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民泊によるホテルの稼働率への影響〜民泊はホテルの競合となるのか!?②〜

民泊はホテルの稼働にどれほどの影響を与えているのだろうか。連載第二回となる今回はメトロエンジンリサーチによる「民泊影響稼働率」を切り口に、民泊に宿泊する旅行客の特徴と傾向を読み解いていく。

 
ホテルがフル稼働なときに民泊へ流れる
メトロエンジンリサーチの分析による、ホテルに与えた民泊の影響稼働率の指標である「民泊影響稼働率」は、もし民泊がなかったらホテルの稼働率はどのくらい上昇したかを示す値である。
計算式としては以下のようなものだ。
民泊影響稼働率(%) = 民泊稼働数 / ホテル客室数 ×100
民泊稼働数 = 民泊物件数 × 民泊稼働率
ホテル客室数 = ビジネスホテル+シティホテルの客室数
この民泊影響稼働率の観点で、3大都市である東京23区、大阪市、京都市を比較したのが以下のグラフである。
 

出典:メトロエンジンリサーチ

 
民泊影響稼働率は、東京23区において8-10%、大阪市14%前後で推移し、京都市では10-18%で乱高下しているのがわかる。
 
観光シーズンに民泊利用が高まる背景
ビジネスホテルやシティホテルの稼働率が8-9割に達し全国トップクラスの稼働率を誇る東京23区、大阪市、京都市だが、京都市がより特徴的であるが4月や11月の観光シーズンに民泊影響稼働率が18%まで高まっているのが上記のグラフからわかる。
他方で、この時期はホテルの稼働率がフル稼働で高止まっており、ホテルをOTAでいくら検索しても、希望するホテルが満席であることが少なくない時期である。
旅行者としては、こうした場合に民泊が選択肢になってくる。つまり、ホテルからあふれた人が民泊に泊まる傾向にあるのだ。
これは、せっかくの良き思い出となるべき宿泊を伴う観光旅行において、多額なコストと時間を払って旅行している観光客は、できればトラブルなくより信頼性の高いホテルに泊まりたいのだが、満室のため止むを得ず民泊を選択している場合が多いということを示している。
逆に言えば、すでにホテルがフル稼働の状態であれば、この時期にいくらホテルが民泊を競合視して客を誘導しようとしても意味がないことになる。
 
多人数観光・長期滞在者に民泊利用傾向
他方で、観光客がホテルが満室の際に止むを得ず民泊を選択していること以外に、ホテルよりも民泊をあえて選択する要因として考えられるのが、料金の問題である。
 
厚生労働省の全国民泊実態調査(2016年10月-12月)によると、民泊の一泊の全国平均宿泊料金は9,971円である。ただし、この数字は一棟貸しなどの多人数での宿泊が可能である民泊の特徴を踏まえて、宿泊可能人数は全国平均で4.8人と、一般的なホテルが2人であることと比べると多人数での宿泊が可能となっている。
この数字で一人当たりの宿泊料金を割って計算すると2,077円となり、人数が多いほど非常に安価に宿泊が可能となりメリットが大きいことがわかる。
 
また、訪日外国人消費動向調査(2018年1月-3月)によると、長期滞在者に民泊を利用する傾向があり、訪日外国人のホテルでの宿泊が6.4泊を平均宿泊数とするのに対して、民泊は10.3泊と倍近くになっている。多人数の長期滞在者にとっては、一人当たりで割ることで比較的安価に宿泊できる民泊が魅力的なのだ。
 
これらのことから、民泊の利用はホテルが既にフル稼働で利用できない場合に高まるため、基本的には民泊はホテルの稼働には影響をもたらさないが、多人数・長期滞在者が割安で泊まれることは、民泊を利用するメリットとして捉えられ、こうした旅行客の獲得においてはホテルにとって民泊は競合となってくることがわかる。
 
次に、旅行客を受け入れる民泊の運営側のコストの観点から民泊について考えてみよう。(連載続く)
 
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