUSA(居草)」神奈川県横須賀市 / ©Sato Shinichi

「IKUSA(居草)」 は、築100年を超える木造建築を、5年以上かけて改築した場所です。山の上に位置し、朝日と夕日を眺めることができます。春には桜が満開となり、その美しさが一層引き立ちます。

ここの主はかつての持ち主の代から住んでいるメダカたち。128段の階段を登った先にあるにじり口で視線を落とすと、小さな主たちが迎えてくれます。

茶室、神大杉のテーブル、神棚、囲炉裏、溶岩風呂など163㎡の空間に日本様式が絶妙に調和しており、時空を超えた旅へと誘います。

――― 滞在者にはどのような体験を提供したいと考えていますか

画像出典:不時泊「PERMA」

それぞれの施設は、コンセプチュアルなアプローチでありながら、かつてそこに暮らした人々の原風景に触れることのできる唯一無二の空間です。

ゲストのチェックイン方法も、その地域の雰囲気を楽しんでもらえるためのちょっとした仕掛けを考えています。チェックインから「不時泊」の体験が始まります。

滞在中は五感をフルに活用して楽しんでいただきながら、同時に現在直面している環境問題や震災などのさまざまな問題について、人間が地球とどのように共存していくべきかという問いに対して、お客様ご自身がそれぞれの答えを見つけることができるような体験を提供したいと考えています。

――― 今後、このプロジェクトをどのように発展させていきたいと考えていますか

画像出典:不時泊「HASO」

世界中には素晴らしいデザインの快適なラグジュアリーホテルが星の数ほどあります。

しかし、真のラグジュアリーとは、紆余曲折して苦労してたどり着いた先に忽然と現れる未知の自然風景と共にあると考えています。

日本にはまだ美しい風景がたくさん残されており、それぞれの風景に特化した不時泊を日本中、世界中に展開していきたいと考えています。

――― 最後に、開業に向けた意気込みを教えてください

画像出典:不時泊「IKUSA」

今回開業する不時泊五部作は、それぞれ違った個性の空間で時間の流れ方も異なっています。

そこに人間が滞在することで、どのような物語が紡がれていくのかに興味があります。

長い時間をかけていろいろな体験をしてほしいとの思いから、連泊しやすい価格設定にしました。

可能な限り全ての施設を体験してほしいので、不時泊を巡るツアーなども企画していこうと思っています。

今後はアートや音楽のイベントなども開催する予定ですので、不時泊の今後の動向に皆さまご期待ください。

■ 宿泊予約について

2024年6月下旬より順次開業予定。不時泊公式サイトの各施設の紹介ページにあるRESERVATION から予約が可能です。

不時泊公式サイト:https://fujihaku.earth/
不時泊IG     @fujihakuprojects 

■ 団塚栄喜氏  プロフィール

©Akira Maeda

風景司。1963年大分県佐伯市大入島生まれ。黒潮の海に浮かぶ小さな島に生まれ、蛍の舞う清流の森で育つ。幼少期の原風景が作品作りに強い影響を与える。桑沢デザイン研究所を経て、モノ派を代表する美術家、関根伸夫に師事。国内外で時間、空間、人間の「間」を繋ぐ風景を作品として手掛ける。
多摩美術大学客員教授、東京藝術大学非常勤講師、アースケイプ主宰。
都市景観大賞、土木学会デザイン賞、BCS賞、SDA賞、グッドデザイン賞、AACA賞、英国D&AD Award、米国Green Good Awardなどを受賞。
2021年に著書『EARTHSCAPE「そこにあるべき」ストーリーを生み出す〈風景司〉団塚栄喜作品集』(CCCメディアハウス)を発刊。
また、アートを通した環境活動『MHCP(メディカルハーブマンカフェプロジェクト)』、『不時泊』などのプロジェクトを展開。
団塚栄喜サイト :https://danzuka.earth/

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