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2025年の旅行市場予測:観光支出拡大とイベント効果に注目

JTBは1泊以上の日本人旅行(ビジネス・帰省を含む)と訪日外国人旅行について、各種経済指標や消費者行動調査、運輸・観光関連データ、JTBグループが実施したアンケート調査などから推計された2025年の旅行動向見通しをまとめた。本調査は1981年から継続的に実施されているものである。

(出典:株式会社JTB

旅行者の現状調査によると、2024年の国内旅行については、観光支援策の終了や国内物価の上昇の影響で宿泊者数が伸び悩む結果となった。2024年1月から11月の延べ宿泊者数は4億4,858万人泊であり、2023年同期比97.6%、2019年同期比101.4%である。一方で海外旅行者数は国内外の物価高や円安、世界的な政情不安が影響し、回復が遅れている。2024年1月から11月の日本人出国者数は1,182万人で、2023年同期比136.2%、2019年同期比64.3%に留まった。

(出典:株式会社JTB

訪日旅行については、円安や物価安を追い風に回復が一層進み、2024年1月から11月の訪日外客数は3,338万人に達した。これは2023年同期比149.5%、2019年同期比113.7%である。国・地域別では韓国、中国、台湾が上位を占め、特に中国からの訪日客は前年比301.8%と大幅に増加した。

(出典:株式会社JTB

旅行に関するアンケート調査では、2024年に1泊以上の国内旅行を実施した人は全体の6割以上であった。性年代別に見ると女性29歳以下の旅行実施率が最も高く80.7%、次いで女性30代が72.1%であり、若い女性の旅行意欲が顕著である。地域別では中国・四国地方の旅行実施率が最も高く、63.9%であった。海外旅行については、実施率が8.7%と低いものの、男性29歳以下が17.1%と最も高い割合を占め、国内旅行同様若い世代の実施率が高くなった一方で、海外旅行では女性より男性の割合がやや高い結果となっている。

(出典:株式会社JTB

2025年のカレンダーを見ると、3連休以上が9回設定されており、2024年より2回少ない結果となった。ゴールデンウィークは後半が4連休、夏季休暇ではお盆期間の平日を休めば最大9連休が可能である。また、2025年に開催される主要イベントとしては、大阪で開催される日本国際博覧会(万博)、瀬戸内国際芸術祭、沖縄で新設されるテーマパークJUNGLIAが挙げられる。これらのイベントや施設は観光需要のさらなる拡大や地域経済の活性化を後押しすると見込まれる。

(出典:株式会社JTB

訪日外国人旅行者を除く、日本居住者の国内旅行動向では、2025年の旅行者数は3億500万人と推計され、物価の高値傾向が続く中、一人あたり旅行費用は47,800円、総旅行消費額は14兆5,900億円と予測されている。物価は引き続き上昇する一方で、雇用や給与に関しては次第に良化されていく見通しであることから、暮らし向きもゆるやかな改善が期待され、旅行に対して追い風になることが考えられる。

前述のアンケート調査で、国内旅行に「一度も行かない」と答えた人は25.4%存在した。旅行に行かない理由としては「家計に余裕がない」「旅行費用が高い」が上位を占め、予算面の厳しさが課題となっている。一方で旅行を実施すると回答した人に対し、旅行先を決めるきっかけとなりそうなものを質問したところ、自然豊かな場所やテーマパークを含む観光施設が高い人気を集める結果となった。

(出典:株式会社JTB

海外旅行の動向は、2025年の旅行者数が1,410万人と推計され、一人あたり旅行費用は334,100円、総旅行消費額は4兆7,100億円と予測されている。為替相場の安定が期待される中、近隣諸国だけでなく中長距離方面への需要も拡大する見通しである。アンケート調査では「海外旅行に行く予定」と答えた割合が21.1%と前年を大幅に上回り、特に若年層の女性において高い意欲が見られる結果となった。また現時点で考えている旅行の行き先について聞いたところ、「韓国(30.4%)」が最も高く、次いで「台湾(26.4%)」と近隣の国・地域が高い一方で、「ハワイ(24.2%)」、「ヨーロッパ(18.4%)」など中長距離も人気がある。また性年代別にみると、韓国は女性29歳以下、台湾は男性40代と女性50代、ヨーロッパは女性70代に人気があるなど、世代による違いがみられた。

訪日外国人旅行者数は2025年に4,020万人と推計され、新型コロナウイルス後の急激な需要回復が一巡する中でも過去最高を更新する見込みである。近隣市場を中心に需要が増加し、中国市場についても条件次第で回復が期待される。訪日外国人旅行者の増加に対し、日本経済の活性化や観光地の賑わいを歓迎する声がある一方で、観光地でのマナーや自然環境への影響を懸念する声も挙がっている。

日本経済は2025年に回復基調が予測されているが、物価上昇や円安が引き続き消費行動に影響を与えると見られる。旅行支出を増やしたいという意向が高まる中、観光業界全体での需要喚起策や持続可能な観光への取り組みが求められている。

 

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